西川善司の大画面☆マニア

第170回

ソニーの4K BRAVIA登場「KD-84X9000」

4Kの魅力は3Dか? 脅威の臨場感

商品企画担当の山田誠氏(左)と画質設計担当の井川直樹氏(右)

 ソニーは84インチの4K/2K解像度のBRAVIA「KD-84X9000」を発売した。民生向けブラビアとしては最大級の84インチ大画面に、現状としては最高解像度の4K2K解像度を組み合わせた製品だけに注目度は高い。価格も168万円と低価格化が進んだ現在のテレビを考えると破格といえる。

 なお、今回は筆者宅での評価でなくソニー社内において視聴。製品企画を担当したホームエンタテインメント&サウンド事業本部 企画戦略部門 TV商品企画部 企画1課 プロダクトプランナーの山田誠氏と、画質担当の同事業本部 TV事業部 商品設計2部 設計3課 シニアエンジニアリングマネージャー/主任技師の井川直樹氏に話を伺いながらKD-84X9000の実力をチェックした。

設置性チェック〜量販店での購入が可能だが、設置に際しては事前調査が必要

KD-84X9000

 KD-84X9000の外形寸法は213.7×56.7×120.9cm(幅×奥行き×高さ)。高さはテーブルトップスタンド時で、背の高いフロアスタンド利用時は151.1cmとなる。奥行きはディスプレイ部のみで9.0cm。ソニーの説明では「セミダブルベッドのサイズ感をイメージしてもらえれば」とのこと。

 ディスプレイ部の重量は約80kg。スタンド込みでは、テーブルトップスタンド装着時で約95kg、フロアスタンド装着時で約98kgとなっている。

フロアスタンド組み付け状態
身長175cmの筆者が両手を広げた状態。対角長にして約2.1m
ディスプレイ部の厚みは9cm。画面サイズを考えれば十分薄型といえる?
フロアスタンドの脚部には配線を隠せるギミックが

 KD-84X9000は、家電量販店等での購入は可能だが、搬入と設置に際してはソニーの特約専門業者が事前に現地調査を行なう。ユーザー宅周囲の搬入路や間取りなどを総合的に判断し、実際の搬入/設置計画を進めるとのことだ。

 また、設置後は常時約100kgの荷重がかかるため、フロアリングの板が凹んだりすることもあるため、そのあたりについてはユーザーが事前了承する必要がある。ピアノ等の設置と同感覚でいた方が良い。なお、ここまで大きな製品ではあるが壁掛け設置にも対応しており、その際には「SU-WL500」(26,250円)が別途必要になる。

 実際の製品に目を向けてみると、良くも悪くも現行型のBRAVIAとは異なる作りをしている。

額縁部には意図的につや消し×凹凸加工がなされている。これは、室内照明や窓からの明かりの差し込みに対して額縁が光ることを低減させるための工夫

 残念なのは、現行のハイエンドBRAVIAの基本となっているモノリシックデザインを実現できていないという点だ。つまりKD-84X9000には、明確な段差を伴った額縁が存在している。オプティコントラストパネルにもなっておらず、BRAVIA特有の表示面が浮き出るような表示感は実現されていない。この辺りは画面サイズが大きすぎるために実現が難しかったのだろうか。

 スピーカーは、別体型のスピーカーユニットを左右に合体させる方式を採用している。ソニーによれば、当初は他のBRAVIAシリーズのようなディスプレイ部の下部に埋め込んだインビジブルデザインも検討したとのことだが、画面サイズが大きいことから、音像操作技術だけでは画面中央に音像を定位させるのは難しいと判断し、このようなデザインになったとのことだ。

 ただ、別体型になったことにより、脱着も可能。これを取り外してユーザーの好みのオーディオシステム側でサウンドを鳴らすこともできる。とはいえ、さすが最上位機のスピーカーユニットだけあり、片側ユニットだけでスピーカーユニットが5基、出力25W(総計10ユニット、総出力50W)という贅沢な構成になっている。

左右に別体型として提供されるスピーカーユニット
10スピーカーユニットの内訳

 片側ユニットには高音域用のツイーターが1基、中音域用のウーハーが2基、そして重低音用のサブウーハーが2基実装されている。別売の高音質テレビスピーカー顔負けのスペックといったところだ。

