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クラリオンのフルデジタルヘッドフォン、ALOの真空管ポータブルアンプなど

 東京・中野にあるAV機器の専門店フジヤエービックのデジタルスタイルショップが主催する「ポータブルオーディオ研究会(ポタ研) 2015夏」が、7月11日の土曜日に中野サンプラザで開催された。入場は無料。ここではクラリオンのフルデジタルヘッドフォン、ミックスウェーブブースなどをレポートする。

クラリオン

 クラリオンでは、製品化を検討しているフルデジタルヘッドフォンを参考展示している。「CEATEC JAPAN 2014」などでも参考展示していたが、開発がより進んだバージョンとなる。

クラリオンのフルデジタルヘッドフォン

 クラリオンは、デジタル信号処理技術のDnoteを用いて、デジタルスピーカー「01DRIVE」シリーズなどを展開しているが、その技術をヘッドフォンに用いたもので、デジタル音源をDACでアナログ変換してアンプで増幅する一般的な方法とは異なり、デジタル入力信号の入力から振動板の駆動前までデジタルで伝送するのが特徴。

 新たな試作機の特徴は振動板を平面タイプにした事。レスポンスを良くする事で、「01DRIVE」ならではの繊細なサウンドをスポイルせずに楽しめるヘッドフォンを目指しているという。ハウジングは密閉型。

 さらに、コンデンサなどの内部パーツも改良。パーツの素材などにもこだわり、ハイレゾソースの細かな音が、より聴き取りやすいようにチューニングしているとのこと。

 光デジタルとアナログ音声が両方入力できる兼用端子をハウジングに備えており、AKシリーズなど、光デジタル出力を備えたハイレゾプレーヤーとデジタルで接続可能。デジタル出力を持たないプレーヤーとはアナログケーブルで接続できる。

AKシリーズと光デジタルケーブルで接続したところ
アナログケーブルでも接続できる

 バッテリで動作し、USB経由で充電する。製品化の時期や価格は未定だが、来場者の意見も参考にしながら、ハイレゾ再生や「01DRIVE」に興味があるヘッドフォンファンに向けた高音質ヘッドフォンとして製品化を目指している。

サトレックス

 ホシデンの子会社でヘッドフォンのOEMなどを手がけていたサトレックスが自社ブランド「SATOLEX」ヘッドフォンを20年ぶりに復活させた。第1弾モデルとして7月7日から、Dnote技術を採用したUSB接続のデジタルヘッドフォン「DH291-D1」と、ハイレゾ対応の「DH291-A1」を発売した。価格はD1が24,800円、A1が14,800円。

Dnote技術を採用したデジタルヘッドフォン「DH291-D1」

 どちらも40mm径ドライバ採用の密閉ダイナミック型ヘッドフォンだが、「DH291-D1」はDnote技術を採用。USB接続で、デジタル信号のままスピーカーに入力し、高音質再生を実現。デジタルヘッドフォンでは最軽量という“軽さ”も追求している。

 USB入力は96kHz/24bitまでの対応。再生周波数帯域は5Hz~45kHz。重量は約170g。USBバスパワーで動作する。

ミックスウェーブ

 カスタムイヤフォンメーカーの米1964 EARSが初めて手がけるユニーバサル仕様のイヤフォン「1964-V6 Universal Fit」が、11日から発売になっており、会場で試聴できる。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は92,500円。

 数量限定販売となっており、8日に製品発表されたが、発表から約12時間で正規販売代理店でのWeb予約受付が終了。しかし、ポタ研の会場において、少量の販売が行なわれた。

「1964-V6 Universal Fit」

 カスタムイヤフォン「1964-V6」をベースにしたユニバーサルタイプで、高域×2、中域×2、低域×2、合計6基のバランスド・アーマチュア(BA)ユニットを搭載した3ウェイモデル。周波数特性は10Hz~20kHz、感度は116dB。インピーダンスは15Ω。遮音性は-26dB。「繊細な音色から迫力ある重低音まで、幅広いサウンドステージを再現する」としている。

 ALO audioのCEOであるKen Ball氏が新たに立ち上げたイヤフォン/ヘッドフォンメーカー、Campfire Audio。「春のヘッドフォン祭 2015」で概要が発表され、試作機が展示されたが、今回のイベントでは完成品が用意された。

 「Lyra」、「Jupiter」、「Orion」の3モデルをラインナップ。価格も未定だが、7~20万円程度の見込み。いずれも人間工学に基づいた筐体設計を採用。試作機と比べ、ノズル部分がストレートな形状に変更されている。

Campfire Audioの「Lyra」

 上位モデルの「Jupter」は、ニッケルメッキを施したアルミニウム製の筐体を採用。ドライバはバランスド・アーマチュア(BA)で、低域×2、高域×2の4ドライバ構成で、価格は15万円以上。

 「Lyra」はセラミック筐体で、ダイナミック型の8.5mm径、振動板にはベリリウムを使っている。実売価格は10万円以上の見込み。「Orion」はアルミニウム製の筐体で、BAユニット1基を搭載。価格は7~8万円前後。

 ALO audioからは、真空管を使ったポータブルアンプ「Continental Dual Mono」が出展。ヘッドフォン祭では試作段階だったが、今回は完成品となる。

真空管を使ったポータブルアンプ「Continental Dual Mono」
バンナイズは、同モデル用のケースも開発している

 ALO audioの最高峰真空管アンプ「Studio Six」のクオリティを“手のひらに乗せられるサイズに”をコンセプトとしており、7月発売予定。価格は20万円台を見込んでいる。

