日沼諭史の体当たりばったり!

2016年夏の4Kテレビ導入入門。“明るすぎる”我が家で「REGZA Z700X」の最適設定を探る

あなたの自宅のREGZA、最高の画質にカスタマイズできてますか?

 今からちょうど2年前、4Kテレビがいよいよ本格的な普及期に入り始めた頃、正しい4Kの視聴方法ってどういうものだろう、なんていう企画を本誌で執筆させていただいた。当時は最新だった4Kテレビも、それから何度かの世代交代を果たし、機能も性能も大きく進化してきている。であるなら、最適な視聴の方法というのもそれに合わせてアップデートしているのかもしれない。

 また、2年前は陽の光を完全に遮れる視聴室という恵まれた理想環境で、ある意味多くの日本の住宅事情とは異なる場所での検証だった。というわけで、今回は筆者のフツーの自宅の、映像視聴にはベストとは言えない環境のなかで、快適に視聴できる映像設定はどのように考えれば良いのか、東芝デジタルメディアエンジニアリングでREGZAシリーズの画質設計を担当する住吉氏にアドバイスをいただきつつ、最新のプレミアム4K REGZA「49Z700X」を自宅に設置してみた。

東芝デジタルメディアエンジニアリング株式会社の住吉 肇氏(左)と筆者

基準となる視聴位置の「画面の高さ×1.5」にはこだわらず、テレビ放送は遠くから

 2016年4月に発売されたREGZA Z700Xは、東芝4K REGZAシリーズの中核モデルに位置付けられる。最上位機種であるZ20Xの1つ下のクラスに相当するが、機能としては主に4K放送(スカパー!プレミアムサービス)のチューナーが省かれているだけで、地上デジタル放送最大6チャンネル同時録画の「タイムシフトマシン」や、録画番組からおすすめを教えてくれる「ざんまいスマートアクセス」など人気の高い機能はしっかり装備している。今回はこのZ700Xの49型を利用した。

自宅導入の検証には東芝「REGZA Z700X」を使用

 設置の際に最初に気を付けたいのは、2年前と同様、テレビのインチサイズと解像度と視聴距離の関係。フルHD解像度のテレビなら「画面の高さ×3」、4Kテレビなら「画面の高さ×1.5」の距離から視聴するのがベスト、と言われている。Z700Xの49型は画面の高さが約60cm。なので、その1.5倍は90cmになるわけだが……さすがにリビングで90cmの距離から常に視聴するのはつらい。4K解像度の映画コンテンツなどをじっくり見たい時などに限った方が良さそうだ。

 それ以外の、例えば日常的に視聴する地上デジタル放送は、もっと遠くから見たいし、現実的にもそうならざるを得ない。そこで考慮するのが、地デジの解像度だ。地デジの映像は実際は1,440×1,080ドットで、フルHD以下の解像度となっている。したがって、フルHDで「画面の高さ×3」なのであれば、地デジは「画面の高さ×4」程度の距離が適しているということ。

 4K液晶のZ700Xはアップコンバートを行なっているとはいえ、地デジの映像は本来フルHD解像度以下なわけで、普段の視聴時はこの距離を目安にするのが良い、と住吉氏。我が家では、住み始めた時からなんとなくテキトーに置いていたソファに座った時がちょうど「画面の高さ×4」、つまり240cmの距離になり、ポジションだけで言えば「最適な環境」に自然になっていた。

我が家のリビング。手前のソファの、テレビを正面から見られる位置に座ると、ちょうど画面から240cmの距離になる

明るすぎるのに暗いリビング? 難しい状況で映像設定はどう考えるか

 しかしである。Z700Xを設置した直後から、住吉氏は渋い表情を見せ始めた。というのも、我が家の土地は狭く、隣家が近くに迫る都内らしい住宅事情。なので、日中はできるだけ太陽光を取り入れられるよう2階にリビングを配置する間取りで建てたのだが、幸か不幸か狙い通りバツグンの日当たりを実現しており、当日は曇り空だったにもかかわらず照度を計測すると700ルクス超を記録。遮光ブラインドを下ろしても300ルクス程度と、「明るすぎる」部屋になっていたのだ。

