レビュー
デスクトップにもテレビにも、EDIFIERアクティブスピーカー「M90」。サブウーファー追加で“机上ミニシアター”
2026年4月3日 08:00
デスクトップにもテレビサイドにもOK
職業柄、AV機器の購入相談を受けることが多いのだが、旧友からお勧めのスピーカーについて訊ねられた。曰く、ストリーミングを楽しみたい、スマートフォンやPCを音源にしたい、机の上に置いて使いたい、もちろん音がよくて値頃感のあるものを……勝手なことばかり言うが、トレンドがその周辺にあることは間違いない。
相談者がこだわりの少ない人物であれば、ワンボックスタイプでUSB DAC内蔵のBluetoothスピーカーを勧めるところだが、PCを挟むように左右のスピーカーユニットを設置したいとのこと。よくよく話を聞くと、ネット動画観賞用に使いたいらしく、しかも迫力ある音を楽しみたいのだそう。なんと欲張りな。
思い当たる製品は軽く10万円を超えるから、オーディオ再生も考慮されたサウンドバーを選んだらどうかと答えたが、ふだんは机の上に置きたいから"それじゃない"という。急がないので探しておいてというが……さすがに無理な注文だ。
やり取りから数カ月後、EDIFIERから興味深い製品の発売予告が届いた。コンパクトなアクティブスピーカー「M90」だ。
このM90は、4インチのミッドバスと1インチのシルクドームツイーターの2ウェイで構成されるアクティブスピーカー。133×225×212mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトながら、出力は最大100W(35W×2+15W×2)と余裕がある。
注目は入力系統だ。オーソドックスなAUX×1基はもちろん、光デジタル×1基とUSB-C×1基を装備する。最大96kHz/24bitのUSB DACを内蔵、ハイレゾ再生もカバーするところがポイント。さらにBluetoothにも対応、コーデックはSBCに加え、LDACをサポートすることでハイレゾワイヤレス再生も視野に入れる。
そして目玉がHDMI eARCのサポート、なんとHDMIケーブルで直結しテレビの音声を入力できるという。サブウーファー出力端子も装備されているから、パワードサブウーファーを用意すれば2.1ch環境を実現できるというわけだ。
つまり、このM90、スペックは先日のリクエストにピタリと一致する。しかも価格は4万円台、旧友にはこれにしておけと連絡しようと思ったが、しばらく貸りられることになったので、パワードサブウーファー「T5s」とあわせて試すことに。サウンドクオリティと使い勝手を中心に、あれこれ検証してみよう。
HDMI eARCもサポート、豊富な入力経路
M90をセットアップする前に、手に持ち眺め回してみた。集成材で造られたエンクロージャーにはマット調の樹脂塗装がムラなく施され、シックな印象。フロント/リア部とのつなぎ目など細部も確認したが、いわゆる「バリ」のようなものはなく、丁寧に仕上げられている。
ユニットを設置する前に、とりあえず電源をつなぎBluetoothペアリングを実行した。Bluetoothに対応するEDIFIER製品は、専用アプリ「EDIFIER ConneX」で管理する仕組みだからだ。
アプリを触っていると、公式WEBサイトには未掲載の比較的レアな機能を発見。M90は、アプリでL/Rチャンネルを入れ替えることができるのだ。
大半のアクティブスピーカーはL/R固定で、M90も電源ケーブルをつなぐ側のユニットがRチャンネルだが、コンセントがパッシブ(L)側にあるなど不都合があれば、アプリでL/Rを逆転させればいい。入力がAUXの場合はLRの端子を入れ替えればいいが、BluetoothやUSBの場合はそう簡単にはいかないから、必要とされる場面は意外に多いはずだ。
MDF製エンクロージャーの剛性はいい感じ。拳でコツコツと叩いても響く印象がなく、片側約3Kgという重量にしては塊感がある。ツイーターとミッドバスの周囲にはウェーブガイドが設けられており、慎重に設計された様子が伺える。底面にはラバーフットが4つ配されているが、好みでインシュレーターを敷いてもいいだろう。
LRのユニットは4PIN DINケーブルで接続するが、付属品は5メートルとだいぶ長め。これはこれでいいし、テレビ周りで使う場合はこの長さが必要になるが、デスクトップで使うときには短いものを別途購入したほうがいい。
2024年発売の弟分「M60」はニアフィールドリスニング重視で、仰角15度のスタンドと1.8mの4PIN DINケーブルを同梱していたことを踏まえると、メーカー側のM90に対する考え(用途、対象ユーザ)が浮かび上がってくるところだ。
繊細さとエナジー感のバランス
M90の設置場所には、木製/3cm厚のダイニングテーブルを選択。実際の設置場所はワーキングデスクやローチェストだとしても、バスレフ式ゆえに壁から20cm以上離して設置すべきだからだ。それに、M90の電源スイッチ(回すとボリューム調整、短く押すと入力切り替え、長押しで電源オン/オフ)は背面にあるため、背面へのアクセス頻度を考えても壁から離したほうがいい。
まずはUSB-CケーブルでMacBook Airと接続し、ファイル再生を開始。「Audio MIDI設定」を起動すると、M90が最大入力96kHz/24bitのデバイスとして認識されていることを確認できた。
YUTAKA/横倉裕のピアノ曲「Reflections」は、繊細さとエナジー感のバランスがいい。バスレフの効果か、左手が担当するベース音域はややブースト気味だが、違和感はない。
それよりも、このサイズでこれだけの低域の量感が得られるというメリットのほうがうれしい。シルクドームツイーターとウェーブガイドの効果か、音像定位も明瞭だ。
バリトンギター1本の音を収録したパット・メセニーの「Moon Dial」は、低音弦の響きがリアル。豊富な低域情報とナイロン弦らしい丸みを帯びた音は、このアルバムならではの味わいだ。低域の量感と高域の艷やかさを併せ持つ再生環境がマッチするところ、しっくりくる音色を奏でてくれる。
Bluetooth/LDAC接続で同じ曲を聴いてみたが、音場の広がりにやや差が現れたものの、サウンドキャラクターは共通だ。輪郭が緻密で伸びがよく、低域の制動よくバスレフ式にありがちなモタつきが少ない。
情報量としてはUSB接続ほどではないものの、スマートフォンの音源を気軽に楽しむ手段としては大いにアリだろう。
サブウーファーを加えて「机上ミニシアター」
M90には「テレビサイドスピーカー」としての顔もある。eARC対応のHDMIポートが用意されているから、テレビとの接続はシンプルそのもの、HDMIケーブルでつなげばOKだ。
M90には光デジタルポートの用意もあるから、テレビ側のeARC対応HDMIポートが何らかの理由で塞がっている場合は光デジタルケーブルでつなぐという選択肢もある。筐体サイズゆえに音響面で制約がある、小型プロジェクターと組み合わせてもいいだろう。
個人的にアリだと思うのは、PCの映画鑑賞用スピーカー。NetFlixやPrime VideoをPCで楽しむ層は多いはずだが、ノートPCの内蔵スピーカーでは音圧不足だし、絶望的なレベルで低音が足りない。外部モニターで鑑賞するにしても、スピーカー非搭載の機種が珍しくないから、M90のようなアクティブスピーカーの出番は大いにあるというわけだ。
早速MacBook AirとUSBケーブルで接続し、NetFlixで「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」を鑑賞してみたところ、後半の列車アクションシーンはなかなかのもの。蒸気機関車の走行音やブレーキ音など金属が軋む効果音が多いシーンだが、映像に引けを取らない音のインパクトを感じさせてくれる。
とはいえ、MacBook Airの画面サイズ(13インチ)にあう視聴位置では、広々とした音場を得られるような位置にスピーカーを置くことは難しい。それに低音の量感、特にアクション映画に必須の「重低音」が足りないことも否定できないところだ。さすがに、デスクトップ/ニアフィールド指向のアクティブスピーカーに求める要素ではないものの、M90にはサブウーファー端子が用意されているので、試さないわけにはいかない。
T5sをつないだ状態でもう一度列車のシーンを再生してみると……これが、想像を上回る勢いでシアター感が出てくるのだ。
T5sを加えてからが本当の蒸気機関車の音だと認識してしまうと、T5sなしの状態に戻したときの音は物足りなく感じてしまうほど。サブウーファーを追加したのだから低域の量感が増すことは当然としても、テーブル上で再生しているにもかかわらず臨場感が出てくることは想定外だ。
T5sには30~160Hzの範囲でローパスフィルターを設定できるツマミがあり、その設定値(110Hz)が塩梅だったこともあるのだろうが、費用対効果の大きい投資であることは間違いない。
CP抜群、4PIN DINケーブルは買い足すべし!
1週間ほどM90を利用したが、デスクトップ/ニアフィールドで使用したときのディテールの緻密さ、低域の制動のよさは十分納得できるレベル。ノートPCの横に置くにはやや大柄な印象はあるが、少し離して設置するのなら問題にならないはず。
表面の仕上げなど質感も上々、サウンドクオリティの高さも相まってかなりの満足感を得られることだろう。
HDMI eARC対応だからテレビサイドスピーカーとしても活用しやすいが、口径4インチのミッドバスドライバーでは、さすがに低域の量感はもうひと息。テレビの内蔵スピーカーに比べれば、ディテールの描写力は格段に増すはずだが、映画を存分に楽しむにはサブウーファーが必須だ。
SUB OUT端子が用意されているのはそういう意味、サブウーファーを用意したほうが満足できること請け合いだ。
気になることがあるとすれば、やはりLR間をつなぐ4PIN DINケーブルか。テレビサイドスピーカーとして使うならともかく、デスクトップ/ニアフィールドに5mは長すぎる。追加出費にはなるものの、1.5mや2mのものを通販で入手したほうが幸せになれることだろう。













