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「torne」開発チームは「SCEオールスターズ」!

PS3用地デジチューナ「torne」インタビュー


 今回は、PlayStation 3(PS3)用地デジチューナ「torne」(トルネ/CECH-ZD1J)の開発者インタビューをお送りする。昨日、報道関係者向けに体験会が開かれ、本誌でもすでに記事化しているので、機能や価格などについての基本情報は、そちらの記事を参考にしていただきたい。

 本記事では、「torneができるまで」をソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の開発スタッフに聞いた。


 

■ 圧倒的な「快適さ」が特徴。フルHDでサクサクスクロール

 「最近、AVがらみのアップデートがない、と言われていたでしょう? 実は、こんなことをやっていたんですよ」

左より、SCEソフトウエアプラットフォーム開発部 次長 兼 2課 課長の縣秀征氏、JAPANスタジオ 制作部 ゲームデザイナーの西沢学氏、ソフトウエアプラットフォーム開発部 2課 1グループの石塚健作氏、商品企画部 2課 課長の渋谷清人氏
 PS3のシステムソフトウェア、特にAV関連機能の開発を統括する、SCEソフトウエアプラットフォーム開発部 次長 兼 2課 課長の縣秀征氏は、筆者の顔を見るなりそう言って破顔した。

 率直に言って、ニュースリリースが出た段階では、torneに過大な期待っていなかった。PS3は発売からすでに3年以上が経過しているが、コンシューマ機器としてはいまだ図抜けた演算力を持っている。だが、メインメモリは256MBと、パソコンの水準と比較するとぐっと少ない。また、仕様を見ても、放送ストリームを直接記録するシンプルなレコーダであり、一般的なBDレコーダとは比較しづらい。むしろ、録画機能内蔵テレビの機能と比較すべき商品だろう。

 「そりゃあPS3を使うのだから、ある程度快適にはなるだろう。けれど、それだけでレコーダとしてPS3を選ぶモチベーションになるかは微妙ではないか」。そんな風に、少々懐疑的な気持ちがあった。率直に言えば、「低価格にレコーダ環境をそろえたい人向けの、比較的ニッチな製品になってしまうのでは」と考えていたのである。

 だが、実機に触れてみると、そんな観測は間違いである、と思った。機能リストだけを見れば、やはり印象は変わらない。だが、快適さは「ある程度」ではなかった。「劇的」だったのである。 

torne本体。PC用USB接続型地デジチューナと同様のサイズで、仕上げは新型PS3と同様の梨地だ

 1080pの高解像度表示を使いつつ、パッドの操作から一切の遅延を伴わず、「サクサク」動く。特に関心したのは、スクロールだけでなく、番組の検索や呼び出しにも「待ち時間」が存在しないことだ。このあたりは、動画を見ていただくのが一番早いと思う。

 

torneでの番組表示画面。データ放送表示の機能はないが、それ以外の地デジ受信に関する機能は、5.1chサラウンドへの対応も含め、すべて備えている EPG表示。最大で24時間・9チャンネル分をフルHDの画面に表示できる。これだけの文字が表示されても、スクロールや拡大・縮小の速度は一切変化ない

 

高画質版

 デジタル家電になり、テレビや録画機器の動作は遅くなった。厳しい価格競争と性能向上の中で、高性能なプロセッサや大容量のメモリを利用するのは、決して容易なことではない。

 結果、多くの人がサクサク動く家電を望みつつも、「まあこんなものでしょうがないか」とあきらめている部分がある。その中で、「できるだけ快適な機器はどれか」という目で選んでいる、というのが現実だろう。

 だが、torneはそれらとは一線を画する快適さだ。日常的に使うものとして考えると、これほどの快適さは単なる機能以上の「武器」となる。SCEとしては本望でない表現かもしれないが、仮にゲームに興味がない人が、PS3を「torneとBDプレーヤー目当て」に買っても満足できるのではないか、と感じる。

 torneの商品企画を担当した、商品企画部 2課 課長の渋谷清人氏は、開発の狙いを次のように話す。

渋谷氏(以下敬称略):操作の快適さは、まさに狙ったところです。やはり、見ていただくとわかりやすいと思います。実は、あまり「プレイステーションの中での位置づけ」というのは、意識していません。本当は決めておくべきなんでしょうけれど。様々なメディアの中でtorneがどこに位置するか、ということにはあまりこだわらず、「PS3として提供できる新たなエンターテインメントを広げる」ということのために、いろんな人が集まって作っています。



■ コンセプトはPS3が生まれた時から存在。初の「SCE」+「SCEJ」ジョイントプロジェクト?!