ブラインドを完全に上げた状態の明るさ(約700ルクス)
シースルー状態のブラインドを下ろした時の明るさ(約500ルクス)
ブラインドを遮光状態にした時の明るさ(約300ルクス)

 日常生活の快適さという意味ではこの結果は喜ぶべきこと。けれども、テレビ視聴のことを考えるとデメリットの方が大きい。周囲が明るすぎると、それに負けないようテレビの輝度も上げないと画面が暗く見にくくなってしまう。例えば部屋が700ルクス超の状況では、Z700Xの「映像設定→映像メニュー」で最も明るい「あざやか」だとわずかに明るすぎるくらい。もし晴れている日だったら、おそらくちょうど良いか、テレビの輝度が物足りなく感じるかもしれない。

「あざやか」「おまかせ」「標準」の他に、「サッカー/ゴルフ」「アニメ」「ライブ」「映画」という映像メニューが用意されている。「あざやか」は店舗で展示時に使われることが多い

 そしてさらにやっかいなのが、設置したテレビに向かって左側の窓から日が差し込むため、部屋は全体的に明るく感じるのに、よく見ると反対の右側は若干暗く落ち込んでいること。このおかげで、Z700Xの本体正面右下の、ベゼル外側に備えている照度センサーが、部屋の暗い方へ少し引っ張られるように反応してしまう。部屋の大部分の明るいところを基準にして視聴したいのに、照度に応じて輝度などが自動設定される「映像設定→映像メニュー」の「おまかせ」では、暗いところに合わせて輝度調整されてしまいがちなのだ。

写真中央に見える四角が照度センサー。向かって右下に配置されているために、今回の我が家のリビングみたいに一方から陽の光が差し込むところでは、明るさに応じた正しい自動輝度調整が困難な場合がある

 日中は仕事でだいたい外に出ていて、テレビを見るのは夜が多いから、平日のテレビ生活には大きな影響はないだろうけれど、休日にテレビを見る際には気になってしまいそう。この残念なテレビ視聴環境で可能な限り快適に見られるようにするにはどうしたら良いのか。住吉氏は「映像設定→映像メニュー」で「おまかせ」を選び、それをベースにカスタムすることを提案した。

購入したら初めに設定したい「室内環境設定」と画面の明るさ

 と、まずは「おまかせ」の設定を細かくカスタムしていく前に、「映像設定→室内環境設定」を行なう。ここでは部屋の照明の種類、外光の有無、部屋の壁の色の3つを設定する。

「室内環境設定」の設定画面

 照明は電球色と蛍光灯色の2種類のみなので、単純に部屋の明かりを見てオレンジ色なら電球色、白色なら蛍光灯色を選べば良い。外光も、テレビを設置する部屋に陽の光が入る窓があるかないかを指定するだけ。部屋の壁の色については、画面に表示される20色の中から見た目で近い色を指定するだけでOKだ。これで環境光による映像の見え方の違いが正しく補正されるようになる。

室内照明を点灯して確認。白色光の間接照明もあるが、使うのはまれなので、設定では電球色を選んだ
もちろん窓があるので、外光設定は「外光あり」に
20色の中から壁の色に近いものを選ぶ。我が家では「橙系の1」を選択

 室内環境設定を終えたら、次に周囲の明るさに合った輝度で映像が表示されるように調整する。細かく言うと、見るコンテンツの内容によっても映像の明るさ設定を変えるのがベストなのだけれど、ひとまず「映像設定→映像メニュー」から、設定の基本となる「おまかせ/あざやか/標準」のうちどれかを選ぶ。筆者の場合は先述したように、住吉氏が提案した「おまかせ」を選択した。

 「おまかせ」では、ほとんどのケースでテレビの設置環境に合った画質に自動調整される……のだが、今回の我が家のように外光の入り方がやや特殊な場合だったり、「おまかせ」のデフォルト設定でテレビ放送を見ていて明るすぎる・暗すぎると感じる時は、「映像設定→明るさ調整」で周囲の明るさにマッチする輝度に調整しよう。明るさ調整の設定画面では、周囲(部屋)の明るさごとの映像の輝度を簡単に決められるようになっているのが面白いところだ。

