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第168回:熟成の高画質。BRAVIA最上位「KDL-55HX950」

希少になった直下型LED機の底力



KDL-55HX950

 「BRAVIA最高画質モデル」のBRAVIA HX900系がモデルチェンジして「HX950」となった。最近では、トップエンドでも見られなくなってきた直下型LEDバックライト採用機として注目度の高いシリーズである。

 画面サイズは55型と65型の2モデル展開されるBRAVIA HX950シリーズだが、今回の大画面☆マニアでは、55型モデルの「KDL-55HX950」を取り上げる。なお、3Dメガネの入手が間に合わず、今回の評価では3D立体視の評価は行なっていない。



■ 設置性チェック〜額縁段差無しのモノリシックデザイン

 大画面☆マニアでは、ほぼ毎回評価機を実際に筆者宅に運び込んで評価を行なうようにしている。これは、連載タイトルの「マニア」にあるように、あらゆる機器を接続して評価を行なったり、機能を1つ1つ試したり、というようなマニアックな評価を行なうことを信条としているためだ。筆者宅のAV機器評価室は2階のため、階上への運搬が大変なのだが、過去には最大65型までの階上に上げた実績がある。しかし、今回のKDL-55HX950は、「梱包箱が大きすぎて、宅配便では運送できない」ため、編集部での評価を行なった。確かに、55型という画面サイズの割には梱包箱が大きかった。

 梱包箱は大きいが、ディスプレイ部のサイズは128.0×4.9×77.3cm(幅×奥行き×高さ)と、55型のテレビ製品としては標準的な大きさだ。前面は額縁段差がない一枚板デザインとなっており、背面も凹凸がほとんどない平面で、しかも輪郭部から美しい曲面に繋がるラウンドシェイプデザインになっているため、前から見ても後ろから見ても美しい。ソニーがあえて「モノリシックデザイン」と命名するだけのことはあり、インテリアとしてもリビングに映える外観だ。

額縁と表示面の段差がないモノシリックデザイン 実寸値としては決して薄くはないが、エッジがラウンドシェイプ処理され、背面側も凹凸や突起がほとんどないため、見た目として薄く見える

 スタンド部も接地部がリング状の独特な形状をしており、他社製品では一枚板スタンドが主流を占める中で異彩を放っている。

 スタンドは左右±15度のスイーベルが可能。特筆すべきは55型という画面サイズながらも上向きに+6度チルトが可能な点だ。最近のテレビ製品では、接地位置からディスプレイ部下辺までのスペースを切り詰めるデザインが主流になっているので、視聴位置に対して映像表示位置が下に沈んで設置されてしまうことがある。この最大6度のチルト機構はそんな設置ケースにも「救い」となるはずだ。

 ディスプレイ表示部の表面には額縁段差はないものの額縁はある。実測してみたところ、左右が約34mm、上が約35mm、下が約57mmとなっている。競合機が狭額縁化がすすんでいるなかにあって、KDL-55HX950は結構割り切っている感がある。

リング型デザインの接地部を持つ独特なスタンド部 額縁段差はないが、額縁はある

 メインのステレオスピーカーはディスプレイ部の下部に下向きに実装されている。開口部が下に向いているので、テレビ台上面に音波を打ち出して拡散させて再生する方式だ。さらに、背面側、ディスプレイ部の中央上側にウーファーユニットも搭載されており、低音の増強を図っている。出力は左右10W+10W、ウーファー10Wの総計30W。

 実際の出音を聞いてみると、テレビ内蔵スピーカー、それも開口部が下向きのわりには悪くはない。楽曲を聴いてみたが、非常にフラットな周波数特性で、音量を上げてもビビリ音が低音から高音までのバランスが崩れない。ウーファーユニットの出力もなかなかパワフルだ。ソニー独自の音像成形技術「クリアフェーズテクノロジー」が効果的に働いていると思われる。

 スピーカーの実体位置よりも広い音像を造り出すバーチャルサラウンド機能の「S-Force Front Surround 3D」は、確かにそのような音像を造り出してくれるのだが、定位感がボケるので善し悪しという感じはする。音楽ライブ番組などをアンビエント感を出して楽しむためにはよいかもしれない。

