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「4Kテレビといえばソニー」。4Kテレビ元年の手応え

シェア過半数を獲得。4Kは大型テレビの「本流」に

ソニーマーケティング ホームエンターテイメントプロダクツマーケティング部 ディスプレイMK課 シニアマーケティングマネージャー 大北氏

 アナログ停波/地上デジタル完全移行のあと、大きく落ち込んでいたテレビ市場。しかし、昨年(2013年)は回復の兆しを見せてきており、GfKなどの調査会社やテレビメーカーなど、2014年はプラス成長とする予測も多い。

 そのテレビ市場回復を牽引するトレンドが「4K」だ。アナログ停波以降、テレビの販売数量は減少したものの、50型以上を中心とした大画面のニーズは高まっており、あわせて大画面の迫力を体感できる4Kテレビが人気を集めている。2013年以前も東芝、ソニーらが4Kテレビを発売していたが、2013年には国内のほぼすべての大手テレビメーカーが参入し、特に年末にかけて販売数量も拡大した。

 そうした'13年の4Kテレビ市場で、高いシェアを獲得したのがソニーBRAVIAだ。6月に市場投入した65型/55型のX9200Aシリーズは、発売以来4Kテレビのトップシェアモデルとなり、画質とともに、大きなサイドスピーカーを装備したデザインと音質でも注目を集めた。10月にはアンダースピーカーで設置性を高めたX8500Aシリーズも発売するなど、ラインナップを強化。「4Kテレビ元年」ともいえる2013年に、過半数を超えるシェアを獲得したという。

 なぜ、BRAVIAが人気を集めたのか、そしてソニーがこれから4Kテレビで目指すものとは? BRAVIAの国内マーケティングを担当するソニーマーケティング ホームエンターテイメントプロダクツマーケティング部 ディスプレイMK課 シニアマーケティングマネージャーの大北大介氏に聞いた。

KD-65X9200A
KD-55X8500A。サウンドバー「HT-ST3」は別売

4Kテレビのシェア過半数。「4Kテレビといえばソニー」を確立

--2013年の年末商戦が終わりました。2013年のテレビのトピックといえば「4K」ですが、4Kについての手応えは?

大北氏(以下敬称略):年末商戦は好評で、おかげさまで4Kテレビの過半数以上のシェアを継続的に頂くことができました。この年末は、特に4Kの構成比が伸びました。上期の大型テレビにおける4Kテレビの構成比は一桁%でしたが、それが10~15%。上期から倍増しました。4Kテレビの数が堅調に伸びているという状態ですね。業界的にも伸びていますが、ソニーのシェアポジションも伸びており、年末商戦は非常に良い結果になりました。

KD-55X9200A

--(4Kテレビで)シェアは過半数以上の理由はどう分析していますか? これは(BRAVIA X9200Aを発売開始した)去年の6月から大きな変化があったから?

大北:年末に大きな変化があったというわけではないですね。X9200A投入以降、継続的に過半数以上をキープしています。「4Kテレビといえばソニー」というイメージがうまく確立できたと感じています。

 理由は、2つあると思います。ひとつは「商品力」。特に画質です。当たり前ではありますが、魅力的な商品/画質が実現できました。パネルだけではなく、映像処理技術の蓄積や、映像エンジン、放送局向けなどで取り組んできた4Kへのノウハウなど。お客さまにとってひと目でわかるようなソニーならではの画質の違いを出せたことで、「4Kといえばソニー」と認知していただけたのかなと思っています。

 2つめは「4K」が浸透してきたことです。夏商戦以降、4Kの魅力を訴求するCMや、イベント/店頭活動でも4Kの認知活動に取り組みました。商品力と、4Kがどのようなものなのかが、理解されるようになったことで、ソニー=4Kと感じていただけるようになったと思います。

