ニュース
ソニーや東芝など初会合、録画番組持ち出し「SeeQVault」メーカー互換性の現状
2017年4月14日 08:10
テレビに接続したUSB HDDやBlu-rayレコーダで録画した番組を、他のテレビやスマホなどでも持ち出して視聴可能にする「SeeQVault(シーキューボルト)」。録画番組の視聴方法に自由度が増す新しい技術であり、対応レコーダやUSB HDDなどの機器も増えている。しかし、多くのメーカーが参加する故のいくつかの課題もあり、まだ一般に浸透したとは言いにくいのが現状だ。
手持ちのテレビで録画したUSB HDDの番組を、別のテレビに繋いでも観られるのがSeeQVault(SQV)規格の大きなメリットだが、「正式なサポートは同じメーカーに限られる」ことが、多くの人にとって不満のあるところだろう。そういった現状の課題解決や、SeeQVaultの活用などについて、複数の賛同メーカーらが集まった初の会合が開催された。
SeeQVaultの互換性問題、実は解消済み?
2月に掲載した記事で、東芝が他社レコーダのUSB HDD録画番組を引き継げる機種を検証し、その型番公開したことを伝えたところ、アクセスランキングでも上位に入るなど注目された。これは、逆に今までこうした情報がほとんど出てこなかったことの裏返しでもある。
どのメーカーにとっても「他社製品で録画したUSB HDDなどの番組を、自社テレビなどで引き続き観られる」という“動作保証”まではできないのが実情。特定の組み合わせで“番組引っ越し”できなかった場合に、それらを全てサポートするのは困難だからだ。前述の東芝の場合は、同社が“動作確認”した個別の機種を公開した形だが、こうした情報が公式に出されることは珍しい。
その一方で、「メーカーが違うからといって敵対するのではなく、相互に観られるようにしたほうが結果的に全体の利益になる」ことは各メーカーも承知している点。そうした認識を持つSeeQVault参加各社からの希望により、今回の話し合いの場が実現したという。
今回の会合に出席したのは、ソニー、東芝、パナソニック、バッファロー、サイバーリンク、デジオン、アイ・オー・データ機器、ピクセラ、そしてSQVのライセンスを行なうNSM Initiatives LLCの9社。各社がSQV対応機器の拡充など現在の取り組みなどを発表した。
話し合いの大きなテーマである「互換性」について、原因となるのは「ファイルシステム」の違い。SQVは共通規格だが、各メーカーがHDDに保存する際のHDDのファイルシステムが異なっているため、最初に登場したころのSQV対応製品は、多くのメーカーで互換性がほとんどなかった。
具体的には、東芝が採用する「XFS」、パナソニックの一部レコーダなどの「ext4」があるほか、Windows PCアプリなどで使われる「exFAT」方式もあり、単純にUSBを挿し替えただけでは使えないという状況が長く続いていた。なお、microSDカードに転送すると、フォーマットは共通のため上記の互換性の問題は起きないが、録画制限である「ダビング10」の回数はカウントされる。
こうしたHDD録画時の課題に対処したのは、デジオンや、ピクセラ、サイバーリンクなどが製品化したPC/スマホ向けのプレーヤーやサーバーソフト。これらによって、現在では番組を観るための互換性については、ほぼ解消されたといえる。ソニーも'16年12月の「PC TV Plus」アプリアップデートで、SeeQVault機能を拡張し、ext4/XFSファイルシステムに対応。レコーダの対応機種を拡大している。
他方で、こうしたプレーヤーソフトを介さなくても、シンプルにUSB HDDを繋ぎ換えるだけで他のテレビ/レコーダにも使えることが、ユーザーにとって分かりやすいメリットといえる。
“自由な録画”への一歩。今後の話し合いに期待
今回の話し合いの場では、ファイルフォーマットを統一するという方向までには至っていないとのことだが、少なくとも、XFSやext4といったファイルシステムの違いがあることを明示し、動作するかどうかを検証して発表していくという方向では複数のメーカーが合意しており、最終的な判断は参加各社に委ねられる形だが、コンシューマへの分かりやすい伝え方なども模索していくとのこと。今回のように話し合いの場が持たれることになったのは大きな一歩と言える。
開催されたのは今回が最初だが、出席した各社の担当者の間では、既に情報のやり取りが多く行なわれており、忌憚ない意見を交わせるような雰囲気であることも、今回取材してわかった。前述した東芝やソニーなどが互換性などについて発表する際も、当然ながら関係する相手先へ事前に通知した上で、同意を得て行なっている。筆者からの提案として、「SeeQVaultという名前は多くの人にとって覚えずらい。こうした場で、もっと分かりやすい愛称などを決めてはどうか」とも伝えておいた。名前が難しいという利用者からの声は、これまでも実際に届いているとのことだ。
様々な映像配信サービスが台頭し、レコーダなどを使った録画文化自体が以前に比べると縮小している今、「もっと早くからこうした動きがあれば……」というのももっともな意見だ。ただ、今からでもこうした互換性について、各社が動作検証などを行ない、例えば共通のリストが公開されたりすれば、好きな番組を長く楽しみたい多くの人にとって製品購入などの有益な参考となるはず。今後も続く話し合いをきっかけに、録画の楽しみを自由にする新しい動きが増えていくことに期待したい。