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鴻海、シャープ買収を正式決定。「真のポテンシャルを解放」

3,888億円出資へ。シャープ通期決算は赤字1,700億

 台湾の鴻海精密工業(鴻海)は30日、シャープの買収を決定した。シャープは第三者割当による新株式(普通株式及びC種類株式)の発行を行ない、鴻海グループが応じる。2月25日のシャープ発表では、鴻海による出資規模は総額4,890億円としていたが、約3,888億円となる。本増資により、鴻海グループがシャープ株式の66.07%の議決権を保有することとなり、シャープの親会社となる。

 鴻海とシャープは、「グローバル・テクノロジーリーダー企業である両社の戦略的提携。両社の文化に共通するのは、勤勉さ、創造性、イノベーション。私たちは自信を持ってシャープの収益性を回復し、オペレーションを強化することで、もう一度シャープをグローバル・エレクトロニクス産業を牽引する位置に引き上げることに邁進する」と提携の理由を説明している。

 シャープは、2月25日に鴻海による経営再建策の受け入れと、第三者割当増資を発表。しかし鴻海は、シャープの潜在的債務(偶発債務)を理由に最終契約を保留との声明を出し、正式契約には至っていなかった。

 2月25日時点では、発行価額は1株につき118円で、出資規模は総額4,890億円としていたが、'16年のシャープ通期連結業績予測において下方修正を行なうことなど、経営環境の悪化により条件を見直し。発行価額は一株あたり88円、総額3,888億円規模と改められた。

 シャープの調達資金の具体的な使途については、OLED(有機EL)事業化に向けた技術開発投資、量産設備投資などで2,000億円、ディスプレイカンパニーにおける中小型液晶を中心とした高精細化・歩留まり改善投資、次世代開発投資、その他増産・合理化投資に約600億円、コンシューマエレクトロニクスカンパニーにおける、IoT分野の業務拡大などビジネスモデル変革等に400億円などを予定している。OLED以外の投資については、2月25日発表の金額から減額されている。

 OLEDについては、「世界の主要なOLEDディスプレイサプライヤー」を目指して、研究開発や投資をすすめる。

 シャープは、本増資により、財務体質の改善を図るとともに、液晶事業における競争力強化や、コスト競争力強化とともに、シャープブランドの商品やエコシステムのビジネス継続/強化を目指す。

 なお、30日付けで2016年度通期連結業績予想の修正も発表。売上高は当初予測比2,500億円マイナスの2兆4,500億円に、営業利益は1,800億円マイナスで、1,700億円の赤字を見込む。

 修正の理由は、液晶パネルの販売不振や価格下落のほか、工場稼働率低下による操業損失と、これに伴う在庫の滞留によるたな卸資産評価減の追加計上が大きな要因。また、中国市場において、液晶テレビや白物家電、デジタル複合機の販売不振が第4四半期以降に顕著となったことや、液晶テレビの流通在庫削減に向けた販促費の増加、さらに国内市場における白物家電の販売不振、太陽電池事業の住宅用及び産業用の市況悪化に伴う売価下落と販売減を挙げている。

 鴻海精密工業創業者で会長の郭台銘氏は、「今回の戦略的提携がもたらす展望に大変期待しており、シャープの皆さん全員と一緒に働くことを楽しみにしている。私たちは多くのことを達成したいと考えており、共に歩むことでシャープの真のポテンシャルを解放し、ともに高みに到達できると信じている」とコメント。

 シャープの髙橋興三社長は、「今回、シャープと鴻海精密工業が戦略的提携を結ぶことについて報告できることを嬉しく思う。今回の提携により、両社が持つ“創意のDNAと起業家精神”をもって革新的な取り組みを推進していきたい」と述べている。

(臼田勤哉)