--「4K」という言葉は、確かにかなり浸透してきたと感じます。ただ、実際のユーザーや消費者が4Kをどう受け止めているかという点は、少し疑問もあります。それは、4Kテレビを購入している人は、「4K」という要素に興味を持っているのか、それとも一番いい大きなテレビを買ったらそれが4Kなのか、ということ。今年のCESなどを見ていると、後者の要素が高くなってきたようにも感じていますが……

大北:半々ぐらいという印象ですね。「4Kがいい」、「4Kだから買う」という人は、やはり相当多いですね。指名買いといいいますか、4Kがどういうものか、4Kの魅力をよくご存知の方です。

 一方で、新しい大画面テレビを買ったら4Kテレビだったという人も相当いらっしゃいます。店頭で見た「画質」や「迫力の違い」といったものを評価していただけています。指名買いというよりは、体験して“良い物”として一般の方にも評価していただいて購入いただいている。アンケートでも「2K(フルHD)と比較した結果、4Kを選んだ」という方が半数くらいいます。

 テレビ市場では、「より大型テレビがほしい」という薄型テレビから薄型テレビへの買い替えが着実進んでいますし、特に50型以上が伸びている。しかしながら、50型以上になると(フルHDの)207万画素では画質の粗さがどうしても気になってくる。これは必然的なもので仕方がないのですが、そこの弱点を補う「4K」の829万画素というソリューションがでてきた。4Kテレビを本格的に発売してまだ1年も経っていませんが、マーケットがここまで拡大したのは、やはり根本的なニーズが4Kにはあるのだと思います。

 言葉で4Kのベネフィット(利点)を伝えるのは難しいですが、店頭で体験してもらうことが一番です。4Kネイティブは当然の事ながら、普段見慣れているフルHDのブルーレイのアップコンバート映像のほうが、かえって画質に驚かれるお客様が多い。そういう意味では、4Kは大型テレビの正常進化である、と思っています。

4K市場拡大は「想定通り」。音質にも支持

--業界全体でもテレビに占める4Kテレビのシェアが上がり、ソニーとしてもその中で過半数を取った。2013年は4Kテレビ市場の立ち上げがかなりうまく行ったと思います。この結果は当初から予測していましたか?

大北:想定通りです。ただし、2013年初にこの目標を立てた当初は、びっくりするぐらい「高い目標」でしたね。「これ登るの?」っていうぐらい(笑)。4Kはソニーがリードするという意気込みでかなり高い目標を掲げたのですが、おかげさまで、お客様から支持をいただいて、その“高い”計画値に沿った形で進捗できています。

--製品としては、6月に65型/55型のX9200Aシリーズを発売して、一気に拡大。9月にスピーカーを小型化したX8500Aシリーズを投入しました。この狙いはなんでしょう? また、X8500Aシリーズ投入後に市場に変化はありましたか?

大北:X9200Aは、4Kの画質とともに、音にこだわった、画質と音の臨場感を最大化したシリーズと位置づけました。映画を見るなら音にもこだわりたい。特に最近のテレビではスピーカーが小型化してきているので、4Kの立ち上げにあたって「ソニーは音に妥協しない」という姿勢をしっかり出そうという意図がありました。おかげさまでX9200Aシリーズは非常に高い支持を頂き、その考えは正しかった、と思っています。

 一方でホームシアターを構築されている方などから、音は専用のホームシアターシステムでやるので、ディスプレイだけのモデルがほしい、という意見がありました。そこでX8500Aシリーズを投入しました。音はAVアンプとか他の音響機器を使いながら、画は最高のものをという提案ですね。

--X8500Aを出す前には、X9200Aの弱点として(サイドスピーカー故に)他の4Kテレビより設置スペースが大きいと指摘されていました。売り場などで競合はその点をかなり強く突いてきたと思います。「ソニーの4Kは家に入らない」とか(笑)。そのあたりは、X8500A投入にあたって意識されていたのでしょうか?

大北:確かにそういう声はありましたが、実態としては(X9200A本体の)大きさについて、それほどネガティブな影響はなかったと思っています。X8500Aの発売以降も、X9200Aの比率は下がっていないですし、スピーカー、音を含めて支持をいただいています。あと、55型/65型のテレビですから、あらかじめ設置スペースは確保されている方が多いようです。

--X9200AとX8500Aの販売構成比やサイズの構成比はどうですか?

