日沼諭史の体当たりばったり!

家族をじゃませずひっそりテレビを見たい! ソニーとパナの個性派手元スピーカー

子育て家庭に必須(?)の手元スピーカー2機種を比較してみた

 「手元スピーカー」とは、文字通り自分の近くに置いて音を聞くためのスピーカーだ。ここでは主にテレビの音声を聞くのに、テレビから離して用いる小型のスピーカー、というくくりの製品として紹介するが、しかし「なぜそれが必要なのか?」と疑問をもつ人も少なくないだろう。

 それはそうだ、テレビにはスピーカーが内蔵されているわけだし、内蔵スピーカーの音質に不満があればサウンドバーやオーディオシステムなんかと組み合わせれば良い。聞こえにくければボリュームを上げればいいだけだ。

 ところがこの手元スピーカー、主な目的は「音質を上げる」ためでも、「ボリュームを上げる」ためでもない。「高音質」であることは重要じゃないし、どちらかというとボリュームはできるだけ小さくしたい時に用いるものだ。

 なおさら用途がはっきりしないなあ……と思うかもしれないが、とにかくこの手元スピーカーなるものが各社から発売されており、今回はそのなかでも個性的なフォルムの2製品をチョイスして比較してみた。1つはソニーの「お手元テレビスピーカー SRS-LSR100」(直販価格は税込21,470円)、もう1つはパナソニックの「ポータブルワイヤレススピーカー SC-MC20」(直販価格は15,223円)だ。

最大の目的は、単純にテレビの音を聞きやすくすること

 手元スピーカーの利点や使いどころはどこにあるのか、それとなぜ日沼家で手元スピーカーが必要なのか、先にそのあたりから解説しておいた方が良いだろう。

ソニー「お手元テレビスピーカー SRS-LSR100」
パナソニック「ポータブルワイヤレススピーカー SC-MC20」

 冒頭で手元スピーカーについて「高音質である必要がなく、ボリュームを小さくして聞きたい時」に使うもの、と述べた。これを別の言葉で言い換えるとすると、誤解を恐れずに言えば、ズバリ、「テレビのバラエティ・トーク番組の音声を、テレビから離れていてもしっかり聞きたい時」ということになる。

 音楽番組や、雰囲気も重要になる映画はともかく、多くのテレビ番組で重要なのは出演者やナレーターが何を話しているかだ。最近でこそテロップが多用され、出演者らがしゃべっている内容を視覚的にも把握しやすくなってきた。これは逆に言えば、映像だけでなくしゃべっている内容を正確に理解できるかどうかが、番組を楽しむのに重要な要素である、ということの表れではないだろうか。

 では、テレビ音声をテレビから離れたところから聞けるようにするにはどうするか。音量を上げるか、ヘッドフォンを使うかの2通りが真っ先に考えられる。でも、例えば集合住宅だとスピーカーの音量はむやみに上げられないだろうし、家族や友人、恋人と一緒にテレビを見ている時に、テレビの近くにいる人と離れたところにいる人のどちらかに合わせて音量を調整してしまうと、一方の人にとっては聞こえにくくなったり、耳障りになったりする。

 ヘッドフォンは、常に自分に最適な音量で聞くことはできるけれど、基本的には1人用。家族らと一緒に同じテレビ音声を聞くのには向いていない方法と言える。

 手元スピーカーがあれば、これらの不都合は一気に解消される可能性がある。テレビの音声出力から専用の送信機に接続し、その送信機から手元スピーカー本体にワイヤレスで音声を届ける。この時、テレビ内蔵スピーカーは無音状態にでき、目の前(耳の近く)に置いたスピーカーからのみ音を聞くことができる。手元スピーカーは充電式の内蔵バッテリーで動作するため、使用中は電源に接続することもなく、完全にワイヤレスで、自在に持ち運んで好きな場所に置いて使えるのがメリットなのだ。