 テレビ機能をPS3に、という意味では、torneは“世界初”のものではない。SCEヨーロッパでは、2008年秋にテレビ録画用の拡張機器「PlayTV」が発売されている。そのためtorneも“PlayTVの日本版”と言われることも多い。だが渋谷氏は、明確に「その辺は正直あまり関係ない」と否定する。それどころか、torneに続く構想は、PS3のハード企画が始まった頃から存在した、というのだ。

商品企画部 2課 課長の渋谷清人氏
渋谷:そもそも、PS3の開発当初、企画の段階から、「テレビの上でいろんなエンターテインメントを」ということで、「テレビを」という話が、久多良木の作ったコンセプトの中にありました。もちろん当時は、裏でPSXをやっている最中であった、ということもあるのですが。あとはタイミングの問題で、PS3が普及していく中で「やろう」という話になっていったのです。

 torneの開発リーダーを務めたのは、ソフトウエアプラットフォーム開発部 2課 1グループの石塚健作氏。縣氏の下で、PS3のBDプレイヤーやSACDプレーヤーなどの開発を担当した人物である。

石塚:最初のコンセプトというのは、「PS3でとにかくテレビが見たいんだ」というものです。

 実は私は、ソニーのAV部門から出向してきているのですが、ずっと「AV機器で快適な操作性を実現できたら楽しいはずだ」と考えてきました。その観点で、PS3のBDプレーヤー機能やSACDプレーヤー機能を作ってきたのですが、今回も目的は同じです。

縣:はじめに、どんなハードがいるのか、USBにハードを繋いだらどうなるんだろうとか、そういう検討から始めました。さらに、ソフト的に番組表を作ったらどのくらいのスピードが出るのか、とか、そういう検証をしていったわけです。

石塚:実は、PS3の最初のローンチ時、CEATECで展示をした時にも、私は、縣や渋谷とともに、会場で説明員として参加していました。その際、多くのお客様が「これで録画はできないんですか?」と聞かれたんですよ。HDDが入っているということで、「録画ができる」、と思われたんでしょうね。ですから、エンターテインメントとして録画のニーズがある、というのは当初からわかっていました。

 あとはタイミングですね。日本でこれだけのものを作った時にこれくらいのコストで作れて、買っていただける、というタイミングになった、ということです。また、2008年になり、日本でPC用の外付け地デジチューナが解禁された、ということは大きいです。

 石塚氏が言うように、2008年5月までARIBの運用ルールでは、地デジ録画機器は「メーカーから録画機器として出荷された製品」のみに限られていた。これは主に「PC用の増設チューナからの違法コピー」を危惧しての策であったが、厳しすぎる上に地デジ普及を阻害する要因となっていたため、2008年5月よりルールは緩和され、「適切な著作権保護ルールを守っていれば、外付け機器の製造販売も可能とする」方向に改められた。PS3はもちろんPCとは違うが、「外付け機器を売れない」という意味では、同じ問題を抱えていたわけである。

縣:そこに、外付けチューナが販売できるようになり、地アナから地デジへの移行タイミングも近くなった、ということが重なったのが大きかった、といえるでしょう。またご存じの通り、発売当初はBDプレーヤーの開発で奔走していた、ということはあります。BDプレーヤーの開発が一段落したので、こちらに取りかかれるようになったのです。

 だが、torneが現状の形になるには、石塚氏のチームだけで開発をしていくには限界もあったようだ。

縣:序章は我々だけのプロジェクトだったんです。ですが、その状態では操作が「まったく面白くない」んです。

 そこで、ワールドワイドスタジオ JAPANスタジオに協力を依頼することにしました。スタジオのスタッフが集まっているところで、「こういうことをやりたいんだけど、どんなアイデアがある?」と相談をしたわけです。SCEとスタジオ、という意味では、初に近い大きなコラボです。

