ソニー第3四半期決算発表。営業利益は1,461億円に
-テレビは70億円の黒字。PS3は2010年逆ザヤ解消へ
ソニーは4日、2009年度第3四半期業績を発表した。売上高は、前年比3.9%増の2兆2,379億円。営業利益は1,461億円で黒字転換した(前年同期は180億円の赤字)。税引前利益は86.4%増の1,239億円、純利益は660.6%増の792億円
大根田伸行 代表執行役 副社長 CFOは、「年末商戦がおおむね好調に推移したこと、費用削減効果が出てきたこと、および金融ビジネスが大幅に収益改善したことから、前年同期から大幅に改善できた。セグメントについても『その他』を除き全分野で改善した」と、好調だった四半期決算を報告。
これに合わせて通期の業績予測も上方修正。売上高は当初予測通りの7兆3,000億円だが、営業利益は300億円改善し、マイナス300億円。純利益も300億円改善のマイナス400億円とした。
第3四半期連結業績 | 2009年度通期連結業績見通し | 年間見通しの修正内容 |
■ CPDは減収も大幅収益改善。テレビは今期黒字化
大根田伸行 代表執行役 副社長 CFO |
テレビやデジタルイメージング、オーディオ・ビデオ、半導体などが含まれているコンスーマプロダクツ&デバイス(CPD)分野については、売上高が前年同期比10.7%減の9,698億円、営業利益は494億円(前年同期は198億円の赤字)。
価格競争の影響を受けて液晶テレビ「BRAVIA」が減収となったほか、ゲーム向けのLSIや光ピックアップなどが減収となっている。一方で、販売管理費の減少や、売上原価率改善、為替のプラス影響などにより営業利益は増加。コスト削減の効果が大きかったのは、テレビやデジタルカメラ「サイバーショット」など。
CPDの業績概要 | CPDの営業利益増減要因 |
テレビ事業は減収増益。中国や日本での販売が増加したものの欧州での販売が低迷し、液晶テレビの当期販売台数は540万台。売上高は前年比8%減の3,420億円となった。ただし、営業損益は約480億改善し、70億円の黒字となった。事業構造改革により、コスト構造が大幅に改善したことが大きな要因となる。
黒字化の要因はコスト改善のほか、年末商戦期で販売台数が増えたこと。さらに価格についても「今期は想定していたほど値段を下げずに済んだ(大根田CFO)」と説明。100~200億円程度のプラス効果があったとする。
2010年度のテレビ事業については「今期の目標は1,500万台だが、来季はモデルの商品力に自信があるので、2,000万台以上を売っていきたい。今年は商品力でSamsungに出遅れたが、今はLEDバックライトやIPTV、3D、デザインなど、いろいろな商品力を強化した。来季は数を上げていきたい。新興国でもOEM、ODMを使って数を伸ばしていく」とする。
さらに、来季のテレビ黒字化については、「2,000万台となると、月に大体200万台弱で、今四半期と同じぐらいの数になる。今の限界利益で黒字になっているので、数的には2,000万を超えれば、黒字の可能性は高い。もちろん価格下落はあるが、それに見合うコストダウンの努力をやるのを前提で、数、商品力を上げて、来年の黒字化は十分に狙えると考えている」とした。
デジタルカメラは、減収/増益。販売台数は増加したが価格下落の影響で減収となった。ただし、費用改善により利益は増加。利益率は前年同期を上回った。当期の販売台数は650万台。
ビデオカメラは、減収/減益となった。HDフォーマット移行は進んでいるが、市場が縮小しているため台数減となった。ただし、「引き続き高い利益率を確保している(神戸司郎 広報センター長)」という。
■ PSP不調も、PS3は2010年逆ザヤ解消へ。VAIOは全体的に好調
NPSの業績概要 |
ゲームやパソコン「VAIO」、ネットワーク対応ウォークマンなどが含まれるネットワークプロダクツ&サービス(NPS)分野は、売上高が前年比1.9%増の6,061億円、営業利益は194億円で黒字化している(前年同期は59億円の赤字)。VAIOの売上増などが増収に寄与している。
ゲーム事業の売上高は前年同期比4%減の3,790億円。PlayStation 3のハードウェア/ソフトウェアは売上増となったものの、PS2のハード/ソフトやPSPのハードの売上減となったため、全体では減収になっている。ゲームの営業利益は前年同期比で5億円減の155億円となった。
PS3は、新型好調や年末ビッグタイトルの販売などで販売台数は650万台となり、年間1,300万台に向けて順調に推移しているとする。PSPは、ハードウェアの今期販売が420万台で、発売以来累計は6,000万台を超えた。ただし、「上半期の遅れを年末商戦で取り戻す予定だったが、期待ほど数量が伸びなかった」ため、通期の予想を500万台減の1,000万台に下方修正した。
PS2の今期販売台数は210万台。「新興国で底堅い需要がある」としハードの通期販売予想を200万台増の700万台に上方修正している。なお、プレイステーション向けソフトウェア全体では、当初通期見込みの2億4,000万本から、2億本に下方修正している。
PlayStation Networkは、欧州でのビデオ配信などの強化を図っており、アカウント数も4,000万を突破。新しいネットワークサービス「Sony Online Service」でのビデオ配信についても、テレビ、BDプレーヤー向けストリーミングを米国で2月に、日米欧でPC向けダウンロードサービスを順次展開する。