子供の安眠を妨げずにテレビを楽しむ手段として

 さて、日沼家ではこの手元スピーカーをどのように使えるのか。我が家では1歳と3歳の子供を寝かしつけた後の夜10時前後からが、親にとって1日のなかの限られた癒やしのひとときである。ゆっくりテレビを見られるのはこのタイミングしかないが、テレビやステレオスピーカーのすぐ横、扉1枚隔てた隣の部屋に子供が眠っており、音量を上げると簡単に子供が目を覚ましてしまう。そうなると2次、3次の寝かしつけ作業に再び取りかからなくてはならない。

右奥のスピーカーの向こう側に、夜、子供たちが眠る部屋の扉がある。スピーカーの音量を上げると一発で目を覚まし、泣き始める。すまん

 また、夜は癒やしのひとときであると同時に、日中に片付けられなかった家事をこなす時間帯でもある。リビングと同じ2階にある洗濯機は家族の大量の衣類を洗うためほとんど毎日フル稼働し、食器洗い機はうなりを上げ、生ゴミ処理機も残飯を乾燥させるのに必死だ。他にもエアコンなどの暖房・冷房器具、空気清浄機なんかが参戦することもある。夜の日沼家のリビング周辺はノイズだらけなのだ。これに負けじとテレビの出演者の声をしっかり聞き取れるよう音量を上げると、当然テレビのスピーカーからは大音量が放たれ、子供たちの安眠を妨げる結果となる。

 そこで手元スピーカーの出番である。手元スピーカーを導入すれば、自分の座っているソファや、家事をしている最中のキッチンなど、好きな場所に置いて物理的に耳の近くで音を鳴らすことができる。音源が自分に近い分、音量も小さくて済み、子供たちが眠っている部屋からも音源を遠ざけることになるから、安心して夜のリラックス&家事タイムを過ごせるのだ。

 今回試した手元スピーカー2機種は、筆者としては両方ともそれら当初の目的を果たすことのできる製品だったが、細かく比較していくと、見た目だけでなくそれぞれに使い道の得意・不得意や応用範囲に違いがあることが分かってきた。

キッチンで使えば、料理しながら遠くのテレビの音もしっかり聞こえる

パワフルなステレオ感。AV機器的なこだわりも見えるソニー「SRS-LSR100」

 まずはソニーの「SRS-LSR100」。手元スピーカーとしてだけでなく、テレビリモコンとしての機能も併せもっているためか、「万人が使いやすい」ユニバーサルデザイン的な要素があふれた製品となっている。が、それはさておき、どんな機能をもっているのか見てみよう。

「SRS-LSR100」の外観

 SRS-LSR100はリモコン付きのスピーカー部(196×77×74mm/幅×奥行き×高さ、重量440g)と台座部(179×71×28mm/同)の2つに分かれる構造になっており、使用する時は分離してスピーカー部だけを持ち運び、使用しない時はドッキングさせてスピーカー部内蔵のバッテリーを充電できる。充電ケーブルの抜き差しが必要ないのは、小さなところだが便利なポイントだ。なお、満充電からの稼働時間は約16時間。朝から夜までバッテリー切れの心配なく使い続けられる。

スピーカー部と台座部が分かれる
使う時はスピーカー部のみ持ち運べばよい

 台座部は送信機を兼ねていて、ここに電源(Micro USB)とテレビからの音声をケーブルで入力する。音声入力はテレビのヘッドフォン出力から、もしくは光デジタル音声出力からの2つを利用できるのが特徴だ。光デジタルからの入力だとテレビ本体の音量に左右されず、スピーカー部に備えている大型のボリュームダイヤルだけで音量調整でき、シンプルに扱えるのがうれしい。

光デジタルで入力。ヘッドフォン出力の場合はテレビ本体の音量も調整する必要があるが、光デジタルなら手元スピーカー側だけ音量調整すればOK
大型のボリュームダイヤルは電源ボタンも兼ねている
凸状態は電源がオン
凹状態は電源がオフ

