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【レビュー】Wi-Fiウェアラブルカメラの意欲作「ION AIR PRO WiFi」

フルHDで2万円台。富士急ハイランドで性能を検証


ION AIR PRO WiFi パッケージ

 2011年12月、低価格なHD対応ウェアラブルカメラ「ION the ACTION」を投入したサミット・グローバル・ジャパン。同社が、新たにフルHDにも対応した高性能モデル「ION AIR PRO」をリリースした。カメラの基本性能向上を図っているのはもちろん、自転車・バイクやヘルメットなどに取り付けるためのマウントも充実し、「GoPro」や「Contour」らが開拓した高性能ウェアラブルカメラの市場に本格参入した形だ。

 カメラ単体は実売で2万円を切り、各種マウントなどを同梱したキット製品も2万円台と、比較的入手しやすい価格帯であるのもポイントだろう。今回は、この「ION AIR PRO」シリーズのうち、無線LAN(Wi-Fi)接続による映像プレビューなどが可能なキット製品「ION AIR PRO WiFi」(実売価格29,800円)をお借りできたので、性能や実際の使い勝手などの詳細をお届けする。

 なお、動画撮影にあたっては富士急ハイランド様にご協力いただき、特別にアトラクション乗車時の映像を撮影させていただいた。かなりハードな使用環境の中で撮影できたので、ぜひご覧いただきたい。



■ 動画性能はライバルとほぼ同等。写真撮影機能の使い勝手もよい

ION AIR PRO WiFi

 「ION AIR PRO」のカメラ本体は、37×107mm(直径×奥行き)の前後に細長い円筒形で、重量は約130g。「Contour+」とよく似た形状だが、重量は20gほど軽いことになる。ブルーとブラックのカラーリングが施された筐体は頑丈そうな質感で、見た目もよい。IPX8準拠の防水仕様であることから、前方のレンズ部は半球状の透明な樹脂に完全に覆われ、後方に設けられている各種端子、スイッチ類などは、防水キャップでしっかりカバーされる構造になっている。本体底面には一般的なカメラ用の三脚取り付け穴があり、ここに付属のサイドリリースタイプ風のバックルをネジ止めできる。自転車やバイク、ヘルメットなどに固定したいときは、同梱のマウント類をこのバックルに接続して利用する。


本体は細長い円筒形。重量は約130gと軽量だ
カメラ用の三脚取り付け穴にバックルをネジ止めする

 カメラの仕様としては、F2.8のレンズと、1/2.5型のCMOSイメージセンサーを搭載し、最大視野角は170度。露出、ホワイトバランスはオート。動画は1080p(約14Mbps/1,920×1080ドット/30fps/視野角127度)、960p(約9Mbps/1,280×960ドット/30fps/視野角170度)、720p(約15Mbps/1,280×720ドット/60fps/視野角150度)および720p 30fpsの4種類の撮影モードを備える。

 1080pと960pの切り替えと、720pの30fpsと60fpsの切り替えは、PC上で動作する設定用アプリケーションで行ない、1080p・960pと720pとの切り替えはカメラ本体にある小さなスイッチを利用する。録画のスタート・ストップは本体上面にあるスライドスイッチで操作可能だ。動画の出力フォーマットは拡張子.MP4のMPEG-4、動画コーデックはH.264 AVC、音声はAAC/48kHz/128kbps CBR/2chステレオで、音量調整もオートとなる。


【撮影モード】

タイプ 解像度 ビットレート フレーム
レート
視野角
1080p 1,920×1,080ドット 約14Mbps 30fps 127度
960p 1,280×960ドット 約9Mbps 30fps 170度
720p(60p) 1,280×720ドット 約15Mbps 60fps 150度
720p(30p) 1,280×720ドット 約8Mbps 30fps 150度
本体正面のスライドスイッチを前方に動かせば録画開始。厚手のグローブ越しではやや感触に乏しい

 一方、静止画像は5メガピクセル(4,608×3,456ドット)サイズのJPEGフォーマットで、手動で1枚ずつ撮影する“シングル”と、秒間10コマで自動撮影する“10フォトバースト”、5〜60秒の一定間隔で1枚ずつ自動撮影する“インターバル”の3種類を選択できる。このモード切り替えもPCアプリケーション上で行ない、写真撮影したいときは、本体の電源をオンにした状態で再度電源ボタンを押すだけでシャッターが切れる。“シングル”では電源ボタンを押すたびにシャッターが切られ、他の2つのモードでは一度電源ボタンを押した後、再び電源ボタンを押すまでの間、連続で撮影される。動画の撮影中でない限りワンタッチでいつでも写真撮影できるため、気軽にスナップショットを残せるのはうれしいところだ。

