[BD]「2012 ブルーレイ&DVDセット」

DVDも付いて3,990円の“お買い得大作”
地震・噴火・津波コンボで口が半開きの158分


 このコーナーでは注目のDVDや、Blu-rayタイトルを紹介します。コーナータイトルは、取り上げるフォーマットにより、「買っとけ! DVD」、「買っとけ! Blu-ray」と変化します。
 「Blu-ray発売日一覧」と「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。

■ Blu-rayの価格破壊!?



2012 ブルーレイ&DVDセット
【2枚組】

(C)2009 Columbia Pictures Industries, Inc.
All Rights Reserved.
価格:3,990円
発売日:2010年3月19日
品番:BRL-60620
収録時間:約158分(本編)+特典
収録ディスク:本編BD + 本編DVD
【以下BD版本編ディスク仕様】
映像フォーマット:MPEG-4 AVC
ディスク:片面2層
画面サイズ:シネスコ
音声:(1)英語
      (DTS-HD Master Audio 5.1ch)
    (2)日本語
      (DTS-HD Master Audio 5.1ch)
発売/販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

 映画の趣味は人それぞれだが、大画面テレビやプロジェクタなど、表示デバイス系を新調した時には、やはり映像的スケールが大きな作品を再生したくなるもの。洋画で言えば「スター・ウォーズ」のようなスペースオペラや、「ロード・オブ・ザ・リング」のようなファンタジー、超巨大なUFOが襲来する「インデペンデンス・デイ」や、ニューヨークを見たこともないような津波が襲う「デイ・アフター・トゥモロー」のようなパニック映画も、そうしたタイプの映画と言えるだろう。

 この手の映画は複雑なストーリーに頭を巡らせるより、圧倒的な映像に飲み込まれて、作品世界に迷い込むような没入感の中でないと“良さ”がわかりにくい。「小さなテレビで観た時はそうでもなかったけど、大画面テレビやプロジェクタを導入したら凄く楽しめた」ということも多く、AV趣味向けの作品と言い換える事もできるだろう。

 そんなスケールの大きなディザスタームービーを得意とするのが、前述の「インデペンデンス・デイ」や「デイ・アフター・トゥモロー」を手掛けたローランド・エメリッヒ監督。そんな監督が手掛けた最新作が、今回紹介する「2012」であり、期待にたがわぬ、これまでの作品を超える凄まじいスケールの1本に仕上がっている。

 作品紹介の前に、注目なのは価格。この作品、スケールの大きさに反して、セルソフトの価格が安く設定されている。3月19日発売で、Blu-rayとDVD版が用意されているが、BD版は本編DVDもセットにして3,990円。DVD版は特典ディスク付のエクストラ版が2,980円、本編DVDのみのスタンダード版はなんと1,980円だ。

 BDの新作洋画は、安いものでも4,980円程度。それと比べると「2012」は1,000円ほど安い事になる。さらに16日現在、amazonでは約26%引きの2,925円と、3,000円すら切っており「これ、ほんとにBD版の価格だよな」と、思わず再確認してしまった。加えて、本編DVD込みの価格なので、現在BD再生環境が無いという人でも、この価格なら「DVD版買うよりBD版買っておこうかな」と思わせてくれる。

 だが、いくら安くても中身がショボければ意味はない。そこで今回は発売より一足早くサンプル版BDをSPEから借りて、レビューしてみたい。


■ 口が半開きになる158分

 科学者のヘルムズリー(キウェテル・イジョフォー)は、太陽から放射されるニュートリノが増加した影響で、地球の核が熱せられ、地殻プレートが極度に不安定になっている事を突き止める。それは地球規模の大災害へ発展する事を意味し、Xデーは2012年12月21日と割り出された。それは現代に匹敵する天文学・占星術の知識を持ち、次元の概念まで持っていたと言う古代マヤの人々が、世界の終末と予言した日でもあった。知らせを受けたアメリカ大統領・ウィルソン(ダニー・グローヴァー)は、イギリスやロシア、日本などの首相と意見を交わし、秘密裏の計画を開始する。

 一方、売れない作家で、リムジン運転手としてなんとか生計を立てているジャクソン(ジョン・キューザック)は、離婚した妻の元を訪れ、子供達と久しぶりに再会。父と子でキャンプへと出掛ける。だが、目指していた湖は沸騰し、その光景を見た事で軍に一時拘束されてしまう。

 開放されたジャクソンは、謎の男チャーリーから、地球の滅亡が迫っており、各国政府はその事実を隠しつつ、秘密裏に巨大船を製造。限られた人間だけを脱出させようとしていると教えられる。荒唐無稽な話と信じなかったジャクソンだが、ロサンゼルスで史上最大規模の大地震が発生。その後も大地震や大津波、大噴火がアメリカ全土へと拡大していく。元妻や子供達と共に逃げ惑うジャクソンは、唯一の希望である巨大船を目指すのだが……。