 スピーカー部は2W+2Wのステレオとなっており、横長の筐体ということもあって、しっかりステレオ感のある音を出してくれる。音声のワイヤレス送信には2.4GHz帯の無線電波を使用。別途テレビのアナログ出力からアンプ経由でスピーカー出力した音声と同時出力しても、ディレイはほとんど気付くことができないレベルだった。

 スピーカー部の上面には、テレビ電源ボタン、チャンネル切り替えボタン、入力切り換えボタン、テンキーなどが大きめのフォントとともに配置されている。AV機器らしくないこのデザインに、抵抗感がある人もいるかもしれない。けれども、実際に使ってみると、たしかにリモコン機能はあった方がいいな、と思える。

テレビリモコンとして使うためのボタン類が並ぶ。国内メーカー(とLG)のテレビなどに対応

 テレビから離れた場所で視聴する場合、手元スピーカーだけでなく、必然的にテレビリモコンも一緒に持ち運ぶことになる。しかしSRS-LSR100なら、少なくともテレビリモコンの持ち運びが不要になるわけだ。たった1つの違いだけれど、そのわずらわしさから解放されるのは気持ちのうえで大きい。

 丁寧に持ち運び用のハンドルまで付いているのは、本体をつかんで持ち運ぶ時に誤ってボタンを押してしまうことを防ぐため。本体はIPX2相当の防滴仕様となっていて、キッチンのような水のかかりやすい場所でも安心して使えるのがありがたい。

このように本体をつかんで持ち運ぼうとすると、背面や上面のボタンが押されて意図しない動作につながる恐れがある。ハンドルで持ち運ぶのが正解だ

小回りが利いてスマホ連携。パナソニック「SC-MC20」

 パナソニックの「SC-MC20」は、ソニーSRS-LSR100に比べると、デザイン面ではかなり“今どき風”。サイズもコンパクトで、直径104×高さ45mmと、少し大きめのリンゴの上半分を切り落としたような見た目だ。もちろん重量も191gと軽く、持ち運びのしやすさ、置き方の自由度の高さもこちらの方が上と言える。ただし、防水・防滴には対応していない。

「SC-MC20」の外観
手のひらサイズのコンパクトな筐体

 送信機は分離型で、電源と、テレビのヘッドフォン出力を送信機に入力する。もしくは同梱の変換アダプターを使って、テレビのモニター出力やアンプのライン出力から入力することも可能となっている。スピーカー本体には直接電源ケーブル(Micro USB)をつないで内蔵バッテリーを充電する仕組み。満充電からの動作時間は約10時間だ。

 音声のワイヤレス送信にはBluetoothが用いられている。送信機とスピーカー本体はペアリング済みのため、電源を入れればすぐに使い始めることが可能だ。対応コーデックはSBCだが、リップシンクのずれが気になることはほとんどない。ただ、それでも遅延はやはり存在し、先述の通りアンプ経由の外部スピーカーから同時に音声出力すると、ごくわずかにエコーのような現象が発生する。

 筐体は円形ながら、3.6cm径のウーファーを2つ備えたステレオスピーカー。ソニーのSRS-LSR100はスピーカーが正面向きだったが、SC-MC20は前後左右均等に音声出力される無指向性の雰囲気が強い印象で、置く向きを問わない使い勝手の良さがある。

 ただし、置く場所の素材によって音質は左右されがちだ。例えば木製のダイニングテーブルやステンレスのキッチンとでは音の表情は少し変わってくる。置き場所を変えて好みの音質を探る楽しみもあるが、柔らかいソファに置くと音が吸収されてしまう。どこにでも置きやすいハンディサイズの筐体だが、どこに置いてもきちんと聞ける、とは言えないので注意したい。

