西川善司の大画面☆マニア

第177回

大画面で感じる4Kの魅力。ソニー「KD-65X9200A」

4K BRAVIAで見る“一段上”の映像体験。別格の音質

KD-65X9200A

 今年、2013年は4Kテレビがブームとなりそうだ。というのも、春夏商戦において、各社からハイエンドモデルの形で4Kテレビ製品が続々登場してきており、価格も安くはないが、全く手が届かないかというとそうでもないレベル。「新しモノ好き」にとっては相当に魅力ある製品に見えるのだ。

 というわけでここから数回、大画面☆マニアでは4Kテレビの評価をやっていくことにしたい。第一弾は、ソニーのBRAVIA X9200Aシリーズの65インチモデル「KD-65X9200A」だ。6月1日より発売開始しており、7月11日現在の市場価格は60万円台後半だ。X9200Aシリーズの55型「KD-55X9200A」は50万円を切る価格で、今夏のソニーの4Kテレビは84型、65型、55型の3モデル展開だ。

設置性チェック 〜迫力満点のサイドスピーカーが奏でる圧倒的な高音質サウンド

大迫力のサイドスピーカーデザイン。インビジブルデザインが主流の中で、「あえてのビジブルデザイン」が異彩を放つ

 最近の似たようなフォルムの薄型テレビ製品の中にあって、KD-65X9200Aのデザインには圧倒的な個性と存在感を感じる。特に視線が引きつけられるのは狭額縁化に躍起になる他社製品とは異質な、迫力満点のサイドスピーカーデザインだろう。

 KD-65X9200Aは65インチサイズの製品だが、ディスプレイ部の寸法は168.2×10×87.5cmもあり、横幅はなんと約170cm近いのだ。表示領域(画面サイズ)が142.8×80.4cmなので、いかに左右に広がったデザインなのかが分かるだろう。なお、スタンド込みの寸法は168.2×40.5×90.3cmで、スタンドの設置底面積が小さく、そしてスタンドによるかさ上げ高が非常に低いことが分かる。

 ディスプレイ部はかなり低い位置にマウントされ、外郭下辺と設置台までは約3cm、Blu-rayソフトのパッケージの厚み約3つ分の隙間しかない。

インパクトの有るサイドスピーカー
スタンドとディスプレイ下辺は非常に近い。よって設置台とディスプレイ下辺との隙間もわずか
奥行きは10cm。画面サイズとの比較では十分に薄く見える

 重量はスタンド込みで約46.4kg、ディスプレイ部単体で約45kg。スタンドは約1.4kgで軽いが、ディスプレイ部は同サイズの他社製液晶テレビと比較すると相当重い。額縁幅は実測で上側が約27mm、下側が約39mm、左右は約12.5cmもある。この左右の額縁幅が異様に大きいのは、前述したようにサイドスピーカーのせいだ。

 このサイドスピーカーは、デザイン上の特徴であるが、見た目だけでなく相当に音がいい。最近のテレビ製品でここまで音がいいのも珍しい。

 最下段にマウントされるのは磁性流体素材をダンパーに組み込んだウーファユニットだ。中央にマウントされる小型ユニットはツイータになる。このウーファユニットの背面から出力される逆位相音を正音化して出力するのが、最上段にマウントされるパッシブラジーエータになる。パッシブなので電気駆動はされていない。背面側には、さらに重低音再生用にウーファユニットが2個搭載されている。総出力はテレビ内蔵スピーカーとしては破格の65W(12.5W+12.5W+20W+20W)を誇る。

スピーカーは左右に実装される
最下段は磁性流体スピーカーユニットだ。
ウーファの背面

 出音は非常にパワフルで、低音にもかなりの迫力がある。同時に高音は非常に粒立ちの良い音を出してくれていて、高音のライドシンバルやハイハットの輪郭もはっきりと聞こえる。音量を上げたときにもバランスが崩れないのはパッシブラジエータがしっかりと仕事をしてくれているのと、デジタル周波数特性補正機能のクリアフェーズ機能の恩恵だろう。

 また、ユニットを物理位置的に左右に設置している関係で、中央の定位感と左右に広がるワイドなステレオ感も素晴らしい。音楽番組も外部AV機器の助け無しに満足できるだろう。

