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第416回:iPadアプリも登場した「IMSTA FESTA 2010」レポート

〜iPad対応ギターアンプ&エフェクタや、クラウド型VSTなど 〜


 5月15日、16日の2日間、東京・初台にあるアップル本社内のセミナールームで、DAWやDigital DJなどのDTM・ミュージックツールの展示イベント「IMSTA FESTA 2010」が開催された。今回で4回目となったIMSTA FESTAでは、ローランドが初参加したほか、ビープラッツのブースを使いながらヤマハも参加したことで、コルグと合わせて3大メーカーが揃い、定番イベントとして確立した印象を受ける。さらにクリプトン・フューチャーメデイアの伊藤博之氏と、評論家の津田大介氏による「音楽の未来について」という基調講演が行なわれ、多くの人を集めた。

 そして各社ブースでは、新たな製品が数多く登場していたので、これらについて紹介する。


「IMSTA FESTA 2010」の会場の様子



■ iPad/iPhone関連

コルグのiPadアプリ「iELECTRIBE」

 アップル本社内のセミナールームでの開催ということもあり、今回のIMSTA FESTAで本来、目玉になるはずだったのがiPad。とくに、コルグがすでにiTunes App Storeで発売を開始しているiPad用のアプリケーション「iELECTRIBE」などが脚光を浴びるはずだったが、iPad自体の発売が5月28日に延期されてしまったことで、正式な展示もなく、ややトーンダウンという感じではあった。

 それでも、iPad/iPhone関連の話題は多く、注目を集めていた。そのひとつがメディアインテグレーションが展示をしたり、セミナーを行なっていたIK MultimediaのAmpliTube iRig。これはiPhone、iPod touch、iPadをギター・アンプ&エフェクト・システムとして使うというもの。アプリケーションであるAmpliTube for iPhoneは収録モデルの数により無償のFree版、LE版、Full版の3種類があり、いずれも近日中にiTunes App Storeで公開される予定だ。


IK MultimediaのAmpliTube iRig 画面の例

 基本的にはPC版をiPhone用に移植したものだが、Free版でもエフェクター=ストンプボックスとしてディレイとオーバードライブの2つ、アンプ+キャビネットのシミュレータが1つ、そしてマイクシミュレーターとしてダイナミックとコンデンサーの2つが使える。ここにIn App購入でストンプやアンプ+キャビネットを追加していくことができるという構成となっている。

AmpliTube iRig

 問題となるのが、どうやってギターを入力し、AmpliTubeを通した音を出すかだが、その答えが「AmpliTube iRig」というハードウェアだ。といっても、iPhoneのヘッドフォン&マイク端子に刺すことで、ギター入力と、ヘッドフォン出力に分岐させることができる単純なアナログのダイレクトボックスで、iPhoneをハイインピーダンス入力対応にすることで、ギターを直結できるというわけだ。まだ発売日は確定していないが、夏を予定しており、標準価格は4,830円となる。今回、β版が参考出品という形で出ており、試奏させてもらったが、感覚的にはまったくレイテンシーがなく、かなり遊べるツールに仕上がっていた。

 こうしたエフェクター、アンプシミュレーターとしての機能のほか、チューナー機能、メトロノーム機能も用意されている。録音機能などは装備していないが、手持ちの曲をBGMとして鳴らしながら演奏するという機能が搭載されていた。ただし、iPhoneに収録されているMP3やAACをBGMにできるというわけではなく、別途MP3ファイルなどをサーバー経由でAmpliTube for iPhoneへ転送させる必要がある。なぜ、こんな面倒なことをするのかというと、レイテンシー問題があるようで、アプリケーションが直接使えるところにファイルがないと、音にかなりの遅れが出てしまうらしい。

 このiRigとAmpliTube、いずれもiPadでもそのまま使えるが、IK MultimediaではiPad専用版も現在開発中のようで、近い将来お目見えしそうだ。