 実際、出音は良好だ。聴感は非常にフラットでクセがなく、音量を上げていっても破綻がない。このあたりの音響性能は、総計10ユニットからなるマルチウェイスピーカーシステムの実力だけでなく、ソニーのデジタル音像成形技術「クリアフェーズ」が効いているのかも知れない。

スピーカーは10度の角度が付けて取り付けられている
スピーカーの角度調整が可能

 定格消費電力は574W、年間消費電力量は555kWh/年。55型「KDL-55HX950」の約3倍となっている。参考までに示しておくと、ソニーのSXRDプロジェクタ「VPL-HW50ES」の定格消費電力が300Wだ。

 KD-84X9000は、プロジェクタで得られるほどの大画面を直視型ディスプレイで実現できるが、消費電力はそれなりに高い。この点は留意しておきたい。

接続性チェック〜HDMIによる4K2K接続が可能

 接続端子パネルは背面と正面向かって右側面にあり、その実装端子のラインナップは前々回本連載で取り上げたブラビアHX950とよく似ている。

側面接続端子パネル
背面接続端子パネル

 HDMI入力端子は背面に2系統、側面に2系統あって、背面側がHDMI1、4、側面側がHDMI2、3と不可思議な割り当てになっているところもHX950と同じだ。隣接しているHDMI端子をなぜ連番で割り当てていないのかが不思議だ。

 HDMI端子は背面側HDMI1、4と側面側HDMI2、3とでは機能差があり、背面側のHDMI1、4が1080pまでの入力までの対応、側面側HDMI2、3が3,840×2,160p(30Hz/24Hz)と4,096×2,160p(24Hz)の4K2K入力に対応している。オーディオリターンチャンネル(ARC)に対応するのは背面側HDMI1のみ。

 パソコンからのHDMI出力による4K2K接続は、GPUがNVIDIAならばKeplerコアのGeForceないしはQUADRO、AMDならばSouthern Islandsコア世代のRADEON HDないしはFireProが必要になる。PlayStation 3との4K2K接続は、PS3専用アプリケーション「PlayMemories Studio」経由でのみ、静止画写真表示がサポートされる。4K2K動画の表示には非対応だ。静止画の表示のみとはいえ、ハードウェア的には本来4K2K出力が行なえないPS3に対して特別なサポートを行なってくれる姿勢は素晴らしい。

3,840×2,160ドットのHDMI接続が可能。ただし、24Hz、30Hzまで。60Hzには未対応

 アナログビデオ入力はコンポジットビデオ入力とD5入力をそれぞれにアナログ音声入力付きで1系統ずつ備えている。背面にはPC入力端子用にD-Sub15ピン(アナログRGB)や、音声入力用のステレオミニジャック端子も備えている。ステレオミニはメニューの設定で(排他的にだが)HDMI3の音声入力として利用することも可能だ。

 USB 2.0端子は側面側に2系統を装備する。USB 1が汎用用途、USB 2が録画用のUSB HDD接続用だ。USB 1にはUSBメモリを挿すことができ、USBメモリ内のデジタル写真を表示することが可能だ。この際、ちゃんと4Kの829万画素の表示を行なってくれるので、一般的なPCディスプレイで見るよりも高精細な映像が楽しめることになる。ここは地味ながらもKD-84X9000の価値を高める大きな機能の1つだと思う。

 音声関連では光デジタル音声出力とヘッドフォン用のステレオミニ出力を1系統装備。ネットワーク機能は、Ethernetのほか、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANを備える。

 地上デジタル放送用、BS/CSデジタル放送用のアンテナ端子を1系統装備。チューナはダブルチューナ仕様で地デジ2系統、BS/CSデジタル2系統を内蔵している。それぞれ視聴用と録画用と言う位置づけだ。

 接続性に関してはBRAVIA HX950とほぼ同等だ。高価な製品なので、4K2Kディスプレイとしても使えるように、DisplayPort1.2あたりを実装してくれれば良かったのに、と思う。本機ではネイティブ4K2K映像を入力しての60Hz表示手段が提供されない。ここは残念でならない。

操作性チェック〜リモコンやメニュー構成はほぼHX950と同じ

 KD-84X9000のリモコンはHX950とほぼ同じだ。高額商品なので、かつてのQUALIAシリーズでのようなスペシャルなリモコンを期待していただけに少々残念である。

