シャープ、4K液晶テレビをI3研究所と共同開発

-'12年発売、CEATECで展示。4Kで自然な質感/奥行を


ICC 4K 液晶テレビ試作機

 シャープは、I3(アイキューブド)研究所と共同で60型/解像度3,840×2,160ドットの「ICC 4K 液晶テレビ」を開発。今後の実用化に向けて、共同開発を進める。10月4日から幕張メッセで開催されるCEATEC JAPAN 2011に出展する。

 映像信号処理の部分でアイキューブドの4K映像創造技術「ICC」(Integrated Cognitive Creation)と、シャープの大画面/高精細液晶技術を組み合わせ、次世代のテレビ開発を行なう。「単なる映像信号処理の高画質化だけでなく、パネル制御技術を組合せることで、人間が自然の景色や被写体を光の刺激として脳で理解する『認知』の過程を、映像による光の刺激として再現。遠近感のある風景や人物の立体感、質感などを自然界に近い状態で画面上に表示し、新たな映像体験を視聴者に提供する」としている。


ICC 4K 液晶テレビ試作機
ICC LSI

 CEATECには60型/3,840×2,160ドットのICC 4K液晶テレビを出展。60型超の大画面テレビを想定して、両社で共同開発を進め、「2012年度中ごろの製品化を目指す(シャープ 寺川 AVシステム開発本部長)」という。

 ICC技術では、「目で対象物を追い、ピントを合わせ、脳内で合成する」という自然界の風景を見ているのと同じような認知の流れを、ディスプレイでも実現することを目指す。フルHD撮影時のカメラのレンズによるボケ感などを補正し、どこを注視してもフォーカスがしっかりと来ているように見え、解像感も向上。また、自然な奥行感も特徴で、「見ていて疲れない映像になる」とする。

 I3では、光の検出やコントロールなどで独自の技術を組み込んだICC技術による映像創造を行なうLSIを開発。今回のテレビの共同開発では、LSIやICC技術だけでなく、液晶パネルや駆動技術などについても、シャープとI3研究所が相互に協力し、実用化に向けて取り組むという。


ICC技術の説明

 4K/60型の試作機の映像も視聴した。フルHDのベースバンド信号を4Kにコンバートし、ICC技術を適用。60型フルHD映像テレビと比較したが、注視してみるとあらゆる物体が高精細に描かれ、室内の背景壁紙の模様や凹凸、室内からガラスを透過した屋外の木々の奥行の違いなどに顕著な違いを感じることができた。


■ テレビの本質を追求した「ICC 4K」

シャープ 寺川 AVシステム開発本部長

 シャープ 執行役員 AV システム開発本部長の寺川雅嗣氏は、「テレビの国内市場は縮小しており、海外でも景気動向などから停滞傾向だが、だからこそ、3Dやスマートテレビなど、様々なアプローチで活性化を図っている。今回の共同開発は『テレビの本質を追求する』もの」と説明する。

 寺川氏は、テレビの本質を「臨場感」、「実物感」とし、「HDから4Kへという精細化は技術的なトレンド。一方、モノクロからカラーになった時のような『付加価値』により、いままでと違うものを実現することが次世代のテレビには必要」とし、その新規価値を生み出すものとしてICC技術を紹介。「単に4KパネルとICC技術を組み合わせるのではなく、パネルから出力される光をいかに新しい次元に持っていくか。どこまできれいに映像表現できるかというところでコラボレーションし、パネル技術も進化させる。両社が協力して、新たな映像空間を作っていく」と語った。

大型、高精細で新たな映像空間をテレビの継続進化(解像度向上)だけでなく、新規価値としてICC 4Kを位置づける
I3研究所近藤社長

 また、I3研究所の近藤哲二郎社長は、「テレビジョンの歴史は、現場で見ている“視界”(ビジョン)を電気に変えて送るというもの。理想、目玉は現場にいって見ている感覚。通常、人間の視覚では、脳が判断して目でオブジェクトを追い、フォーカスを合わせて、像を脳内で合成する。これと同じ考えで次世代のテレビを目指す」とする。

 「カメラマンは、必ずどこかにピントを合わせる。そうすると、そこが見せたい部分になるが、現場の“人”は見たいものにピントを合わせている。そこを目指す。また、『バラが赤い』だけでなく、赤いバラの瑞々しさのような定性的な情報が伝えられる、そういうテレビを作りたい。それにはこういうコラボが必要だ」と共同開発の意義を説明した。


今のテレビ次世代のテレビ

(2011年 9月 29日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]