西田宗千佳のRandomTracking

PS4版「torne」ついに登場。開発者に聞くPS4版の狙い

高速起動でゲームとの行き来を瞬時に。逆再生やYUVも

 6月10日、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のテレビ視聴ソリューション「torne」が、いよいよPlayStation 4(PS4)に対応する。PS4に興味があるが、torneがまだ動かないので手を出しかねている……、という人は少なくないはずだ。

 では、PS4版torneはどのようなものになったのだろうか? そして、なぜここまで時間が必要だったのだろうか? torneそのものは、PS4世代でどういう位置付けに変わっていくのだろうか?

PS4版torne。操作画面はPS3版などと同様。左に「トルネフ」が現れているが、この秘密は後ほど解説

 本連載ではおなじみとなった、torne開発コアメンバーに、「PS4版torneの正体」について聞いてみた。今回ご登場いただいたのは、SCE 戦略・商品企画部 担当部長 同1課課長の渋谷清人氏、研究開発本部2部 担当部長 同3課課長の石塚健作氏のお二人だ。

 PS4版torneの公開日は6月10日であるため、今回取材で触れたのは開発途上版になる。また、EPGや番組画面の著作権の関係もあり、いくつかの例外を除き、torneの動作画面は、SCE側より提供を受けたものであり、EPG情報などは架空のものである。

戦略・商品企画部 担当部長 同1課課長の渋谷清人氏(左)と、研究開発本部2部 担当部長 同3課課長の石塚健作氏(右)

大幅なスピードアップ・操作性アップを実現

 なによりまず、PS4版torneのプロモーションビデオをご覧いただきたい。操作画面などはPS3版・Vita版とほとんど変わらないように見えるが、動画を見ると進化の度合いが一目瞭然だ。

PS4版torneのPV。いままで以上に公式キャラクターである「トルネフ」がフィーチャーされている。各種画面動作の速度はフェイクではなく、実機でも同じような快適さが実現されている

 PS4版torneは、現行のtorne、特にVita版と同様に、「SCEのテレビ視聴ソリューションの名称」となっている。具体的には、ネットワークレコーダー&メディアストレージである「nasne」と連携し、その映像を見るためのソフトだ。そのため、PS3向けに出荷されている、USB接続タイプの地デジチューナー(PS3向けに、ソフトとセットで販売されているもの)には対応しない。nasne発売以降、SCEはチューナー系を「ローカルには接続しない」方向で開発を進めており、この方針もそれに則る。

視聴画面もPS3とほぼ同じ。いままで通りの操作方法で使える
EPG系・番組検索系機能も、大きな変化はないように見えるが……

 機能面の詳細は後ほど詳しく行なうが、なにより大きく変わったのは「動作速度」だ。PS3版やPS Vita/Vita TV版のtorneは、起動に若干の時間を必要とした。だが、PS4版はそこが劇的に変わる。

 起動時間は、PS3版に比べおおむね3分の1。SCE側から正確な数字は示されていないものの、筆者の実測では、PS3版がだいたい20秒。PS4版は6、7秒というところだろうか。それだけでも大きな変化だが、一番の違いは、ゲームを終了することなく動作するようになる、ということだ。

 これまで、torneは各機器で「ゲーム」と同じ扱いで動いていた。PCやスマートフォンと違い、ゲーム専用機の場合、メインの「ゲーム」は同時に1つしか動作しない。だから、torneを視聴中にゲームをしたいと思ったり、ゲーム中にtorneでテレビを見たいと思った場合には、それぞれの「終了」と「起動」が必要だった。ゲームにしろtorneにしろ、起動にも終了にも数十秒の時間が必要だから、目的の作業に行き着くまでには、1分くらいかかることも珍しくない。ゲーム機自身の起動時間もある。

 だが、PS4版torneは、アプリケーションとしての扱いが「ゲーム」ではなく、「ミニアプリ」になる。VitaおよびPS4のOSには、ゲームの他に、ゲームと並列動作できるアプリケーションの領域が用意されており、そこで動くものを通称「ミニアプリ」などと呼ぶ。PS4でいえばウェブブラウザー、Vitaでいえば同様にブラウザーやTwitterクライアントなどがそれにあたる。PS4版torneはゲームと同時に動作し、相互に切り換えながら使えるため、「テレビを見るからゲームを終了」させる必要はない。ゲームからtorneに移行する際には「ゲームを中断する」旨のダイヤログが出るものの、そこで「OK」さえ押せば瞬時にtorneに切り替わる。torneからゲームに移行する際もほぼ一瞬だ。移行時には、直前に再生していた番組の「再生ポイント」も記録される。だから、torneで録画番組を見ていて、その状態のままゲームに移行、ふたたびtorneに戻ってきた際には、見ていた番組が、自動的に続きから再生される。

