パナソニック、2012年度に3,000万台の薄型テレビ生産目指す

-「来年にはLEDテレビおよび3Dテレビを投入」と大坪社長


パナソニック 大坪文雄社長

10月30日発表


 パナソニック株式会社は30日、2009年度上期連結決算を発表。その席上で大坪文雄社長は、2012年度に年間3,000万台の薄型テレビを生産する方針を明らかにした。

 また、来年にはLEDテレビ(LEDバックライト採用液晶テレビ)を市場投入することに言及したほか、「3D対応テレビについても、どこよりも早く市場投入を図る」として、来年の市場投入に意欲を見せた。

 パナソニックでは、既存のプラズマパネル工場に加えて、2010年度に予定しているプラズマパネルP5尼崎工場の稼動により、年間1,000万台のプラズマテレビを生産。同じく2010年度の稼動を予定しているIPSアルファ姫路工場の稼動によって年間2,000万台の液晶テレビの生産が可能になるとしており、先行する韓国サムスンを追随する。

2012年度に向けた薄型テレビ生産体制

 2009年度の薄型テレビの出荷計画は1,550万台としているが、大坪社長は、「上期はこれを上回るペースで推移している。これに来年度600万台程度の上乗せができれば、2,200万台規模となり、2012年度の3,000万台が視野に入る」などとした。

 2009年度上期の出荷実績は、プラズマテレビが323万台、液晶テレビが395万台。合計で718万台となり、同社としては初めてプラズマテレビの出荷台数を、液晶テレビの出荷台数が上回った。

 また、大坪社長は、「下期以降の取り組みとして構造改革、体質強化をやりきる。上期は456億円で、年間の880億円に対して順調に進捗している。さらに、BRICS+V(ブラジル、ロシア、インド、中国、ベトナム)に加え、MINTs+B(メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコ、バルカン諸国)といった伸びる市場を捉え、グローバル戦略を強化。エナジー事業を加えた戦略事業の強化、ロボット・ヘルスケア事業の強化といった次の成長の仕込みに引き続き取り組む」とした。


■ 上期の営業利益は289億円

2009年度 第2四半期累計実績

 一方、2009年度上期の売上高は前年比23%減の3兆3,333億円、営業利益は87%減の289億円、税引前損益は前年同期の2,033億円の黒字からマイナス265億円の赤字、当期純損益は1,285億円の黒字から、マイナス469億円の赤字となった。

 8月公表の上方修正値は、売上高が3兆3,000億円、営業利益は200億円の赤字、税引前損益は900億円の赤字、当期純損益は1,000億円の最終赤字としていたが、さらにこれを改善しており、「前年同期に比べると大幅な減収減益だが、売り上げ、利益ともに修正公表値を上回り、営業利益の黒字転換を実現。第2四半期は3四半期ぶりの営業黒字となり、昨年度第4四半期をボトムに大きく回復している。徹底した経営体質の強化が成果となっており、これを受けて、年間業績見通しを上方修正する」とした。

 経営体質強化への取り組み成果としては、限界利益率として、年間目標で1.0%を目標としていたものが上期実績で0.5%改善。固定費の削減では2,600億円の削減目標に対して、2,093億円の削減。これらにより、損益分岐点の引き下げは10%の目標に対して、14%の引き下げとなった。「2008年度に比べて、10%売り上げが落ちても、増益できる体質となった」(大坪社長)。

第2四半期(累計)連結決算概要第2四半期(3カ月)連結決算概要

年間連結決算見通し

 また2009年度通期の見通しは、売上高は前年比10%減の7兆円と据え置いたが、営業利益は公表値に比べて450億円増とし、前年比65%増の1,200億円、税引前損失は550億円増の400億円の赤字、当期純損失は550億円改善の1,400億円の赤字とした。営業外損失のなかには事業構造改革費用として880億円が含まれている。

 2009年度上期のセグメント別の業績は、デジタルAVCネットワークの売上高は、前年同期比24%減の1兆6,041億円、営業利益が88%減の127億円となった。

 デジタルAVCネットワークの主要ドメイン別では、AVCネットワークス社の売上高が26%減の8,023億円、営業損益が329億円の赤字。パナソニックモバイルコミュニケーションズの売上高が21%減の1,659億円、営業利益が54%減の97億円となった。