リモコン。最近のBRAIVAと共通のものだ
Felicaポート搭載

 メニュー構成や操作感もHX950と同じ。メニューを操作している際のレスポンスが若干HX950よりももっさりした印象を得たが、大きな不満が出るほどではない。ただ、最近はスマートフォンなどのGUI操作がキビキビしているので、こうした家電製品のもっさりしたカーソル移動やメニュー切換にストレスを感じてしまうユーザーは今後は増えるはずだ。今後、家電メーカーに対する共通課題として捉えていて欲しい要項だ。

 アスペクトモードのラインナップもHX950と同じ。画調設定もコンテンツの種類に応じて画質モード(画調モード)が選べるという2段組み合わせ方式を採用するのもHX950と同じだ。

 競合の東芝REGZAシリーズもこうした「シーン×画質モード」の画調設定を採用するようになったが、初心者には分かりづらい。シーン選択は「オート」「マニュアル」の2段階にして、画質モードの方をバリエーション豊かにした方が分かりやすいのではないか。

 KD-84X9000およびHX950の「シーン数=9」×「画質モード=3」のバリエーションは、設定の豊かさを超えて「分かりにくい」という印象だ。次期モデルではもう少しここを分かりやすくして欲しいと思う。

 HX950における「シーン」と「画質モード」の組み合わせは以下のようになっている。

【シーン】 【画質モード】
シネマ シネマ1、シネマ2
スポーツ スポーツ
ミュージック スタンダード、ダイナミック、カスタム
アニメ アニメ
フォト フォト-スタンダード、フォト-ダイナミック
フォト-オリジナル、フォト-カスタム
ゲーム ゲーム-スタンダード、ゲーム-オリジナル
グラフィックス グラフィックス
シーンセレクト切 スタンダード、ダイナミック、カスタム
オート スタンダード、ダイナミック、カスタム

 二画面機能を初めとした便利機能、「Sony Entertainment Network」(SEN)の形で提供されるネット関連機能もHX950と同じ。本連載(HX950編)を参照してほしい。

画質チェック〜4K2Kによる質感再現型2Dと視界再現型3D

 公式発表はないが、KD-84X9000の液晶パネルはLG DisplayのIPS方式液晶パネルを採用しているとみられる。これは東芝が発売を予定している84インチの4K2Kレグザと同一パネルと思われる。

画素のクローズアップ写真

 サブピクセルは「く」の字形のRGB配列で、オプティコントラストパネルではないものの、パネル面はグレア加工されている関係からか、フォーカス感は良好だ。

 バックライトは白色LEDで、LEDモジュールを上下エッジに配する方式を採用する。HX950は直下型を採用し、さらには「インテリジェントピークLED」という先進のエリア駆動(部分駆動/ローカルディミング)を採用していたので、ここは若干妥協している部分になる。

 ただ、上下エッジライト方式とはいえ、「ダイナミックエッジLED」という技術名の簡易的なエリア駆動を採用している。これはLEDモジュールを上下で独立して発光させてエリア駆動を行なうものになる。

 具体的にいうと、上部で光らせると光は導光板を通じ、画面上辺から画面中央に向かって発光する。下部で光らせた時も同様に画面下辺から導光板によって画面中央に向かって発光する。つまり、エリア駆動とはいっても縦帯状に発光してしまうわけだ。なのでエリア駆動とは言えかなり大ざっぱなものになる。

 KD-84X9000も、ダイナミックエッジLEDの効果で、画面全体が暗くなるような暗めの映像だと、それなりに暗部も締まってくれるのだが、明暗がはっきりした映像だと、やはり黒浮きが目立つ。「ダークナイト」の夜のシーンやチャプタ23のジョーカーの尋問シーンは、黒の締まりにおいてHX950に及ばない印象を持つ。

 IPS液晶は視線角度に対しての色調変移が少ない特性はあるが、黒の沈み込みはVA液晶に及ばない。この黒の特性を補うのには直下型バックライトとエリア駆動の組み合わせは有効だったのだが、ここをあきらめてしまったのはちょっともったいない。

 最初に4K2Kリアル解像度の静止画映像を見たが、当たり前ながら圧倒的な解像感には圧倒される。

 対角線にして2m超の84インチ大画面はもはやプロジェクタによる投射映像の領域だが、これをわずか1.5m付近の近くで見ても、ドットの粒状感を知覚できない。フルHD解像度のプロジェクタの映像は、視聴距離にして約1.5mで見ると、何となくドットの存在は分かるものだが、KD-84X9000の場合はこれが分からないのだ。