 「JAPANスタジオ」とは、ソフトの制作を担うSCEワールドワイドスタジオのうち、国内制作部門をさす。縣氏や石塚氏の部門は、世界全体での戦略・開発を担当する「SCE」もしくは「SCEI」と呼ばれるヘッドクオーターであり、JAPANスタジオとは別部門である。同じ会社ではあるが、その職務と担当ビジネス分野が違うことから、共同でビジネスを行なうことはあっても、今回のように密接な関係で開発が進むことは珍しかったようだ。

石塚:もう、SCEオールスターズですよ(笑)。最初はすごくいろんなアイデアがありましたよね。

縣:奇抜なものも色々あったんですけれど、実際にアプリケーションとしてまとめるにはどうしたらいいか、という点を考え、「ゲーム」というキーワードが出てきたのです。

 

torneのトップメニュー
 JAPANスタジオから、torne開発に参加したのは、JAPANスタジオ 制作部でゲームデザイナーを務める西沢学氏。音声認識を使って操作するPS2用ゲーム「オペレーターズサイド」や、PSP用の地図を使ったユニークなゲーム「ニッポンのあそこで」といった作品を手がけた経歴を持つ。

石塚:快適で面白い操作性を実現するための技術的な可能性を見つけ出していき、「できそうだ」ということがわかった段階で西沢に入ってもらい、検討を行ないました。

 その中で「どうしようか」と相談したら、西沢から「やっぱりゲームですよね」という意見が。私としても「ですよねぇ」という感じで(笑)。結果、元々私が思っていたものに、かなり近い形で実現することができました。

縣:西沢は途中から参加した、という形なのですが、実のところ、西沢が来てから本格的に始まった、といってもいいでしょう。



■ 毎秒60フレームは「至上命題」。 PS3の高画質化ノウハウはすべて投入

 気になるのは、やはり「どうやって速度と機能を実現したか」だ。PS3の搭載するCellは確かに速い。しかし、メモリ資源も少なく、別途ゲームやBlu-rayの再生といった「CPUリソースをある程度占有する」ことを前提とした機器であるゲーム機では、満足な機能を実現するのはなかなか難しいように思える。PCでの録画は「あまりある計算資源とメモリ」を活用して行なわれているし、他の家電機器は「録画に使うリソースを他が侵さない」ことを前提に設計しており、torneとは事情がまったく異なる。

 

ソフトウエアプラットフォーム開発部 2課 1グループの石塚健作氏
石塚:PS3で実装する限りは、毎秒60フレームで動くことは至上命題。西沢に入ってもらう前から、60フレームで動く気持ちよさを実現すること、できる限りどこでも60フレームを維持することを目標に、もの凄いチューニングを繰り返しました。

 24時間の番組表を1画面で表示する時などには、ちょっとコマ数が落ちることもあるのですが、それもばれないような感じで実装しています。ですから目的は、ほぼ実現できたものと考えています。文字がこれだけあると、1080pでのレンダリングってかなり難しいんですよ。

縣:文字はすべてベクターデータのレンダリングですからね。平面に見えますけれど、テクスチャーの量の世界で語るとものすごいことになっているんですよ。

石塚:一週間で3,000件の番組を処理するとなると、結局はもの凄い量のポリゴンを処理していることになるんですよ。そんなこと、操作している人の誰にもわからないんですけどね。

西沢:元々石塚の側から「ここまで快適にできるよ」という提示があった上での設計なんです。さらにデザインを載せて、その上で動くか、というところを含めての設計ということになります。画面の切り換えに関しても、同程度のことが想定されています。ですから、ベースのところは石塚のところで作って、デザインや操作感を作り上げていった、という形です。


石塚:実際には、「ここまでできました」というところを見せてOKをもらい、開発をスタートした、といった方が正確ですね。

縣:ゲーム中やBDの視聴中にも録画できる、ということが注目されていますが、OSを大幅に書き換えているわけではありません。仕組み的には、バックグラウンド・ダウンロードと同じ、と考えていただいて構いません。

石塚:すでにPlayTVというものがありましたので、その仕組みを参考に下準備をしています。ゲーム内で激しくHDDへのアクセスが行なわれ、そこに録画が重なる、といったケースでは処理が遅れる可能性もありますが、あくまで「可能性」の話で、多くの場合には問題ないでしょう。

