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西田宗千佳の
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E3 2009特別編 UbiSoftが「3D版Avatar:The Game」を極秘デモ

パナソニックと共同で。103型フルHD 3Dプラズマ+Xbox 360


 本連載ではE3を、基本的にAVとネットサービス、家電プラットフォームといった視点からレポートをしているわけだが、一本だけ、純粋なゲームのデモの話をしたい。

「Avatar」に登場するパワードマシンの模型が展示されているが、宣伝らしい宣伝はこれだけ。「目立つけどこれなに?」という感じで見ていく客がほとんどだ

 UbiSoft Entertainmentブースに、ちょっと奇妙な一角がある。展示されているのは、ジェームズ・キャメロン監督の最新作「Avatar」をテーマにした「James Cameron's Avatar:The Game」。

 今年12月に、PC、Xbox 360、PS3、Wii、PSP、ニンテンドーDSと、すべてのプラットフォームで発売されることが決定している。

 映画に登場する巨大なパワードマシンが展示され、コーナー前では映画とゲームの狙いを紹介するビデオが流されているが、ゲームそのもの展示はない。小さな入り口があるクローズドブースがあって、その前には屈強なセキュリティ担当の人物が2人。取材を求めるプレスも何人かやってきたが、ほとんどがそのまま追い返されている。中に入る人々も、携帯電話やカメラといった「撮影可能な機器」を預けないと入出を許されない、という厳しさだ。

 このブースの奥になにがあるのか? 実は、Avatar:The Gameの紹介ブースなのだが、Avatarが超大作映画であるがゆえに、内容に対し厳重な「秘密主義」を採っていることが厳重な規制の理由である。また、展示されているのは単なるゲームではなく、特別に開発された「3Dディスプレイ・バージョン」なのである。103型の3Dプラズマの製品化がまだ決定してはいないことなどから、3Dディスプレイバージョンはあくまで試験的なものである。


James Cameron's Avatar:The Gameの公式サイトより。映画がまだ「トップシークレット」状態で制作中なので、ゲーム側も情報が非常に少ない デモではパナソニックの103型 3Dプラズマディスプレイを利用する(写真は2008年9月の技術発表時のもの)

 


■ Xbox 360+特殊アダプタで映像を生成。これまでのゲームにない「臨場感」が魅力

 利用しているのは、昨年9月に発表され、CEATECやCESでも公開している、103型3Dプラズマディスプレイ。こちらに、開発中のXbox 360版をベースにした3D表示バージョンをセットし、特別な変換ユニットを介して接続している。

 出力されている映像の解像度は1080pではなく720p。このゲーム自体が720pで制作されており、そこからの改良であることに加え、右目用と左目用に映像を生成するということは、映像の生成フレームレートを2倍にしなくてはならず、1080pでの生成は現実的に難しい、という事情もあるだろう。

 ゲームそのものは、3Dで構築された世界の中を動いて戦闘を行なう、いわゆるTPS(Third Parson Shooting、三人称視点型シューティング)。映画の舞台となる惑星パンドラで、様々なミッションをこなしていく。「Avatarの映画のスタッフとは、完全に協力して開発している。ゲーム内で車が必要になれば、映画の美術スタッフがデザインなどを検討、ゲーム側のスタッフとともに作り上げ、映画の方にも反映する、という関係」(映画版プロデューサーのジョン・ランドー氏)だそうで、確かに、非常に独自性の高く、統一感のあるデザインワークが魅力的だった。とはいえ、率直にいえば、ゲームの内容は「よくできているが、よく見かけるTPS」で、新規性があったわけではない。

 ただし、3Dディスプレイで生み出される臨場感は、これまでに見たTPSや、3D表示対応ゲームとは、隔絶したクオリティをもっており、「衝撃」の一言だった。映像を一切お見せできない上に、3Dの表現をどこまで文章で表現できるか不安なところではあるが、イメージをお伝えしてみたいと思う。

 FPSやTPSというのは、世界のほとんどをきっちりと3Dグラフィックスで構築し、その中で自由に戦える「臨場感」が魅力である。3Dディスプレイ対応になると、その「臨場感」がさらに高まる。

