東芝、2010年度のテレビ事業は黒字を引き続き維持

-液晶TVは1,800万台、ノートPCは2,200万台出荷


 東芝は、2010年度(2010年4月~2011年3月)連結決算を発表した。連結売上高は前年比2%増の6兆3,985億円、営業利益は92%増の2,403億円、継続事業税引前純利益は前年同期の468%増の1,955億円、当期純利益は197億円の赤字から、1,378億円の黒字に転換した。

 村岡富美雄代表執行役副社長は、「売上高は、円高および東日本大震災の影響はあるものの、デジタルブロダクツ、電子デバイスを中心に対前年比で増収。営業利益はデジタルプロダクツ、電子デバイス、社会インフラ、家庭電器の全主要事業で黒字。とくに電子デバイスが大幅に改善している。金融危機前の利益水準にまで回復している」と総括した。

 また、「東日本大震災によって、売上高で約700億円の影響があり、為替への影響も加えると、全体では7%の増収になっている」と試算した。営業利益では震災で200億円の影響があったとみており、「この影響がなければ、1月31日に公表した2,500億円の営業利益を超え、2,600億円規模に達していた」と振り返った。



■ テレビ事業に加え、パソコン事業も黒字

東芝本社

 セグメント別では、デジタルプロダクツの売上高が前年比3%増の2兆3,286億円、営業利益は81億円減の132億円となった。「液晶テレビ、パソコンの伸張により増収となったものの、HDDや光ディスク装置といった記憶装置が市況悪化などにより100億円台の赤字になり、全体として減益になった」としたほか、「液晶テレビ事業に関しては、エコポイント制度の効果があった国内市場が大幅に成長して、台数では40%増を超える伸びとなった。新興国向けも伸張しており、液晶テレビは、引き続き黒字を維持している」とした。

 パソコンに関しては、売上高が前年比3%増の9,174億円、営業利益は189億円増の101億円と黒字転換。「パソコンは、米国、アジア、日本を中心に販売台数が15%増加し、金額でも3%増となった。増収の影響と、継続的な原価低減活動に加えて、原材料価格の下落などによって大幅に改善し、前年の赤字から、3桁の黒字化になった」とした。ノートPC発売25周年記念モデルの投入などもプラスに影響したという。

 2010年度の出荷実績は、テレビが約1,400万台、ノートPCが約1,900万台の合計3,300万台になったという。

 電子デバイスの売上高は前年比6%増の1兆3,477億円、営業利益は1,072億円改善の868億円の黒字となった。そのうち、半導体の売上高は6%増の1兆1,395億円、営業利益は641億円増加の664億円。液晶は売上高が前年比4%増の2,096億円、営業利益は462億円増の101億円。円高のマイナス要素があるものの、携帯機器などの需要拡大により、メモリ、液晶がともに好調だったという。

 半導体では、NAND型フラッシュメモリが、スマートフォンやタブレット端末向け、SSD需要の増加により増収。ディスクリートも堅調に推移している。また、液晶は、携帯端末向けを中心とした需要の増加により増収。構造改革による体質強化やコスト削減効果などにより、大幅に改善し、黒字化した。

 社会インフラの売上高は前年比2%減の2兆2,677億円、営業利益は1億円減の1,371億円となった。「電力、産業システムが堅調に推移したが、社会システム、ソリューションおよび医用システムの市場低迷や、震災の影響もあり、部門全体では横ばい。営業利益では全体では微減となったが、電力システムが好調で増益となり、この分野では引き続き高い利益水準を維持した」という。

 家庭電器の売上高は前年同期比3%増の5,998億円、営業利益は142億円増の88億円と黒字化した。「エコポイント制度の効果と猛暑による需要増加などにより、白物家電および家庭用エアコンが好調となった。増収に加えて、構造改革の効果もあり、白物家電、照明、空調のいずれもが黒字になった」という。



■ 2011年度の震災の影響は3,000億円規模に

 同社では、「的確な判断をすることは難しいが、ひとつの指針を出す必要がある」(村岡副社長)として、2011年度通期見通しを発表した。

 連結売上高は前年比9.4%増の7兆円、営業利益は24.9%増の3,000億円、継続事業税引前純利益は22.7%増の2,400億円、当期純利益は1.6%増の1,400億円とした。

 セグメント別では、デジタルプロダクツの売上高が前年比9.5%増の2億5,500億円、営業利益は68億円増の200億円。電子デバイスの売上高は前年比7.6%増の1兆4,500億円、営業利益は532億円増の1,400億円。社会インフラの売上高は前年比10.2%増の2兆5,000億円、営業利益が129億円増の1,500億円。家庭電器の売上高は前年比8.4%増の6,500億円、営業利益は12億円増の100億円とした。

 なお、パソコン事業に関しては、前年比9%増の1兆円、営業利益は10%減の90億円を見込んでいる。

 2011年度のテレビ出荷目標は29%増の1,800万台、ノートPCは16%増の2,200万台の合計4,000万台を目標にする。「被災拠点の立ち上げ、部材調達の回復、サプライチェーンの復旧、電力不足の解消などといった動きがみられること、さらに今後は悪化要因がないということに加え、復興需要および新興国市場での事業拡大などを考慮した。全セグメントでの増収増益を目指す」という。

 営業利益の3,000億円の全社目標については、上期が900億円、下期が2,100億円とした。「前年上期実績は1,048億円であり、マイナスとなる。これは年度前半には東日本大震災の影響が出るとみている。震災の影響では売上高で3,000億円、営業利益で700億円の影響があり、すべての事業に影響があるとみているが、新興国需要や復興需要、各種リカバリー策でそれらをカバーできると考えている。システムLSI生産の岩手東芝エレクトロニクスが被災し、4月18日から半分程度稼働したものの、まだ完全稼働する時期が見えない。そのため半導体事業にはマイナスが残るが、デジタルプロダクツや家電は復興需要が見込める。通期では、トータルとしては売上高、営業利益ともに、復興需要などでカバーしてゼロになるとみている」とした。

 中期経営計画では、2011年度計画として、営業利益で3,500億円を目標としていたが、村岡副社長は、「システムLSIの悪化や震災の影響などもあり、状況を厳しくみた。詳細は、経営方針説明で明らかにする」などとした。

 一方で原子力事業の業績への影響については、「短期的には業績への影響はなく、2011年度には大きく影響はしない。中長期的には売上げの減少があるが、火力などの事業でカバーする」という。



(2011年 5月 9日)

[Reported by 大河原克行 ]