 対応メディアは最大32GBのmicroSD/SDHCカード。32GBのカード使用時には、1080pもしくは720p(60fps)時に256分相当の動画を記録できるとしている。連続動作時間は約2.5時間、後述の「WiFi PODZ」の電源をオンにしている場合は約1時間動作する。このあたりも「Contour+」と同等ではあるが、「WiFi PODZ」を使ってプレビューしつつ撮影する場合は、常に電源を確保可能な状態にしておかないと不安になりそうだ。

 なお、動画撮影時は設定した撮影モードの解像度以外に、FWQVGA(432×240ドット)もしくはQVGA(320×240ドット)サイズの動画ファイルも自動生成されるようになっている。この動画ファイルは「WiFi PODZ」利用時のプレビュー再生に使われるほか、容量が小さいためYouTubeやFacebookにすばやく投稿したいときにも活用できる。画質よりも速報性を重視する際に便利だろう。


■撮影モード等の設定手順には要注意

防水キャップを外したところ。各種ポート類、スイッチが並ぶ

 本体の後部は防水キャップになっていて、小さなロックボタンを解除して反時計回りにわずかに回転させると取り外すことができる。防水仕様のためか、取り付け、取り外しにはかなり力を込める必要がある。キャップを外した後のカメラ本体側には、microSD/SDHCカードスロットのほか、HDMI出力端子、マイク入力端子、動画撮影モード切替スイッチ、マイクロUSBポートなどが並ぶ。

 マイクロUSBポートは充電だけでなく、専用PCアプリケーションでカメラの設定を行なう際にも利用する。PCのUSBポートと接続すると、PC上ではカメラに装着したmicroSDカードがドライブとして認識され、そのドライブ内に自動でコピーされるEXEファイルを実行することでカメラの各種設定を行うアプリケーションを起動できる。今回お借りした製品ではWindows用アプリケーションのみ最初から利用できるようになっていたが、Mac OS版も同社各国向けWebサイトからダウンロード可能だ。ダウンロードしたアプリケーションは手動でmicroSDカードにコピーして、上記の通りUSBケーブルで本体と接続した状態で起動させる。

 ただし、6月22日現在、Mac OS用アプリケーションは、複数ある各国向けWebサイト間でダウンロード可能なバージョンが異なっている。最新版はVersion 1.05となっているものの、別の国向けのWebサイトでは同じ英語版にもかかわらずVersion 1.02となっており、日本向けWebサイトでは配布すらされていない。さらに、このアプリケーションが“Firmware”と表現されている点や、ダウンロード後どのようにすれば使えるのか具体的に示されていないのも混乱を招きがちだ。改めて書くが、microSDカードにアプリケーションファイルをコピーし(Windowsでは不要)、microSDカードをカメラに装着してから電源を入れ、USBケーブルでPCと接続し、マウントされるドライブの中にあるアプリケーションファイルを実行する、ということを覚えておきたい。


■ 「WiFi PODZ」の動作は不安定さが目立つ

 「ION AIR PRO WiFi」に同梱される「WiFi PODZ」は、スマートフォンの専用アプリ「Ion Camera」や、PCなどのWebブラウザーから「ION AIR PRO」へのアクセスを可能にするアイテムだ。標準の防水キャップと差し替えて接続する仕組みになっており、中央の電源ボタンを短く押してから数十秒間待てば通信の準備が完了する。ただし、「WiFi PODZ」の電源がオンになっているときは動画・静止画の撮影は行なえないため、注意しておこう。

左が標準の防水キャップ、右が「WiFi PODZ」 独特の形状で、カメラ本体の奥の方で接続される カメラに「WiFi PODZ」を取り付けたところ
Wi-Fi設定で「WiFi PODZ」を選択することで通信可能になる

 6月22日現在はiOS向けの専用アプリのみがApp Storeで公開されており、Android用アプリも7月にはGoogle Play Storeからダウンロードできるようになる予定。そのため、今回はiPhone 4で試用した。専用アプリを利用するには、iOSのWi-Fi設定で「WiFi PODZ」というSSIDを選択して所定のパスワードを入力し、Wi-Fi接続を確立した後、アプリを立ち上げるという手順になる。

