西田宗千佳の
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「PlayStation Network」責任者に聞く、今後の展開

~「映像配信拡大」「コミック」「PSP goゲーム」はどうなる?~


SCE ネットワークビジネス&サービス シニアバイスプレジデント兼PSNビジネス&サービス部 部長の正田純二氏

 東京ゲームショウ2009の初日である9月24日、SCEは、Playstation Network(PSN)でのコンテンツ配信について、様々な発表を行なった。同社のコアビジネスであるゲームについての発表も興味深いが、本誌読者にとっては、映像配信の対象拡大やコミック配信といった、AV的な可能性を広げるコンテンツの存在が気になるところだろう。

 特に最近は、ゲーム機同士の競合だけでなく、携帯電話やポータブルプレイヤーなどとの競合も目立つ。そんな中SCEは、PSNでのコンテンツ展開について、どのような構想を描いているのだろうか? SCEジャパンにてPSN事業を統括する、ネットワークビジネス&サービス シニアバイスプレジデント兼PSNビジネス&サービス部 部長の正田純二氏に話を聞いた。


 



■ ストアは「ゲームユーザーとの親和性」重視

 今回の発表において、AVファン的に最も興味深かったのは、「ビデオストア」のサービスが大きく拡充される、ということだ。

 PSNでのビデオ配信は、2008年7月に北米で、9月に日本でスタートしているが、その内容は大きく異なっていた。北米やヨーロッパでは映画・ドラマなど、非常に広いラインナップが整備されていたのに対し、日本ではアニメーション中心の、よく言えばフォーカスの効いた、悪くいえば偏ったラインナップで運営されてきた。

 それが2009年11月からは変わる。ワーナー・ブラザーズを中心に、映像コンテンツ提供元が8社追加され、映画・ドラマの他、ミュージッククリップの配信がスタートする。メジャーな映画会社がズラリと並ぶ北米のストアに比べればまだまだ貧弱ではあるが、ようやく「より広いユーザー層」に向いたラインナップが構築される、といっていいだろう。

9月24日のSCEジャパン主催の会見で公開された、PSNで11月から映像を配信する企業のリスト。ワーナー・ブラザーズやレーベルゲート、テレビ東京など8社が新規参入となる

 なぜ、日本でのコンテンツ展開は「アニメ」に固めた形で進められてきたのだろうか? 正田氏は「まず、ゲームが好きなユーザーにどう使っていただくかを考えた施策だった」と語る。

正田氏:プレイステーション・ユーザーというのは、根本的に「まずはゲーム」が重要です。ユーザー視点で見れば、まずはゲームの体験版やトレーラー映像といった「無料」のコンテンツを目的に、PlayStation Storeを利用されます。次に最近は、ゲームに関する有料の追加コンテンツの売上が、PS3、PSPともに、非常に好調で、相当数いらっしゃいます。

 そういった「ゲームユーザーへの広がり」の中で、ゲームユーザーにすごく親和性があるコンテンツはなんだろう、と考えた時に「アニメ」であった、という判断です。

 今回、ビデオのコンテンツを広げていく中でも、すべてのハリウッドムービーをそろえていく、という考え方を採っているわけではありません。まずは、ゲームユーザーに親和性の高いものからスタートします。そういう考え方で出てきたのが、今回の映画・ドラマ・ミュージッククリップというラインナップです。そういう意味では、コミックもゲームユーザーの方に親和性の高いコンテンツ、という位置づけですね。もちろん、ユーザー層が広がってきましたので、できるかぎり家族で楽しんでいただけるものを、という意味でのラインナップ拡充、という部分も大きい。

 我々はゲーム業界はよく知っていますが、映画やコミックの業界はまだまだわかりません。そこで、コンテンツを提供していただける企業と話し合った上で、どのようなコンテンツをラインナップするのがいいのかを判断しています。

 ビデオコンテンツのラインナップ選定には、「ある伏線があった」とも話す。その伏線とは、2007年末まで同社が運営していた、直販サイトでのDVD販売の状況である。

正田氏:当時、DVDビデオの物販サイトも運営していたのですが、そのターゲットユーザーも、(PSNのビデオストアと)同じような層でした。その中に、ある程度の傾向が見られたのです。その際の売れ行き情報というものも、ある程度見ています。もちろん、コンテンツ提供元の問題もありますので、すべてがすべて、調査通りの傾向というわけにはいきませんが。

 日本は、欧米に比べコンテンツの権利処理が難しい、と言われている。一般的に、映像や音楽の配信が進まないのはそのためだ。それに対しアニメは、配信に関する権利が一部企業に集約しており、映画などに比べ、権利処理が進みやすい。日本のPSNでアニメが中心になっている理由もそこにあるのでは……と言われてきた。正田氏も、権利処理の問題が存在したことは否定しない。だが、「楽だったからアニメから始めたわけではない」と語る。

正田氏:まずは、集まっていただいているユーザーさんに意義があるかどうか、ということです。経営的にいえば、その方が効率的ではあります。仮定の話ですが、ゲームユーザーの方に実写の映画の方が親和性が高い、という調査結果だったならば、映画から始めた可能性もあります。ビジネス展開のスピード感という意味で、権利処理云々という話もありますが、アニメから始めたのは、ユーザーさんが喜ぶコンテンツはなんだろう、と考えた結果です。権利処理に問題があるのは事実ですが、それはあくまで二次的な話でしかありません。