 もう1社、iPhone、iPadに対しての取り組みを発表していたのがヤマハのY2プロジェクトだ。現時点、ヤマハがまだIMSTAのメンバーに入っていないこともあり、ビープラッツのブースでの展示となっていたが、ここで披露されていたのは、先日もインタビューしたクラウド型VSTだ。そのインタビューにおいても将来iPhone、iPadへの展開を匂わせていたが、すでにプロトタイプが動いていた。デモされていたのはクラウド上でパラメトリックEQやリバーブが動くというもの。ここではMP3ファイルを再生する際に、クラウド型VSTを通して鳴るという仕掛けになっていたが、そうした使い方だけでなく、YouTubeやニコニコ動画を再生する際に、クラウド型VSTをプラグインとして経由させて鳴らしたり、こうした動画投稿サイトにアップロードする際にエフェクトをかけるといった使い方も想定しているとのこと。これまで想像もしていなかった、ユニークな使い方がいろいろと登場してきそうだ。


ヤマハのY2プロジェクトのコーナー(ビープラッツのブース) デモの内容
クラウド型VSTで、ソフトシンセを使ったデモ

 さらにPC版のクラウド型VSTにおいてはエフェクトだけでなく、ソフトシンセを使ったデモも行なわれた。エフェクト用のPlugin Dockに対してPlugin Dockを通すことで、MIDIデータがオーディオへ変換されるわけだが、約2秒のレイテンシーがあるものの、Cubase上のMIDIデータがキレイな音で演奏されていた。デモしていたのはサンプリング系のピアノ音源と、マルチユースのGM音源の2種類だった。



■ Singer Song Writerがバージョンアップ

 今回6年半振りのバージョンアップとして登場して注目を集めていたのが、インターネットの「Singer Song Writer 9 Professional」だ。4月30日に発売されたこのソフト、オープン価格だが、実売価格は従来バージョンよりちょっと高めの65,000円前後。見た目も大きく変わり、いまどきのDAWっぽいユーザーインターフェイスになり、SonnoxのEQ、リミッター、リバーブを搭載したのが大きなポイント。また同社が単独のプラグイン・シンセとして発売しているLinPlugのドラム音源であるRM V、オルガン音源のOrgan3、デュアルマトリクスシンセのOCTOPUS、アナログシンセのALPHA3、さらにRolandのGM音源Hyper Canvasなどのプラグインなども搭載されている。

 さらに、このSinger Song Writer 9 ProfessionalにTASCAMのUSBオーディオインターフェイス「US-144MK II」をバンドルした、「Singer Song Writer 9 Professional -First Studio Pack-」も同時発売されており、こちらの実売価格は73,290円前後となっている。

 なお、夏ごろを目処に、Sonnoxのプラグインなどを省いたSinger Song Writer 9 Standardというバージョンもリリースされるとのこと。こちらは32,000円前後と、手ごろな価格になる模様だ。


Singer Song Writer 9 Professional US-144MK II Singer Song Writer 9 Professional -First Studio Pack-

 フックアップが前面に打ち出していたのが、4月末に発売されたフランスのARTURIAのソフトシンセ「ANALOG FACTORY V2.5」。ARTURIAの復刻版アナログシンセであるminimoog V、Moog Modular V、CS-80V、ARP 2600 V、Prophet V、Prophet VS、Jupiter-8Vの中から、使える音色3,500種類をピックアップしてひとつにまとめた音源だ。全部のパラメータがいじれるわけではないが、フィルターやLFOセクションなど、各音色における最重要なパラメータがいじれるので、誰でも簡単に扱える。

  このANALOG FACTORYソフト単体で29,800円となっているが、ANALOG FACTORY専用に作られたUSB-MIDIキーボードとセットにパッケージが38,000円と低価格に設定されている。32鍵盤のキーボードだが、専用のものなので、特に設定をすることなく、各パラメータをいじれるようになっている。時期は未定だが、近い将来25鍵盤タイプと、49鍵盤タイプも発売される見込みだ。