4K/2Kは1.5Hでの視聴を推奨

 ソニーは従来のテレビは画面の縦全長(H:高さ)の3倍(3H)の視聴距離で見るのが奨励値とされていたが、ソニーでは4K2Kテレビについては1.5Hの視聴距離で見て欲しいと主張している。KD-84X9000のディスプレイ部の高さは約104cmなので、視聴距離約1.5mで見るのは近すぎることはなくむしろ奨励値なのだ。

 1.5mの距離から見ると、KD-84X9000の映像は視界の大部分を覆うようになり、それでいてドットの粒状感がないために、静止画を見ているのにもかかわらず、現実情景を見ているような錯覚になる。「高解像度には大画面が有効だし、大画面には高解像度が必要だ」ということを実感を持って思い知った瞬間であった。

 発色は近年のBRAVIAらしいナチュラル系の発色で過度な演出のない自然な色あいだ。広色域モードとも言える「ライブカラー」モードも搭載されているが、そうした調味料を振りかける前に、シェフが出してきた完成度の高いデフォルトの味わいでまずは楽しむべきと感じる。人肌の発色も雑味がなく透明感もあり、良好だ。

 ソニーが誇るデータベース型超解像技術の「リアリティクリエーション」機能は、KD-84X9000にも搭載されている。それも、4K2K解像度をもつKD-84X9000専用の「4K X-Reality PRO」と命名された新世代版として提供されており、入力されたフルHD(2K)映像を4K2K化するロジックと、入力された4K2K映像をさらに高精細にするロジックとで構成されている。

 4K2Kリアル表示への感動の方が大きかったために、後者(入力された4K2K映像をさらに高精細にするロジック)の方はいわゆる適応型のシャープネス強化というか、輪郭強調的な効果のようにしか感じられず、それほど大きな感動はなかったが、前者(入力された4K2K映像をさらに高精細にするロジック)の方は非常に効果が大きく、KD-84X9000のもっとも魅力的な機能の1つだと感じた。

 特に感銘を受けるのが、フルHD状態では気がつけなかったような色ディテールが4K2K化されることによって顕在化する点だ。テクスチャディテールがただ鮮明になるのではなく質感のようなものが再現されるのだ。

 「2K映像が4K映像相当に見える」というのは言いすぎだとしても、2K映像がより高いフォーカス感を伴って見えるというか、別な表現に換言すれば「視力が上がって見ているような手応え」で見えるのは確かだ。

 見慣れた手持ちのブルーレイソフトほど、この「リアリティクリエーション×4K2K解像度」で見た時に興奮できると思う。

 なお、ソニーによれば、KD-84X9000の4K X-Reality PROは、HX950に採用されていた「X-Reality PRO」プロセッサと「XCA7」で構成されるX Reality PROに加え、4K高画質化プロセッサ「XCA8-4K」によって構成されているとのこと。

4K X-Reality PRO
データベース型複数枚超解像技術は、1フレーム表示を遅らせることで過去フレームと未来フレームの両方を参照探索するアルゴリズムを採用している

 ダイアグラムで見ると「2K→超解像2K化」に続いて「超解像2K化→4K化」というようなバケツリレー型パイプラインとして描かれているが、実際には、ここはかなり高密度に連携した処理系になっているとのこと。実際には「2K→超解像2K化」の段階で2K以上の解像度情報が算出されており、この結果を継承して後段の「超解像2K化→4K化」が行われるのだ。HX950などに搭載される「X-Reality PRO」のみの構成では、せっかく算出された超解像画素情報を周辺ピクセルの値と加重平均をとって合成するしかなかったものが、ちゃんと1ピクセル分に近いレベルで描き出せるようになったというわけだ。

 残像低減技術に関してはKD-84X9000は「モーションフローXR240」を採用している。240という数字から60Hz×4=240Hzの4倍速駆動かと思ってしまうが、実際には、60Hz映像から算術合成する補間フレームは1枚のみなので120Hzの倍速駆動という事になる。これに240Hzのバックライトスキャンを組み合わせて疑似的に4倍速240Hz相当の駆動を行なうのが「モーションフローXR240」だ。