 消費電力は195W、年間消費電力量は175kwh/年。昨今の同画面サイズの液晶テレビ製品と比較すると「並」か若干高めという感じだが、直下型バックライトを採用していることを考えるとなかなか優秀な方かも知れない。

ウーファーユニットは背面、やや上部に実装されている

■ 接続性チェック〜復活したアナログ入力。存続するアナログPC入力。

 接続端子パネルは、正面向かって左側の側面と背面側にレイアウト。HDMIは背面に2系統、側面2系統。どういうワケか背面側がHDMI1、4、側面側がHDMI2、3となっており、接続した機器がどの系統に接続されたのかが一瞬分かりにくい。

側面の接続端子パネル 背面の接続端子パネル

 先代HX920の時には、ディスプレイ部の薄さを重視したのか、アナログビデオ入力端子を付属の別体のアダプタ経由で接続させるという設計にしていたのだが、さすがに、これは「やり過ぎた」という反省があったのか、コンポジットビデオ入力とD5入力、アナログ音声入力をそれぞれ1系統ずつ備えている。ディスプレイ部の厚みはHX920より1cmほど厚くなったが、こちらの方が利便性は高い。

 PC入力端子はアナログRGB接続のD-Sub15ピン端子で、音声入力用のステレオミニジャック端子を備えている。PCとの接続にはHDMI端子も利用でき、ドットバイドット表示やHDMI階調レベルの設定も、メニューから行なえる。ドットバイドット表示は「画質・映像設定」-「画面モード」-「表示領域」設定を「フルピクセル」。

 HDMI階調レベルは「画質・映像詳細設定」メニューの「HDMIダイナミックレンジ」で設定が可能。「リミット」(16-235)、「フル」(0-255)、「オート」の3つの設定が行なえる。PS3(CECHA00)でテストしてみた限りでは、「オート」設定が正しく動作していた。

 「ドットバイドット」といわず「フルピクセル」、「リミテッド」といわずに「リミット」と独自表記にしているのは、ちょっと分かりにくい。

 USB 2.0端子は2系統装備。USB 1が汎用用途、USB 2が録画用のUSB HDD接続用になる。USBメモリやデジカメ、Skypeを利用したテレビ電話が楽しめるマイク内蔵コミュニケーションカメラ「CMU-BR100」などはUSB1、2のいずれに対しても接続が可能だ。

 音声関連では光デジタル音声出力端子を背面に、ヘッドフォン端子を側面に装備。ネットワーク機能は、Ethernet(RJ-45)のほか、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANも備えている。

 地上デジタル放送用、BS/CSデジタル放送用のアンテナ端子を1系統装備。ダブルチューナ内蔵だが、内部分配されるのでアンテナ端子は1系統ずつ接続すれば良い。

 背面側のHDMI端子が下向きになっていて接続がしづらい以外は大きな不満はなく、必要な機能も妥協なく備わっている。華奢に見えるボディとは裏腹に、接続性はかなり充実したものになっている。


■ 操作性チェック〜ネットワーク関連のスマート機能がリファイン

 リモコンは、上面中央をゆるく窪ませた独特のバー形状のもので、最上段に録画再生制御ボタン、最下段にテレビチャンネル切換用数字ボタンや音量制御ボタンがレイアウトされている。数字ボタンがリモコン下部にあるデザインは、なかなか独特である。

 開閉式の上蓋の下に隠しボタンを仕込むようなデザインにはなっておらず、上面にあるボタンが全て。なので、操作要求に対するボタンの数が少ない感じで、例えば2画面表示への切り替え、アスペクトモードの切り替えなども、メニューを出して潜らないと利用出来ない。

独特な形状のBRAVIAのリモコン 裏にはFeliCaポート。この発想は凄い 正面向かって右側には簡易操作パネルが
右側の一望性が低くてややメニューが混雑しているような印象を持つ

 リモコンのレスポンスそのものはすこぶる良い。これは、リモコン操作信号の送受を赤外線方式ではなく2.4GHz帯のRF方式を採用しているため。リモコンの背面にFeliCaポートも搭載している。