ANALOG FACTORY V2.5 ANALOG FACTORY専用に作られたUSB-MIDIキーボード

 宮地商会がブースやセミナールームでデモをしていたのが、ドラムリプレイサー、つまりオーディオのドラムトラックを別の音色のドラムに差し替えるためのツールだ。同社では以前からWaveMachine LabsのDRUMAGOGというツールを発売していたが、Slate DigitalのTriggerというソフトとSPLのDrum Xchangerというソフトをリリースするという。

 1社で似た製品を複数発売してしまうというのが面白いところだが、Triggerは一定以下のアタック音に対しては自動的にリプレイスさせない“Leakage Suppression”という機能により、被りが多く含まれているトラックにおいても希望のパートのみを正確に認識できるのが大きな特徴となっている。またオーディオトラックを元にMIDIトラックを作成するための機能も装備している。一方Drum XchangerはSPLのダイナミックプロセッサ“Transient Designer”の技術をベースにして作られたドラムリプレイサーで、ゴーストノートを含め、オリジナルサウンドをレベルに関わらず正確に認識できるのが特徴。オリジナルサウンドのダッキング機能や上下1オクターブのピッチシフト機能、ハイパス・ローパスフィルターなどを装備している。

 いずれも3〜4万円程度を予定しており、Triggerは今月中の発売、Drum Xchangerはもう少し時間がかかり年内の発売予定とのことだ。


Slate DigitalのTrigger SPLのDrum Xchanger

 エムアイセブンのブースに展示されていたのはSEM(Synthesizer Expander Module)という、ちょっとゴツくて大きなモジュール。これは70年代から80年代に一世風靡したアメリカのシンセサイザ、Oberheim Electronicsの創業者であり、設計者であるTom Oberheim氏自身が1974年に生産された完全アナログ回路のモノフォニック・シンセサイザーを復刻した製品。すでにCV-GATE方式のパッチ・パネル版はすでに発売されていたが、今回登場したのはMIDI入力版。つまりMIDI入力によって鳴るアナログシンセサイザで2VCO、2エンベロープジェネレータ、1VCFという構成のモノの音源。リアパネルを見ると、MIDIの入力のほかに、CVとGATEの出力もあるので、MIDIからCV-GATE変換も可能になっている。パッチ・パネル版もMIDI版もなんとOberheim氏が自らハンダごてを握って1台1台作っているハンドメイドのシンセとのことで、台数が非常に限られているらしいが、いずれも99,800円で購入できる。


SEM 背面

 カタログなどからもDigidesignのブランド名が消えたアビッドテクノロジーが打ち出していたのがProToolsの拡張オプション、「ProTools Instrument Expansion Pack」だ。これはRTASプラグインとしてこれまで単体発売されていたドラム音源のStrike、ビンテージエレクトリック・ピアノのVelvet、プロフェッショナル・サンプラー・ワークステーションのStructure、ビート&ループ・クリエイターのTransfuser、ハイデフ・ソフトウェア・シンセサイザのHybridの5つの音源をセットにしたパッケージ商品。WindowsとMacのハイブリッドで実売価格52,500円という設定になっている。パッケージとして購入できるほか、すでにいずれかの音源を持っているユーザーなら割安な価格でのアップグレードパスも用意されている。


ProTools Instrument Expansion Pack アビッドのブース



■ PC用DJ関連

 PC-DJ関係ではVestaxが低価格なUSBのDJコントローラ、Vestax for the people Typhoonを実売価格29,800円前後でリリースした。これは昨年末に発売されたVestax for the people SPINのWindows対応版ともいえるもの。SPINは世界で唯一iTunesと直接連動するDJソフトであるdjayをコントロールできるというハードウェアだった。ただdjayがMac専用のアプリケーションであったため、SPINもMac専用となっていたが、今回登場したTyphoonはバンドルアプリケーションをNative InstrumentsのTRAKTOR LEとしたため、Windowsでも使えるようになっている。

