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50型以上の4K TV台数は47.2%。TV全体は回復基調

4K拡大のソニーが販売増。BCN調査

BCNアナリストの道越一郎氏

 BCNは17日、薄型テレビやデジタルカメラ、スマートフォン、タブレットなどデジタル家電の2015年5月の販売動向について調査結果を発表した。テレビ市場については、50型以上の大型テレビに占める4Kモデルの販売台数構成比が47.2%まで拡大しており、回復基調に乗り始めたテレビ市場を4Kモデルがけん引しているとの見方を示した。また、ソニー、シャープ、パナソニック、東芝といった主要テレビメーカー4社の動向を分析。テレビ市場における各社の現状について説明している。

 BCNの市場分析は、家電量販店など全国22社、2,454店舗(2015年6月現在)のPOSデータを集計したBCNのデータをもとに実施。Amazonなどを中心としたネット店舗のデータも加味した形で前年同月比を算出している。メーカー直販店の売上は含まれない。

 5月のデジタル家電全体の販売金額の伸び率を示すBCN指数は、前年同月比98.4%。BCNの道越一郎アナリストは、円安の影響による買い控えなどの影響で、夏のボーナス商戦におけるデジタル家電市場への恩恵は限定的としつつ、「回復基調にある液晶テレビや、拡大しつつあるスマートフォンのSIMフリー関連市場には期待できる」とコメントした。

調査結果のポイント
BCN指数と東証一部上場企業の夏季賞与等の推移

4Kの販売台数比率は50型以上で47.2%。5月の液晶TVはシャープが首位

 5月の液晶テレビの販売台数は117.9%で、販売金額は前年同月比122.2%。販売台数は前年比で7カ月連続プラスとなり、'13年と'14年の同時期の水準を上回った。販売金額も前年比で2カ月連続プラスとなり、'12年の同時期の水準超えを記録。道越氏は「V字回復とまでは言わないが、回復基調にあると言える」とコメントした。

 全国のケーブルテレビ事業者が実施してきたデジアナ変換サービスが3月で終了したことを受け、小型テレビの売上が増加するなど"デジアナ変換終了特需"が起きたことも台数/金額の水準に影響。また、昨年の増税後の反動で台数/金額が減少した影響が、今年4月の前年比の高い伸びに現れている。

 5月の液晶テレビ全体のシェアは、1位のシャープが38.1%(4月36.7%)、2位のソニーが18.1%(同14.7%)、3位のパナソニックが14.9%(同13.9%)、4位の東芝が13.3%(同16.4%)だった。

液晶テレビの販売台数/金額の前年比の推移
液晶テレビの販売台数/金額の指数の推移
液晶テレビ全体のシェア

 4K対応テレビの全サイズに占める販売台数の割合は11.1%と初めて1割を突破。50型以上では47.2%で、ほぼ半数が4K対応モデルとなった。金額構成比は32.5%で、50型以上では64.3%まで上昇。道越氏は「大型テレビの4Kモデルは当たり前の存在になりつつあり、今後は価格競争が起きてくるだろう。消費者に対するプラスαの価値が必要だ」と述べた。そのうえで、従来の地上波放送以外の視聴コンテンツとしての定額制動画配信サービスや、スティック型のメディアプレーヤー端末やスティック型PCといったデバイスと組み合わせていくことで「4Kテレビは従来のテレビとしてだけでなく、家のリビングに置ける解像度の高い大きな表示パネルとして需要が高まり、今後成長していくことも予想される」とコメントした。

 5月の4K対応テレビのメーカー別販売台数シェアは、1位のソニーが39.7%(4月31.8%)、2位のシャープが26.5%(同25.3%)、3位のパナソニックが19.7%(同24.7%)、4位の東芝が12.8%(同17.1%)。4K対応テレビの平均単価は19万4,000円となった。

4K対応テレビの販売台数/金額推移
4K対応テレビのメーカー別シェア/平均単価
メーカー別4K対応台数比率

主要4社のTV事業動向を分析。ソニーは4Kの売上金額構成比が過半数に

販売台数・金額の前年同月比/メーカー別の解像度別販売構成比

 液晶テレビ販売台数の前年同月比をメーカー別で見ると、シャープが108.1%、ソニーが194.8%、パナソニックが101.2%、東芝が109.1%と、いずれも前年比プラスを記録。中でもソニーは販売台数が前年のほぼ倍となっている。販売金額の前年同月比はシャープが118.3%、ソニーが163.1%、パナソニックが113.3%、東芝が93.6%で、東芝のみ前年割れとなった。