 映像パネルは、BRAVIAのトップエンドシリーズということで、表示面と額縁境界をフラット構造にしたオプティコントラストパネルを採用している。表示映像が浮き出て見える独特な見え方に不満はないが、表示面が光沢加工されているので、部屋の中の情景の映り込みはそれなりにある。相対する位置に照明や窓が来ないように設置したいところ。

画面の右側にうっすらと人の姿が映り込んでいる。蛍光灯照明下では映像によってはこういう見え方になる場合も
オプティコントラストパネルの採用で額縁境界はなし

 定格消費電力は344W。年間消費電力量は295kWh/年。これは、一般的な65型液晶テレビと比較すると、約1.5倍〜2倍でかなり高め。4Kテレビは他社製品も同様に消費電力量が大きい傾向にある。

接続性チェック〜PC端子省略。HDMIは2160p/30Hzまでの4Kに対応

 接続端子パネルは、正面向かって左側背面と左側側面にレイアウトされている。

背面接続端子パネル
側面接続端子パネル
意味深に接続端子パネルからは離れた位置に実装されているHDMI4端子

 HDMI端子は全部で4系統あり、背面側に3系統、側面側に1系統が実装されている。少々変わっているのは、背面側のHDMI端子はHDMI1、3が下向きに実装され、やや離れた位置にHDMI4が横向きに実装されている点。

 この横向きに設置されたHDMI4は特別な対応能力が与えられているのかもしれないが、今回の評価では時間的な制約で検証できず。なお、側面側のHDMI端子はHDMI2となる。

 基本、全てのHDMI端子が3D立体視と4K/30Hzの入力に対応するが、ARC(オーディオリターンチャネル)はHDMI1のみ。MHL接続はHDMI2のみの対応となる。

 BRAVIAシリーズにずっと搭載され続けてきて、84型4Kの「KD-84X9000」にも搭載していたPC接続端子(D-Sub15ピン)は、ついに本機では消滅した。PCとの接続はHDMI端子を利用することになる。

 PCやゲーム機を接続した際に、設定が不可欠なドットバイドット表示モードは、「自動表示領域切換」を「切」にした上で、「画質・映像設定」-「画面モード」-「表示領域」設定を「+1」とする。以前のBRAVIAでは「フルピクセル」という表現が用いられていたが、本機では「+1」という設定パラメータになったことに留意したい。

 HDMI階調レベルの設定は「画質・映像詳細設定」メニューの「ダイナミックレンジ」で設定が行なえる。設定パラメータは「リミット」(16-235)、「フル」(0-255)、「オート」の3つ。今回の評価でPlayStation 3(PS3/CECHA00)を接続してみた限りでは「オート」設定でも正しく動作していた。

ドットバイドット表示を行なうためには「表示領域」設定を「+1」とする
HDMI階調レベルの設定は「画質・映像詳細設定」メニューの「ダイナミックレンジ」にて
側面下部にある2つのUSB端子は汎用で、写真入りUSBメモリなどはこちらに接続する

 アナログビデオ入力端子は、D5入力とコンポジットビデオが1系統づつ。それぞれが独立した入力系統として扱われ、それぞれにアナログ音声入力(RCA)を装備している。他機種で見られるようなHDMIのアナログ音声入力として利用するとして手段は用意していない。

 USB端子は3系統配備。側面側に3つあるが、上端にあるものが録画用のUSB HDD接続専用となる。音声系端子は、背面に光デジタル音声出力が1系統、側面側にミニステレオジャックの音声出力を装備(ヘッドフォン兼用)。ネットワーク系は、Ethernetのほか、無線LAN機能も内蔵しており、IEEE802.11b/g/nに対応する。

操作性チェック〜リモコンは新型に。RF接続のワンタッチリモコンも

デザインが変更された新型リモコン

 リモコンは新デザインのものに変更された。全長が短縮されてコンパクトとなり、背面のFeliCaポートが省略された。4K対応ハイエンドBRAVIAのリモコンということで見ると、質感的にがっかりな感じが否めず。こうしたハイエンド機オーナーに対するおもてなし感の演出が得意なはずのソニーにしては筆者を「あれ?」と思わせた部分ではある。

ワンタッチリモコン

 しかし、そうした強まったバリュー感の低減を狙うべく、もう一つ、追加のリモコン「ワンタッチリモコン」を付属させている。大きさ的にはレーザーポインターくらいなので、ポインティングデバイス的な機能を備えているのかと思ったのだが、チャンネル切換用の数字キーをなくしたただの簡易型小型リモコンであった。