 DSD入力にも対応した真空管内蔵DAC/アンプで、増幅段は真空管を2つ内蔵したデュアルモノ構成。真空管はPhlips 6111で、ユーザー交換も可能。天面には真空管を確認できる窓を備えて、窓にはGORILLA GLASSを使っている。

 DACはWolfsonのWM8741。DSDは2.8MHzまで、PCM系は384kHz/32bit対応。筐体はCNC切削のアルミニウム製。アンバランスとバランス入出力を装備。バランス入力は2.5mm 4極で、AKシリーズと接続するための2.5mm 4極バランス - 2.5mm 4極バランスケーブルも参考展示された。

「Continental Dual Mono」とAKシリーズのバランス接続が可能な、2.5mmバランス - 2.5mmバランスケーブルも参考展示

 Beat Audioからは、ソニーの「MDR-EX1000」、「XBA-Z5」と組み合わせられる、新しいデザインのイヤフォンケーブルの試作機を展示。線材は「Silversonic MKV」を使用しており、入力端子はいずれもステレオミニとなる。

ソニーの「MDR-EX1000」用ケーブル
「XBA-Z5」用ケーブル
Cypher Labsからは、2.5mm 4極バランス端子を4ピンバランス端子に変換するケーブルも参考展示された

ゼンハイザー

 9日から発売が開始されたばかりの、ヘッドフォン「MOMENTUM(モメンタム)」シリーズの第2世代モデルを一挙に展示。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は「MOMENTUM G」が42,000円前後、「MOMENTUM On-Ear G」が27,000円前後。

MOMENTUMシリーズ第2世代モデル

 音質や装着感、素材などを見直したほか、新たにヘッドバンド部の折り畳みも可能になった。MOMENTUM Gはアラウンドイヤー型、MOMENTUM On-Ear Gはオンイヤー型。製品名の「G」は、Galaxy対応を指している。

 「URBANITE XL WIRELESS」(37,000円前後)も9日に発売されたモデル。アラウンドイヤータイプのBluetoothヘッドフォンで、Bluetooth 4.0+EDRに対応。aptXコーデックをサポートする。最大8台までのマルチペアリングに対応し、2台のデバイスを同時接続することも可能。ハウジングにタッチすることで、音楽再生/停止や曲送り、ボリューム調整、通話操作が行なえる。有線接続も可能で、付属のケーブル(1.2m)を右のハウジングに接続できる。

 スポーツ向けイヤフォン2モデルも新製品で、ネックバンド式のインナーイヤー型「PMX 686 i SPORTS」と、イヤーフックを備えたカナル型「OCX 686 i SPORTS」を展示。どちらも実売は13,000円前後。

URBANITE XL WIRELESS
スポーツ向けイヤフォン2モデル

OPPO Digital Japan

HA-2/PM-3のグラウンド分離接続用、4極のステレオミニケーブル

 OPPOのブースでは、デザイン性の高いDAC内蔵ポータブルヘッドフォンアンプ「HA-2」、平面振動板採用のヘッドフォン「PM-3」の新展開に関する展示がある。

 HA-2/PM-3はどちらも、4極のステレオミニケーブルを使ったグラウンド分離接続が可能で、音質をワンランク上に高める事ができるが、そのグラウンド分離接続用純正ケーブルの試作機が3種類展示されている。導体などが異なる試作機で、来場者の意見を集め、今後の製品化の参考にするという。

 さらに、HA-2/PM-3のカラーバリエーションも各4色展示。HA-2は革張りの部分のカラーが異なり、豚革や牛革など、カラーによって素材も異なる。来場者に、どのカラーや革の質感が良いかをアンケートしており、今後のカラー展開の参考にするとしている。なお、HA-2のカラーバリエーション展開は日本発案の企画だという。

HA-2のカラーバリエーション試作機
PM-3のカラーバリエーション試作機

その他

フロンティアファクトリーのブースでは、Acoustic Researchのハイレゾプレーヤー「AR-M2」向けの、純正ケースを参考展示。シックなデザインの「AR-M2」にマッチしつつ、薄型なのが特徴。液晶保護シートなどもセットになる予定だという
バンナイズでは、ハイレゾプレーヤーの高級モデル「AK380」向けのキャリングケースを開発。裏側のマジックテープ部分の固定位置を微調整する事で、AK380をキツくホールドしたり、緩めにホールドして抜き差ししやすくするなど、使い心地をユーザーの好みにカスタマイズできる
TTRの「茶楽音人(Surround)」ブランドブースでは、カナル型イヤフォン「Donguri-鐘」の2.5mm 4極バランス接続モデルの試聴が可能
完実電気の米Aurisonicsブランドのコーナーには、スティービー・ワンダーが愛用しているという同社のカスタムイヤモニターを展示(ハウジングに左右を示す点字がある)。日本ではユニバーサルモデルのみが展開されているが、Aurisonicsがカスタムも手がけている事をアピールしており、今後の展開が注目だ
ラトックのブースでは、発売中のDAC内蔵ポータブルアンプ「REX-KEB02iP」を、Lightning - USBケーブルでiPhoneなどと直結できるようにする有償バージョンアップを予告。ラトックに製品を送付すると、ファームウェアのバージョンアップを行ない、専用のLightningケーブルをセットにして返送するサービスになる予定だという
ORBブースでは「野村ケンジのポータブルオーディオシステム相談室」を開催。野村ケンジ氏に来場者が様々な相談ができるようになっているほか、「ミニミニケーブル、リケーブル総選挙」も実施。試作ケーブルを聴き比べ、気に入ったモデルに投票、上位のケーブルは数量限定で販売するというユニークな企画も行なわれている

(山崎健太郎)