 だが実は、本当に技術的に難しかったのは他にある。そしてそれは、AVファンには見逃せないポイントである。

石塚:torneでは、すべての表示をYUVで出力しています。そのため、細々としたところでOSに手を入れています。ゲームは基本的にRGBで開発します。今回我々は、UIまで含め、すべてをYUVで出力しています。色々やってみて、実際かなり難しかったのですけれど。

 SCEが「YUV出力」にこだわる理由は、テレビ放送の映像が元々YUVで処理されているためだ。ゲームやPCの世界でおなじみのRGBと同様、色を表現するための「色空間」を表現するための仕組みだが、三原色で表現するRGBと違い、輝度・色差で表現される。

 torneがYUVのまま出力するということは、放送波の色をできる限りスポイルすることなく表示できるということ。家電では当たり前のことだが、PCなどの外付けチューナでは、なおざりにされがちな点でもある。

縣:今回のデモではわかりにくかったかも知れませんが、torneには、PS3で培ったアプコンやノイズリダクションなどの機能は、すべてそのまま入れてあります。YUVの件も含め、単にテレビで見るのとtorneで見るのとでは、画質が違うはずです。

 ちなみに、BDプレーヤーは発売時初期出荷の「1.00」以外、すべてYUV処理です。社内での理解を得るのは大変でしたが、「我々が出すならばYUVでないとならない! そんな恥ずかしいことはしたくない!」と言って、YUVで出すようにしました。

 なお、このような処理が行なわれていても、利用者の側はそれを意識する必要はほとんどない。HDMIで一般的なテレビやプロジェクタに接続する際には、出力がYUVであることを判断して、きちんと処理が行なわれる。一部、PC用ディスプレイなどにHDMI以外で接続した場合には問題が出ることもあるが、そもそもHDMI以外での接続では、画質面で不利なので、その問題が目立つこともあるまい。

石塚:PSPへ書き出すためのAVC変換は、OS内ではなく、torne側で「アプリケーション」として実装しています。

縣:今は、Cellをブン回してエンコードしているわけです。

石塚:常にパフォーマンスのチューニングは行なっていますが、現在は実時間の2.3倍から2.5倍程度の速度で終了するようになっています。ハード実装も検討しましたが、コストなどもかかりますので……。できるだけCellを使って実現しよう、と考えていました。

縣:まあ、我々はソフト屋ですからね(笑)


■ 「アプリ」であるのには理由あり。トルミル集計は「ロビー機能」を活用

 ただし、torneには仕様上気になる点もある。それは「アプリケーションである」ということだ。

torneの録画済番組呼び出し画面。録画番組はtorneアプリの中でのみ管理され、XMBの「ビデオ」列には表示されない
 torneのパッケージには、ハード(チューナ)と共にBD-ROMが入っており、こちらに入ったソフトをPS3にインストールする形で利用する。要は、torneがゲームと同様の「PS3の上で動くアプリケーション」として扱われる、ということだ。現状のPS3で言えば、「Home」や「Life with PlayStation」と同じ扱い、と言えばわかりやすいだろうか。

 これまで、PS3での動画再生はXMBに組みこまれたプレーヤー機能や、BDプレーヤー機能が担当していた。だが、torneはそれらとは別の形で存在する。そのため、XMBの「ビデオ」列には録画番組は並ばず、torneアプリ内から管理し、呼び出すことになる。

 アプリケーションであるということは、録画予約をする時や再生をする時には、改めて「アプリの起動」をしなくてはならない、ということでもある。この時間はおおむね十数秒かかるため、唯一「遅い」、「待たされる」と感じた。このような構造になっているのには、やはりそれなりの理由があるようだ。


縣:一つは、各国固有の商品である、ということ。プラットフォームとしての管理・製造上の都合です。システムに手を入れるというのは、アメリカやアジアにも機能として入っていくことになり、複雑化します。

 もう一つは、日本の放送特有の事情。コンテンツの保護の仕組みを組みこまねばならない、ということです。これは、がんばればシステムに入れることもできない話ではないのでしょうが、リージョナルな商品としてシステムに入れるのがいいのか、日本国内の製品として市場に出すのがいいのか、というのは、正直議論がありました。