 特徴を挙げるとすれば、BRAVIAへのコマンド伝送を赤外線ではなく電波(RF)式で行なうところと、背面にNFCポートが付いているところだろうか。数字キーがないのでチャンネル切換が順送り式に限定されるし、入力切換ボタンもないため、使い勝手は通常リモコンに及ばないのだが、コマンド送信を電波式で行なうため障害物や遮蔽物に強い。実際、テレビに向けずとも、サクサクとメニュー操作ができる点は心地よい。

 電源オンから地デジ放送が画面に現れるまでの所要時間は約6.0秒で、標準的な早さといったところ。テレビのチャンネル切換も約2.0秒。HDMI入力の切換は約2.5秒。こちらも標準的な早さだ。

 アスペクトモードは、メニューの中の「ワイド切換」を選択し、一覧から選択する方式で、切換所要時間はほぼゼロ秒。用意されているアスペクトモードは「ワイドズーム」「ノーマル」「フル」「ズーム」「字幕入」と言うラインナップで、従来機からのモード増減なし。

アスペクトモードは動作内容を連想させる図解が同時に表示されるので分かりやすい
「シーンセレクト」でコンテンツタイプを選択し、さらにそこから「画質モード」を選択させる2段階型画質チューニングシステムを採用する

 プリセット画調モードは、「シーン」と名付けられたコンテンツの種類に応じて、適切な画質モード(画調モード)をさらに別途選択するという二段方式を採用。東芝のREGZAでもこうした二段方式を採用し始めているので、こうした操作系も最近の流行らしい。この手法が使いやすいかどうかには賛否があるが、よく分からない人は「シーン」で「オート」設定を選択しておけばいいだろう。

シーン 画質モード
オート 設定なし
シーンセレクト切 スタンダード/ダイナミック/カスタム
シネマ シネマ1/シネマ2
スポーツ 設定なし
ミュージック スタンダード/ダイナミック/カスタム
アニメ 設定なし
フォト フォト-スタンダード/フォト-ダイナミック/
フォト-オリジナル/フォト-カスタム
ゲーム ゲーム-スタンダード/ゲーム-オリジナル
グラフィックス 設定なし
「シーンセレクト=切」×「画質モード=スタンダード」
「シーンセレクト=切」×「画質モード=ダイナミック」
「シーンセレクト=切」×「画質モード=カスタム(初期状態)」
「シーンセレクト=シネマ」×「画質モード=シネマ1」
「シーンセレクト=シネマ」×「画質モード=シネマ2」

 筆者もそうだが、こうした機能をいじるのが好きな「こだわり派」は、この設定を色々と変えたくなるのだが、実際の変更操作にはメニューに潜らなければならず面倒。できればリモコンに「シーン」や「画質モード」を直接切り換えられるボタンを設けて欲しかった。別途付けたワンタッチリモコンにはそうしたマニアックな機能操作系があってもよかったのではないか。

マルチチューナー搭載モデルにしては珍しく、2画面機能の制約が厳しい

 競合機種では対応している機種も多いデジタル放送の2画面機能は、相変わらず未対応だ。少なくとも、2番組同時視聴や、録画番組と放送番組の同時視聴には対応して欲しいところだ。

 商品セットには最低限の接続マニュアルが付属するのみで、操作に関する説明は[?]ボタンで起動する電子取扱説明書が賄うスタイル。読みやすさの点では不満はないのだが、索引が大ざっぱな目次のみで、特定の設定項目だけの解説を探したいときには苦労する。なので全文検索の機能か、あるいは現在選択しているメニューアイテムに関連するページへのダイレクトジャンプ機能は欲しい。

「入力切換」実行時には端子グラフィックスを出してくれるのは親切だ

 内蔵Webブラウザは、昨今のスマートフォンのものと比較すると動きがもっさりとしていて使いにくい。メモリシステムにあまり余裕がないようで、縦に長いWebページの閲覧中にメモリエラーが出ることがあった。筆者のブログサイトはまさにメモリーエラーが出て表示が行なえず。

 操作面や使いやすさの面では、まだ少々課題を残している感じがする。

画質チェック〜高品位なフルHDソースであれば納得の4K映像が楽しめる

 液晶パネルは解像度3,840×2,160ドットのVA型液晶パネル。画素をルーペで見てみると、左から青緑赤(BGR)の順に、縦に綺麗に並んでいるのがわかる。

 垂直配向(VA)液晶パネルは黒の沈み込みと暗部階調の再現性に優れる特性があるが、BRAVIA特有のオプティコントラストパネル構造の特性も相まって、暗室で見た時にも、ハっと息を飲むようなハイコントラスト感が実感できた。暗いシーンでの黒の締まりはIPS液晶採用のKD-84X9000よりも良好だと思う。