 ソフト開発の責任者である石塚氏は、「ずっとこうしたことがやりたかった」と話す。

研究開発本部2部 担当部長 同3課課長 石塚健作氏

石塚氏(以下敬称略):ハードルが高かったのは事実ですが、こうした快適さが実現できない限り、PS4版を作る意味はない、と最初から思っていました。実はVita版でもやろうとしたのですが、色々と難しく断念した部分でもあります。PS4になって「これでメモリーに余裕が出来るぞ」と喜んだのですが、結局、この仕組みで使える部分はほぼ使い切ってしまっていますね。

 今回の起動から、torneの「o」のアニメーションがなくなっているのにお気づきですかね? 起動が速くなったので、アニメーションがいらなくなったんですよ。あれは、動作によって待ち時間を少しでも短く感じていただこう、と思って組み込んだものだったので。

 単に起動が速くなっただけではなく、全体的な動作速度も速くなっています。nasneから映像を読み出しているのですが、ローカルチューナー(筆者注:PS3用のUSB接続チューナー)と遜色ない速さになっているはずです。

 また、30倍速・120倍速といった高速早送りの機能も変わっていますよ。いままではコマがずいぶん飛んでしまい、内容の把握が難しかったと思うのですが、間のコマを補完して表示するようになったので、PS4版ではかなり「内容が分かる」ようになったと思います。

 実は、レンダリングクオリティも上がっているんですよね。アイコンなどのアンチエイリアシング処理も高度にしたので、ギザギザ感がけっこうなくなっていると思うのですが。

PS4に必要とされた「AV機能のための改善」

 SCEは、PS4が発表された後、早期の段階から「torneをPS4に対応させる」と表明してきた。だが実際には、PS4版torneの提供には、PS4の日本発売から約4カ月、欧米での発売からは7カ月近くの時間を必要とした。それはなぜなのだろうか?

 渋谷氏は「PS4版になったからといって、torneの位置付けが特に変化したわけではない」と説明する。

戦略・商品企画部 担当部長 同1課課長の渋谷清人氏

渋谷:PS3のtorneが出たのが、2010年の3月18日です。ありがたいことに、それ以降PS3を「ストレスなくテレビを見る」目的で、日常的に起動する、という人が増えました。実数をお伝えすることはできないのですが、現在PS3をお使いいただいているユーザーの方の中にも、torneをお使いの方は非常に多い。「購入後もずっと使い続けていただいている数」でいえば、ゲームではとても考えられないような比率の方々が、ご購入以降、ずっとtorneをお使いなんです。

 PS4という新しいコンソールが出て、我々としても盛り上げていかなきゃならない中で、PS3の上でお使いいただいている方々に、PS4でも同じようにお使いいただきたい。当然のように「PS4でも出るよね」と思っている方々にご提供する、ということ。ですから、これまでのtorneと、あえて戦略を変えることはしません。

 このような発想から、PS3向けのtorneに提供されてきた機能は、USBチューナーへの対応をのぞき、ほぼすべてが提供されている。PS4版ではトロフィーはなくなったが、これは「ゲームでなくアプリにはトロフィーをつけない」というSCE側の方針によるものだ。

 また、ソニーのBDレコーダと連携する「レコ×トルネ」機能も、ダウンロードで追加購入するものとして準備されている。「PS3で出来ていたことがそのままできないと、困る方が多いだろう」との発想からだ。ただし、こうした追加機能については、PS3版との共用はできず、「申し訳ないのですが、PS4向けに新たにご購入いただく必要がある」(渋谷氏)という。

 PS4版torneの追加機能ストア「トルネ屋」で販売される機能は以下のとおり。テーマ数が1種類になり、「オトイイネ」という新機能(後述)が追加されている。

  • レコ×トルネ(1,851円/税込)
  • オトイイネ(1,296円/税込)
  • トルネ・ブラック(514円/税込)
コメント表示設定も追加

 細かな改善点もある。昨年12月の「システムソフトウエア 4.50」で追加された、niconicoと提携しての「実況」機能については、「文字表示部が広い。動画の方をもっと大きくしたい」というニーズに応える形で、文字表示行数の調整機能が、設定項目の中に追加された。コントローラー側でどのボタンに割り振るかが難しい関係から、視聴中のリアルタイム切り換えは搭載されていないが、「まずはこの機能で感覚を試していただきたい」と石塚氏はいう。

