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ソニー、65/55型4K BRAVIA X9200A。4Kの臨場感を家庭に

55型が50万円。“トリルミナス”で色表現向上

KD-55X9200A

 ソニーは、4K/3,840×2,160ドット解像度の液晶テレビ「BRAVIA X9200Aシリーズ」を6月1日より発売する。65型「KD-65X9200A」と55型「KD-55X9200A」の2モデルで展開し、価格はオープンプライス。店頭予想価格は65型が75万円前後、55型が50万円前後。

 ソニーは、2012年12月に84型の4Kテレビ「BRAVIA KD-84X9000(168万円)」を発売しているが、4Kの裾野を広げるシリーズとしてX9200Aを展開する。

 高画質な4Kアップコンバートを可能にする「4K X-Reality PRO」を搭載するほか、新たに、色域や階調表現を向上した「トリルミナスディスプレイ」に対応。4Kの臨場感、高画質を訴求する。

KD-65X9200A
KD-55X9200A
KD-55X9200A
X9200Aシリーズを発表

4Kの大画面/臨場感を一般家庭へ

 65/55型の4K/3,840×2,160ドットパネルと、エッジ型のLEDバックライトを採用し、エリア駆動にも対応(エリア数は非公開)。120Hzの倍速駆動パネルだが、4倍速相当の残像低減を謳う「Motionflow XR240」を搭載。また、前面ガラスと本体を一体化した板のようなオプティコントラストパネルを採用する。

KD-65X9200A
KD-55X9200A
4K X-Reality PROの概要

 映像エンジンは4K超解像技術を搭載した「4K X-Reality PRO」で、X-Reality PROとXCA8-4Kの2つのLSIで構成される。ネイティブ4K映像だけでなく、フルHD映像も高精細にアップコンバートし、4Kパネルに高精細に表示する。ノイズ低減のほか、複数枚パターン分析処理や独自の複数枚データベース型超解像処理を行なった後で、4K出力時にもデータベース型超解像処理を適用し、高精細な4K映像を出力する。

4Kパネルを採用
フルHD(左)との比較デモも

 デザインも一新。スタンド部に内蔵したイルミネーションLEDは「インテリジェントコア」と命名。テレビの動作に合わせて電源ON/OFFではホワイト、機器連携ではシアン、録画中はレッドなど、様々な色に点灯する。「テレビの状況を知らせる、新しいBRAVIAの頭脳でシンボル。BRAVIAの直感的なコミュニケーションの新しい顔として訴求する」(ソニーマーケティング マーケティンググループ ホームエンタテインメント プロダクツマーケティング部 統括本部長の本多健二氏)としている。

スタンドに内蔵されたイルミネーションLEDは「インテリジェントコア」。テレビの動作に合わせて電源ON/OFFではホワイト、機器連携ではシアン、録画中はレッドなど、様々な色に点灯する
インテリジェントコアの説明

 また、新バックライトシステムと広色域パネル、米QD Visionの発光半導体技術「Color IQ」の組み合わせで、色域や階調表現を向上した「トリルミナスディスプレイ」に対応。白色LEDの出力光に対し、量子ドット技術を用いた光学パーツを組み合わせることで緑、赤の純度を強調、RGBの純色光量バランスを整えてから液晶パネルへと導くことで、x.v.colorと同様の広色域を実現する。

4K X-Reality PROを搭載
トリルミナスディスプレイ

 トリルミナスディスプレイは、放送波やBDビデオに記録された以上の色域を使って画作りすることとなるが、広色域パネルとX-Reality PROの独自色制御により、鮮やかかつ階調表現豊かな色や忠実な色再現ができるとする。「ダイナミックモードやスタンダードモードでは、鮮やかで表現力豊かな色表現を実現。シネマモードでは、コンテンツ制作者の意図を忠実に再現した自然な色再現を実現する」としている。

 なお、トリルミナスディスプレイの機能をオフにすることはできないが、画質設定をカスタム、またはシネマ1(シーンセレクト「シネマ」)とすることでBT.709のオリジナル色域に設定できるという。

 「トリルミナス」の名称は、ソニーのカメラやデジタルビデオカメラなど広色域記録に対応した製品に対し、「トリルミナスカラー」と命名。トリルミナスカラーで撮影した映像は、トリルミナスディスプレイで再生することで、撮影時の色合いをそのまま楽しめるとしており、広色域かつ高い色再現性をもつデバイス/ディスプレイの名称としてトリルミナスをブランド展開する。

 視聴位置については、従来のフルHDモデルより“近い”距離で臨場感を味わえることを訴求。ソニーでは、4Kの高解像度により、フルHD視聴距離の半分(画面の高さの1.5倍)まで近づいても画素が気にならないことから、55型の場合約1.1m(フルHDでは約2.2m)で映像を楽しめ、リビングを広く活用できるほか、約60度の視野角にわたり臨場感のある映像体験が可能とする。

 3Dにも対応。パッシブ型の偏光メガネを採用し、画面上の偏光シートで左右それぞれ3D映像として、水平に1ラインずつ振り分けて表示。パッシブ3Dメガネで見ることで、3D映像を楽しめる。