石塚:我々には、録画したコンテンツを保護せねばならない義務が課せられています。それを守るために、XMBに出すという方式でなく、アプリケーション内に入れる、という形を採っているのです。

 他方、Lボタン・Rボタンで番組ジャンルや録画日を切り換えつつ、再生番組を呼び出す、といった操作性は、XMBでは実現しづらかった、という事情もあるようだ。

西沢:私はずっとゲームの製作をやっていて、むしろシステムに依存するものは初めてなんです。今回torneは、「1つのゲームアプリ」としての開発、としてスタートしているのです。ゲームの中であれば、独特のユーザーインターフェイス/世界観を演出できます。XMBのルールに縛られてしまうと、あれはちょっとできなかったかな……と思います。

 

番組枠の右下にある人のマーク(視聴中人数)と、吹き出しに入っている数字(録画人数)が「トルミル」。録画予約したり、番組を見たりした人を、ネット経由で集計するものだが、その本質は今後のアップデートで見えてきそうだ

 その最たるものが、「トルミル」という機能。この機能は、番組表上で「録画している人の数」、「現在番組を視聴している人の数」を「トルミル数」という形で表示するものだ。同様の機能は、「録画ランキング機能」として、Webの番組表サービスや東芝のレコーダなどに搭載されてきた。だが開発陣は、「別に録画者数の把握ありきで始まったものではない」と話す。

西沢:トルミルは、まずPSN(PlayStation Network)のサーバーにログインしてもらい、都道府県毎に、それからさらにチャンネル毎に「ロビー」を作っています。そうやって、ロビー内の人数をカウントすることで、録画予約者や視聴者の人数を算出しているんです。

 現在のネット対応ゲームでは、対戦者や協力者を引き合わせるために「マッチング」と呼ばれる仕組みが使われることが多い。同じゲームをする人同士がまず「ロビー」と呼ばれる仮想的な集会場に集められ、さらに戦績や各個人の趣向にあわせ、「ルーム」と呼ばれるプレイ場を作って、そこで対戦がスタートする。PSNにも、ネットワークゲーム向けの標準的な機能として、マッチングのためのサーバーが用意されており、日々のゲームに使われている。

 トルミルは、このサーバーを利用し、「ロビー」を集計用のデータベースに見立てることで、トルミル数の算出を行なっているのである。


JAPANスタジオ 制作部 ゲームデザイナーの西沢学氏
西沢:既存のインフラを上手く使ってやるにはどうしたらいいか、ということを考えた集計する仕組みなんです。

渋谷:ですから今後、どんな機能が実装されていくか、ということは容易に想像がつくとは思うのですが……。

西沢:最初から「録画人数を集計してデータをとること」ありき、ではないんです。同じテレビを見ている人同士でコミュニケーションをとっていただく、ということを主眼に考えたのが、torneの仕組みなんです。

 ゲームでは、ロビー内でコミュニケーションする「ロビーチャット」機能があるが、同じ仕組みを使っている以上、トルミルも同様のことができる、と考えられる。それをすなわち今後は、同じ地域で同じ局の番組を見ている人同士が、なんらかの形でチャットなどを行なう機能が搭載される、ということになるのだろう。

西沢:とりあえず今のtorneは「気持ちよく使えること」に主軸に置いています。そこに、ゲームらしい、楽しく使えるフィーチャーを載せていく、というところでしょうか。

 結構まだ、「置いてきている」部分があります。ぜんぜんヤンチャできていない状態ですからね(笑)。

PSPと連携できるのもtorneの特徴。録画番組転送や、リモートプレイから全ての機能が利用できる
 PS3が、システムソフトウエアのアップデートでここまで育ってきたように、torneも出荷状態からアップデートすることでより進化していく、というコンセプトを持っている。

 西沢氏の言う「ヤンチャ」がどのような機能なのかは、現段階ではわからない。しかし、「レコーダでなくtorneを使う」理由がそこに生まれる、というのがやはり理想だ。

 またAV面で見ても、現在は搭載されていないデータ放送や「追いかけ再生」への対応、PSP向けのエンコードを深夜などにまとめて行う「予約転送」など、やって欲しいと思うことはまだまだある。

 それらがどこまで実現されるかは、torneが「どこまでレコーダとして浸透していくか」にかかっているといえそうだ。


(2010年 1月 22日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]