大北:具体的な数は申し上げられませんが、X9200Aのほうが多いです。4KのメインモデルはX9200Aと位置づけています。サイズについては、台数が多いのは55型ですね。55型と65型で、だいたい3:1という構成比です。これはX9200A/8500Aともほぼ同じ動きです。

 ただ65型も、フルHDと比べると比率が高いですね。このサイズだと「4K」が強く支持されている。4Kになることで、60型以上の製品により魅力を感じていただけるようです。そういう意味では大画面のトレンドとともに4Kが受け入れられていると実感します。

 大画面化により、4Kのニーズは必然的なものになってきています。具体的な数字はまだ試算中ですが、2014年には、4Kがさらに大幅に伸びるだろうと考えています。

4Kはテレビの「本流」。画質と音質を磨きプレミアムなテレビを

--2013年は4Kテレビ元年ともいえる、立ち上げになったと思います。一方で、4Kコンテンツが無いという意見もあります。4Kテレビを購入された方は、どういったコンテンツを楽しまれているのでしょうか。

大北:4K放送については、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)を中心に、2014年の試験放送スタートに向けた環境整備が進んでいます。

 ただ、我々の考える今の4Kテレビのベネフィットは、2K/フルHDを4K画質で高精細にキレイに見られることです。アップコンバートの画質、特に放送やブルーレイなどについて、しっかり高画質化できること、そこでフルHDテレビとの違いが生まれることなどを体験いただけるようにしています。購入者の方にも画質は非常に高く評価頂いています。

 先日購入調査を行ないましたが、コンテンツとしては、BDなどの映画がやはり多いのですが、有料放送のドラマや音楽/ライブ、スポーツなども人気です。プレミアムなコンテンツに興味の高いお客様に、4Kテレビを購入していただけており、また、画質を評価頂いています。我々も良いコンテンツを楽しみたい、という要望にしっかり応えるのが一番大事なことだと考えています。

 あと、特にX9200Aについては、お客様から音について、高い評価を頂いています。X9200Aには、テレビの音を良くしていこう、という思いを込めましたが、その満足度が高い。今後の製品については詳しいことは言えませんが、ソニーの4Kテレビとしては、映像はもちろん「音に拘る」というコンセプトは変わらないし、変わらない、変えてはいけない。それぐらい高く評価され、重視されていることがわかりましたし、さらに進化させていきたいと思っています。

--2014年にはオリンピックや、消費税増税前商戦、ワールドカップなどが控えています。こうしたイベントにあわせた提案なども考えていますか?

大北:4Kの良さを訴求していく、という基本的な方針は変わりません。今までどおりしっかりやっていきたいですね。あとは、4K放送の環境整備が進んでいることや、4Kのハンディカムも発売されます。また、4Kのスクリーンを活かすという意味では、αなどデジタル一眼ユーザーへもしっかりと訴求したいですね。829万画素の大型ディスプレイでは写真の見え方やディテールなどが違いますし、これも「体験」で違いがはっきりわかる機能。販売店様のカメラ売り場での連動訴求なども強化していきたいと考えています。

--2013年の4Kテレビはソニーが高いシェアを獲得しました。ただ、'13年前半の競合は、実質東芝だけでした。その後、シャープも4Kを強化し、パナソニック、LGも参入していますので、競争は間違いなく激化します。2014年、対応策はなにか考えていますか?

大北:程度の差はありますが、アナログ停波後にテレビをお買い求めになる方はこだわりを持った方が多いです。4Kはテレビの進化の本質ですから、まずは画質を追求していきます。その上で、音質など、対価を払ってもいいと思っていただけるような魅力的な製品を提供し続けるのが、重要と考えています。プラスアルファの価値をもった4Kテレビを出していきたいと思います。

(協力:ソニーマーケティング株式会社)

(臼田勤哉)