 なお、実況系機能の「書き込み」については、今回も対応を見送っている。主に操作性と、番組視認性の問題だ。「スマートフォンやタブレットを使った、コンパニオンアプリとの連携などを使い、書き込みに対応していく可能性はある」(石塚氏)という状況であるようだ。

「実況」機能も健在。ワールドカップでは威力を発揮しそう。PS4版からは、表示領域の変更にも対応した

 話を「PS4対応」そのものに戻そう。

 利用者の本音として「PS3での利用者に配慮する発想ならば、もう少し早く出して欲しかった」と思いたくなるのが人情である。それは開発陣も重々承知している。特に今年はサッカーのワールドカップ・イヤー。PS3用の初代トルネもワールドカップ需要を意識して製品化された経緯もあり、SCE社内でも「PS4版はワールドカップまでに」という声があったという。すなわちこの時期がタイムリミットだったわけだ。

 難航には2つの理由があった。

 一つは、PS4がPS3と違い、「ゲームに特化した機器」として開発されてきた、という点だ。OSなどの開発にも優先順位がつけられ、まずはゲームに必須であり、PS4を差別化する上で重要な機能の開発に重点が置かれた。「AVアプリケーション」の一つであるtorneを作るために必要な部分は、そうした「ゲーム向けの開発」を横目に見ながら進めていく必要があった。

 その例としては、「YUV出力」と「HDMI-CEC」対応が挙げられる。

 放送もBlu-rayも本来は、ゲームやPCなどで使われる「RGB系」でなく、輝度・色差で表す「YUV系」で処理されており、YUV出力である方が、放送波の色をできる限りスポイルすることなく表示できる。PS3ではYUV出力での処理系が用意されていたが、PS4の場合、ゲーム向けの「RGB系」が基本で、先日まで、BDプレーヤー機能をのぞき、YUV系の処理は用意されていなかった。

 しかしtorneはテレビ系アプリケーションなのでYUVで出力したい。

石塚:torneでは、すべてYUV処理を採用しました。そのために、システムソフトウエア側で処理を入れてもらっています。PS3版がYUVでしたから、PS4もYUVでないとあり得ない、と考えたんです。

 そしてもう一つが「HDMI-CEC」だ。HDMI-CECとは、HDMIで接続された機器同士で、リモコンの操作コードやコンテンツの種別情報などをやりとりし、操作の簡便化を図るための仕組みである。テレビ各社が「VIERAリンク」「レグザリンク」などの名称で搭載しているもの、というとわかりやすい。

 PS4は「ゲーム機」であるため、テレビ側の画像モード切替に使う「コンテンツタイプ」は、これまで「ゲーム」に固定されていた。だが本来は、Blu-rayで映画を見る時などは「映画」に切り換えるなど、適切な情報が送られるべきだ。

PS4版torneを起動した直後の画面。HDMI-CECによってコンテンツ情報が送られ、テレビ(BRAVIA)のシーンセレクト機能が働く。これでより最適な画質で楽しめるようになる

 torneではそこにもこだわった。

石塚:CECのコンテンツタイプ切り換えの機能を追加してもらい、torne利用時は、自動的に「テレビ」に切り替わるようになっています。EPGからコンテンツ種別を読み取り、それをテレビに送ってさらに最適な切り替えを……とも考えたのですが、テレビによって対応しているモードが異なること、テレビ側が採用している切り換えの仕組みによっては、頻繁な切り換えは目障りに感じる場合があることなどを考慮し、結局はもっとも番組視聴に向く「テレビ」に固定する形を採っています。

 また、HDMI-CECを使い、テレビのリモコンにある「番組表」ボタン情報もとるようになったので、HDMI-CECで連動させていれば、ほぼほぼテレビ側のリモコンだけでtorneが操作できるようにしました。

渋谷:実は現状、PS4のシステムソフトウエア側が、PS3向けに発売したBluetoothのBDリモートコントローラーに対応していません。そこで、HDMI-CECを使っておおむね同等の操作性が実現できないか、と考えました。他方で、PC用のモニターなどでお使いの方にはご不便をおかけする部分があるのも事実です。その辺は、みなさんからの反響をみて、対応を検討していきたいと考えています。

