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コルグ、レコードDSD録音対応のUSB DAC「DS-DAC-10R」。ソフトはAudioGate 4に

 コルグは、DSD対応USB DACの新モデルとして、DSD録音も可能な「DS-DAC-10R」を11月下旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は6万円前後。また、DSD録音対応の新ソフト「AudioGate 4」も11月下旬にダウンロード提供/販売を開始する。コルグの1bit製品やAudioGate 3のライセンスを持つユーザーは無料でアップデートでき、AudioGate 4単品の購入は18,500円。

DS-DAC-10R

DSD録音対応USB DAC「DS-DAC-10R」

 5.6MHzまでのDSDや、192kHz/24bitまでのPCMに対応したUSB DAC。パソコンとUSB 2.0で接続し、付属ソフトの「AudioGate 4」を組み合わせてDSDネイティブ再生などが可能。MP3やAAC、WAV、FLACなどを5.6MHzのDSDにリアルタイム変換して再生することもできる。パソコン接続時の対応OSはWindows 7/8.1/10とMac OS X 10.8~10.10。対応ドライバはASIO 2.1/WDM/Core Audio。

DS-DAC-10R
AudioGate 4とDS-DAC-10Rの組み合わせ

 最大の特徴はDSD録音に対応したこと。アナログレコードの再ブームを受け、パソコンでのレコードのデジタル録音を想定したフォノ兼用のライン入力(RCA)やグランド端子を1系統装備。録音に使用するAudioGate 4には、DSD録音や再生時に使えるフォノイコライザ機能も搭載。増幅はDS-DAC-10Rのアナログ回路に、イコライジングはAudioGate 4によるデジタル信号処理に振り分けている。接続するターンテーブルはMMカートリッジのモデルを想定している。

Technicsのターンテーブル「SL-1200MK3D」などとの接続例

 AudioGate 4のイコライジングには、米国レコード協会(RIAA)が定めたRIAAカーブのほかに5種類のカーブ(RIAA+IEC、NAB、COLUMBIA、FFRR、AES)も備え、音の違いを楽しめるのも特徴。録音時に掛け録りできるほか、録音時にはイコライザをOFFにして、後掛けすることも可能。録音しない場合にも「これまでは高級オーディオ機器でさえもなかなか引き出せなかったアナログレコードの真の実力に、最新の技術で迫る」としている。イコライザのうちRIAA+IECは、RIAAカーブに設定した上で20Hz以下をカットしてノイズ低減を図るモードとなっている。

 DACチップは従来モデルのDS-DACシリーズなどと同じCirrus LogicのCS4398。録音に利用するADCは、コルグ「MR-2000S」と同じTIのPCM4202を使用する。フォノアンプのプリ段回路にはTIのOPA1662、ルビコン製の薄膜高分子積層コンデンサ「PMLCAP」などのパーツでフォノカートリッジの性能をフルに活かすという。筐体の底面/背面には銅メッキ板を使用。インシュレータにも銅を採用する。ボリュームノブはアルミ削り出し。本体に適度な重さを持たせ(重量1.1kg)、振動による音質への影響の排除を図っている。

 ボリュームノブ部にLEDを備え、サンプリング周波数によって色が変わる。DSD 5.6MHz再生時は濃い青、2.8MHzは薄い青、192/176.4kHzは紫といったように色が変化。録音中は赤く光る。

大型ボリュームノブとヘッドフォン出力のみのシンプルな前面デザイン
内部基板。写真左下がADCなどの部分
底面。銅メッキ板を使用し、インシュレータは3点支持

 iOS端末用のハイレゾプレーヤー「iAudioGate」とも連携可能。iPhoneなどをAppleのLightning-USBカメラアダプタなどを介してDS-DAC-10Rに接続し、録音したレコード音源などを再生できる。なお、iOS端末接続時はセルフパワー対応のUSBハブを用いた電源供給が必要。また、iAudioGateにはフォノイコライザ機能は搭載していない。