 テレビの販売金額は、前年同期比18%減の4,658億円。そのうち、プラズマテレビが19%減の2,587億円、液晶テレビが13%減の1,720億円となった。デジタルカメラは、18%減の1,041億円。BD・DVDレコーダーは4%減の619億円、そのうち、BDレコーダーおよびBDプレーヤーは50%増の446億円。ビデオムービーは34%減の325億円となった。

パナソニック・上野山実取締役

 「映像・音響機器、情報・通信機器ともに大幅な減収となり、営業利益は黒字を確保するものの減益。だが、第2四半期ではすべてのドメインで黒字転換し、利益率は3.2%と大幅に改善した」(パナソニック・上野山実取締役)という。

 アプライアンスの売上高は17%減の5,671億円、営業利益が38%減の290億円。エアコンが全世界で天候不順の影響により落ち込んだが、国内はエコポイント制度で401リットル以上の冷蔵庫が好調。

 デバイスの売上高は27%減の4,911億円、営業利益が97%減の13億円。販売は減収となったが、ノートPCや液晶テレビなどの伸張を受けて受注、出荷ともに回復基調にあるとした。

 電工・パナホームは売上高が17%減の7,737億円、営業利益が88%減の42億円。その他事業の売上高は25%減の4,461億円、営業利益は93%減の21億円となった。

 なお、2009年度上期の地域別売上高は、日本が16%減の1兆7,760億円、米州が27%減の4,246億円、欧州が24%減の3,531億円、中国が24%減の3,762億円、アジアが12%減の4,034億円となった。日本の構成比が前年同期の49%から53%に上昇した。「すべての地域で減少しているが、第1四半期に比べて、第2四半期は改善している」(パナソニック・上野山実取締役)とした。

デジタルAVCネットワークアプライアンス電工・パナホーム
デバイスその他グローバル 地域別販売概要

■ 三洋のTOBについて、「山の頂が見えつつある」

新中期計画の策定

 さらに、大坪文雄社長は、2010年度からスタートする次期中期経営計画についての基本的な考え方についても触れ、「2018年度の創業100周年にエレクトロニクス企業として、世界ナンバーワンの環境革新企業を目指すうえで、2012年度を最終年度とする新たな中期経営計画は世界ナンバーワンへの基盤づくりとなる。環境貢献と事業成長の一体化のほか、国内中心から脱却した徹底的なグローバル志向、既存事業偏重ではないエナジーなどの新領域への取り組み、単品志向からソリューション・システム志向への展開といった大胆なパラダイム転換を行ない、これまでとは異なる非連続な施策を打ち出す。また、成長をベースとした収益力強化に取り組み、2012年度には成長力溢れるパナソニックを目指す」とした。

 現在取り組んでいる中期経営計画「GP3計画」は、最終年度となる今年度で10兆円の売上高を目標にしていたが、7兆円に留まり大幅な未達となる。「計画に対して大きな数値の乖離があることは認識しており、サムスンとは成長力や勢いにも大きな差がある。だが、CO2の削減目標では30万トンの削減目標に対して、50万トンの削減を達成した。すべての数値が未達ではなく、そこは評価したい」などと述べた。

シナジー領域への取組み加速

 また、三洋電機のTOBについては、「米国、中国で審査が進行中であるが、山の頂が見えつつある。最後のところなので慎重に頂まで辿り着きたい。独禁法当局が詳細な品目でどこまでやるのかすべてを想定していたわけではないが、簡単に行くとは思わないと考えていた。創エネ、蓄エネ、省エネとこれらを一体化したエネルギーマネジメントシステムにおいてシナジー効果が期待でき、家まるごと、ビルまるごとの提案が可能になる。競争法に抵触しない範囲で準備を進めており、TOBが完了すれば、一気にに進められる準備がある。次期中期計画では、間違いなくシナジー効果を描ける」とした。



(2009年 10月 30日)

[Reported by 大河原克行]