 こうした対応は、PS4向けの最新のシステムソフトウエアである「バージョン1.70」(4月25日公開)から組み込まれたものである。そのため、PS4版torneの利用には、バージョン1.70以降のシステムソフトウエアでのみ利用できる。

 他方、nasneのアップデートは不要だ。nasneについては、先日来実現しはじめている「NexTV-F仕様に基づく宅外からのリモート視聴」への対応が予告されており、そちらの動向も気になるが、「まだもう少しお待ちいただきたい」と渋谷氏は話す。

渋谷:リモート視聴のご要望は大きく、非常に大切な機能だと考えています。NexTV-F仕様で自由度が上がったこともあり、nasneでは対応を検討しています。「見れる」ことは重要ですし、「宅内と宅外で差があるのってなんでだろう」と考える人も増えてくるはずです。

 ただし現段階では、もう少しお時間をいただきたいです。対応のための技術的な仕様や、ソニーの他のアプリケーションとの関係も検討しなければいけません。なにより、torneがもっている「快適な操作性」をリモートでも同じように実現したいんです。

 同様に、PS4でのDLNAなどの機能も、もう少しお待ちいただきたいです。PS3との機能の差分として、ご要望いただいていることは重々承知しています。現在内部で検討を進めていますが、まだちゃんとしたことはお話できない段階です。

「テレビをより面白く」するためにPS4版独自機能を搭載

 技術的な準備に時間がかかった、という部分はあるようだが、PS4版torneの登場に時間がかかった理由はそれだけではない、と石塚氏は言う。

石塚:単純な移植は簡単なんです。だけれど、せっかく出るのに「なぜPS4なのか?」「どうテレビ番組を楽しむ需要を掘り起こすか」ということを考える時間をいただいた、という部分があります。

 torneの場合、PS4ならではの要素のうち、「シェア」や「リモートプレイ」が使えないんです。そうすると、PS4版のtorneならではの機能としてどういったことが考えられるか、という点が必要だと考えました。

 そこで出てきたのが、PVでも大々的に登場し、ついに声までついてしまった「トルネフ」である。PS4版では、時折画面左に登場する。といっても、PS4版torneについては、キャラクターとして表示されるわけではない。PS版でのトルネフの役割は「番組の発掘」「ナビゲーション」である。

 torneを使っていると、トルネフが時折、面白そうな番組をお勧めしてくれたり、録画番組のうち見ていないものをピックアップしたりする。torneには、視聴者数や録画予約数から番組を発見する「トルミル」という機能があるが、今回トルネフが担うのは「トルミルとは違う形での番組発見」になる。

トルネフが、放送番組からお勧めをピックアップ。単に抽出するだけでなく、一言、トルネフらしいコメントを付け加えてくれるのも見どころ

石塚:トルミルは面白いんですが、どうしても人気番組が偏る。人気アニメが上位を独占してしまって、クールの合間に入れ替わる……という形になってしまいます。なので、ランキング上位にいなくても、面白い番組を提示できる方法はないか、ということで考えたのが、この仕組みです。

 コントローラーの右スティックを上に入れると、トルネフが現れるようにしました。実はこの操作、4年前からとっておいたんですよね。「いつかトルネフを出すために使ってやろう」と思って。ようやく実現しました。

 要はレコメンド系だ。現在、レコメンド系はトレンドであり、全録型レコーダやテレビにも搭載されてきている。そもそも我々の生活の中で、Amazonなどのでの買い物の際には、「協調フィルタリング」という技術を使い、「これを買った人はこんなものも買っています」という形でのレコメンドが行なわれる。

 では、PS4版torneのトルネフも、そんな「自分の履歴に基づいた、フィルタリング型レコメンデーション」の一つ……、かと思ったのだが、「そうではない」と石塚氏は話す。

石塚:私、元々はデータベース系の技術者だったんです。なのでこの辺についても、3カ月くらいですかね……色々と解析をしながら試してみました。

 でも、どうにも面白くならないんです。使えないな、と思って、そこまで作っていたものは捨てました。結局、テレビ番組は数が多いように思えるんですが、Amazonなどが協調フィルタリングで扱っている数に比べると、サンプル数が少なすぎるんですよ。だからどうにもいいものにならない。

