地デジ新保護方式の開始は8月中旬以降

-スマートテレビ強化など情通審答申


新方式の運用開始に向けたスケジュール

 地上デジタル放送のコンテンツ保護の新方式が8月中旬以降に運用開始される。当初は7月の運用開始が予定されていたが、1カ月ほど延期された。

 新方式は、B-CASに併存する形で導入されるが、現行のB-CASカードに代わり、スクランブル解除をソフトウエアで行なうことで、物理的なカードを不要とするもの。すでに技術仕様は公開されており、一般社団法人地上放送RMP管理センター(TRMP)がライセンス発行、管理機関となり、機器メーカーにライセンス。8月中旬以降の東名阪での運用開始の後、2013年4月には全国での運用開始を目標としており、TRMPにおける鍵管理システムの整備や、放送局の送出設備の改修などが進められている。

 TRMPによる新方式は物理的なカードを不要とすることで、携帯電話などの小型機器へのフルセグ対応を容易にするほか、コンテンツ権利保護についての社会コスト全体の圧縮を目指して策定。ダビング10のルールに変更はない。当初は地上デジタル放送専用となる。

 新方式のスケジュールなどは、25日の総務省 情報通信審議会 総会の「デジタル・コンテンツ流通の促進等」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」の答申に記載されており、答申では、デジタル放送のコンテンツ保護のあり方のほか、コンテンツ製作・流通の強化方策についてもまとめている。

 デジタル放送については、中間答申を受けてTRMPによる新方式の導入を進めたことを報告するとともに、透明性が高く、効率的な運営、運用を求めているほか、B-CASカードの不法改ざんなどの情報が流布したことで、B-CASを用いたエンフォースメントの仕組みへの影響が懸念されていることなども指摘。「今後のあり方について技術の進展、新方式や制度的補完措置の定着情報を踏まえて、検討することが必要」とし、引き続き状況把握を行ないながら、「『新たな検討の場』で検討することが適当」としている。

 コンテンツ制作・流通の強化については、早急に取り組むべき課題として、権利処理の迅速化や効率化、コンテンツの海外展開の促進を提言。さらに、スマートテレビの推進についても官民連携して重点的に取組むよう提言しており、実証実験や、W3CにおけるHTML5/.nextの標準規格策定などを具体的な取り組みとして案内している。

 中長期的には、クラウド型サービスなどの新しいコンテンツ流通サービスの普及による個人情報の適切な保護や正確なコンテンツ管理などが求められること、今後のコンテンツ流通に大きな変化が予想されることから、「スピード感を持って適切に対処することが必要」としている。また、放送事業者、通信、インターネットサービス、メーカー、権利者、消費者などからなる「新たな検討の場」を設置し、「デジタルコンテンツの保護に係わるルールのあり方や、コンテンツ海外展開の促進、スマートテレビの機能充実、権利処理の迅速化、クリエーターへの対価の還元を含む、コンテンツの制作流通促進の方策などについて、幅広い視点から議論し、速やかに実行していくことが必要」とまとめている。



(2012年 7月 25日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]