 KD-84X9000は上下エッジバックライト方式のためバックライトスキャンは上下二分割方式になる。IPS液晶パネルは応答速度が比較的均一のため、上下二分割スキャンでもそれなりに効果は高いとされる。HX950と同様に、メニューの「モーションフロー」にて「スムーズ-標準-クリア-クリアプラス-インパルス-切」の設定を選ぶことができ、最も補間フレーム支配率が高いのが「スムーズ」となる。

 最近のBRAVIAは、補間フレームの精度が高いのが特長で、いつもこの機能の評価に使っている「ダークナイト」の冒頭のビル群を飛ぶシーンを見てみても「モーションフロー=標準」設定ならば目立ったピクセル振動もない。カメラパンや奥行き方向に移動する3Dスクロール的な表現ではかなり安定して正解率の高い補間フレームが生成できていると感じる。

「モーションフロー」設定画面

 今回、ソニーから、映画好きのために搭載されたKD-84X9000の隠れ機能(?)を教わったので紹介しておこう。

 KD-84X9000は、HDMIで4K2K/24p(3,840×2,160ドットの24Hz映像)ソースを入れたときに「モーションフロー=インパルス」とすると、24Hz映像の3度描き込みを行ない、その都度バックライトオフを挿入する72Hzインパルス表示モードになるというのだ。補間フレームなしのオリジナルフレームの3度描きのインパルス表示になり、極めて映画館の映写機に近い表示で楽しめると言うのだ。

 これで実際に24Hzの映画ソースを見てみたが、確かにホールドボケが抑えられつつも、24Hz映像特有の適度なフィルムジャーダー感も知覚できて映画館らしい見映えになっていた。ジャダー感は残るとはいえ、動きが早い映像においてはちゃんと精細なテクスチャ感は視覚出来るので、映像の見た目の情報量は高い。

 映画ソースを愉しむ際には是非とも活用して欲しい機能だが、この機能は4K2Kアップスケーリングに対応したAVアンプやブルーレイ機器とKD-84X9000をHDMI接続したときにしか利用出来ない。限定された状況下での機能ではあるが、購入を検討している人は覚えておいて損はない。

 KD-84X9000は3D立体視にも対応。実現方式はパッシブグラスを用いる偏光方式だ。フルHD液晶パネルに偏光方式を採用した3D立体視は、1,920×1,080ドットの3D立体映像の偶数ラインと奇数ラインをそれぞれ左右の眼に振り分けて見せることから、片目あたりの視覚解像度は1,920×540ドットとなる。偏光方式3D立体視は、この点が「縦解像度が半減する」として指摘されることが多かったわけだが、4K2K液晶パネルを採用したKD-84X9000では、3,840×2,160ドットの映像を左右の眼に振り分ける事になるため、縦解像度の半減はない。さらに、リアリティクリエーション(超解像技術)により、横解像度については1,920ドットから3,840ドットへと増強されるため、片目あたりの視覚解像度は3,840×1,080ドットとなる。4K2K解像度ならば偏光方式3D立体視であってもリアルフルHD+αの3D立体視が提供されるのだ。

KD-84X9000に2基、付属する3Dメガネ

 実際にBlu-ray 3Dを見てみてたが、これが素晴らしくよかった。ソニーの社内で「ああ…いい、ああ…いい」と連呼してしまい、一体何を見ているのか疑われてしまったが、実際に見ていたのは筆者の3D映像評価のリファレンス「怪盗グルーの月泥棒」であった。

 まず、3D映像がとても明るいという点が「いい」。アクティブ液晶シャッターグラス方式の3D立体視でも、最近はシャッターの交互開閉でチラツキ感を感じることはほとんどないが、どうしても瞬間瞬間では片目で映像を見ることになるので一段階映像が暗くなることは否めない。偏光方式では常に両目で3D映像を見ることになるので、やはり明るいのだ。

 そして3D立体視時の高画質のもっとも基本的な判断基準となるクロストークの少なさについても、「いい」。シャッターグラス方式では、明暗差の激しい映像、例えば、画面内のある箇所において左目で見ている時は暗くて、右目で見ているときはめいっぱい明るく見える箇所では、どうしても残像のような二重像が見えてしまう。KD-84X9000ではこれが皆無に等しいのだ。3Dメガネも軽くて電源(電池)不要で手軽なのも「いい」。

