「トトロ」Blu-ray発売で、サツキとメイが当時を回想
-ジブリ作品で「また声優にもチャンスが欲しい」
左から相田翔子さん、「トトロ」のサツキ役・日髙のり子さん、メイ役・坂本千夏さん、「火垂るの墓」から、清太と節子の母親を演じた志乃原良子さん |
7月18日にウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンから、Blu-rayが発売される、「となりのトトロ」と「火垂るの墓」。その発売を記念し、「トトロ」から、主人公姉妹サツキとメイを演じた日髙のり子さんと、坂本千夏さん。「火垂るの墓」から、清太と節子の母親を演じた志乃原良子さんが参加し、トークイベントが開催され、特別ゲストとして歌手・女優の相田翔子さんも駆けつけた。
「となりのトトロ」と「火垂るの墓」は、'88年4月16日に2本立てで劇場公開されたスタジオジブリのアニメ映画。「火垂るの墓」は昭和20年、「となりのトトロ」は昭和30年代初めの、日本を舞台にしている。
7月18日に発売されるBD版は、「トトロ」、「火垂るの墓」どちらも7,140円。2作品をまとめたセットも14,280円で発売される。ジブリのBDではおなじみの絵コンテ映像や、アフレコ台本などの特典を収録。詳細は既報の通り。
発売前日の17日に開催されたトークイベントでは、ゲスト達が作品に出演した当時の思い出などを語った。
となりのトトロ ブルーレイディスク 価格:7,140円 (C)1988 二馬力・G 発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン | 火垂るの墓 ブルーレイディスク 価格:7,140円 (C)野坂昭如/新潮社,1988 発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン | 初回限定生産『となりのトトロ』&『火垂るの墓』2本立てブルーレイ特別セット 価格:14,280円 発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン |
■ねこバスと、引越しのオジさんは同じ人!?
左からサツキ役・日髙のり子さん、メイ役・坂本千夏さん、清太と節子の母親を演じた志乃原良子さん |
「となりのトトロ」でサツキを演じた日髙のり子さんと、メイを演じた坂本千夏さんは、「アンパンマン」など、他のアニメ作品のアフレコ現場などで一緒になる機会があるとの事だが、ジブリ作品で声優を集めたイベントなどは少ないこともあり、今回の3人が揃ったのは初となる。
公開から24年が経過しているが、3人とも当時の事はよく覚えているという。作品に出演することになった経緯について、日髙さんは「他の作品のアフレコでスタジオにいたのですが、その作品の音響監督が、トトロの音響監督もやっていらして、“ちょっと残ってオーディション受けてくれる?”と言われ、その場で絵コンテをもらい、オーディションに臨んだんです」とのこと。
当時、「声優になったからには、一度でいいから宮崎駿さんの作品に出たい」という目標を持っていたという日髙さん。オーディションの前に“宮崎監督作品だ”と聞かされていなかったが、渡された絵コンテを見れば宮崎作品だというのは一目瞭然。「絵コンテを持つ手が震えました」と当時を振り返る。「子供を演じるのはその時が初めてで、いつもより高めの、元気の良い声でと言われて冒頭のシーンを演じたのですが、“男の子に聞こえてしまうから、もっと女の子にして”と言われ(笑)。でも、それが上手く変えられなくて……絶対に落ちたと思っていた」という。それゆえ、起用が決まった時の喜びは格別だったようだ。
坂本さんも「ジブリアニメや世界名作劇場には特別な思い入れがあって、出演したかった」と語る。「オーディションの時に、“いつものようなウルサイくらいの力強い声でお願いします”と言われ、“やっぱりウルサイって思われているんだ”と思ったのを覚えています」と笑う。
声優陣が登壇したステージには、サツキとメイがトトロと出会うバス停をイメージしたセットが組まれたほか、ゲスト用のテーブルにはメイが母に届けようと奮闘したトウモロコシや、火垂るの墓で印象的に登場する「サクマ式ドロップス」も配置。バス停や郵便ポストはこのイベントのために作られたとのことで、「後で記念撮影したい!」とゲスト陣も大喜び |
ちなみに、日髙さんと坂本さんは、父親役の糸井重里さんと共に、3日間一緒にアフレコ収録に望んだという。さらに、「ねこバス」の声を担当された声優さんも一緒で、日髙さんによれば、ねこバスの声と、冒頭でサツキとメイの引越しを手伝ってくれるオジさんの声は、同じ声優さんが演じているとのこと。知られざる豆知識に会場からもどよめきが起こった。
日髙さんは、月日の流れについて、「アフレコ当時、“将来自分に子供ができたら見せたい”と言っていて、その後生まれたんですが、1歳になる頃は毎日トトロのDVDを見ていました(笑)。本人は自分をメイちゃんだと思っていて、マックロクロスケを捕まえる時の動きを真似て、家の中を“捕まえた!!”って走り回るんですよ。私の家にマックロクロスケいないんですけど。いえ、1匹か2匹いるかもしれませんが(笑)。でも、当時はお母さんがサツキの声をやっているとは、あえて伏せていました」とのこと。
坂本さんは、「三鷹の森ジブリ美術館」だけで見られる短編アニメ「めいとこねこバス」(2002年から公開)で、再びメイを演じている。ジブリ作品の“続編”は貴重であり、坂本さんも「まさかもう一度メイちゃんを演じられると思っていなかったので、嬉しかった。ドキドキしながらジブリのスタジオでアフレコしました。あれからちょっと成長したメイちゃんになっています」と語る。
なお、坂本さんによれば、「めいとこねこバス」を作るにあたり、メイ役のオーディションも行なわれたという。「宮崎監督は私じゃない人も探したみたいなんですが、どうも見つからなかったみたいで。やっぱり大きい声でやっといてよかったなと」とニヤリ。
しかし、近年のジブリ作品は、声優をメインキャストに使わない事が多い。これについて日髙さんは、「“声優にもチャンスが欲しいなぁ”と思いますね。でも、トトロの時は、声優以外の人、例えば糸井重里さんのお父さんは、声優では出せない飄々とした、ちょっと照れくさそうな雰囲気が凄く良かったです。皆でお風呂に入って、お父さんが大きな声で“ワッハッハ”と言うシーンも、初日に録ったんですが、照れくさそうだったので、一番最後まで収録した後で、もう一度撮り直したりしたんです。でも、そういう(声優さん以外の人ならではの)魅力もある。声優さんと、俳優さんなどを、もっとミックスした感じの作品を観てみたいなぁと思います」と語った。
■「火垂るの墓」は今の若い人にこそ観て欲しい
清太・節子の母を演じた志乃原良子さん |
「火垂るの墓」で、清太・節子の母を演じた志乃原良子さんは、当時を振り返り、「私の場合はオーディションは無く、本番の2、3日前に台本を頂いて収録に臨みました。アニメの仕事はあまり機会がなかったのですが、画面に赤い線だけが表示され、まだ絵ができていないので“その線の表示が終わるまでに声を入れて”と言われ、面食らいました」と笑う。なお、「火垂るの墓」は公開までに完成が間に合わず、一部シーンが未完成のまま公開され、順次差し替えられていった作品でもある。
作品を何度も観返しているという志乃原さんは、「あんなに悲しく、重たい作品ですが、清太と節子が海岸で遊び、母親が“カルピスも冷えてるよ”と呼びかけるシーンがとても印象に残っています。あの幸せなシーンがあってよかった。もしあのシーンが無ければ、可哀想過ぎます」と好きな場面を挙げる。
「作品の声は、いわゆる声優さん達ではなく、郷土の言葉が喋れる大阪の劇団の方々が中心でした。私も関西出身でなければこの役にありつけなかったと思います。劇団の方々は、本当に演技が達者な方々でした。また、せっちゃん(節子を演じた白石綾乃さん)は、役柄と同じくらいの年齢で、本当に小さくて、お母さんは出産で入院されていて、サラリーマンのお父さんが出勤の前にスタジオに連れて来られていました。現場に女は私くらいしかいなかったので、彼女をトイレに連れていったり、ご飯を食べさせたりもしました。本当にいい子でした」と、役柄だけでなく、本当の母親のように世話をしていたという。
なお、主催者側によれば、今回のイベントにあたり、清太役の辰巳努さん、節子役の白石綾乃さんにも出演依頼をしようと連絡先を探したが、現在では何処で何をしているのか、わからなかったという。イベントがニコニコ動画で中継されていた事もあり、「見ていたらぜひ会場まで」と、司会が呼びかける一幕もあった。
■BD化について
会場では、ゲストの好きなシーンを、BDの画質で体感するコーナーも用意。生まれ変わった画質について、3人は「凄く綺麗なんですが、アナログチックで、暖かさも感じさせる画質」と絶賛した。
イベント後半には、2作品が公開された1988年に、Winkとして歌手デビュー。先日母になったばかりである歌手&女優の相田翔子さんがお祝いに駆けつけた。相田さんは2作品について、「トトロを観ると、私も姉がいるんですが、姉の後ろにくっついていた頃を思い出します。火垂るの墓もそうですが、兄妹愛、姉妹愛というか、観た後で家族に連絡したくなるような作品」と印象を語った。
相田翔子さんもお祝いに駆けつけた |
最後に志乃原さんは「火垂るの墓」について、「清太の最期のシーンなどを、今の若い人達はどのように感じるのか気になります。自分さえ良ければいいとか、育児放棄とか、変な世の中になっていますが、BDで復活したのを機に、若い人にも観ていただいて、愛情を感じ取って、イジメなども無くしていって欲しいですね」とコメント。
トトロについて坂本さんは、「いつでも観たい作品。そして、観ればその時に戻れる作品です。観るたびに発見があり、いろんな所に行けちゃう作品でもあります。綺麗な絵のBDを、私の家に置いておきたいです」とアピール。
日髙さんは、「アフレコ当時は、二人の弟の事を考え、自分の子供の頃を想い出しながら演じていました。親になってみると、姉妹の親になった目線で観るようになりました。子供の頃は作品に入り込み、大人になれば親の気持ちで楽しめ、心のなかに暖かいものが残る、そんな作品です。綺麗になったBDで、ぜひご覧ください」と締めくくり、大きな拍手を浴びた。
自称・日本一のジブリ芸人こと、いずみ包(ぽお)さんもゲストに登場!!……ではなく、なぜかイベント会場の外のロビー(しかもトイレ前)に登場。これは、ニコニコ動画の中継に出演したもので、配信では流せないBDの映像を上映している時に、その映像をものまねや、自筆イラストで説明して繋いでいた。ちなみに、「ラピュタ」のムスカ大佐のコスプレで、頭にはトトロのぬいぐるみという格好だ |
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(2012年 7月 18日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]