「明るさ調整」の設定画面

 当然ながら時間帯(日の傾き方)や天候によって部屋の明るさは変わるし、点灯している照明の数によっても明るさは違ってくる。そのためREGZAでは、ピンポイントの輝度のみを決めるのではなく、その時々の変化する明るさに追従するようにグラフ上の複数のポイントを動かして輝度を設定する仕組み。夜間で照明を1つしか点けていない時も、直射日光が降り注ぐような快晴の日も、もしくは昼間だけれど厚い雲に覆われている薄暗い時も、全てまとめて明るさ調整の値の“セット”としてここで設定しておけるというわけ。

なだらかな右肩上がりのグラフを調整し、周囲の明るさに対応する画面輝度を設定する
我が家の明るすぎるリビングでは、周囲が一定の明るさ以上の場合は最大値近くに、それ以下では標準値より少し明るめになるように調整

 だがしかし、果たして「ちょうど良い明るさの設定」というのは何を基準に決めたら良いだろう。テレビの映像を見て「明るすぎる」か「ちょうど良い」か、あるいは「暗い」と感じるかは、人によっても異なるはず。住吉氏に聞くと、「全白(画面全体が真っ白の)時にまぶしすぎないくらいに調整するのが良い」とのこと。「まぶしすぎない」という部分にもやはり個人差はあるだろうけれど、ここでは設定する本人の感覚で決めてしまって良さそうだ。ただ、家族がいると「まぶしい・まぶしくない」の感覚はそれぞれ。ある程度家族の意見も参考にして決めた方が安全かもしれない。

明るさと色温度は“全白”状態を基準に考える

 明るさが決まったら、今度は色温度の調整もしておこう。色温度は「映像設定→お好み調整→色詳細調整→色温度」から設定が行なえ、「おまかせ」では-5~+5の計11段階で調整できる。映像が全体的に青白いと思ったら値をマイナス方向へ、赤みが強いと思ったらプラス方向へ変える。

 「おまかせ」以外の「あざやか」や「標準」などでは、初めに「オート」と「手動」のいずれかを選択し、手動の場合は同じように11段階で調整する。さらにその11段階の調整中に決定キーを押すと、RGB各色ごとのゲイン調整も可能だ。

「色温度」の設定
「おまかせ」以外ではRGB各色のゲインも調整できる

 明るさもそうだが、色温度も調整の判断基準は「全白」。基本的にこれらの設定は、白を白としてきちんと表示させる(感じられる)ようにするための準備作業ということになる。テレビ放送で全画面が真っ白のシーンを見つけるのはかなり苦労しそうだが、「キューピー3分クッキングのキューピーロゴが表示されるCM画面」は全白だ。月~土曜日に放送されている番組なので、後述するZ700Xのタイムシフトマシンを稼働させておけば、録画予約していなくてもほぼ確実にいつでも確認できるだろう。

 あと、最後に注意点がもう1つ。特に画面の明るさについては“慣れ”の部分もかなり大きい。最初はものすごく明るく感じても、見続けるうちにそれが“普通の明るさ”として自然に受け入れていることもある。設置直後に明るさ調整した後、しばらくしてからもう一度微調整する2ステップでカスタマイズするのが、環境と自分により合った映像に設定するコツだ。

 以下に、初期設定としてどういう時に、何をどう調整すれば良いのか、改めて表にまとめたので参考にしてほしい。

【初期設定の変更手順】

・部屋の照明は何色?
 電球(オレンジ)色→ 「映像設定→室内環境設定→照明の色」を「電球色」に
 白色→ 「映像設定→室内環境設定→照明の色」を「蛍光灯色」に
・部屋には太陽光が入る窓がある?
 YES→ 「映像設定→室内環境設定→外光設定」を「外光あり」に
 NO→ 「映像設定→室内環境設定→外光設定」を「外光なし」に
・壁は何色?
 → テレビ周辺の壁の色に合わせて「映像設定→室内環境設定→壁の色」を設定
・部屋の明るさは?
 常に明るい→ 「映像設定→映像メニュー→あざやか or 標準」を選択
 日中だけ明るい→ 「映像設定→映像メニュー→おまかせ」を選択し、「映像設定→明るさ調整」を実行
・画面全体の色合いは?
 青っぽい→ 「映像設定→お好み調整→色詳細調整→色温度」でマイナス方向に調整
 赤っぽい→ 「映像設定→お好み調整→色詳細調整→色温度」でプラス方向に調整
・昼と夜とで画質を手動設定したい
 → 昼時間帯の設定を「あざやか or おまかせ」ベースで、夜時間帯の設定を「標準」ベースでカスタムする

ノイズ低減とアップコンバートで大幅な進化

 以上の基本的な初期設定を終えて視聴の準備が整ったところで、地デジとUltra HD Blu-rayでZ700Xの実力をチェックしてみた。そこでさっそく気付いたのは、地デジの画質が一見して2年前に検証したZ9Xから向上していると感じたこと。最も大きく印象が異なるのは、ノイズの少なさだ。住吉氏も4K時代の地デジ画質の進化ポイントとして「ノイズをいかに減らすか」が肝になっていると話す。

 同氏によれば、前世代では入力された地デジ映像の2フレーム分を解析して、動きの少ない(動いていないと判定された)平坦な部分でノイズ低減の処理を行なっていた。しかしZ700Xではこれが5フレーム分になることで、精度が上がるとともに、より効果的なノイズ低減を実現できるようになったとのこと。

最大5フレーム分を解析してノイズ低減を図る「ダイナミックNR」と、4Kアップコンバート時のノイズを低減する「4Kノイズクリア」

 地デジ放送のテロップをよく見ると分かるが、テレビ放送ではエッジの立った箇所付近にいわゆるモスキートノイズと呼ばれる汚れのようなノイズが目立つ。ところがZ700Xではこのモスキートノイズがほとんど見当たらない。動きがない部分だけでなく、動きがある部分も3フレーム分を解析して処理しており、スクロールするようなテロップにおいてもボケを抑えつつノイズを減らしているという。

 地デジの映像は、元々1,440×1,080ドットというフルHD以下の解像度だ。4K解像度の液晶パネルで地デジを表示する際には、以上のノイズ低減を行ないながら4K解像度へのアップコンバートも同時に処理しており、このアップコンバート処理も従来より大きく進化している部分だと住吉氏は話す。

 アップコンバートでは、映像を拡大した時の斜めのギザギザのラインを滑らかに補間する。ごく単純には、地デジの映像を上下に2倍ずつ拡大して、階段状になったドットが滑らかになるよう、周囲の色を参考にしてドット間にもう1ドットずつ差し込んでいけば4K解像度に変換できる。前世代ではこの処理が、実は水平0度から45度までの角度のラインにしか対応できていなかった。Z700Xでは、さらに45~90度もカバーできるようになり、全ての斜めのラインをケアできるようになったという。

 急激な角度のラインは、縦方向にドットを検出する処理が急激に増えて負荷が高まるため、これまで対応できていなかったと住吉氏。Z700Xの世代になって性能やアルゴリズムが向上したこともあり、現実的な処理コストで対応できるようになったということだろう。

Ultra HD Blu-rayの再生に使用したパナソニック「DMR-UBZ1」
このようなUltra HD Blu-rayなどの高画質な4K映像ソースではノイズ低減処理の必要はない。その場合は「ピュアダイレクト」をオン。ノイズ低減の処理がオフになり、映像ソースの美しさをそのまま表現できる
映像ソースの雰囲気も重視したい場合は「倍速モード」もカスタマイズしたい

 Z700Xではこうしたノイズや画質にかかわる細かな設定項目が多数用意されている。さらに、コンテンツごとの映像メニューやモードの使い分け、映像の印象に直結するフレームレートの考え方など、シチュエーションや好みに応じて変えることでさらなるZ700Xの実力を引き出せる設定も豊富だ。それらがどういう時に、どう設定するのが良いのかは下表を参照してほしい。