 最後は、解像感だ。3,840×1,080ドットで見る3D映像は、全体としてみても解像感に満ち溢れていてとても「いい」が、細部を意識して見ても、奇数ライン、偶数ラインの1ライン飛ばし表示による段差が感じられない。角度の浅い斜め線においてもジャギー感はなく、それこそアクティブ液晶シャッターグラス方式で見るフル解像度の3D映像を見ているときの解像感(+α)が実感できていた。

 それと、この高解像感が、前述した両目で3D映像を見る特性との相乗効果で、奥行き方向に動かない、カメラパンだけの表現においても、非常にインパクトの強い運動視差が感じられるのも「いい」。

 運動視差とは人間の脳が動体の動きから知覚する立体感のことだ。KD-84X9000の場合は、3D眼鏡を掛けていることで得られる両眼視差にプラスαの形でこの運動視差が加わり、さらに高解像感も上乗せされるため、知覚される3D映像に「手触り」に近い感触までが伝わってくる。

小さい画面が26ZP2、大きな画面がKD-84X9000。表示遅延は26ZP2との相対比較で約33ms(60Hz時、約2フレーム)

 表示遅延については、「シーン=ゲーム」「画質モード=ゲームオリジナル」として計測を行った。比較対象は、いつも通り、テレビ製品としては業界最速の表示遅延3ms(60Hz時約0.2フレーム)を有するREGZA 26ZP2だ。

 結果は約33ms(60Hz時、約2フレーム)。奇しくもHX950と同一の値となった。ゲームモードという名前の割には、あまり突出した値でないのが残念だ。BRAVIAの場合、映像エンジンが巨大化しているので低遅延の実現は難しいのかも知れないが、プレイステーションというゲームプラットフォームを有しているだけに他社製テレビに負けないものを期待したい。

優れた超解像で4Kの魅力を体感。4Kと3Dの愛称の良さ

 KD-84X9000は、ソニーの民生向け4K2K解像度リアル対応の直視型ディスプレイとしては最初の製品だ。それだけに価格も168万円とかなり高価な製品となった。

 バックライトシステムが、HX950のような直下型でなく、上下エッジ方式のため、映像によっては黒浮きが気になるのが残念だが、部屋を間接照明程度の「薄明かり」状態であればそれほど気にはならない。黒の締まりは直下型のHX950の方が上だが、階調特性に関してはそれほど見劣りはしない。暗部付近にもちゃんと色味はあり、暗い映像にも色の情報がちゃんと乗っている。総じて言えば画質の作り込みの完成度は高い思う。

 リアル4K2Kコンテンツがほとんどない現在、メインコンテンツはしばらくの間はフルHDとなる。となれば、フルHDコンテンツを4K2K化する機能の優劣は、KD-84X9000の価値を左右すると言ってもいいほど重要なわけだが、この部分の完成度にも文句はない。実写映像、CG映像、図版系のグラフィックスを表示しても破綻なく、4K2K化してくれていた。たとえリアル4K2Kコンテンツの再生機会がなかったとしても、KD-84X9000のポテンシャルはちゃんと堪能できることだろう。

 ちなみに、ソニーの超解像技術は「データベース型複数枚超解像技術」として説明されているが、KD-84X9000に搭載されるデータベースについては、4K2Kプロジェクタの「VPL-VW1000ES」のものをベースに、テレビ番組向けの新データベースを追加して構成しているという。具体的にはVW1000ES向けのデータベースは映画コンテンツが中心であったが、今回のKD-84X9000に際してはバラエティ、アニメ、スポーツ、音楽ライブといったバリエーション豊かなテレビ放送向けのデータを追加しているというのだ。今回の評価では、テレビ放送を見ている時間的余裕がなかったため、筆者としてのインプレッションはないが、「4K化されたテレビ放送を見る」という部分はVW1000ESオーナーすらも体験できない「KD-84X9000ならではの愉しみ」と言うことになるはずだ。

 そして、4K2K画質の感動も大きかったが、3D大好きの筆者としては、KD-84X9000の3D立体視の画質の良さも今一度強く押しておきたい。

 「暗い」「クロストークが見える」「解像感が物足りない」といった3D映像に対するネガは、かなり高次元で解消できており、3D立体視の本命は「4K2K×偏光方式」ではないか…と感じたほどだ。

 この後、84インチの4K2Kテレビとしては東芝が後出しで投入してくることがほぼ確定している。この直接対決も見物だ。もちろん本連載で取り上げたいと思う。

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら