3DテレビとiPadの初速は好調、市場に変化も。BCN発表

-「40型が3D普及を握る」。ネット販売のデータも集計


BCNの道越一郎アナリスト

6月9日発表


Amazonなどネット販売のデータも新たに加えられている

 BCNは9日、家電量販店などのPOSデータ集計を元に、3DテレビやiPadなどの新しい製品が市場に与える影響についての分析結果を発表した。

 この市場分析は、家電量販店など全国23社、2,365店舗(2010年5月現在)のPOSデータを集計したBCNのデータをもとに行なっている。データの基準は、これまでリアル店舗中心(標準パネル)だったが、今回からはAmazonなどを中心としたネット店舗のデータも加味した形(時系列パネル)で前年同月比などを算出している。なお、発表データ内の金額は全て税抜きとなる。



■ 3Dテレビと3D市場

3D市場に対するBCNの分析

 BCNの道越一郎アナリストは、3Dテレビについて、直近である5月31日~6月6日の売上データを元に「発売されたばかりで構成比は少ないが、先行したパナソニックに加え、ソニーも前倒しで販売を開始したこともあり、金額で3%、台数で0.9%となった。初速としてはまずまずの出だし」とコメント。

 3Dテレビは、3D非対応テレビに比べ単価がまだ高く、割高感が根強いことを指摘したが、今後シャープも含め各社が発売する「40型モデルが3Dの普及を握るサイズになる」と見ている。

 また、レコーダの3D対応モデルを見ると、立ち上げ初期の段階であるだけに、5月の台数比率は1.3%とごくわずかだが、テレビに比べると割合は高い。

 3D市場全体としては、まずテレビが「プラットフォーム」として普及することで、レコーダやパソコンなど他の製品にも波及するとし、そのためにはテレビが「販売台数構成比で少なくとも2~3割、できれば5割程度を保つことが必要」との見方を示した。

 一方、普及に対する懸念としては、まず価格面において、アナログ放送が終了する2011年7月以降の“冬の時代”に備えコストダウンが必要であることを指摘。「(3D非対応モデルに比べ)2割~3割増しが妥当だと思うが、それに追いつくにはいつになるかがポイント」と述べた。

 そのほか、普及に十分なコンテンツ量の確保、子供の視聴など健康面での問題、地デジ移行したばかりの層に買い替えを促すことの難しさ、メガネを掛けることのわずらわしさなどにも言及。「裸眼3Dテレビの登場が本格普及の条件」とした。

3Dテレビと従来のテレビの価格差台数割合では0.9%、金額では3%となった3D対応レコーダの台数比率は1.3%


■ テレビはエコポイント反動も。20型前後の小型モデルが好調

 薄型テレビ全体の販売動向では、3月の「エコポイント特需」の反動もありながら、4月以降は例年並の水準に落ち着いたと見ている。なお、'09年5月はエコポイント制度が始まった月だったこともあり、'10年5月は金額で前年比マイナスに落ち込んでいる。

 液晶/プラズマの構成比は5月は94.7:5.3。3月以来、液晶が95%前後の割合で推移している。5月の液晶の台数は前年同月比124.9%ながら、金額ではマイナス3.9%となり、平均単価も77,200円に落ち込んでおり、これがテレビ全体のマイナスに影響している。また、プラズマは4月に続き台数/金額ともに約2割のマイナスとなり、平均単価は166,500円と上昇傾向にある。

 サイズ別で見ると、これまで市場を牽引してきた30型台の伸び率が台数では1桁台に後退し、金額ではマイナスに転じている。構成比では、2月以来40%を割り込み、5月は35.8%となった。一方、20型前後の小型モデルは堅調で、「3月は新生活などで小型モデルが売れるのが普通だが、その戻りが鈍い(売れ続けている)」という。平均単価の下落率では、30型台が24.6%と、他のサイズに比べ最も落ち込んでいる。

 液晶テレビのLEDバックライトの搭載率は2月以降上昇を続け、5月には25%を超えた。消費電力の低下も進んでおり、5月のデータでは平均消費電力が111.4W。

エコポイント制度と薄型テレビ販売台数の推移(左はBCN指数、右は台数の週次データ)
薄型テレビの販売台数、金額と、平均単価、液晶/PDPの構成比液晶テレビ、プラズマテレビそれぞれの台数、金額の前年同月比と平均単価台数や金額の指数、平均単価の推移
画面サイズ別の伸び率画面サイズ別の比率と単価下落率液晶テレビのLEDバックライト搭載率

 機能面での特徴では、録画機能搭載モデルが上昇傾向にあり、HDD/BD/iVDR搭載モデルが全体に占める割合は、3月に25.8%に達した(5月は19.6%)。また、USB接続などの外付けHDDに録画できるモデルは4月に全体の4割を超え、5月は41%となった。

 地デジ搭載の液晶テレビと、地デジ搭載PCを比較すると、台数比率(5月)ではテレビが85.1%、PCが14.9%と大きな差があるが、「録画対応」に限るとPCが89.2%、テレビが10.8%となる。

録画対応テレビの構成比「テレビ視聴」「録画機能」で見る薄型テレビとデスクトップPCの台数比率

 メーカー別では、台数シェアトップのシャープが、'09年末の下落傾向から持ち返し、4~5月にかけて上昇、4割台に復帰。他の上位4社はいずれもシェアをわずかに落としている。これは、4社の製品の単価が上昇傾向であるのに対し、シャープのみ低価格を維持していることが大きいな要因とBCNでは分析している。

 メーカーごとにサイズ別の伸び率('09年5月と'10年5月)を見ると、東芝は40型台、50型以上で大きく伸ばしているだけでなく、20型未満の小型サイズも好調。シャープも40型以上のモデルを中心に伸長し、パナソニックは50型以上と20型未満で前年を上回った。ソニーは20型台以外は前年割れとなっている。

メーカーシェア、メーカー別単価メーカー別の画面サイズ伸び率と単価


■ レコーダはBD対応が7~8割。容量は平均500GB

レコーダの販売台数/金額前年同月比

 BD/DVDレコーダは、テレビの落ち込みの影響を受けながらも、台数では8カ月連続で2桁増を維持。5月は台数が前年同月比119.4%、金額は同106.3%となっている。平均単価は過去3年では最低水準で、「DVDからBDへの移行で価格は上がったが、その効果が消え始めている」(道越氏)としている。

 BDレコーダとDVDレコーダの割合は、BDが台数では74.0%、金額では84.2%と、台数で7割前後、金額で8割前後を維持している。レコーダのHDD容量は、平均500GBで推移しており、地デジ搭載PCの1/2程度となっている。

 メーカー別シェアでは、BDレコーダにおいてシャープとパナソニックが首位を競う状況が続いており、5月はシャープが31.8%、パナソニックが31.4%。一方、BDでは後発となった東芝が参入以来シェアを上げ、5月は7.3%。レコーダ全体のシェアでも上昇傾向にある。道越氏は「東芝は秋にラインナップを揃えるといわれており、(シャープ、パナソニック、ソニー、東芝の)4つどもえの争いになることが予想できる」とした。


レコーダ全体の販売台数/金額の指数と、平均単価BDレコーダとそのほかのレコーダの構成比メーカー別台数シェア。左がレコーダ全体、右がBDレコーダ
レコーダと録画対応テレビの台数比較。左が'08年5月を基準とした指数、右が構成比

 録画対応テレビとレコーダの販売台数について、'08年5月を1.0とした指数で比べると、5月はテレビが4.8、レコーダが8.1となった。台数構成比でも5月はレコーダが62.7%、テレビが37.3%と主流はレコーダだが、テレビの割合もわずかながら上昇にある。

 録画対応テレビについては、20型前後の小型モデルにも浸透する傾向があり、録画対応テレビをサイズ別の台数構成比で見ると、3~5月に小型モデルが割合を伸ばしている。

 なお、6月にはFIFAワールドカップ南アフリカ大会が始まるが、同様にドイツ大会があった'06年と同様、テレビについては大きな影響はないと分析している。しかしながら、時差の影響などで期待されるレコーダの売上が、テレビに比べ若干伸びる傾向が見られる。


録画対応テレビは小型モデルにも浸透する傾向にレコーダの平均容量は約500GBサッカーワールドカップとテレビ/レコーダ売上の推移


■ iPad/スマートフォンとPC市場

iPadなどのタブレット型端末に関する分析

 国内では5月28日から販売が始まったiPad。BCNのデータでは、iPhone 3Gの発売当日の売上と比較するとiPadが約3倍となったことから「初速はいい状況」と見ている。道越氏はiPadについて「タッチパネル」、「板状形」(タブレット型)、「Wi-Fi & 3G」、「大きさ」の4つの要素でPC市場に変化をもたらすと指摘。新たなユーザーインターフェイスによりユーザー、コンテンツプロバイダ、ハードウェアメーカーそれぞれに恩恵がもたらされるとした。

 一方で、普及に向けた懸念としては、国内では電子書籍の市場が形成されないままの発売となったこと、(アプリによって)操作感の統一性がないこと、回線利用料の高さなどを挙げた。また、他社による対抗製品の完成度の高さも、市場全体の拡大には不可欠とした。

 なお、iPadは分類上、ノートPCのカテゴリに入っている。ノートPC市場における変化としては、メーカー別シェアで、アップルが5位から4位に浮上(11.5%)したほか、タイプ別の台数構成比において、スタンダード/スタンダードモバイル/ネットブックの3カテゴリからシェアを奪う形でiPadなどの「その他」(シャープのNetWalker PC-T1などを含む)が8.2%を占めた。さらに、ノートPCにおけるタッチパネル対応の比率が、4月の1.1%から5月には9.2%に上昇し、そのうちiPadなどの「ピュアタブレット型」が、他を大きく引き離す91.3%を占める結果となった。

 iPad売上の初速を、iPhoneやXperiaなどのスマートフォンと比べると、iPadはiPhone 3G/3GSの時の2~3倍となった。また、iPadの機種別台数構成比では、Wi-Fi + 3G搭載/64GBメモリ内蔵の最も高価なモデルが35.2%(発売から10日間の合計)で、最も多く売れるという結果になった。なお、この数値は前述の通り量販店などのデータのため、Apple Storeやソフトバンクショップでの数は含まれていない。

 iPhoneなどのスマートフォン市場について説明したBCNの森英二氏は、これまでの台数指数('07年5月を基点)と台数構成比のデータを元に「新しい製品が出ると売れるが、それが長くは続かない傾向にある。しかし、(6月24日に発売される)iPhone 4Gの登場で、スマートフォン市場が盛り上がるのは必至。auも今月に2機種を投入することで、よりいっそう盛り上がるのでは」との見方を示した。一方で、SIMロックフリー化の動向などの要因を挙げ「スマートフォン市場は拡大していくが、携帯電話市場全体の先行きは見えづらい」とした。

iPadと、スマートフォン各製品の売上の初速を比較iPadの影響で、ノートPCにおけるタッチパネル搭載率に変化森英二氏
スマートフォン市場のこれまでの推移(台数指数/台数構成比)そのほかの製品ジャンル。パソコン(ノート/デスクトップ合計)の販売台数/金額の前年同月比や、デスクトップ/ノートの構成割合ノートPCは4月以降前年比プラスに転じた。デスクトップはプラスを維持
デジタルカメラ。分類方法は、「レンズ一体型」と「レンズ交換型」の2つに変更されたミラーレスの勢いなどで、「レンズ交換型」は高い伸びを続けているレンズ交換型のメーカー別シェアとモデル別の販売台数ランキング


(2010年 6月 9日)

[AV Watch編集部 中林暁]