【ノイズ低減、映像の種類に関する画質設定の変更手順】

・地デジのノイズ(ランダムノイズ)を減らす → 「映像設定→お好み調整→精細感・ノイズ調整→ダイナミックNR」を調整
・モスキートノイズを減らす → 「映像設定→お好み調整→精細感・ノイズ調整→4Kノイズクリア」をオン
・暗い(全暗の)部屋でアニメ・ライブ・映画を見る → 「映像メニュー→アニメプロ or ライブプロ or 映画プロ」を選択
・全暗以外の部屋でアニメ・ライブ・映画を見る → 「映像メニュー→アニメ or ライブ or 映画」を選択
・4K映像のディティールを全て再現する → 「映像設定→お好み調整→ピュアダイレクト」をオン
・最大限に滑らかな映像にする → 「映像設定→倍速モード→クリアスムーズ」を選択
・映画(24fps)をそのままの雰囲気で楽しむ → 「映像設定→倍速モード→フィルム」を選択
・動きがぼやけ気味になっているのを改善する → 「映像設定→倍速モード→インパルス」を選択

テレビをいつでも振り返れるタイムシフトマシンに大容量HDDを用意しよう

 ここからはZ700Xの機能について触れてみたい。一番の目玉となるのは「タイムシフトマシン」だろう。対応HDDを接続することで、地デジ最大6チャンネル分を常時録画し、過去の番組を自由にさかのぼって視聴できる機能だ。このような“全録”はレコーダ製品でもあるが、テレビ本体が対応している点も含め、Z700Xのタイムシフトマシンには手放せない便利さがある。

タイムシフトマシンで録画した内容は「過去番組表」から選択して視聴する

 例えば「昨日テレビでこんなシーンがあった」なんていう書き込みがSNSやニュースサイトなんかで話題になることがあっても、録画もせず直接見てもいない内容だったりすると、すごく気になりながら、結局もやもやしたまま日々を過ごすことになっていた。また、事前に放送されることは知っていたのに予約録画を忘れて見逃すことも頻繁にあるし、「答えはCMの後!」的なフリのあと、CM中に家事をしているうちに忘れてそのまま答えを聞き逃す、なんてパターンもわりと多かった。

 タイムシフトマシンがあれば、そんな時でも諦めることなくすぐに振り返って見ることができる。今は「TVer」のようなテレビ放送の見逃し番組配信サービスなんかもあるけれど、見逃した番組の全てが都合良く配信されているとは限らないし、PCやスマートフォンの小さな画面ではなく、Z700Xの大画面で「過去番組表」からサクッと選んで素早く見られる手軽さはやっぱりありがたい。

 ただ、全録という機能の性質上、録画データの容量は膨大なものになる。今回は、タイムシフトマシン用に2TBのHDDを使用したが、この容量だとだいたい40時間程度で一杯になり、それ以前の番組はどんどん削除されてしまう。

東芝のタイムシフトマシン用HDD「THD-250D2」。テレビ背面に設置できる
HDDの容量を増やすだけでなく、曜日や時間帯を絞ればより長時間の録画が可能になる

 平日に放送された番組を、週末の空いた時間にゆっくりダビングするなり視聴するなり、という生活パターンを考えると、1週間程度録画し続けられるとうれしい。録画するチャンネルや曜日、時間帯を絞る設定を駆使することを考えても、4TB以上は欲しいところ。タイムシフトマシンで利用するHDDは、大容量であればあるほど利便性が高まることを頭に入れておきたい。

 またZ700Xの新機能が、6チャンネルを同時にプレビューできる「まるごとチャンネル」。放送中の番組を6チャンネル同時に見て好みの番組を探せる機能だ。直感的に見たい番組を探せるだけでなく、タイムシフトマシン録画していればリモコンの[始めにジャンプ]ボタンで、見たい番組の冒頭から再生できる。

タイムシフトマシン以外では、6チャンネルを同時にプレビューできる「まるごとチャンネル」を重宝している。「今何か面白そうな番組がやってないかな」と思った時は、番組表を見るよりこの「まるごとチャンネル」の方が直感的に分かりやすい

REGZAサウンドシステムとZ700X内蔵スピーカーの実力は?

