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「Premiere Pro CC」がHDR/HEVCなど4K対応強化へ。Auditionは曲のリミックス
(2015/9/11 20:02)
アドビシステムズは、オランダで9月11日(現地時間)に開幕した放送業界向けイベント「IBC 2015」において、映像編集/制作ソフトの「Premiere Pro CC」や「After Effects CC」、「Audition CC」を含む「Adobe Creative Cloud」に搭載予定のアップデート内容を発表。新たにHDR(ハイダイナミックレンジ)映像や、H.265/HEVC出力などに対応したほか、タブレットなどのタッチ操作に関連するUI改善も行なっている。
9月11日現在の利用料金は、Premiere Pro CCやAfter Effects CC、Audition CCなどの単品がそれぞれ月額2,180円、これらのソフトに加え、Photoshop CCやillustrator CCを含む20種類以上が利用できるコンプリートプランは月額4,980円。これらのプランでは、20GBのクラウドストレージも利用できる。
4K/HDRなど映像関連の機能強化。Facebook直接出力も
Premiere Pro CCやAfter Effects CCでは、以前のバージョンから既に4K映像(3,840×2,160ドット)に対応している。今回「アドビで初となる4K/Ultra HDにフォーカスした機能強化を行なった」としており、新たにHDR映像にも対応。解像度/フレームレート(60fps)/カラー(BT.2020)/輝度(HDR)の4つの要素で4Kに対応するため、現在開発を続けているという。
新たに、Lumetriカラーパネルなどのメニューに「ハイダイナミックレンジ」の項目を設け、これをONにすると、作業時に100 IREを超える明るい映像ファイルも扱えるようになり、スコープ表示でも10K(1万 IRE)相当まで表示可能。従来の限界だった100 IREを超える明るさの映像を、カラーワークプレースから直接取り扱えるようになる。HDRの信号を扱うドルビービジョン(Dolby Vision)の中間コーデックや、OpenEXRを使ったワークフローにも対応。
また、H.265/HEVCコーデックの映像を、従来の読み込み対応だけでなく、書き出しにも対応。4Kで最大60Mbps、品質設定で5段階から選んで出力できる。Facebookへの動画の直接出力にも新たに対応。従来のYouTubeやVimeo、Creative Cloudへの出力に加え、直接アップロードの選択肢が広がった。
動画のフレーム間に静止画を挟むことでスロー動画として再生可能にする機能には、新たに「オプティカルフロー」のモードを搭載。フレーム前後の画像から動きを予測して、補間フレームを生成することで、より滑らかなスロー再生を可能にしている。
操作面では、Windowsタブレットなどでのタッチ操作を想定した機能を強化。タブレットで「アセンブリモード」にすると、タッチでピンチイン/アウトでの拡大縮小などが行なえるほか、スライドするとスクラブで再生したり、イン/アウト点を決めて編集することなどが可能。任意のクリップを別のクリップに割り込ませたり、上のレイヤーの重ねるといった操作が、キーボード無しで直感的に行なえる。
そのほか、スマートフォンアプリのHueで編集した静止画を、Creative Cloudと自動連携し、デスクトップPCで編集している動画に加えるといったことが可能。ロゴ画像なども、常に最新のデータを社内で共有できる。
After Effects CCで、2D静止画から3Dアニメーションを作成できる「Character Animator」では、新たにタブレットなどの2点マルチタッチ操作にも対応。Webカメラでとらえた人の顔に合わせてキャラの表情が自動生成されるだけでなく、それに連動してキャラの両手を動かすといったこともタッチ操作で可能になる。また、同機能は表示が英語だが、アップデートにより一部が日本語化される。
CCのすべてのデスクトップ用ビデオ製品に共通のアップデート内容として、CreativeSyncで実現されるCreative Cloud Librariesの機能が強化。Adobe Stockからのストック画像をAfter EffectsやPremiere Proで購入して使う場合に、現在は一旦Webブラウザでの作業が必要だが、Premiere Pro CCなどのソフト上で購入まで可能になった。
Auditionは“リミックス”で曲を短縮可能に
波形編集ソフトの「Audition CC」は、映像作品などの長さに合わせて音楽の長さを調整するRemix機能を搭載。単純にループさせることで時間に合わせるのではなく、オリジナルの音楽性や曲の構造を損なうことなく、指定された時間に合わせて音楽を自動的に再編成するというもの。
Remixで編集した場合、通常は切り取った部分をそのままつなげるため、指定した時間の±5秒程度の誤差が出るが、ストレッチすることで指定時間通りにすることも可能。また、切り取った部分をディゾルブでつなげることもできる。
例として、3分30秒ほどの「トルコ行進曲」を、20秒や30秒に短くするというデモも行なったが、つなぎ目には全く不自然さが無く、曲の導入から盛り上がりの部分、終わりまでひととおりの要素を持ったショートバージョンが作成できていた。ボーカルがある曲では難しい場合もあるが、ほとんどの曲で違和感なく利用できるという。
そのほか、Auditionでは新たにラウドネス処理にも対応する。
これらの「Adobe Creative Cloud」のアップデートは、'15年末までに行なう予定。
IBC 2015では、Creative Cloudのアップデート以外にも、機能強化されたマルチデバイス動画配信プラットフォーム「Primetime」も紹介。インターネット経由で配信するオーバーザトップ(OTT)などのサービスにおいて、視聴者の獲得や収益化、測定などを可能にする機能を提供。新機能として、HTML5コンテンツの配信や、ビデオコンテンツをアプリケーション内であらかじめ取得しておくことで応答時間を高速化する「インスタント オン」などに対応している。