 電源オン操作から地デジ放送番組が表示されるまでの所要時間は約3.0秒。かなり速い。地デジ放送のチャンネル切換は約2.0秒。切換時間自体は普通だが、切換中にただ画面がブラックアウトするのではなく切換先のチャンネルの番組情報が表示されるのが心憎い。入力切換所要時間はHDMI→HDMIで約2.0秒とまずまずの速さ。

 アスペクトモードの切り替えは、[オプション]ボタンを押すと現れるメニューの中の「ワイド切換」を選択し、一覧から選択する方式。用意されているアスペクトモードは「ワイドズーム」「ノーマル」「フル」「ズーム」「字幕入」と言うラインナップで歴代のBRAVIAシリーズから変更はなし。切換所要時間はほぼゼロ秒だ。


モード名だけだと分かりにくいアスペクトモードの切換を概念図付きで提示。これは分かりやすい

 プリセット画調モードは、コンテンツの種類に応じて画質モード(画調モード)が選べるという組み合わせ方式を採用している。コンテンツの種類は「シーン」、画調モードは「画質モード」という名称になっており、「シーン」×「画質モード」で最終的な画調が決定されるというやや複雑なシステムを採用している。そういえば、前回評価した東芝のレグザ「55Z7」も、「コンテンツモード」と呼ばれるコンテンツの種類と「映像メニュー」という名前の画調モードとの組み合わせで最終画調が決定されていた。最近は、こういうのがトレンドなのかもしれない。

 HX950における「シーン」と「画質モード」の組み合わせは以下のようになっている。

【シーン】 【画質モード】
シネマ シネマ1、シネマ2
スポーツ スポーツ
ミュージック スタンダード、ダイナミック、カスタム
アニメ アニメ
フォト フォト-スタンダード、フォト-ダイナミック
フォト-オリジナル、フォト-カスタム
ゲーム ゲーム-スタンダード、ゲーム-オリジナル
グラフィックス グラフィックス
シーンセレクト切 スタンダード、ダイナミック、カスタム
オート スタンダード、ダイナミック、カスタム
「シーンセレクト=切」×「画質モード=スタンダード」 「シーンセレクト=切」×「画質モード=ダイナミック」 「シーンセレクト=切」×「画質モード=カスタム(初期状態)」
「シーンセレクト=シネマ」×「画質モード=シネマ1」 「シーンセレクト=シネマ」×「画質モード=シネマ2」

 従来機と異なるのは、新たに「オート(24p連動)」という「シーン」モードが追加された点。これは、毎秒24コマの映像を認識したときに「シネマ」のシーンが自動採択されるというもので、それ以外の振る舞いは「オート」に準じるとされている。

新設された「オート(24p連動)」

 なかなか複雑なHX950の「シーン」×「画質モード」の画質選択システムだが、よくわからなければ「シーン」を「オート」ないしは「オート(24p連動)」にしておけばいいだろう。「オート」系の設定にするとHX950が勝手にデジタル放送の番組情報や、HDMI入力のコンテントタイプ情報をチェックして最適な画質モードを自動選択してくれる。

 HX920は、USB HDD録画対応だが、搭載チューナーが1基のみだったため、録画中は録画中の番組しか見られない(チャンネルを切り替えられない)という制約があったのだが、HX950では、ダブルチューナ化により録画中も録画番組とは別の番組を視聴できるようになっている。これは大きな進歩だが、予想外な制約がHX920から受け継がれてしまっている。

 それは2画面機能だ。HX950の2画面機能は、2画面を横に並べたサイド・バイ・サイド(SBS)方式、主画面と子画面を同時に表示するピクチャー・イン・ピクチャー(PinP)方式の両方式に対応しているのだが、その組み合わせが、HX920と全く同じ、デジタル放送とアナログビデオ(コンポジット/D5)、デジタル放送とHDMIに限られてしまっているのだ。競合他社のダブルチューナ搭載機だと、デジタル放送の2画面表示は普通に行なえるので、ここはちょっと見劣りする部分だ。改善が望まれる。

サイド・バイ・サイドモード。画面の大きさは無段階で拡大縮小可能 ピクチャー・イン・ピクチャーモード。子画面の位置はリモコンで随時変更可能
Sony Entertainment Network」(SEN)メニュー画面