ゲームが収益改善しているものの、売上が予想を下回った点について、大根田CFOは「ひとつは『グランツーリスモ 5』が遅れたというインパクトが大きい。2番目はPSPのハード/ソフトが予想ほど出なかった。これは、ソフトやネットワークコンテンツをいかに用意するかということに尽きると思っている。今後の課題と思っている」と言及。
ゲーム事業の通期黒字転換については、「一番重要な要素は、PS3の逆ザヤ(生産コストが販売価格を上回る状態)解消。PS3は今後1年かけて15%程度のコスト削減を見込んでいる。今の逆ザヤ分が6%強なので、このコスト削減が実現できれば、数百億円の改善になる。後はこれにプラス、ソフトやハードをいかに伸ばしていけるかというところ」と説明した。
VAIOは全ての地域で好調で増収増益。電子書籍「Reader」は、「年末商戦が非常に好調で前年実績を大幅に上回った」とする。
Readerなど、電子ブックの今後の展開について大根田CFOは、「今年のマーケットはグローバルで、約400~500万台ぐらいとみている。それをシェアするのは(Amazonの)Kindleと、Readerで、我々は100万を超える台数を狙う。来年、再来年と2倍、3倍に伸びていく。iPadなどの競合も増えてくるだろう」と言及。iPadについては、「iPadの位置付けは、KindleやReaderなどの“eBook”と“ネットブック”などの中間だと思う。多くの競合が入ってくる領域だと思うので、PCやネットブックへの影響もあるだろうが、新しいマーケットを作りだすという要素も大きい」と分析。さらに「ソニーもこの領域に興味は持っているし、技術力も持っている。加えて、(PSN)4,000万アカウントのネットの繋がりもある。これとハードを組み合わせて、我々としても開拓していく。多少iPadより遅れているかもしれないが、この領域はわれわれも積極的に開拓していきたい」と語った。
B2B & ディスク製造の業績概要 |
B2B & ディスク製造事業は、売上高が0.5%減の1,435億円、営業利益が21.5%増の101億円。ディスク製造は、BDの好調により増収となった。一方、B2B事業は先進諸国での事業環境悪化により、放送、業務機器の売り上げ減により減収となった。ただし、事業全体としてはディスク製造の好調により、営業利益の増加につながった。
放送機器関連では、固定費削減に努めるとともに、今後は新興国への拡大を進める。さらにソリューションビジネスの拡大も予定。デジタルシネマプロジェクタは北米の大手チェーンとの協議が進行中。3Dについては、放送局との協力し、3D中継車の開発やソリューション提供を進めているという。
映画分野では、売上高が前年同期比16%増の2,032億円、営業利益が同9.1%増の141億円となった。劇場(映画)、映像ソフト、テレビのいずれも増収となり、劇場においては「2012」と「マイケルジャクソン THIS IS IT」が売上貢献。ソフトは、「天使と悪魔」と「ターミネータ4」が売上拡大に繋がった。
音楽は、売上高が前年同期比2%増の1,635億円、営業利益が同8.2%増の231億円となった。売上貢献作品はスーザン・ボイルの「I Dreamed A Dream」や、「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」サウンドトラック、日本ではいきものがかりの「ハジマリノウタ」など。金融は主にソニー生命の増収により、大幅に増収。売上高は99.5%増の2,056億円、営業利益は350億円となった。
持ち分法提供会社のソニー・エリクソンは、売上高が40%減少の17億5,000万ユーロ、営業損失が1億8,000万ユーロとなった。前年同期(損失2億5,600万ユーロ)からは収益改善しているものの、世界携帯市場の縮小や、中位価格帯におけるタッチスクリーン対応端末シフトの加速による販売減が響いたとする。販売台数は前年同期比40%減の1,460万台。今期のソニー持分への影響額は102億円。
映画の業績概要 | 音楽事業の業績概要 | ソニー・エリクソンの業績概要 |
好調な四半期決算を受けて、2009年度通期の業績予測も、営業利益、純利益をそれぞれ300億円上方修正。営業利益はマイナス300億円、純利益マイナス400億円としたが、大根田CFOは、「1月の実績を見ると、我々の予想通りか若干いい数字が出ている。多少の景気の底打ち感みたいなものは感じている。ブレークイーブンを達成できる可能性も残っている」と、さらなる上方修正の可能性も示唆した。
また、トヨタのリコール対応の遅れなどが話題となっている中、ソニーの品質管理や危機対応についての質問も行なわれた。大根田CFOは「我々も過去にバッテリの大規模なリコールなどがあった。それを契機に、大きな問題は、48時間以内にトップまで報告が来る体制を作り、すぐにアクションを取る体制を作っている。過去の経験もあり、今はいい方向に動いていると思う」と説明。神戸広報センター長も「設計、部品調達も含めて、高い品質、安全なものを作るということが基本だが、万一の場合、不良に対し、いかに早くアクションできるかを徹底している。透明な形で早くアクションを起こす体制はきちっと出来てきたと考えている」と語った。
(2010年 2月 4日)
[AV Watch編集部 臼田勤哉]