木製のテーブルに置くと、ある程度音の輪郭ははっきりしてくる
ソファに置いてみると、音が吸収されたようになって聞き取りにくくなる場面もあった

 ヘッドフォン出力からの音声入力が基本となる点は、汎用性が高く接続も簡単である反面、テレビ本体の音量に気を使わなければならないのと、コンテンツによってはボリュームが取りにくいといった難しさがある。例えばぎっしり音が詰まったテレビ番組で音量を合わせると、音のレンジが広い映画を見た時には、シーンによって音が聞こえないことがある。逆に映画に合わせると、今度はテレビ番組の音量が大きくなりすぎるので注意したい。

 ちなみに、SC-MC20はスマートフォンとペアリングすることで、スマートフォン内の音源を流したり、DLNAサーバーと連携するなど、さまざまなソースからの音楽再生も楽しめる。コンパクトで持ち運びしやすく、置き方も選ばない使い勝手の良さと、スマートフォンとも連携するBluetoothスピーカーとのマルチユースが可能という意味で、応用幅の広いツールだ。

機能・性能のソニー、使い勝手のパナソニック

 両製品の機能・仕様を下記の表にまとめてみた。

ソニー SRS-LSR100パナソニック SC-MC20
音声入力ヘッドフォン
光デジタル
ヘッドフォン
音声出力内蔵スピーカー
ヘッドフォン
内蔵スピーカー、ヘッドフォン
無線通信方式2.4GHzBluetooth 3.0
充電端子Micro USBMicro USB
充電時間約3時間約8時間
動作時間約16時間約10時間
ボイス強調○(ボイスズーム)○(快聴音)
テレビリモコン機能×
スマートフォン連携×
音声遅延ほとんどなしごくわずか
スピーカー構成ステレオ
2W+2W
ステレオ
1W+1W
スピーカー部
外形寸法
196×77×74mm104×104×45mm
スピーカー部
重量
440g191g
販売価格(税込)21,470円15,223円

 両者の特徴を並べてみると、ソニーのSRS-LSR100は、パワフルな音声出力と音質の良さに加え、短時間充電・長時間駆動という面でアドバンテージが大きい。機能と性能を優先し、純粋にテレビ用の手元スピーカーとして使うなら、こちらに軍配が上がりそうだ。リモコン部分のデザインについては賛否両論あるだろうからここではあえて置いておくが、それ以外に気になるところを1つ挙げるとすれば、ややサイズが大きく、正面にスピーカー、背面にリモコンの送信部があり、自分に向けて真正面に置く使い方が半ば強制される形状であるところだろうか。

SRS-LSR100は、このようにテレビと自分の間に置き、自分に正面を向ける決まりきった設置方法から逃れにくい。例えば自分の背後に手元スピーカーを置きたくなるケースもあるかもしれないが、その場合リモコン機能は使いにくくなるだろう

 反対に、もっとお気楽な感じで、狭いキッチンや物の隙間など、限りあるスペースにも自由気ままに置いてサクッとテレビを楽しみたいなら、パナソニックのSC-MC20を選択したい。ボリュームを取りにくい場合があるという弱点はありながらも、そこはユーザー側の工夫でカバーできる部分。コンパクトでスマートフォンとの連携機能もあることから、自宅に止まらず、出先でも使いやすいという汎用性・応用力の高さは捨てがたい。

コンパクトで設置の自由度が高いSC-MC20。スペック面で見劣りしてしまう分、小回りの良さや応用力の高さに注目したいところ

 機能・性能に秀でた「SRS-LSR100」と、自由度の高い使い勝手の「SC-MC20」。ケースバイケースで使い分けたいところだが、日沼家でどちらかを選ぶとするなら、ソニーだろうか。テレビ側の音量調整が不要になる光デジタル入力を備え、通常のテレビ番組はもちろんのこと、映画のようなメリハリある音声もしっかり鳴らしきる余裕の2W+2W出力がうれしい。限られた1日のリラックスタイムをさらに充実させてくれる、子育て世帯必携のアイテムになるかもしれない。

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ソニー
SRS-LSR100
パナソニック
SC-MC20

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。