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Android TVが導くテレビの新たな価値。ソニーBRAVIA発売
音声検索とCast、アプリの魅力と課題
(2015/7/3 21:18)
今夏のソニーBRAVIA新製品は、3シリーズ9機種でOSにAndroid TVを搭載。テレビだけでなく、ネット動画やネットサービス、そしてスマートフォン的な操作体系を導入するなど、プラットフォームが一新された。
4K BRAVIAは、サイドスピーカーを搭載し、音にもこだわった中核機「X9400C/X9300Cシリーズ」、アンダースピーカー型で43~65型までの「X8500Cシリーズ」の2シリーズ7機種を、2K BRAVIAでは50/43型「W870Cシリーズ」がAndroid TV搭載モデルとなる。発売が延期されたり、プリセットチャンネルに不具合が出たりと、新OSの採用のため苦労した部分もあるようだが、いよいよ国内でAndroid TVを搭載した本格的なテレビが登場する。
ソニーは4日の発売を控え、報道向けの説明会を開催。いよいよ製品版となったBRAVIAのAndroid TV機能を体験した。
音声検索とCast、アプリがAndroid TVの魅力
Android TVを搭載した理由は、「音声検索能力」、「スマホ動画の大画面視聴」、「アプリの種類や数」など。BRAVIAのホーム画面を開くと、YouTubeなどの映像配信サービスのサムネイルとともに、放送/入力端子のアイコン、人気アプリ、ソニーおすすめの[SONY SELECT]などが表示される。
なお、ホームやAndroid TVアプリ、番組表などのメニュー画面の解像度はフルHDで作られている。4Kコンテンツが入力されれば、もちろん4Kで表示が行なわれる。今後スタート予定の「Netflix」についても4Kに対応する。
動画配信サービスとしては、YouTubeのほか、HuluやdTV(Google Castのみ)、GYAO!、ビデオマーケット、niconicoなどに対応し、dTV以外のサービスではAndorid TVアプリが用意される。なお、初期状態でプリインストールされるアプリは、ソニー関連のものを除くとYouTubeのみ。秋のアップデートでNetflixはプリインストールされる予定。
その他のアプリは、Google Playからダウンロードを行なう。VODサービス関連のほか、ショッピングや知育、ゲームなどのアプリをダウンロードできるが、ダウンロードにはGoogleのIDが必要となる。7月4日の発売時点では30弱のアプリをラインナップしているという。
Android TVで重視しているのが音声による検索性。新タッチパッドリモコンのマイクを用いて、番組のタイトルや出演者、ジャンルなどを入力すると、放送や録画番組のほか、Google Play映画やYouTube、各VODサービスの番組など、アプリを跨いだ検索が行なえる。なお、利用頻度が低いサービスなどは検索対象から外すこともできる。
番組やネット動画だけでなく、有名人の年齢や簡単な計算、今日の天気、Google写真検索なども音声から行なえる。Androidスマートフォンの音声検索と基本的には同じだが、番組/動画検索の結果をテレビでも見やすいように工夫されている。
また、Google Castに対応。HuluやYouTubeなどはBRAVIAのアプリでも検索や再生操作が行えるが、スマートフォンで動画を検索し、テレビにCastすると、テレビの大画面で映像を楽しめる。慣れたスマホをリモコン的に使える機能で、これはAndroid TVならではの魅力といえる。なお、dTVについてはAndroid TVアプリは備えていないのでBRAVIAだけでは、視聴できないが、アプリ側がCastに対応のため、dTVアプリで動画検索し、BRAVIAに[Cast]すればdTVの動画も楽しめる。
なお、テレビ視聴中や他のアプリの視聴時でも、Castが優先されるため、テレビ視聴中に家族がCastを行なうと、画面はCastに切り替わるという。
番組チェック機能も搭載。ネット動画や放送を見ながら、他のコンテンツをながらチェック出来る機能で、従来のBRAVIAシリーズでも搭載していたが、Android TVにも同機能を移植。タッチリモコンの[番組チェック]を押すと、視聴画面下に録画一覧やYouTube動画、他の放送局情報などを表示できる。従来のBRAVIAの良さを活かしつつもネットサービスとの親和性を高めている格好だ。
VOD以外にもアプリを拡大。「野球イッキ録り」アプリも
また、アプリの充実もAndroid TVならではの特徴。BRAVIAの発売に合わせて、知育アプリやショッピングサービスを展開している事業者らと協力し、テレビに最適化した形で知育ゲームなどを拡充している。