 ネット関連機能は「Sony Entertainment Network」(SEN)の形で提供され、リモコン上のボタンも[SEN]となった。

 メニュー構成は、YouTubeなどのネットメディアプレイヤーやDMM.TV、U-NEXTなどのVODサービスをまとめた「アプリ」、ソニー系のVODである「Video Unlimited」、ソニー系の加入型音楽サービス「Music Unlimited」の3つから成っている。Video UnlimtedとMusic Unlimitedの2つのソニー系サービスは、PS3、PSVitaなどのソニー製ゲーム機や、Xperia/Sony Tabletなどのソニー製機器で利用できる。

 実際にSENメニューを使ってみたのだが、選択したメニューの往き来の動きがもっさりしている。Webブラウザも、筆者のブログサイトはメモリエラーで最後まで表示できず、Flashが組み込まれたWebサイトも正常には表示できなかった。スマートフォンのWebブラウザの方が、表示性能は高い。もう少し、ここはブラッシュアップを望みたい。アプリキャストも遅い。


電子取扱説明書。電子版ならではの良さがもっと欲しい

 取扱説明書は、HX950でも、電子化されており、リモコン上の[?]ボタンを押すことで呼び出すことができる。

 以前のBRAVIAの電子取扱説明書は、全機種共通のものを突っ込んであるだけで「機種によっては設定できません」という記載が目立ち、「メーカーが楽するためだけの電子取扱説明書」という風情で閉口したものだが、HX950では、この点は改善されており、ちゃんとHX950専用の的確な解説が図解付きでなされている。大きな進歩だ。ただ、全文検索がない。ここは次回での改善を期待したい。

 電子取扱説明書の起動時間は条件によって異なり約2.0〜3.0秒。Webブラウザもこのくらい速く起動できればいいのだが…。



■ 画質チェック 〜オプティコントラストパネル×直下型バックライトシステムの底力

 近年のソニーのBRAVIAシリーズと言えばやはり、この「オプティコントラストパネル」が、競合他社製品との最大の差別ポイントになる。

表示面の界面に画素が出現しているようなオプティコントラストパネルの見映えは癖になる

 オプティコントラストパネルとは液晶パネルと額縁部を含む表示面ガラスまでの空気層を樹脂で埋めてしまったディスプレイパネルのこと。

 構造的に情景の映り込みが低減され、それでいて液晶パネルからの出力光の拡散をも低減出来るため、いうなれば、グレアパネルのコントラスト感と、ノンクレアパネルの映り込みの少なさをバランスしたような表示特性となる。

 そして、液晶パネルからの出力光は、いうなれば光ファイバを通ってきたかのように、表示面側のガラス面に浮き出るように映り、ラス面に画素がくっきりと表れ圧倒的なフォーカス感と同時に広視野角特性ももたらしてくれる。

 オプティコントラストパネルは、今回初めて見たわけではないはずなのに、毎回、表示映像を見ると「おっ」と声を上げてしまう。この画素のくっきり感とフォーカス感こそが、現在のBRAVIAの醍醐味だ。

オプティコントラストパネルの特性で非常にクリアに見える画素。サブピクセルは縦ストライプ状となっている

 バックライトは白色LEDベースの直下型バックライトシステムを採用している。最近では、液晶パネル単体の透過光制御のS/N性能がよくなってきているため、コスト的に高く付く直下型は採用機が減ってきてはいるのだが、液晶パネルで自発光に迫るコントラスト感を実現するのに、依然直下型に優位性はある。

 ソニーが採用する直下型バックライトシステムベースのエリア駆動(部分駆動/ローカルディミング)には「インテリジェントピークLED」というテクノロジー名が付けられており、これは液晶パネルの明部表示位置に対応するバックライト輝度を局所的に高め、暗部表示位置に対応する箇所ではバックライト輝度を押さえるという典型的な直下型バックライト制御に加え、明部に対し、あえて基準輝度よりも高く光らせるという制御を加えたものだ。これにより有機ELやプラズマパネルのような自発光パネル的な突出したコントラスト感が実現されるというわけだ。なお、白色LED総数、コントラスト性能値、輝度スペック値、エリア駆動の分割数などは非公開。

