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著作権保護のSeeQVaultを、コンテンツ販売やBtoBにも。東芝が国内外のコンテンツホルダに訴求

 著作権保護の「SeeQVault」と言えば、対応テレビやBDレコーダを使って、USB HDDに地上デジタル放送などを録画、そのHDDを、別の対応テレビやレコーダで再生できる技術というイメージがある。しかし、元々はSDカードやUSB HDDに、セキュアな形でコンテンツを記録するための技術で、テレビやレコーダ、デジタル放送に限定した技術ではない。その可能性を国内外にアピールするため、東芝が「Japan Content Showcase 2015」にブースを出展した。

「Japan Content Showcase 2015」の東芝ブース

 東京・お台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAで10月20日~22日まで開催されている「Japan Content Showcase 2015」は、東京国際映画祭の併設マーケット「TIFFCOM」と、音楽の国際マーケット「東京国際ミュージックマーケット」(TIMM)、アニメーション関連を中心とした東京国際アニメ祭(TIAF)がセットになったマーケットイベント。日本のコンテンツに興味を持つ世界各国のバイヤーが来場し、コンテンツの売買に関する商談の場となっている。

「Japan Content Showcase 2015」会場の様子。日本のコンテンツホルダがブースを設け、海外のバイヤーとの商談が行なわれている

東芝がSeeQVaultをコンテンツホルダにアピール

 前述の通り、SeeQVaultはテレビやレコーダに限った技術ではない。最近では、対応するSDカードに録画番組を書き出し、それを対応リーダを介してスマホやタブレットに接続。ピクセラが開発したSeeQVault Playerアプリで再生するといった事も可能になっている。

東芝製のSeeQVault対応microSD/SDHCメモリカードリーダを使い、ノートPCやタブレットでコンテンツを再生するデモ

 コンテンツも、デジタル放送に限った技術ではないため、例えば映画の映像ファイルをSeeQVaultで保護し、SDカードやUSBメモリなどに記録。それをBlu-rayやDVDのようなセル用のパッケージメディアとして販売し、スマホやタブレットで視聴する……といった事も技術的には可能になる。

SeeQVault対応の全録レコーダ「レグザサーバー」、「DBR-M590」
ピクセラが開発したSeeQVault Playerアプリ

 最近注目を集めている映像配信サービスでは、外出先にスマホで楽しもうとすると通信量が増大し、通信制限を受けてしまう可能性もある。そこで、自宅などでコンテンツをあらかじめダウンロードし、SeeQVault形式でSDカードに書き出し、通勤中の電車などで通信を使わずに快適に再生するといった事も、技術的には可能とする。

 東芝が「Japan Content Showcase 2015」にブース出展したのは、こうしたSeeQVaultの可能性をコンテンツホルダやバイヤーにアピールするため。メモリ営業推進統括部 メモリ新規ビジネス営業推進部の長谷直紀参事は、「既に2、30社から興味を持っていただいている。Blu-ray/DVDや映像配信以外にも、コンテンツを提供する手段が欲しいという強いニーズを、コンテンツホルダの皆様から感じている」という。

左がメモリ営業推進統括部 メモリ新規ビジネス営業推進部の長谷直紀参事

 ブースの展示に際しては、東映、松竹、アスミック・エース、博報堂DIYから映画などのコンテンツ提供を受け、それらをSeeQVault対応のBDレコーダや、microSD+カードリーダ+タブレット、ノートPCなどで再生するデモを実施。対応デバイスの豊富さや、配信や放送と比べて高画質にコンテンツを提供できる事などをアピールしている。

 さらに、BtoBへの展開も検討。「Japan Content Showcase 2015のようなコンテンツの商談会では、映像のサンプルをバイヤーにDVDなどで提供するそうですが、御存知の通り、昨今のノートPCには光学ドライブが搭載されていない機種が多い。ホテルの部屋に戻っても、そのコンテンツを観る事ができません。SeeQVaultで保護したmicroSDカードなどであれば、スマホやタブレットにアプリを入れるだけで観る事ができ、また、そうしたカードを万が一紛失した場合でも被害を極小化できるというメリットがあります」(長谷参事)。

 また、コンテンツ製作の段階でもSeeQVaultを活用できる可能性がある。「製作した作品を保存する際にも、SeeQVaultを使ってセキュアな形で保存する事ができます。映像制作では既にワークフローが確立されていますが、我々はコンテンツ保護の面でお役に立てると考えており、そのワークフローの中にどうやって入っていくか、そのためにはどのようなツールを用意する必要があるのかなど、ビジネス展開に向けた意見をお伺いする場にもなっている」という。

 一方で、日本のように放送にDRMがかかっていない海外のコンテンツホルダに対しては、SeeQVault自体の知名度が低く、その必要性を理解してもらいにくいといった問題もある。

 そこで、ブースにはDynabookのキャラクター“ぱらちゃん”を使ったイラストや、ぬいぐるみを展示。イラストでは、「EVERYWHERE」、「DATA PROTECTED」、「ANTI-PIRACY」というキーワードを提示、どこでもコンテンツが楽しめる事、データを強力に保護できる事、著作権を侵害する海賊版行為に対抗できるといった、SeeQVault技術の利点をシンプルに伝える工夫をしている。

“ぱらちゃん”を使ったイラストとキーワードで、SeeQVault技術の利点をシンプルに伝えている

 今後は東芝だけでなく、ソニーやパナソニックなど、SeeQVaultライセンスを取得している各社とも協力しながら、「間口を広げていくために、エンドユーザー、コンテンツホルダの双方に訴求していきたい」(長谷参事)という。

(山崎健太郎)