リアリティクリエーション(超解像)なし
リアリティクリエーション(超解像)あり

 バックライトは白色LEDを採用。白色LEDは直下型ではなくエッジ型の実装で、映像フレーム中の局所的な明暗階調レベルに応じて、LEDの輝度レベルを制御する部分駆動を搭載する。白色LEDは上下に配置しているようで、全黒に近い映像フレーム中の一部を発光させると、そこに引っ張られて縦方向の黒浮きが時々視認されることがあった。しかし、これはあくまで無理矢理出させたワーストケースであり、一般的な映像を表示している限りではそれほど違和感はなし。

 さて、現状はほとんどがフルHD(2K)程度の映像コンテンツしかないため、KD-65X9200Aで見るコンテンツも大半は2K映像と言うことになる。

 そこでキモになってくるのが2K映像をKD-65X9200Aのネイティブ解像度である4K映像に変換する映像エンジンの実力だ。これについては、4KテレビのファーストモデルKD-84X9000でも採用された、データベース型超解像技術「4K X-Reality PRO」(リアリティクリエーション)が威力を発揮することになる。

リアリティクリエーション=切
リアリティクリエーション=オート
美肌補正=切
美肌補正=入。リアリティクリエーションを有効化すると「美肌補正」が利用出来るようになる。「入」設定とした方が肌の肌理がしっとりとする。いわば、超解像で顕在化しすぎた肌の肌理をぼかすのが「美肌補正」機能だ

 2K-4K映像変換に際し、同じ2K映像でも高品位なカメラで撮影された映像であればあるほど、高品位な4K映像に変換できるとのことだったので、まずは、BD版「ダークナイト」を「シーン」設定を「オート」で視聴。各場面を記憶してしまうくらい何度も見ているこのソフトだが、IMAX撮影されたカットでは、まるで視力が上がったような解像感の向上と色ディテールの顕在化が実感できた。「200万画素の2K映像が800万画素の4K映像になりました」というのはさすがに言いすぎだが、それでも1.5〜2.0倍程度くらいに解像感が上がった実感がある。

 なお、KD-65X9200Aには、4Kマスターで製作された「Mastered in 4k」ブランドのBDを視聴するために用意された「Mastered in 4k」設定があるが、今回はテスト出来ていない。

 地デジ放送の映像も「シーン=オート」設定で見てみたが、4K化による劇的な解像感アップはBDほどは実感できず。地デジ映像でも輪郭部はシャープになるようだが、テクスチャ部分は全体的に普通にアップスケールされたようなしっとりめな映像になる。やはり、地デジ放送は伝送されてくる映像はMPEG-2ベースであり、もともとMPEGノイズ比率が大きいのでBDの時ほどの品質の高い4K映像は生成できていないのかもしれない。

 アニメ作品として、BDの「星を追う子ども」を「シーン」を「アニメ」設定で見てみたが、「4K X-Reality PRO」の効果なのだろう、輪郭線が非常に緻密かつ鮮鋭に描かれて美しく見えた。アニメは陰影を簡略化して描かれる映像特性の関係で「べた塗り」箇所が多くなるわけだが、この「べた塗り」領域に、一切のドット感(粒状感)を感じない。これはなかなか凄いことだ。フルHD解像度程度だと65インチにもなる大画面では、そうした単色塗りつぶし領域から、空間的に離散化したRGBのサブピクセルのボツボツ感を感じるモノなのだが、KD-65X9200Aではそれが一切、感じられないのだ。それこそ、各フレームが紙に高画質印刷されたように見えるのだ。

KD-65X9200Aはソニーの広色域ブランド「トリルミナスディスプレイ」に対応

 KD-65X9200Aは、ソニーの広色域ブランド「トリルミナスディスプレイ」に対応しており、「シーン」モードに応じて最適な発色を実現してくれる。

 「トリルミナス」といえば、かつてはRGB-LEDのバックライトシステムに使われていたブランド名なので「さぞかし原色ギンギンな色あいなのでは?」と想像する人もいるだろうが、幾つかの「シーン」モードで、発色の傾向を確認してみたが、意外にもナチュラル系の発色傾向で、過度な広色域表現を行なってはいなかった。純色は変に誇張されておらず、バランスよく色深度を拡張するような方向でまとまっている。