 実際に「ダークナイト」の夜のシーンを中心に見てみたが、暗い映像での黒の沈み込みが実に素晴らしい。それこそ、「黒が真っ黒」といってもいいくらいだ。

 同一フレーム内に暗部と鋭い明部が同居していると、その暗部にまで明部の影響が出て局所的な黒浮きを生じさせる「ヘイロー」アーティファクトは若干ある。暗部が支配的な映像では自発光画素のディスプレイ並の映像になるが、暗部と明部が同居した映像では、そうはならない。ここは、構造上、致し方がない点か。

 HX950は倍速駆動技術系の残像低減技術として「モーションフローXR960」を搭載している。960という数字から60Hz×16=960を連想して16倍速駆動かと思えてしまうが、実際には、元の60Hz映像から算術合成する補間フレームは3枚で、秒間240コマ表示の4倍速駆動となっている。この4倍速駆動に加えて、直下型バックライトの特性を活かして960Hzのスキャニング表示を組み合わせて、疑似的に16倍相当駆動を行なうため、この名称が付いているのだ。

 HX950では、メニュー設定の「モーションフロー」で「スムーズ-標準-クリア-クリアプラス-インパルス-切」を選ぶことができ、「スムーズ」が最も補間フレーム支配率が高い。

 毎度のことながら、「ダークナイト」の冒頭のビル群を飛ぶシーンを見てみたが、目立ったピクセル振動はない。画面全体が同じ方向にスムーズに動く場合にはかなり安定した補間フレームが生成できているようだ。

 ただ、画面内を物体が移動する際において、その物体の周辺の背景と重なる部分や、遮蔽物から何かが現れる箇所付近では「割れてめくれる」ようなノイズアーティファクトが出ることがある。これは、現状の補間フレームが過去フレームから現在フレームに向かっての順方向の相関性しか見ていないためだ。補間フレーム技術を活用することでどうせ表示遅延が発生するのであれば、先読みした1フレーム先の映像から現在フレームに向かっての逆方向の相関も調べるようにして補間フレームを生成すればいいのに……と思ったりする(既にそうした論文はSIGGRAPH等で発表されている)。

 ただ、相対的に見て、競合他社のものと比較して、ソニーの最近の補間フレーム技術はかなり優秀な方だとは思う。

 「クリア」はバックライト制御による黒挿入が介入し、「クリアプラス」はその黒挿入時間がさらに長いモードだ。実際に映像を見てみると「クリア」モードは、ホールドボケが少なく、それでいて、不自然な補間エラーもなく安定した見心地となっており常用できるモードだと思う。

 「インパルス」モードは、実体フレームを表示している期間以外は、完全な黒表示(バックライトオフ)としてしまうモードだが、「クリアプラス」のようにフリッカーが強く、映像も暗くなるのでやや見にくいと感じる。常用には「クリア」がよい。

 発色は、ここ最近のソニーのBRAVIAでは一貫した画作りである非常に自然な発色だ。

 白色LEDバックライトと液晶パネルとのマッチングがよいためか、はたまた調整に磨きがかかったためか、純色に雑味がない。テレビ的な色の作り込み、色演出がない、とまではいわないが、ハイビジョン色域のBT.709からは逸脱させないという意志は感じる。

 彩度の高い画を好む人もいると思うが、そうした人のためには「ライブカラー」と呼ばれる色域補正のモードが用意されている。いわゆる広色域モードと思って貰えればいい。切/弱/中/強の設定ができるが、強設定に近いほど彩度が上がる。アニメやゲームなどとは相性がよかった。

表示面の界面に画素が出現しているようなオプティコントラストパネルの見映えは癖になる ライブカラー=弱
ライブカラー=中 ライブカラー=強。空の色、葉の色、人肌の色、ボディの赤の色がだんだんと濃いめになっていくのが写真でも分かる