 現在は、トルミルのデータを元に、「torneを使っている人々」が好む番組を、みなさんに提案するようにしています。単にランキングを出すのではなく、最近3日間で急激に予約数が上がってきた番組などの特徴をつかみ、そうした傾向から、「ランキングが低くても注目の番組」を出せるようにしています。

 実は、こうした表示は全部が機械生成ではなく、「中の人」が編集して出している部分もあります。あまりやりすぎるとコスト的に厳しいのですが、そうしないと「面白く」ならないんです。トルネフのTwitterアカウント(@tornev)、ご存じですかね? あそこで時々お勧めの番組をつぶやいていますが、今後は両者が連携して、番組をお勧めしていくことになります。また、PS4のホーム画面上でも、トルネフがピックアップした番組は通知されるようになっています。

PS4のホーム画面でも、トルネフからのレコメンド情報が見えるようになる
アンケート機能も実装。トルネフが時折こうしたことを聞いてくる。アンケート結果は、トルネフからのお勧め情報の充実に活用されるという

 この機能は、BSの場合全国で使えるものの、地上波については、まず東京キー局の情報からスタートする。残念ながら、地方局ではすべてが利用できるわけではない。ただし、現在大阪や名古屋地域でのテストが進められており、今後、そうした地域から順に広げていく予定である

 PS4版向けの機能として、「パワー」を生かしたものが2つある。

 ひとつが「オトイイネ」。これは、追加購入が必要な「音質改善プラグイン」のようなものだ。ソニーのオーディオには、MP3などで失われた微細な信号を復元する「ハーモニクスイコライザー」という機能を搭載した製品が多いが、オトイイネはまさにハーモニクスイコライザーそのもので、それをソフト実装したものだ。

石塚:オーディオの方々とのディスカッションの中で、ずいぶん前から話は出ていたのですが、今回搭載することができました。テレビのスピーカーやアンプとの組み合わせによっては、わかりにくいこともありますので、まずは無料でお試しいただいてから購入、という形になっています。

 そしてもう一つが「逆再生」だ。

石塚:もうとにかくこだわって、普通の再生と同じようになめらかに逆再生されるようにしました。編集機材でない民生機で、しかもMPEG系で圧縮された映像を再生するもので、ここまで自然な逆再生ができるものはないんじゃないか、と思うくらいです(笑)。

 サッカーでは、ゴール後にプレイヤーの動きをそのまま確認する時などに、すごく便利です。なにより、単に面白いんですよ、逆再生。料理シーンなんかだと、出来上がった料理がどんどん素材に戻っていったりして。これも「テレビの面白さ」の一つだと思っています。

 残念ながら、今は音が再生されないんですが、「次は音ですよ、がんばりましょう」という話をしはじめているところです。

 確かに逆再生については、技術の事情を知っている人であればあるほど「なんでここまでできているんだ」と思うくらいなめらかになっている。そもそも、nasneからの映像の逆再生は、不利なことばかりなのだ。MPEG系の動画圧縮は「時間軸的にプラスの方向」へ進むことを前提に作られているので、そもそも逆再生に向かない。また、データをネットワークから取得する点も不利だ。だが、PS4版torneでは、PS4のパワーとソフト的なこだわりの結果、インパクトのある「なめらかな逆再生」を実現している。

 逆再生はある意味「AVクオリティの追求」だ。だが、そこで得られた結果を、石塚氏も渋谷氏も「単純に、テレビが面白くなる」と説明する。そこに、torneの特質がある。

渋谷:やっぱり、torneだからこそ挑戦できることがあると思っているんです。うちはゲーム会社です。だからこそ「エンタメ」であるべき。テレビを見る行為だけど、その行為が楽しくなる。そういうアプリであるべきだ、という発想の根本は、ずっと変えてないつもりです。

 だからチャレンジできることもあります。石塚がご説明したように、開発ではかなりトライ・アンド・エラーをやっています。結果捨てるものもあって、正直効率は良くないです。でもだからこそ、良いものをつくっていけるんだ、と考えています。

 リモート視聴対応なども含め、torne・nasneにはまだ求められることがたくさんある。だが、そこで「テレビが面白く楽しめるなら」という発想の軸がぶれないならば、今後も「他のレコーダーとは違うキャラクター性」は続いていくことだろう。

Amazonで購入
nasne PlayStation 4

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Twitterは@mnishi41