 専用アプリで行なえる代表的な操作は3種類。撮影済みの動画・静止画像のプレビュー再生と、それらのファイルの整理、そして「ION AIR PRO」で映しているライブ映像のプレビューだ。撮影済み動画のプレビューでは、前述の通り自動生成された低解像度の動画を音声付きで再生可能。一時停止はできるが、早送りや巻き戻しなどは行なえないため、最後の方だけを確認したくても最初から再生して待たなければならない。

 また、動画のプレビューはあくまでも撮影時の確認用として使うものなのでブロックノイズが目立つのは仕方ないにしても、なぜか音声が途切れがちなのは気になってしまう。


撮影済みファイルの一覧画面 動画のプレビュー再生と一時停止を行なえる

 撮影済みファイルの一覧画面ではサムネイル表示されるようになっているのだが、すべて表示されるまでかなり時間がかかったり、途中でタイムアウトしてサムネイルが表示されないこともあるなど、動作が安定しているとは言い難い。また、今回試したところでは、アプリの不具合か、カメラ(WiFi PODZ)側の不具合か、ライブ映像のプレビューが一切行なえなかった。

【追記】
サミット・グローバル・ジャパンによれば、「貸出機材がサンプル版だったため、ライブ映像のプレビューができなかった。出荷製品ではライブプレビューに対応している」とのこと(7月9日)

ライブ映像のプレビューは、確実にWi-Fi接続できているにも関わらず、エラーが出て失敗した

 専用アプリではなく、Webブラウザーから「ION AIR PRO」にアクセスすることもできる。「WiFi PODZ」にWi-Fi接続した後、 http://192.168.1.2/ というローカルIPアドレスにアクセスすると、各種操作を行なえるWebページが表示される。カメラ本体に装着しているmicroSDカードの中身を閲覧してファイルをローカルにダウンロードしたり、「WiFi PODZ」のSSIDとパスワードを変更することも可能。このWebページでもカメラのライブ映像をプレビューできると思われる「Live Streaming」ページが用意されているが、Windows、Mac OS、iPhoneのいずれでも映像を表示することはできなかった。このWebページについて詳しく説明している資料も存在しておらず、不親切さは否めない。


Webブラウザでアクセス。装着しているmicroSDカードの内容を確認可能 「WiFi PODZ」のSSIDやパスワードも変更できる Webブラウザーでも「Live Streaming」は実行できなかった

 「WiFi PODZ」を用いることで、撮影直後の映像確認などにはある程度便利に使えるものの、より安定した動作や詳細な説明資料などが提供されるまでは、せっかくのカメラの能力を十分に発揮できないように思う。


■ 富士急ハイランドの絶叫アトラクションで撮影。ヘルメットへの固定は補助が必要な場合も

同梱されるマウントとその他付属品は大量だ

 「ION AIR PRO WiFi」に同梱されているマウント用パーツは、自転車・バイクのハンドルに接続するための“バイクマウント”、ヘルメットなどに固定するための“フィッティングピース(大・小)”、“ボールジョイント(ストレート・L型)”、“ストラップ(大・中)”、両面粘着ステッカーなど多数。さらに、万一の脱落防止のための小型ストラップも用意される。

 今回、富士急ハイランドのアトラクションに乗車して撮影するにあたっては、これらのうち大サイズのフィッティングピースと、L型のボールジョイント、両面粘着ステッカーを利用して自転車用ヘルメットの側面に固定。万全を期すため、小型ストラップでフィッティングピースとヘルメットのインナーを留めているボタン部分とを連結し、ストラップの遊びがなくなるように粘着テープで貼り付け、さらにカメラ本体とヘルメットを覆うようにガムテープを2重に巻いた。

自転車用ヘルメットの側面に取り付けた
念のためストラップも結んでおく

 万が一にも脱落などがあってはならないため、通常のマウントのみでの撮影はできなかった。実際の乗車時に強い力が加わったときの強度は検証できなかったものの、ヘルメットに固定している段階で気になる点はあった。フィッティングピース中央にボールジョイントをはめ込み、その上からプラスチック製のナットをねじ込む形になっているのだが、このナットを力一杯ねじ込んでも、ヘルメットを手で持って思いきり揺さぶると、どうしてもボールジョイントが動いてカメラが傾いてしまうのだ。今回の撮影ではガムテープも用いて固定したこともあり、カメラが傾くことはなかったが、ボールジョイントによる固定だけでは十分な強度を出せないように感じられる。激しい動きをするスポーツで使用する場合は、見た目が悪くなるのを覚悟で、補助的にガムテープなどで固定することをおすすめしたい。


今回使用したマウント用パーツ ボールジョイントはストレートタイプとL型の2種類がある
自転車やバイクのハンドルへの取り付けを可能にするクランプも 粘着ステッカーを使わない場合は、こういった大きめのストラップで固定することもできる
高飛車

 テスト撮影は、富士急ハイランドの「高飛車」と、「グレートザブーン」という2つのアトラクションで実施した。

 「高飛車」は、2011年7月に完成したコース全長1,000m、最高速度100km/h、最大落下角度121度の単車両タイプのローラーコースターだ。スタートしてからしばらくは暗闇の中となるため、映像に動きがあるように見えないが、暗所から唐突に明るい場所へ飛び出す時の露出の追従性、激しいGでもブレの少ない映像、遠方の細部まで見分けられる解像感など、見どころは多い。

 実際にION AIR PROで記録した映像を見ると、スポーツカメラとしては十分な性能であると思えるが、「GoProHD HERO2」や「Contour+」と比べて、全体的にややくすんだ色合いで、暗めに感じる。冒頭の暗闇のときは、特に960pや720pでフィルターがかかったようなノイズが画面全体に見えるのがやや気になるところだが、それ以外の場面で目立つノイズではないため、これについてはさほど問題になることはなさそうだ。


【注意】------------------------------------------------------
※アトラクションにおける撮影は、富士急ハイランド様より特別に許可をいただき、乗員や周囲に対して十分な安全性を確保したうえで行なっています。通常、乗車時のカメラ撮影や衣服以外の付属物を伴った乗車は固く禁止されていますので、絶対に真似しないでください。
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動画サンプル
1080p/30fps
(292MB)
960p/30fps
(192MB)
720p/60fps
(288MB)
【ION AIR PRO_高飛車_1080p_30fps】
【ION AIR PRO_高飛車_960p_30fps】
【ION AIR PRO_高飛車_720p_60fps】
グレートザブーン

 「ION AIR PRO WiFi」の防水性能を確認するため、「グレートザブーン」にも搭乗させていただいた。動きは激しくはないが、高低差30mの坂道を下り、水たまりに一気に飛び込んで大量の水しぶきを浴びる、特に夏には人気のアトラクションだ。3回乗車して、3回ともカメラを含め全身ずぶ濡れになったが、もちろんカメラの動作には問題なかった。ただし、設定を変えたりするために本体後部の防水キャップを外すときは、水滴が入り込まないようあらかじめきちんと水分を取り除いておきたい。


【注意】------------------------------------------------------
※アトラクションにおける撮影は、富士急ハイランド様より特別に許可をいただき、乗員や周囲に対して十分な安全性を確保したうえで行なっています。通常、乗車時のカメラ撮影や衣服以外の付属物を伴った乗車は固く禁止されていますので、絶対に真似しないでください。
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動画サンプル
1080p/30fps
(265MB)
960p/30fps
(159MB)
720p/60fps
(282MB)
【ION AIR PRO_グレートザブーン_1080p_30fps_AV Watch】
【ION AIR PRO_グレートザブーン_960p_30fps_AV Watch】
【ION AIR PRO_グレートザブーン_720p_30fps_AV Watch】
みごと水に濡れたが、もちろん動作に影響はない

■カメラ性能は十分だが、ソフトウェア、サポートの整備が望まれる

 ライバル製品よりも軽量でありながら、比較的安価といえ、カメラ性能も他にひけをとらない「ION AIR PRO WiFi」。十分に魅力的な製品といえるが、課題としては、やはり、専用ソフトウェアの安定動作と、入門者にとってもわかりやすい説明資料の提供と言えるだろう。

 iOS向けの専用アプリやWebブラウザでアクセスしたときの画面など、不安定な動作に対する懸念もあるが、デザインや使い勝手の面でも洗練されているとは言えない。公式Webサイトでの説明が不足しているところも、一般のユーザーにとって不安な要素となりえるし、マウント類の強度も改善の余地がありそう。カメラ自体の性能や利便性は悪くないだけに、もったいないという感じだ。

 とはいえ、「ION AIR PRO」はまだまだリリースされたばかりの製品。今後、周辺環境が整備されていくことを大いに期待したい。「Contour+」を購入するほどの予算はないが、自転車や水場などでスタイリッシュにスポーツ向けウェアラブルカメラを使ってみたい、という人にとっては、たっぷり遊べるアイテムだろう。


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(2012年 6月 26日)

[ Reported by 日沼諭史 ]