 1つだけ気になったのは、色温度の低いシネマ系の画調モードでは赤味よりも黄味の強さを感じるところ。いくつか画調パラメータをいじってみた感じでは、「ライブカラー」モードを活用すると、この特性は幾分か低減されるようだ。気になる人は試してみるといい。

ライブカラー=切
ライブカラー=弱
ライブカラー=中
ライブカラー=強

 KD-65X9200Aは、倍速駆動(モーションフローXR240)に対応しており、60Hzの映像に対して中間の1コマを補間フレームとして算術合成して120Hzの映像することで動画の残像感を低減させる。近年のBRAVIAの映像エンジンの補間フレーム精度はなかなか優秀で、補間フレームエラーが出やすいBD版「ダークナイト」のビル群の空撮シーンでもほとんどピクセル振動を起こさずに滑らかに表示してくれていた。

 モーションフローXR240の設定は「なめらか強-なめらか-くっきり-くっきり強-インパルス-True Cinema-切」の7段階設定となっており、「なめらか強」が補間フレームの支配率が最も高く、「くっきり強」が補間フレームの支配率が最も低い。

 「インパルス」と「TrueCinema」「切」は補間フレームの生成が行なわれない。モーションフローXR240をオフにする「切」設定はいいとして、「インパルス」と「TrueCinema」の2モードについては解説をしておこう。

 「インパルス」は24Hz映像を表示する際には、同一フレームを3度描画してそのたびにバックライトをオフにする制御を入れるモードだ。いわゆるインパルス駆動なのだが、3度描きしての72Hz表示にしているためか、意外にもフリッカーは感じられず。3度描きと言っても同一フレームの描画で補間フレームの挿入は行なわないため、フィルムジャダーを残しつつホールドボケ(残像感)を絶妙に低減してくれる。暗室で映画館ぽい画質を楽しみたいならば、是非とも活用したいモードだ。

 「True Cinema」は、バックライトオフを行なわず72Hz表示にするモードで、「インパルス」よりも、フィルムジャダー感とホールドボケ感を強めに残しつつ表示するモードとなる。「インパルス」が少々暗く感じるときなどはこちらを用いるのも代案として有効だろう。

 続いて3D映像としてBD版「怪盗グルーの月泥棒」を視聴。KD-65X9200Aの3D立体視は、アクティブシャッター型3Dメガネを使うフレームシーケンシャル方式ではなく、パッシブ型3Dメガネを使用する採用する偏光方式だ。3Dメガネは別売の「TDG-500P」。実売価格は約1,000円。

偏光方式の3Dメガネ「TDG-500P」

 偏光式では、映像パネル中の偶数ラインと奇数ラインを左目と右目に振り分けて見せる方式であるため、単位時間あたりの縦解像度は映像パネルの解像度の半分になってしまうと言う負い目がある。しかし、KD-65X9200Aの場合は映像パネルが3,840×2,160ドットであるため、たとえ縦解像度が半分になったとしても片目あたり3,840×1,080ドットの映像を見る事になり、Blu-ray 3Dに記録されているフルHD解像度(1,920×1,080ドット)の3D映像であれば、偏光式であってもほぼフル解像度で楽しむことができるのだ。3,840ドットに増えた横解像度に関しては、「4K X-Reality PRO」が解像感をプラスアルファしてくれるているので、いわば3D映像においても超解像効果を堪能できることになる。

 実際に見た3D映像は、偏光方式ということもあり非常に明るいのが印象的で、それこそ、蛍光灯照明下でも、普通に見られてしまうほどに明るかった。

 偏光方式の3D立体視のため、各映像フレームは1ライン抜けた状態で片目ずつに見えているはずなのだが、それが分からない。フルHD解像度の映像パネルでの偏光方式立体視では、1ライン抜けの弊害で、角度の浅い斜め線でジャギーが出ることがあるのだが、リアル4KパネルのKD-65X9200Aではそれも感じない。84インチの84X9000の時も思ったが、偏光方式3Dはリアル4Kパネルでこそ真価を発揮する、ということを再び実感した次第だ。