 また、メーカーごとに液晶テレビの中で4Kモデルが占める販売台数・金額も調査。台数構成比は、シャープが7.6%、ソニーが24.7%、パナソニックが14.4%、東芝が10.5%。金額の構成比では、シャープ22.7%、ソニー51.4%、パナソニック35%、東芝35.6%。

 テレビメーカー主要4社のうち、販売台数の前年比増を続けているソニーが液晶テレビ市場の回復を牽引する形となっている。同社の液晶テレビのうち、4Kモデルの販売台数比率が約4分の1を占め、金額構成比も5割を超えていることについてBCNは、「4Kをはじめとするプレミアム路線重視の戦略が同社の勢いを生み出している」とみている。

ソニーの販売台数・金額の前年同月比/平均単価
販売台数・金額指数/平均単価

 液晶テレビのトップシェアを持つシャープは、テレビの平均単価が61,100円と主要4社の中で最安。低価格モデルの販売台数構成比が5割を超えていることから「利益率の低い製品の比率が高い今の構造を変える必要がある」とした。製品全体に占める4Kモデルの比率は7.6%で、そのうちボリュームゾーンとなる40型台は16.9%。40%〜50%台のソニー、パナソニック、東芝と比べて低い割合になっている。

シャープの販売台数・金額の前年同月比/平均単価
メーカーごとの画面サイズ別台数比率。シャープの4Kモデルは50型以上が83.1%

 パナソニックは、4Kモデルの販売台数構成比がソニーに次いで高く、またHD以下の低価格モデルを減少させて、高収益モデルの構成比が高まっている。4Kモデルにおいては40型台の台数構成比が55.2%に上昇しており、「4K対応の小型モデルを足がかりにシェアの拡大も期待できる」としている。

パナソニックの販売台数・金額の前年同月比/平均単価
販売台数構成比/平均単価変動率

 東芝は、販売台数は前年比で109.1%とプラスだったが、販売金額は4社の中で唯一前年割れ。販売金額構成比は、4Kモデル、フルHDモデル、HD以下のモデルが30%台で拮抗しており、「4Kの台数構成比を伸ばし、収益力を強化することが求められる」とした。

東芝の販売台数・金額の前年同月比/平均単価
販売台数・金額指数/平均単価

BDレコーダは前年並みでパナソニックがトップ

レコーダの販売台数・金額前年同月比

 Blu-rayレコーダの販売状況は、台数の前年同月比が100.8%、金額は102.2%で、前年並みの水準。道越氏は、「テレビと連動する市場ではあるが、テレビよりも動きはゆるやか。日本特有の市場であり、単価上昇は今後も続くと思われるが、台数は伸びていない」と説明した。BDレコーダのメーカー別販売台数シェアではパナソニックが39%と好調で、2位がシャープ(23.4%)、3位がソニー(22.8%)、4位が東芝(14%)。

ノートPCが不調、PCは過去3年で最低水準。SIMフリースマホ市場に期待

BCNアナリストの森 英二氏

 ノート型/デスクトップ型パソコンの5月の販売台数・金額は前年同月の8割程度で、パソコン市場の約5割を占めるノートPCが不調。販売台数は過去3年で最低水準に落ち込んだ。7月のWindows 10登場も「パソコン市場の回復要因となるかは見通せない。3年前の水準を上回るとも考えられない」(BCNアナリストの森 英二氏)としている。

パソコン市場の約5割を占めるノートPCが不調
「Windows 10が市場回復要因となるかは不透明」

 スマートフォンの販売状況は、新生活にあわせて需要が高まる3月に昨年同様大きく伸長したものの、'15年夏モデルの出足が鈍く、5月の指数は4月並み。スマートフォンの販売台数シェアでは、NTTドコモやau、ソフトバンクの3大キャリアの合計シェアが昨年の9割から8割に後退。一方でSIMフリー市場の販売台数シェアが伸長しており、森氏は「SIMフリー市場は3年で20倍に拡大していて、こちらは今後も成長が見込まれる」と述べた。メーカー別販売台数シェアでは、アップルが首位を維持しており、「Xperia」シリーズ新製品を発売するソニーが2位。シャープが3位となっている。

スマートフォンの販売台数・金額前年同月比
3大キャリアの合計シェアが8割に後退
SIMフリー市場は3年で20倍に拡大

(庄司亮一)