 今回のZ700Xの視聴に当たっては、同時にREGZAに最適なサウンドシステム「RSS-AZ55」も組み合わせた。設置性や没入感の向上を狙い薄型化と狭額縁化がますます進む最近の大画面テレビでは、その分スピーカーが小型になったりスピーカー配置の自由度が低下したりして、どうしても音質面が犠牲になりがち。それはREGZAシリーズにも当てはまるかもしれない。そんなわけで、今どきの4K画質に釣り合う音質に強化するために用意されたのが「RSS-AZ55」だ。

REGZAシリーズに最適なサウンドシステム「RSS-AZ55」
テレビの後ろ側に設置

 RSS-AZ55は、サウンドバー風の細長いサブウーファー(実用最大出力40W)と、左右の小型サテライトスピーカー2個(同20W+20W)からなる、REGZAシリーズのテレビに最適化されたサウンドシステムだ。HDMIケーブルでZ700XとRSS-AZ55を接続し、テレビ画面上から出力先を選択するだけで、テレビの音声をサウンドシステムから出力できる。接続した状態でテレビ内蔵のスピーカーからのみ音声出力したり、内蔵スピーカーとRSS-AZ55の両方を同期出力して音像定位をより明確にするといった使い方も可能になっている。

 RSS-AZ55のサウンドは、当然のことながらテレビの枠を超えた音質を実現している。低音は分厚く、それでいて中域から高域まで音には伸びも張りもある。サブウーファーはテレビの真後ろ、サテライトスピーカーもテレビ左右の後ろ側が標準的なスピーカーの配置方法で、これだと背後の壁に囲まれてこもりがちな音になるのでは、と思いきや、一切そんな雰囲気もない。

 映画やライブコンサートの臨場感を余すところなく全身で感じることができ、テレビのトーク番組でしゃべっている人物の声質も生々しい。4Kテレビの高品質な映像に音質もバランスさせたいなら、絶対にこのレベルのスピーカーシステムはあった方がいい、と思える。が、だからといってZ700Xの内蔵スピーカーだと厳しい、ということでもない。内蔵スピーカーのみとRSS-AZ55のみとを切り替えながら聞き比べてみると、意外に内蔵スピーカーだけでも「聞かせる」音であることが分かる。

音声の出力先は簡単に切り替えられる

 たしかにRSS-AZ55の後だと低域は細っていると感じるものの、それ以外の中低音域と高音域は十分に鮮やかで、押し出しの強さもある。音像定位は明瞭で、ナレーションなどの人物の声は正確に画面の中央から聞こえてくる。

 Z700Xと一緒にRSS-AZ55を購入するのがベストではあるけれど、予算オーバーが気になるならZ700Xのみ購入して、映画などの試聴時に音質に不満を感じるのであればRSS-AZ55の導入を検討する、という順番でも全く問題はないだろう。なお、8月21日までの期間限定だが、Z700Xと対象機器の組み合わせ購入で、最大3万円をキャッシュバックするキャンペーンも実施。今回利用したZ700XとHDD「THD-250D2」、サウンドシステム「RSS-AZ55」をまとめて購入すると1.5万円のキャッシュバックとなる。詳細はキャンペーンページで案内している

視聴に適さない自宅でも、理想の画質に近づけられる楽しさ

 スタジオや視聴室のような最初から映像・音楽鑑賞を目的とした環境であれば、今回の自宅のように時とともに変わる明るさを考慮せずに済む分、初期設定はある程度シンプルにできるかもしれない。が、そんな環境にテレビを設置できる人はおそらくごく一部。ほとんどが理想とはほど遠い環境の部屋でテレビを見ているのではないだろうか。

 テレビを買い換えたら、設置場所と視聴距離、あとは「おまかせ」のような自動画質設定モードを選べば、基本的な作業は完了といえる。だが今回、住吉氏に様々な注意点や設定ポイントを教えてもらうことで、より良い画質でテレビを楽しめることがわかったし、テレビを使いこなしている実感が生まれてくる。

 刻々と変化する環境にもマッチするよう、自分なりに最高の映像設定を探し当てることができるまで、時間がかかることは間違いない。でも、その試行錯誤自体をテレビを使いこなすまでの楽しい作業にしてほしいし、もっと楽しいテレビ体験にしてほしい。REGZAシリーズの設定で迷った時、あるいは今所有している別の機種のテレビに応用する際、その楽しい作業に今回の内容が少しでも力になれば幸いだ。

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(協力:東芝ライフスタイル)

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。