 標準ヘッドフォン端子を備え、出力は70mW×2ch(32Ω)。ライン出力(RCA)も1系統備える。周波数特性は10Hz~20kHz ±1dB(44.1/48kHz)/10Hz~40kHz ±1dB。SN比は105dB。外形寸法は155×184×49mm(幅×奥行×高さ)。

ボリュームノブ部のLEDは、音源のサンプリング周波数によって色が変わる
録音時は赤く光る
背面

レコード録音や再生向け機能を搭載したソフト最新版「AudioGate 4」

 DS-DAC-10Rに付属する「AudioGate 4」は、前述した通りDSD録音に対応したのが大きな特徴。録音/再生ともにDSDは5.6/2.8MHz、PCMは最大192kHz/24bitに対応する。対応OSはWindows 7/8.1/10とMac OS X 10.8~10.10。「DS-DAC-100」など従来のDS-DACシリーズのユーザーは無償アップデート可能だが、従来モデルでは録音機能が利用できない。

AudioGate 4(録音画面)

 録音時は、画面右上にあるレベルメーターが「Input Monitor」モードになり、入力レベルを表示。AudioGate側からレベル調整ができる。アナログレコードなどの録音後に、波形を見て曲と曲の間にマーカーを入れて分割することが可能で、録音済みのファイルは、左側にあるメニューの「Playlist」内、「Recording」に分類される。

 曲の長さに合わせて録音時間をあらかじめ設定しておくことにより、自動で録音を切ることも可能。なお、入力レベルの検知などによる自動分割機能は搭載せず、「波形を見て手動で分割する方が自動分割よりも確実」としている。録音後にアルバムアートを入れることなども、従来バージョンと同様に可能。

AudioGate 4(再生画面)

 再生時の機能として、リピートやシャッフルのほか、キーボード入力から選曲可能な「ダイレクト選曲機能」や、キーボード入力から再生位置を変更する「ダイレクト・ロケート機能」などが利用可能。

 対応フォーマットは、DSDIFF/DSF/WSD/WAV/BWF/AIFF/FLAC/WMA/Apple Lossless/AAC/MP3など。CPUはIntel Core i3以上を推奨し、2.8/5.6MHz間のDSDリアルタイム変換再生には3.1GHz以上が必要となる。RAMは4GB以上。

 再生に特化した無料の「AudioGate ライト版」も引き続き提供。ライト版ではDSD再生が44.1kHzまたは48kHzのPCMへの変換再生になる。DS-DACシリーズやレコーダのMRシリーズ本体を接続してライセンス認証することでライト版から正規版へアップグレード可能。体験後に製品を購入した場合もAudioGate 4へアップグレードして利用可能になる。

録音設定
再生時にイコライザのカーブを選択して掛けることも可能
環境設定

楽器メーカーの思いを込めた“集大成モデル”

蛭田博幸氏

 コルグの蛭田博幸氏は、'06年のポータブルレコーダ「MR-1000」などでDSDに取り組んでからこれまで10年近く経ったことを振り返り「もともと楽器メーカーであり、オーディオメーカーとは違うが、ミュージシャンの演奏を生で聴き、その音をできるだけそのままで共有したいという思いでDACも作ってきた」と初代USB DACの「DS-DAC-10」から2年間に渡る開発を説明。新機種のDS-DAC-10Rでは録音も可能になったことで「今までの集大成ともいえる」と自信を見せた。

 AudioGate 4に6種類から選べるフォノイコライザ機能を搭載したのは、制作された盤によってはカッティング時にRIAA以外のカーブが使われていたことなどが理由。詳しいユーザーは、その盤に合わせた正しいイコライザを掛けて楽しめる一方、適したカーブが分からない場合も、最初にOFFで録音しておくことで、再生時にイコライザを変えて聴けることを長所としてアピールした。

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(中林暁)