 この手の映画は、ウリである天変地異シーンへの期待を高めるため、“予兆”描写がダラダラと長引く事が多いのだが、「2012」の場合はそのあたりの描写を比較的早めに切り上げ、ドンドンと大災害が連続していく。まるで「これからもっと凄い映像が待っているから、この程度の映像は出し惜しみしないよ」と言うかのようだ。

 事実、ロサンゼルスをマグニチュード10.5という途方もない大地震が襲い、ジャクソン達が本格的に逃げ惑うシークエンスが始まると、想像を超える映像が展開。約100インチのスクリーンで鑑賞していたが、口を半開きにしたまま「うぉあ~」とか「ぐぁ~」といったうめき声しか発せられず、しばらくすると映像の凄さに脳が追いつかず、凄いを通り越して笑い出してしまった。

 家が崩れ、道路がひび割れ、高速道路が崩れ落ち、ビルが折り重なって倒れるような天変地異の中を、ジャクソンは車で逃げ惑う。だが、大地のすぐ真下までドロドロのマグマになってしまったという設定なので、“地面が揺れる”レベルの地震ではない。例えるなら冬の池に薄くはった氷のようなもので、割れた大地はマグマの池に片っ端から飲み込まれる。つまり“大地が全部崩落する”という感覚だ。

 そのため、“ここまで逃げたら安心”という場所が地上に無い。アクション映画の派手なシーンは大爆発や車のクラッシュなどが起こった後、一端クールダウンするが、「2012」にはその暇と場所が無いのだ。最終的に“空を飛ぶ”しか助かる方法が無いので、ジャクソン達は車でなんとか飛行場まで逃げ、飛行機に乗り込むのだが、滑走している間に滑走路が片っ端から崩落。なんとか離陸してもビルやら隆起した地面やらが迫り来るため、本当に息つく暇がないのだ。

 映像の作り込みの細かさは特筆レベルで、高層道路から落ちる車、それに跳ね飛ばされる人、崩落するビルにしがみつく人など、呆れるほど細かな部分まで作り込まれており、コマ送りで確認するのも面白い。通常再生時はこんなに細かい部分まで見えないのだが、積み重ねが密度感を産み、映像に説得力を持たせている。他の映画でビルの崩落、大津波、火山の噴火など、CGで作られた凄い映像は見慣れているが、それらが渾然一体となり、ローランド・エメリッヒ監督ならではの圧倒的なスケール感で描かれるとグウの音も出なくなる。好き嫌いや、面白い、面白くないを超えて「とにかく凄いから一回観たほうがいい」という映像だ。

 この手の映画では、やはりストーリーはシンプルに限る。よく、「極限状態での人間性」とか「試される愛」みたいな人間ドラマを延々と織り込んだ結果、パニック映画としても、ヒューマンドラマとしても中途半端な作品が生まれる事が多いが、「2012」の場合はその比率も少なめで好感が持てる。

 なにせ、主人公の男が、別れた妻と、彼女に引き取られた子供達と逃げる映画だ。こんなのもう、戦争映画で出撃前に、胸ポケットの中の写真を仲間に魅せて「俺のフィアンセなんだ、戦争が終わったら故郷で結婚するんだ」と話す兵士の行く末ぐらい想像がつく。最初からハッピーエンドを予想する人が多いと思うが、「俺はエスパーか」と思うほど予想通りの展開が待っている。

 だが、この単純明快さは、良い方向に作用している。頭を空っぽにして、地球規模の大災害をくぐり抜ける主人公達にハラハラし、「自分なら何処へ逃げるか?」、「どうやって生き残るか?」、「自分たちだけ凄い巨大船で逃げようとする奴らがいたらどうするか?」に脳みそを割きながら観るのが正しいスタイルであり、こうしたジャンルの映画としては非常に楽しめる。むしろ映像に圧倒され過ぎて、鑑賞後にグッタリしたほどだ。


■ 「映画は現実になる」と言われても困ります

 CGを多用した作品では、輪郭がカリカリにシャープ過ぎて逆にニセモノっぽく見えてしまうものもあるが、「2012」は適度なソフトフォーカスで実写部分とのマッチングに違和感が無い。広大な都市が津波にのみ込まれるようなスケールの映像も、それなりの現実味を帯びている。また、パニックシーンの絵作りが基本的に明るく、再部まで見渡せるのも、作り込みへの自信の現れだろう。発色も良く、天変地異を前に呆然とするジョン・キューザックのアップでも、肌の血色が良く、階調も豊富だ。

 「インデペンデンス・デイ」に登場した、空を覆う巨大なUFOでも感じた事なのだが、ローランド・エメリッヒ監督は人間との対比を使い“もの凄く巨大なモノ”を表現するのが上手い。「2012」では崩れる大地や、波のように隆起する山脈、逃げ込む巨大船などのスケール感に圧倒される。これはぜひプロジェクタ+スクリーンで鑑賞して欲しい。

 サウンド面で印象的なのは地震だ。爆発ではサブウーファが唸るのは一瞬だが、地震では揺れている限りシアタールームを揺さぶるような低音が吹き出され続ける。室内シーンでは背後の柱や天井がギシギシ、メキメキと壊れていく音に囲まれ、自分の家が壊れそうな気がしてくる。火山から吹き出された火の玉が降り注いだり、ビルから様々なものが落下したりと、サラウンドを活用した表現が多く、リアルかどうかはさておき、音響面でもAVデモ的に使えるソフトと言えそうだ。

 BD版ならではの特典はとして、マヤ暦に関するコンテンツが用意されている。映画の題材ともなったマヤ暦に関するもので、マヤ暦の詳しい解説や、自分の誕生日を入力すると性格分析をしてくれたり、未来の日付を入力すると、その日を占った結果を表示する事もできる。試しに本日3月16日を占ったら「選択の才能が神々より授けられました」という意味深な結果が出た。テレビや雑誌の占いはまったく信じないが、マヤ暦を使ったというだけで厳かな感じがするのが不思議だ。

 肝心の「2012年人類滅亡説」に関しては「世界の破滅を裏付ける科学」というコンテンツで解説されている。簡単に言うと、マヤの神話ではこれまで4つの世界が存在していたが、いずれも滅び、今現在は第5の世界にあたるが、その終焉が2012年とされているというもの。“終焉に何が起こるか”は諸説あるらしいが、今回の映画では「こんな天変地異が起きるのではないか?」と想像したというわけだ。

 監督が「真相は誰にもわからないよ」と肩をすくめる一方で、「この天変地異は起こると確信を持って言える」と断言する作家のパトリック・ゲリル氏がカッコイイ。同じく作家のダニエル・ピンチベックがその理由として語る「ユングの集合的無意識が……」というような説明はよくわからないが、パトリック氏の「私が何か言っても人は信じない。だが映画なら観て、そして、“本当かもしれない”と思い始める。そして調べれば何が起きるか気付くはずだ」というぶっちゃけた熱弁が胸を打つ。彼はなんでもサバイバルグループと共に終末に備えているそうで、ちょっとファンになった。

 見所はなんといってもCGのメイキング。広大なスタジオに用意されたブルースクリーンのサイズまでケタ違いで、その前で俳優達はCG合成後の映像を想像しながら演技を行なう。インタビューでは「何も無いのにあるフリをして演技するので、子供の時にした芝居ごっこに戻ったような気がしたよ」など、俳優陣の苦労が伺える。

 スタッフ陣によれば、監督は“どの部分をCGにして、どの部分を実写にするか”という使い分けが上手いそうだ。また、欲しい映像のビジョンが明確なのも特徴のようで、「それが明確でないと、試行錯誤を繰り返さなければならないので大変になる」(共同制作・視覚効果スーパーバイザーのフォルカー・エンゲル氏)という。ローランド・エメリッヒ監督がスケールの大きなディザスタームービーを得意とする理由の一端がわかった。


■ AV的にもオススメのお買い得大作

 映像・音響の迫力と言う面で、AV的にオススメできる作品。来客時のデモ用としてもインパクトがあって良いだろう。大勢の人が災害に飲み込まれる作品ではあるが、あまりグロテスクな表現は無く、子役のキャラクターがポジティブな方向に作用しているので、家族で鑑賞しても良さそうだ。

 ストーリーに深みや意外性などを求める人向きの映画ではないが、「マヤの予言」を取り入れる事で、単なるディザスタームービーに深みをもたらそうと試みているのは面白い。ただ、正直言って、映像に圧倒されるばかりで鑑賞後に「マヤうんぬん」の印象は薄かった。

 Blu-rayの新作洋画はまだまだ高価だが、DVD付で3,990円という今回の「2012」や、2月24日にワーナーから発売された海外ドラマ「FRINGE/フリンジ」の第1巻(980円)など、思い切った価格のタイトルも登場してきた。低価格化が各社に波及すればユーザーとして嬉しい限りだが、「2012」は、その1つのキッカケになりそうな“お得感”の高い1本である。


●このBD DVDビデオについて
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(2010年3月16日)

[AV Watch編集部山崎健太郎 ]