 例えば、自分が数人の味方とともに、森林をかき分けて進み、十数人の敵と遭遇戦になった、としよう。

 敵は陣形を保ちながら、こちらに銃を撃ってくる。何十という銃弾が、自分たちめがけて「飛んでくる」わけだが、それが立体になっているわけだ。また、周囲の味方の打つ弾も、当然奥行きをもって飛んでいく。突進してくる敵と、味方の距離が急速に縮まる様も、はっきりと体感できることになる。そんな中でも、周囲の木々から落ちた木の葉が風に乗って舞っている。

 どれも、FPS、TPSならば決して珍しくない描写だ。事実、あえて片目を隠して見ると、「普通のTPS」としか感じられなかった。むしろ、120fpsで書き換えるためにか、少々平板でディテールの薄い絵作りに思えた。

 だが、3Dディスプレイで見ると、臨場感はまったく違ったものになる。

 理由は、これまで「平面の絵」で把握させていた立体感が、より即座に認識できるようになったためだろう。しかも、書き割り感のない、しっかりとした3D表現になっているので不自然さもあまり感じない。

 例えば、「自分の右後ろにかろうじて存在が認識できる味方」を、平面の絵で見る場合と、3D表示で見る場合とでは、感じるリアリティがまったく異なってくる。「見かけ上同じ大きさに見える、遠くにいる大きな敵と、近くにいる小さな敵」の違いを、頭を使わずに判断できるのは、この種のゲームにおいて大きな進化といえるだろう。自分がいわゆる「光学迷彩」を使うと、まるで「ガラスの立像」があるように感じられるのも、立体ならではのおもしろみといえる。

 面白かったのは、残弾数や体力表示といった、ゲーム上必要なステータスについても、慎重な3D化が行なわれていたことだ。一般的なステータス表示は、「一番手前に張り付く」ようにあるのではなく、比較的手前の位置から奥に対して少し傾けて、しかも半透明に表示される。没入感を損なわず、見やすさを維持するためだろう。また敵を倒した時に得られる「経験値」の数字は、敵が倒れた位置で、上にポップアップするようになっていた。すなわち、大量の敵を一度に倒すと、画面内のいろんな「深さ」の場所で、数字がポップアップするのである。これは、ちょっと面白い経験だ。

 FPS、TPSというのは、一度に見なければいけない画面内の要素が多めで、慣れない初心者にはハードルが高い、と言われている。3D表示になることで、「人間が本来持つ空間把握能力」を生かして、敵の位置や進行方向、各種ステータスといった情報を確認できるため、単純に迫力が出るだけではなく、初心者にとってやさしく、わかりやすいものになった、という印象を受けた。

 


■ 調整には相応の工夫が必要。大画面ゆえの「一体感」が重要?

 実のところ、3Dディスプレイを使ったゲームデモというのは、これが初めてでも、珍しいものでもない。1月のCESでも、ソニーが開発中の3D液晶ディスプレイを使い、PS3の「グランツーリスモ5・プロローグ」をデモしている。

 だが、これまで展示された3Dゲームは、2Dゲームを、あまりコストをかけることなく3D化したものだった。だが今回の展示は、制作側も相当の工夫を行なっているようである。

 UBiSoftの担当者は、その工夫を次のように語っている。

「どこをどのくらい飛び出させるかは、非常に慎重に調整している。例えば、各キャラクターと背景、銃弾、ステータスなどでは、それぞれ突出量を変更して、自然に見えるようにした。中央なのか端なのかによっても異なる」

 こういったノウハウの一部は、映画版Avatarのスタッフからフィードバックをうけたものであるようだ。

 また、これだけの迫力が生まれている理由の一つは、ディスプレイのサイズが「103型」であることと無関係ではあるまい。文字通り「自分をゲームの世界が包む」ような印象を受けるのは、大画面+3Dゆえの効果、といえそうだ。

 この体験は、ゲームファンのみならず、ぜひ「ゲームクリエイター」の方々にしていただきたいと思う。きっと、新たなアイデアが生まれるはずだ。身も蓋もない感想をいえば、「15分500円のアーケードゲームにしたら、すごく儲かりそうな気がする」ソリューションである。

 なお、これは正式決定ではないが、パナソニックとUbi Softwareは、今秋に開かれる東京ゲームショウにて、このシステムの展示ができないか検討しているという。それが実現したら、かなり面白いと思うのだけれど。


(2009年 6月 5日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]


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