 クロストークについては、いつものように「怪盗グルーの月泥棒」のジェットコースターのトンネルシーンでチェックしてみたが、皆無ではないものの、気になるほどは多くはなかった。なお、65インチと画面が大きいためか、あまり画面に近い状態で見ると視線画角が広がってしまい、想定設計された光学経路から大きく逸脱してしまいクロストークが見えやすくなることがあった。今回の評価で最適な視聴距離を探ってみた感じでは、約1.5m以上離れればクロストークは少なくなるようだった。

 PS3を接続してもゲームプレイも体験。今回はアクションアドベンチャーゲームの「ラストオブアス」をプレイしてみたが、「シーン」モードによって遅延の大きさの違いを確認した。

 「シーン=切」×「画質モード=スタンダード」で約119ms(60Hz時換算で約7.1フレームの遅延)、「シーン=ゲーム」×「画質モード=ゲームオリジナル」で約33ms(60Hz時換算で約2.0フレーム)といったところ。約7.1フレームの遅延ではゲームパッドの操作から明らかに遅れが実感できるレベルでリアルタイムゲームをプレイするのは困難であった。ゲームモード時の約2.0フレームの遅延では、「ラストオブアス」であれば支障のないプレイが体験できていた。言うまでもないがゲームプレイ時は「シーン=ゲーム」を賢く使うべきだ。

「シーン=切」×「画質モード=スタンダード」で約119ms(60Hz時換算で約7.1フレームの遅延)
「シーン=ゲーム」×「画質モード=ゲームオリジナル」で約33ms(60Hz時換算で約2.0フレーム)

まとめ〜フルHDでも4Kテレビは魅力。リアル4Kでは写真に注目

 2013年は各社が4Kテレビ製品をハイエンド製品のラインナップに投入してきている。

 一般ユーザーの間には「4Kコンテンツがないのに4Kテレビなんて…」という意見も多いとは思うが、より上質な映像体験を求めるハイエンド指向のユーザーにとって4Kテレビ製品は「もしフルHDコンテンツを超解像技術によって一段上の画質に高めたらどんな映像になるのだろうか」という「if」が現実に楽しめる夢のマシンと考えたほうがいい。

 その意味で、KD-65X9200Aは、ブルーレイを中心に2Dや3DのフルHDコンテンツを楽しんでいるユーザーにとっては、かなり満足の行く体験ができるのではないかと思う。エリア駆動とコントラスト重視のVA液晶の組み合わせも、ハイエンド映像体験を支える礎石として必要十分なスペックだといえる。

 ところで、4KテレビBRAVA X9200Aシリーズとしては今回評価した65型のKD-65X9200Aの他に、55型のKD-55X9200Aもラインナップされている。2013年7月時点の実勢価格は前者が約65〜75万円前後、後者が40〜40万円台後半。画面サイズ以外に大きな性能差はないため、どちらを選ぶかは設置環境や予算の都合で考えればいいだろう。

 ただ、4K解像度にもなると、より大きな画面の方が感動は大きいので、予算と設置スペースが許せば65型のKD-65X9200Aの方をオススメしたい。

 ちなみに、今回の評価で、もっとも感動が大きかったのは、リアル4K解像度で撮影された写真や、4Kより高い解像度で撮影された写真を4K解像度にコンバートした写真を見たときだった。

 「4K X-Reality PRO」がいくら優秀とは言え、もともとは2Dの映像を、知識モデルを用いて推測変換した4K映像になるので、リアル4K解像度の映像パネルの本領が発揮されるのは、やはりホンモノの4K映像(今回の場合は4K写真だが)の時なのだ。うっそうとした山や森の風景写真などでは、その木々達の1枚1枚の葉が4Kパネルの各画素で緻密に描画されているのが確認できるし、それこそ記憶の中の情景を遙かに上回ったディテールの発見がある。日常の何気ない和室の写真や道端の写真でも、4Kパネルで見ると、その都度何らかの新しい感動に遭遇する。現在、他社の50インチ台の4Kテレビも並行して評価しているが、大きい画面の方がそうした新しいディテールの発見頻度が高いと感じた。

 X9200Aで4K写真を見るためには、USBメモリに記録させて接続させるのが一番シンプルだが、4K出力対応のHDMI端子付きPCと接続したり、あるいはPS3にて専用ソフト「PlayMemories Studio」を用いることでも4K写真の閲覧が可能だ。店頭デモでも、4K写真スライドショーは積極的に行なわれているので、是非とも一度、見ていただきたい。

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トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら