三菱、23型IPSパネルの液晶ディスプレイ「MDT231WG」

-実売約12万円。LEDバックライト制御/倍速補間対応


23型のPC用ディスプレイ「MDT231WG」

 三菱電機は、IPS液晶パネルとLEDバックライト制御、120Hzの倍速駆動と補間技術を組み合わせ、動画やゲームの表示機能を高めた23型のPC用ディスプレイ「MDT231WG」を11月30日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は118,000円前後。

 同社VISEOブランドの新モデルで、ノングレア処理の23型液晶パネルを採用。解像度は1,920×1,080ドット。IPS方式の液晶パネルを採用しており、視野角は上下左右178度。輝度は350cd/m2。コントラスト比は900:1で、CRO(コントラスト・レシオ・オプティマイザー)動作時は5,000:1。

 「ゲームに深い関心と高いスキルを持っているお客様に、圧倒的なご満足をいただくために作った」というヘビーユーザー向けのモデルで、動画表示やゲーム表示に適した機能を備えているのが特徴。


側面背面

 IPS液晶パネルのバックライトは、エッジライト(両サイド配置)の白色LEDで、PC用液晶ディスプレイとしては業界初というLEDバックライト制御技術を搭載。ブラウン管のようなインパルス型に近い動画表示性能を得るために、映像のフレームの中で一瞬だけバックライトLEDを点灯し、残像感を抑えた表示を行なう「LEDバックライトブリンキング」が行なえる。

「LEDバックライトブリンキング」の解説ブラウン管のインパルス型、通常の液晶のホールド型、LEDバックライトブリンキングの比較。バックライトをある期間だけ点灯するため、前のフレームの残像が網膜上で重ならず、残像感を感じない

 さらにLEDバックライトの光らせ方で、上下方向にスクロールするように黒帯を表示する「LEDバックライトスキャニング」にも対応。また、パネル駆動は120Hzの倍速駆動で、単純な表示の2度描きができるほか、前後の画像から予測して新しい画像をディスプレイ側が生成して表示する倍速補間表示機能も備えている。IPS方式のPC用液晶ディスプレイで120Hz駆動倍速補間技術を搭載するのも業界初。

 最大の特徴は、これらの機能を組み合わせた動画ブレ抑制技術「MP ENGINE III」を採用する事。動作モードとして以下の3つのレベルを用意しており、前述の機能を組み合わせ、表示する映像やゲームの種類によって使い分ける事ができる。

MP MODE倍速補間効果推奨ゲームの例
レベル3LEDバックライトブリンキング残像感低減と
表示遅延抑制を両立
バランス重視
スポーツ
レーシング
アクション
レベル2LEDバックライトスキャンニング
+
120Hz駆動倍速補間
動画のなめらかさ重視ロールプレーイング
アドベンチャー
レベル1LEDバックライトスキャンニング表示遅延抑制重視シューティング
(FPS含む)
音楽ゲーム

 「レベル3」はLEDバックライトブリンキングを使うモードで、輝度は通常時の350cd/m2から約1/3程度に低下するものの、残像感を抑えた表示が行なえ、表示遅延も抑制できる事から、スポーツゲームやレーシングゲーム、アクションゲームでの使用を推奨。動画ボケに注目した指標である動画応答時間(MPRT)は、一般的なTN型ディスプレイは22ms程度、オーバードライブ有で13~15ms、ブラウン管で2~4msのところ、「MDT231WG」では5.5msを実現している。通常の応答速度(グレー to グレー)値は5ms。

 「レベル2」はLEDバックライトに黒帯を上下スクロールするように表示するLEDバックライトスキャニングと120Hz駆動倍速補間を組み合わせたもので、三菱では「240Hz相当の駆動」と表現している。映像の滑らかさを重視した動作で、時間をかけてプレイするRPGやアドベンチャゲームを推奨。

 「レベル1」はLEDバックライトスキャニングのみ使うモードで、120Hz駆動だが単純な2度描きとなる。残像感を抑えつつ、表示遅延が少ないのが特徴で、FPSを含むシューティングゲームや音楽ゲームでの使用を推奨している。

レベル2の、LEDバックライトスキャニングと120Hz駆動倍速補間の説明レベル1では、LEDバックライトスキャニングと120Hz駆動のみを使う
画像処理専用LSI「ギガクリア・エンジンII」の新機能

 画像処理専用LSI「ギガクリア・エンジン」も「ギガクリア・エンジンII」に進化。従来の局所コントラスト補正、ダイナミックコントラスト補正、ノイズリダクション、色変換、階調数拡張処理などを踏襲した上で、「新超解像技術」を投入。超解像処理を行なう際に、ちらつきが発生しやすい箇所を自動的に検知し、超解像処理を部分的に抑えることで、より自然な解像感が得られるという。

 さらに、解像度判別機能も追加。入力解像度に合わせて、超解像レベル、ブロックノイズリダクション、エリアコントラストの各調整範囲を自動的に設定。解像度が低いものには強く、もともと高解像度の映像では処理を弱くするといった処理を自動で行なう。

 ダイナミックコントラスト機能とエリアコントラスト機能を組み合わせることで、全体のコントラスト感を向上させながら、映像の細部のコントラストもしっかりと表現する「エリアコントラスト」機能も備えている(LEDバックライトのエリア駆動とは異なる)。

TN方式のパネルを使った従来モデル「RDT231WM」と、側面からの見え方を比較。写真の手前が新モデル「MDT231WG」写真の手前が従来モデル「RDT231WM」

 ほかにも、肌色を検出して人物のしわ、体毛などを強調しないように調節する機能、ネットの動画なども処理できるようになったブロックノイズリダクション技術を新たに備えている。