 人肌の発色の良さも、相変わらず。黄味乗りがなく、透明感があってとてもリアルだ。シーン=シネマとしたときの発色が特にいい。

 画質の「詳細設定」に「美肌補正」という設定項目があるが、これは、発色を補正するものではなく、肌に対して選択的にスムージングフィルタを駆けるもののようだ。BRAVIAにも「リアティクリエーション」と呼ばれる超解像技術が搭載されているが、その効果で肌の肌理が強調されがちになる。これを回避するためのものがこの設定項目のようだ。「入」設定とすると、肌の質感がツルっとした感じになる。実際に見てみると静止画だけでなく、動画にもちゃんと効いているのが分かる。

「美肌補正=切」。超解像の効果で肌の凹凸がきめ細かく見えている 「美肌補正=入」。肌の肌理がなだらかになる

 ソニーが誇るデータベース型超解像技術の「リアリティクリエーション」だが、「美肌補正」という項目を付けるくらいなので、「シーン」モードにもよるが、比較的、強めに掛かっているという印象。デフォーカスされている部分も結構先鋭化されたりするので、ここは、前向きに考えれば、ここは好みでいろいろと調整のし甲斐のあるポイントである。

「リアリティクリエーション=切」。こちらが原画像 「リアリティクリエーション=オート」。かなり強めに超解像が掛かっていることがよく分かる。

 エリア駆動の効果もあって階調表現に不満は無し。二色混合グラデーションの表現も優秀だ。

 階調が8ビット表現(0-255)になる一般的な映像において、広い面積に渡ってのなだらかな階調表現ではマッハバンド(擬似輪郭)を感じぜざるを得ない局面があるが、HX950では、これを回避するために「スムースグラデーション」と呼ばれる機能が搭載されている。

 「切-弱-中-強」の設定が行なえるが、この機能もなかなか優秀に効いてくれる。実写映像では空などに、アニメやCGなどでは曲面表現の陰影などにおいて効力を発揮していた。

「スムースグラデーション=切」 「スムースグラデーション=強」。写真でもうっすら見えていたマッハバンドが消え去るのが分かるはずだ

・表示遅延について

 テレビ製品としては業界最速の表示遅延3ms(60Hz時約0.2フレーム)を有するREGZA 26ZP2との表示遅延の比較計測。

 「シーン」モードを「ゲーム」とし、「画質モード」を「ゲームオリジナル」としたときと、「ゲームスタンダード」としたときについて計測を行ってみた。

 結果は共に約33ms(60Hz時、約2フレーム)となった。

「ゲームスタンダード」時の表示遅延は約33ms(60Hz時、約2フレーム)、 「ゲームオリジナル」時の表示遅延は約33ms(60Hz時、約2フレーム)

 プレイステーションファミリーを有するソニー製品としては、やや不甲斐ない結果だが、ソニーは旧WEGA時代から現在のBRAVIAに至るまで、あまりテレビの表示遅延の短縮に関心がない。ここはなんとか改善を望みたいのだが……。


■ おわりに 〜今や貴重なソニーのオンリーワン性能が封じ込められた製品

 結論から言えば、「先代のHX920から大きな変化はないが、そのかわり、もともと完熟の域に近かったHX920に対し、ユーザーからのフィードバックが反映されて正常進化、改善したモデル」というのが、HX950に対する筆者の印象だ。

 USB HDD録画の裏番組録画対応などは、その最たる改善部分だろう。オプティコントラストパネルの圧倒的なクリアなフォーカス感を伴った画質は、一度見ると忘れられなくなる。額縁段差がないテレビ製品は他社からも出てきているが、液晶パネルから表面ガラスまでの空間を樹脂で埋めたウレックス石(テレビ石)を通して見たような見栄えは、BRAVIAのオンリーワン画質性能である。この表示特性が気に入ると、競合他社の液晶テレビが、目に入らなくなってくるかも知れない。

 KDL-55HX950の実売価格は38万円前後だが、価格比較サイトでは20万円台後半にまで下がっているショップもある。他社のハイエンドクラス製品と拮抗した値段となっているので、直下型バックライトが組み合わされていることを考えるとお得感はある。


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KDL-55HX950

(2012年 11月 13日)

[Reported by トライゼット西川善司]

西川善司
大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちらこちら。近著には映像機器の仕組みや原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)がある。