教育アプリで人気の「えほんであそぼ!じゃじゃじゃじゃん」をAndroid TVに移植。「きたかぜとたいよう」などの童話を紙芝居形式で表示するものだが、大画面を活かしたリッチな表示で楽しめるようになった。また、セガの知育ゲーム「テレビーナ」もAndroid TVに移植され、テレビとタブレットなどマルチスクリーンを利用したゲームを楽しみながら、学習できる。
「ホームフィットネス24」は、テレビの前でストレッチやヨガなどを楽しめるもの。一部のコンテンツは無料で利用でき、より本格的なプログラムは追加で購入できるようになっている。
QVCのテレビショッピングは、テレビで放送中の番組をAndroid TVアプリ内でもサイマル配信。さらに、過去の番組の表示や、販売中商品の詳細や写真などもテレビ上で確認できる。ただし、商品購入にはフリーダイヤルを用いる。
なお、子供が不適切なコンテンツにアクセスしないようにするためのペアレンタルロックも用意。音声検索にはセーフサーチフィルタを、YouTubeにはセーフモード、Google Playストアにはコンテンツフィルタを設定できる。
今回初披露されたアプリが、スカパー!が開発中の「スカパー! プロ野球セット」。CSで放送予定の野球の試合を一覧できる、12球団ごとに確認できるほか、球団を選択して、複数のチャンネルにまたがった試合を一気に確認/録画予約できるというもの。
スカパー!のチャンネル契約がなくても利用は可能だが、視聴/録画のためにはチャンネル契約が必要。アプリの提供時期は今夏予定とのこと。野球ファンにはかなり魅力的なアプリになりそうだし、サッカーや他の競技でもニーズは高そうだ。
なお、Android TV搭載のBRAVIA自体も発売時点では録画非対応だ。今夏のソフトウェア・アップデートで録画対応を予告しているが、ソニーにおける「夏」は「6~8月」とのこと。早期の録画対応を期待したい。
新しい「テレビ」に死角はない?
ネットサービスをテレビに融合し、よりスマートに使えるようになった新BRAVIA。それゆえフル機能を楽しむには、音声検索を機能を含めネットワーク接続が必要となる。
Android TV化により、アプリや周辺サービスの拡充、検索の強化など魅力が高まったBRAVIAだが、新プラットフォームというだけに不安もある。
Androidということで気になるのは、起動時間だ。通常の電源オフでは、スタンバイとなるため、電源OFFからの復帰は瞬時。実際に使ってみたが、1~2秒程度なので全くストレスはない。時折ディープスタンバイと呼ばれる状態になるそうだが、その際でも10~20秒程度で起動完了するとのことだ。ただ、どのタイミングでディープスタンバイに入るかなどは、ユーザーからはわからず、[高速起動]といった設定も無い。電源管理については、テレビにおまかせとなる。
また、主電源を切ってからの、いわゆる「コールドブート」する場合には、1分以上かかることもあるとのこと。ただし、通常利用で電源が完全にオフになることは殆ど無いそうだ。
従来のBRAVIAから削除された機能としては、ウィジェット型のネットワークサービス「アプリキャスト」が非搭載となったほか、Skypeはマイクロソフトの方針変更により、テレビ向けのアプリ展開が終了している。
また、従来のソニーBRAVIAでは、テレビが待機中にリモコンの数字ボタンを押すと、そのチャンネルに対応した放送を表示して起動する機能があった。だがAndroid TVにおいては、同機能には対応できず、省略されている。
リモコンの数字ボタンについての注意点はもうひとつある。YouTubeやHuluなどのサービス視聴時のほか、ホーム画面を表示している際に、リモコンの数字ボタンを押してもチャンネルが切り替わらない。チャンネル変更する場合は、リモコン中央の[テレビ]ボタンを押してから切り替えることとなる。
ネットサービス利用時に、数字ボタンが効かないのは他のテレビでもあるが、ホーム画面でも[テレビ]を押すというのは、わかりにくいかもしれない。これも、Android TVの仕様上の制限とのことだ。入力切替ボタンなどは、ネットサービス利用時やホーム画面時でも機能する。
Android TVでは、OSから見ればテレビもひとつのアプリ的に扱われており、テレビ放送機能も特別扱いはされていないようだ。タッチリモコンをメインに使うのであれば、この点も問題無いかもしれないが、従来のテレビの延長線で使いたい人にとっては、やや馴染みにくいかもしれない。
7月4日から発売されるBRAVIA。テレビとネット動画の融合や便利な音声検索やCast機能、スマートなUIなどが魅力の新商品だ。もちろん画質/音質も強化されているが、Android TVの魅力と制限を含め、この夏のテレビ市場でどう受け入れられるだろうか。