 さらに、付属のソフト「ギガクリア・ウインドウ」(Windows Vista/7対応)をPCにインストールすると、マウス操作で、画面の任意のエリアだけに超解像技術を適用する事が可能。




■ その他の映像技術

 シネマモードも備えており、フイルム、なめらか、OFFから選択が可能。フイルムに設定すると、毎秒24コマの映画フイルムや毎秒30コマの動きを忠実に再現。「なめらか」では、前後のコマから予測した新しい4コマ(30コマ時は3コマ)の映像を作り出して補間し、自然な動きを実現するという。

 PinP(子画面表示)も可能で、2系統のデジタル入力を画面に表示できる。例えば、PCの画面(DVI-D入力)と、BDレコーダからのビデオ映像(HDMI入力)を親子画面で表示したり、ゲーム機のHDMI入力映像を表示させつつ、PCを小画面表示して攻略サイトを見るといった使い方もできる。子画面の表示位置やサイズは変更可能。

 入力端子はDVI-D(HDCP対応)、HDMI×2系統、アナログRGB(ミニD-Sub 15ピン)、D5、S映像、コンポジットを用意。3次元IP変換回路も備え、480i、1080iのインターレース信号もちらつきの無い表示ができる。なお、HDMI 1とHDMI 2、およびミニD-Sub 15ピンとD5端子を組み合わせたPinPには対応しない。

側面のHDMI入力端子アナログRGBの入力などは下側に備えているパネルを外すとコンポジットやS映像入力、D5入力などが現れる

 画面サイズは「フル」、「アスペクト」、「2×ズーム」と、入力サイズをそのまま表示する「リアル」から選択可能。プレイステーション・ポータブルなど、携帯用ゲーム機の信号をフル画面で表示する「ポータブル」も用意する。ほかにも、倍速補間や3次元ノイズリダクションなどの各機能をOFFにすることで、入力信号の表示遅延を最小に抑える「スルーモード」も使用できる。

表示モードを切り替えると、右上にMPモード名などが表示される画質設定画面。細かな設定が可能だ表示サイズのカスタマイズ画面。ポータブルゲーム機用のモードも備えている


■ スタンドとスピーカーにもこだわり

 画面を縦向きにできる「リフティングターン」機構を新たに採用。特徴は、前面下部に備えているスピーカーやコネクタ端子の位置をそのままに、画面部を縦方向にできる事で、縦型のシューティングゲームも快適にプレイできるという。

 スピーカーは前面下部に3W×2chのステレオユニットを、液晶裏の支柱の部分に5Wのサブウーファを搭載。画面を縦位置にしてもサブウーファの位置が変わらず、デスクに近い位置で固定されているため、縦位置利用時でも迫力ある低音が楽しめるという。

縦向きに切り替えたところ前面下部に備えたステレオスピーカー液晶裏の支柱にサブウーファを搭載。液晶を縦向きに移動させている場合も、前面下部のスピーカーやサブウーファの位置が変わらない事に注目
付属のリモコン。MPモードの切り替えもボタン1つで行なえる

 音声入力はステレオミニ×2系統、RCA×2系統を装備。HDMIから入力した音声を出力できる光デジタル出力も備えている(5.1chサラウンドは非対応)。ほかにも、デジタル/アナログ音声をアナログで出力できるステレオミニを1系統、ヘッドフォン出力も1系統備えている。

 消費電力は79W。スタンドは上20度、下5度のチルトと、70度のスイーベルが可能。液晶を横にした場合のみ約60mmの高さ調節が可能。スタンドを含む外形寸法は543×226×447mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約11kg。リモコンが付属する。




■「こだわりユーザーの市場で50%のシェア目指す」

 リビング・デジタルメディア事業本部の田村直己デジタルメディア事業部長は、三菱のディスプレイ事業の基本方針として、オンリーワン製品の投入やコストパフォーマンスの追求により、個人用PCディスプレイに代表されるマルチメディア事業を中心に、グラフィック事業、デジタルサイネージなどのパブリックディスプレイ事業を強化していく姿勢を説明。

 さらにマルチメディア事業においては、HDMI端子を備えたモデルの、企業向けを除いた、個人向けの店頭市場の規模を09年度で51.4万台、10年度で66万台と推測。その66万台の中で、40%程度が動画画質にこだわるユーザーの市場と推定。「このこだわりのユーザー様の半分に、なんとか三菱の製品をご愛顧いただけないかと考えている」と語り、この市場で50%のシェア獲得を目標として掲げた。

リビング・デジタルメディア事業本部の田村直己デジタルメディア事業部長動画画質にこだわるユーザーの市場において、50%のシェア獲得を目指す会場では従来モデルと比較し、ゲームにおける動画ブレの低減をアピールするデモが行なわれた
リビング・デジタルメディア事業本部デジタルメディア事業部の村田光司モニター事業センター長

 なお、新モデルで採用している機能の多くは、液晶テレビにも投入されている。リビング・デジタルメディア事業本部デジタルメディア事業部の村田光司モニター事業センター長は、PC用ディスプレイならではの特徴として、「(これらの機能を)かなりきめこまやかに組合わせ、ゲームのパターンに応じてモードを用意したところ」と説明。

 また、コアなPCゲーマーでは、専用のスピーカーを用意しているユーザーも多いと考えられるが、あえてスピーカーに注力した事については、「本当にコアな人は専用のスピーカーやヘッドセットを使っていると思うが、そういうユーザー以外に少しでも裾野を広げて、幅広いお客様に訴求していきたいと考えた」という。

 また、3D表示については「将来的には備えたい機能と考えており、今後も色々な機能をウオッチしていきたい」とした。


(2010年 11月 16日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]