 パッシブタイプの3Dメガネ「TDG-500P」は6月1日に発売。店頭予想価格は1,000円前後。また、PlayStation 3の2人でプレイするゲームで、プレーヤーそれぞれに異なる映像を2D表示できる機能「SimulView」にも対応。SimulView対応のメガネ「TDG-SV5P」(ペア)も6月1日発売で、店頭予想価格は2,000円前後。

磁性流体ユニット+大型サイドスピーカーで音質強化

磁性流体スピーカーを採用したサイドスピーカーを搭載

 音質にもこだわり、独立した大型のサイドスピーカーを搭載。独自の磁性流体スピーカーを採用したウーファを下部に、パッシブラジェータを上部に、その中央にツイータを装備。背面には2基のサブウーファを備え、映画と一体化した迫力あるサウンドを楽しめるとする。

 磁性流体スピーカーでは、従来必須となっていたボイスコイルを支持するダンパーを省略することで、ダンパーからの歪みの原因となる2次音圧の影響を排除。歪みは30%削減され、クリアな音質を実現できるほか、伝達ロスも削減されるため、省電力化にも寄与。同出力で約40%の省電力化が図れる。

 アンプはS-Masterでサブウーファを含めた出力は総合65W(12.5W+12.5W+20W+20W)。クリアフェーズ技術も搭載している。

X9200Aシリーズの音質をアピール
磁性流体では最大サイズという8cmユニット
磁性流体
左が磁性流体スピーカー。右の従来スピーカーではダンパー(茶色の部分)が必須となっていた
磁性流体の採用で奥行きも削減可能に
パッシブラジエータ
背面にサブウーファ

 チューナは、地上/BS/110度CSデジタル×2で、2画面表示に対応(放送+外部入力。放送+放送の2画面は不可)。別売のUSB HDDへの録画にも対応する。USBは3系統装備する。

 HDMI入力は4系統装備し、4Kのネイティブ入力に対応する。HDMIの対応入力解像度は3,840×2,160ドット/30p/24pと4,096×2,160ドット/24p。4Kの60p映像は、現時点ではHDMIの規格が策定されていないため、入力できない。ブラビアリンクに対応。MHLも備えており、MHL対応のスマートフォンからのビデオ/写真出力が行なえる。

 D5入力端子×1や、コンポジット映像入力×1、光デジタル音声出力×1、Ethernetなどを装備する。消費電力は65型が344W(待機時0.2W)、55型が274W(同0.2W)。年間消費電力量は65型が295kWh/年、55型が240kWh/年。スタンドを含む外形寸法/重量は65型が168.2×40.5×90.3cm(幅×奥行き×高さ)/46.4kg、55型が146.3×40.5×77.8cm(同)/34.5kg。

ネットワークやNFC連携に対応

ワンタッチミラーリングで、XperiaとNFC連携

 Ethernetと無線LANを搭載し、Wi-Fiダイレクトモードに対応。DLNA/DTCP-IPクライアント機能の「ソニールームリンク」も利用できる。

 スマートフォン連携も強化し、NFCを搭載したXperiaの画面をBRAVIAに出力できる「ワンタッチミラーリング」に対応。対応端末はXperia Z、Xperia AX、Xperia VL、Xperia Tablet Z。また、Miracastに対応。Wi-Fi Miracast対応スマートフォンからの映像出力に対応する。

 NFCの利用には付属の小型リモコンを利用。リモコンの背面にNFCタグを備えており、対応のXperiaをかざすだけで、BRAVIAとの連携が可能になる。

付属のリモコンとNFC対応小型リモコン
NFC対応のRMF-JD015
背面にNFC
PlayStation 3の「Playmemories Studio」で4K写真を楽しめる

 ネットワークサービスの「Sony Entertainment Network(SEN)」は、リモコンの専用ボタンで呼び出し可能。HuluやYouTube、Video Unlimitedなどのネット動画コンテンツのほか、Twitter、Facebook、Skype、ニコニコ実況などのコミュニケーション、ソニーの写真共有サービスPlayMemories Online、ショッピング、情報検索など多くのサービスをラインナップする。

 また、コンテンツやワークサービスのテキスト検索に対応。テレビ番組のほか、YouTube、Video Unlimited、Music Unlimited、その他ネット動画などのサービスを横断して番組/コンテンツ検索が行なえる。なお、ソニーのテレビ向けネットワークプラットフォームとして展開されていた「アプリキャスト」には対応しないが、一部のアプリがSEN上で継続して展開される。

テキスト検索
番組詳細情報

 また、タブレット向けアプリの「TV SideView」を利用した検索や操作に対応。TV SideViewでは、「クロスサービスサーチ」のほか、ルームリンクの映像再生や番組詳細情報の確認、音声によるBRAVIAの操作、電子取扱説明書の閲覧、テレビリモコン、フリーカーソル、URLスローなどの操作が行なえる。対応OSはAndroid 2.2以降(タブレットは3.0以降)とiOS 5.0以降。

