ヤマハ、小空間向けの省スペースな音響調整パネル技術

-厚さ3cmで低音吸音。長さ調節で様々な部屋に


7月17日発表

 ヤマハ株式会社のサウンドテクノロジーセンターは17日、住宅の居室やオフィス内会議室などの小空間に向けの音響調整に最適な「音場制御パネル技術」を開発したことを発表した。

 小空間に防音や遮音設計を施すと、低音域がこもりがちになったり、壁面間の多重反射によっておこるフラッターエコーなどの音響障害が発生し、音の響きの快適性が失われる原因になっていた。環境改善のためには、適した吸音材や反射板を選択し、また低音を吸収するための吸音板は厚くしなければいけなかったが、今回の技術により、音場制御パネルを3cmの厚さにすることが可能。小空間の音響を整え、低音域から中高音域まで幅広く改善し、良質な響きを創造することができるとしている。パネルの長さ調節も可能で、様々な部屋に対応する。

 同パネル技術は、1本の管の片面の一部に開口部を設け、開口部の上下に長短2本の長さの管を作り出した音響共鳴管を複数本用いてパネル状に連結した構造のもの。開口部から放射される音と硬いパネル面から反射される音の相互作用による散乱効果と、開口部での音のエネルギー消費による吸音効果を得ることができる。

 125Hz~4kHz帯域におけるほぼ平坦な吸音特性により、低音域を含めた広い音域での制御ができ、室内の音の響きを適度に抑制可能。広い帯域で散乱特性によって、適度な響きを保ったまま音響障害を除去し、質の良い響きを発生させることができる。

パネル技術の構造吸音・散乱のイメージ図

 さらに、音響共鳴管の長さを適切に組み合わせることで低音から高音まで、パネル全体で偏りのない吸音、散乱性能が獲得できるようにチューニングすることも可能。パネル厚3cmでも、低音域で優れた吸音特性を発揮。グラスウールで同程度の低音吸収性能を実現するには20倍以上の厚さ(70cm)が必要だったという。

 また電気を使わないソリューションなので、省スペースかつ低コストで、音の問題解決や環境改善を図れる。パネル構造に用いる素材の選択の自由度が高いのも特徴で、透明なアクリル板やスチールなどでパネルを構成することも可能。

 同社では「音場制御パネル技術」の実用化を目指して、形状・材質の最適化や特性の向上に関する研究開発を進めるとし、同技術の対外ライセンスについては、今後検討していく予定だとする。


(2009年 7月 21日)

[AV Watch編集部 大類洋輔]