 ハード的な仕様はSPINもTyphoonもほぼ同じで、コントロール機能数53、ループ機能数2、エフェクト機能は4種類・独立2系統などとなっている。価格からも分かるとおり、業務用というよりも個人が気軽に楽しめるガジェット的な製品であるため、軽くてコンパクトな仕上がりとなっている。とはいえ、なかなか使いやすい製品で、ユーザーインターフェイス的にもよくできている。


Vestax for the people Typhoon 昨年末に発売されたVestax for the people SPIN

 同じくPC-DJとしてプロ仕様の製品を出していたのがハイ・リゾリューション。こちらはALLEN&HEATHの新製品xone:DXを展示しており、これは4チャンネルレイアウト+エフェクトという構成のもの。ライブラリはiTunesのものが使えるようになっているので、曲データの管理もしやすくなっている。xone:DXはすでに4月に発売されており、オープン価格で実売が159,800円程度となっている。

 一方、新製品というわけではないが、代理店変更により先日からハイ・リゾリューションが扱うようになったのがMark of the Unicorn(MOTU)の製品。マーケティング戦略の見直しを図っている最中とのことだが、DAWであるDigital Performer 7の価格が前の代理店時代75,000円程度だったのが、実売価格57,800円に引き下げられるなど、オーディオインターフェイスも含め、かなり安く設定されているようだ。


ALLEN&HEATHのxone:DX Digital Performer 7



■ そのほか

 冒頭で紹介したメディア・インテグレーションはfxpansionのドラム音源、BFD2の入門版ともいえるBFD ecoおよび、サンプリング系のピアノ音源の代表であるSYNTHOGYのIvoryの新バージョン、Ivory IIを参考出品した。


BFD eco Ivory II

 まずBFD ecoはサブタイトルに「ACOUSTIC DRUM SOFTWARE」と書かれていることからも分かるとおり、アコースティックドラムに絞った音源。基本的にはBFD2の機能を備えているが、アコースティックに絞ったために、インストール容量が非常にコンパクトになっている。BFD2では25〜50GB程度の容量を消費するのに対しBFD ecoは4GB程度とシンプルになっている。もちろん、必要に応じて拡張していくことが可能になっており、BFD2用の拡張音源を読み込むことで、追加していくことができる。発売は5月末から6月あたりを予定しており、16,800円となる。

 Ivory IIのほうは現行のIveryのバージョン1.7からメジャーバージョンアップするもので、ライブラリの容量が現行の40GB程度から52GB程度へと大きくなる。新機能の目玉ともいえるのが、弦同士の共鳴。つまり和音のコードを弾いたままの状態で、メロディーを弾くと、和音側の弦が共鳴するというもの。新たに登場したSympathetic Resonanceの設定により、共鳴度合いが調整できるようになっている。Ivory自体はサンプリング音源の代表ともいえるものだが、Pianoteqなどの物理モデリング音源が台頭してきているだけに、そうした機能も追加した形になっているようだ。価格や発売時期はまだ未定だが、おそらく夏ごろに、現行バージョンと同程度の価格で登場するものと思われる。

V-STUDIO 20のMac版

 今回IMSTA FESTAへは初参加となったローランドは、先日V-STUDIO 20やR-05ほか各種製品をいろいろ発表したばかりなので、新ネタはないのでは……と思っていたが、ひとつ参考出品という形でMac用のアプリケーションが登場していた。それはV-STUDIO 20のMac版。とはいえ、SONARやGuitar Tracks Pro 3のMac版が登場したというわけではなく、V-STUDIO 20のエフェクトのコントローラ機能のMac版であり、Garage Bandなどと組み合わせて使えるようになっている。まだ、正式なリリース予定は発表されていないが、今後このMac版はネットからのダウンロードで入手できるようになるとのことだ。

 今回登場した製品については、iPad関連製品を含め、入手できたところで順次取り上げていきたいと思う。


(2010年 5月 17日)

= 藤本健 =  リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またAll Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto

[Text by 藤本健]