TV SideView
番組表や各種コンテンツから検索できる

渾身の思いを込めた「4K BRAVIA X9200A」

ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 今村本部長

 ソニー 業務執行役員 SVP ホームエンタテインメント&サウンド事業本部の今村昌志本部長は、4K BRAVIA X9200Aシリーズについて「渾身の思いを込めた製品」と切り出し、4Kを中心に同社の戦略を説明した。

 BRAVIAについては、人びとの五感を通して感性豊かな体験を提供するというビジョンを元に、「リビングの中心で、感動を映し出す窓でありたい」と説明。2012年11月の84型「KD-84X9000」の発売以来、ユーザーから寄せられたという、新しい感動や発見の声などを紹介し、「テレビがコモディティ化したと言われているが、本当だろうか? こうした声を聞いていくと、もっと綺麗な映像、もっと良い音、美しいインテリア、もっと簡単になど、潜在ニーズはまだ多くある。BRAVIAは、そういう声に応える製品を出していきたい」と語った。

新BRAVIAシリーズを披露
BRAVIAを「感動を映し出す窓」に
KD-84X9000ユーザーの声
4Kテレビの市場予測
BRAVIAでテレビの潜在ニーズに応える

 X9200Aシリーズに込めた「4つの思い」として、「映像の進化」、「高音質と機能美を体現したデザイン」、「スマート機能と機器連携」、「新しいコンテンツ体験の創出」の4点をあげて解説。映像については「トリルミナス」に「全社をあげて取り組む」とした。

音にもこだわり
機器連携を容易に
コンテンツに関する取り組み
ブルーレイディスク “mastered in 4K”のデモ

 また、コンテンツ創出については、同社のデジタルシネマカメラ「F65」による映画撮影やTBS世界遺産など4Kコンテンツ撮影/制作を加速していることや、4K以上の解像度で撮影した映画や、フィルムからスキャンしたソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)の映画を、フルHDでBlu-ray Discに収録し、広色域データに対応させた「ブルーレイディスク “mastered in 4K”」などの取り組みを紹介。mastered in 4Kの国内展開は「発売の方向で検討中」とのことだが、時期や価格は未定。デモでは「アメイジング・スパイダーマン」などを上映していた。

 放送においても、2014年度に4K試験放送が行なわれる見込みであることや、韓国などでも4K放送のスタートが予定されていること、デジタルカメラの写真はすでに4Kの解像度も超えていることなどを紹介。写真については、「過去に撮りためた静止画が新しい体験として感じられる」と、積極的に4K BRAVIAとの連携をアピールしていくという。

 なお、米国ではネットワーク経由で4Kコンテンツを視聴可能にするセットトップボックス(STB)/メディアプレーヤーも発売予定で、サービス開始は今秋を見込んでいる。日本での展開については、「多くの開発項目、サーバーのマネジメントなどが発生するため、アメリカが第一で、その反応をベースに他の国の展開を考えて行きたい」と述べるに留まった。

 4K放送へのX9200Aシリーズの対応の可否については、「規格化や標準化がこれからなので、ファームウェアで対応できるか、内部の変更が必要なのかは未定。検討していきたい。放送開始後も、引き続き使えるようSTBのような形で提案できるかもしれないと考えている」と説明。4Kの後に8Kのスーパーハイビジョン(SHV)放送の開始も検討されているが、「技術インフラ的には連続性を持ち、延長線上にあるもの。技術や標準化、インフラの状況を見ながら進めるべき」とした。

 2013年度の薄型テレビにおける4KとフルHDの構成比については、「具体的な数値は控えさせていただく。ただし、大型化、高精細化というトレンドは確実。その中で、4Kの比率を拡大していきたい」とした。

ソニーマーケティング 本多氏

 ソニーマーケティング マーケティンググループ ホームエンタテインメント プロダクツマーケティング部 統括本部長の本多健二氏は、大型/高精細化というトレンドに沿ったBRAVIAの販売展開を行なうことについて説明。

 2012年度の国内テレビ市場においては、46型以上の金額構成比が40%に迫っており、大型/高付加価値モデルへのシフトが鮮明となっている。本多統括部長は、この流れを「早い時期に薄型テレビを手に入れた人たちの買い替え需要が強い。その部分にしっかり取り組んでいきたい」と説明。'12年の主力モデルとなったHX850シリーズは、年間の販売金額、台数共にトップとなり、「テレビを買い換える人が画質に対価を払っていただいた」と分析した。

 X9200Aシリーズについては、「4Kの吸い込まれるような画質体験」と表現し、65型が実売75万円、55型が50万円という価格は、「今までのフルHDの最上位モデルと考えてもいいのかもしれない。まだ高く全ての消費者に受け入れられるものではない。しかし、こだわりを持つ層や、デジタル一眼のユーザーなど、趣味に積極的に時間を使う人に訴求していく」とした。コミュニケーションメッセージは「映像も、音も、圧倒的に美しく」で、体験イベントや店頭展示などを通じて4K/大画面の臨場感をアピールしていく。

 なお、2013年度のテレビ販売目標は現時点では公開していないが、'12年度目標の1,350万台は達成され、テレビ事業の赤字も半減。目標としている'13年度の黒字化については、「達成する自信がある」(今村本部長)とした。

(臼田勤哉)