 他方、今回のビデオコンテンツ拡充の中でも、特に注目は「ミュージック」である。これまでPSNの中では、映画・ドラマ・アニメといったストーリー性の高い映像が扱われてきた。この点については、他国も同様である。北米のストアも「Movies and TV Show」という扱いであり、ミュージッククリップには注力されていない。今回の拡充では、moraや着うたサービスの運営で知られるレーベルゲートの協力により、ミュージッククリップの配信に力が入れられる。

正田氏:率直に言えば、「ミュージック」の分野はどんどんやっていきたい、と考えています。権利処理の問題もあり、PSNの中でエンターテイメントの一部としてどう取り組んでいくかを考えた末、ユーザーさんにお届けできるのはミュージッククリップだろう、と結論した、ということです。すでに他のデバイス向けにも行なわれているジャンルでもありますし、まずはここからスタートしよう、と考えました。

 現時点で、「ミュージック」の配信について、予定などのコメントができる段階にはありません。ただし、音楽をプレイステーションのエンターテイメントの1つと見るのは、自然なこととして考えています。

 特にミュージッククリップについては、PS3などの大画面で、いい音・いい映像で楽しんでいただける。非常に親和性が高いコンテンツだと考えています。

 



■ レンタル形式に加え「セル」もスタート。販売方法や価格は「柔軟に対応」

 もうひとつ、映像配信に関する変化は「セル(売り切り)コンテンツの本格導入」だ。これまでPSNのビデオストアでは、ダウンロード型のレンタル形式が採用されており、気に入ったコンテンツを「買う」ことはできなかった。例外的にCG映画「バイオハザード:ディジェネレーション」が、セル形式で販売されていたが、正田氏はこれが「テストケース」であった、と話す。海外においては、PSNでもセル形式とレンタル形式が併存しており、今回の施策は、実際には「導入」ではなく「解放」に近い。

正田氏:現在の、ダウンロード後30日、初回再生から72時間、というレンタル形式は、ある程度ご評価いただいていると思っています。そんな中、「バイオハザード:ディジェネレーション」をセルで配信させていただいた時、それなりの効果が出ていました。ですから、映画やドラマなどを本格的に配信する時には、セル形式は効果的だな、と考えていました。DVDやBDと同じような感覚ですからわかりやすいですし。

 問題なのは価格だ。バイオハザード:ディジェネレーションは、PSNでの配信時に、3,900円という値付けがされていた。現在のレンタルについては、200円から400円という値付けがされている。正田氏は「私のレベルでの認識では、現状の(レンタルの)価格は、そう問題ないのではないか、という認識」と話すが、DVDレンタルなどと比較して割高感を感じるには、筆者だけではあるまい。例えば、シリーズ作品の「セット割引」などがあってもいいはずだ。今後の映画・ドラマ・ビデオクリップなどの価格がどうなるのか、非常に気になる。

正田氏:現時点では、新しいコンテンツの価格がいくらになるかをコメントできる段階にありません。

 しかしひとつ言えるのは、ネットサービスの良いところは「すぐに修正できる」ということです。この価格しかない、という形でやるのか、いろいろ試しながら変えていくのかといった点も、まだまだ決めている段階ではないです。コンテンツホルダーさんによっては、「この値段で設定してみよう」と考え、大胆な価格をつけられるところもあるかも知れません。

 現状、ストアのシステム的制約もあり、やりきれていないところがあるのも事実です。ですが、内部的には改善を続けており、色々なことができるようになりつつあります。セット売りについても、「シリーズものは一度に配信開始した方が、売れ行きが良いようだ」といったことを、少しずつ学びつつある、という状況です。

 PSNビデオストアの利点の一つが、PS3とPSP、両方で同じコンテンツを気軽に利用できる、という点だ。配信を受けた映像を自宅でもモバイルでも見る、という形式は、iTunes Storeでの映像配信が実現していない日本の場合、PSN向けくらいしか選択肢がない。アクトビラの場合には一部機種のみの対応で、しかも長時間の変換作業を必要とするし、携帯電話向けの配信は、画質と映像の長さの点で大きな問題がある。PSN向けの配信は、PS3もしくはPCから、変換作業を経ることなく、短時間で持ち出して視聴できる点が魅力である。

 だが現状では、大きな欠点もある。

 それは、HD解像度のコンテンツの場合、PSPへは転送できない、ということだ。変換機能を持っていないため、SD解像度のコンテンツを借りないとPSPへは持ち出せない。この点について正田氏は、「確かに問題だと認識しています。解決を検討します。例えば、HD解像度とSD解像度のバンドルパックなどの策が考えられるでしょう」と話す。


■ PSPのコミック閲覧は「快適さ」が魅力。コンテンツ充実の秘密は「まとめ役」に

東京ゲームショウ・SCEブースのコミック関連デモコーナー。12月から配信されるコミックの表紙がずらりと並べられた

 ビデオストアの拡充と並ぶ、大きなトピックが「コミック」の配信だ。実のところ、筆者は映像以上にビジネスとして、大きな可能性があるのではないか、と感じている。その根拠の一つは、ラインナップの豊富さだ。映像がかなり限定された企業・コンテンツからスタートしたのに対し、12月スタート予定のコミックについては、大手出版社のうち11社が参加し、ラインナップも確かに魅力的なものが多い。

正田氏:可能性というのは、関係者一同かなり高いものを感じています。特に魅力的なのは、PSPならではの画面の大きさと美しさ、動作の快適さです。コンテンツによっては、カラー化やワイド化が行なわれているものもあります。実際、出版社さんに試作品をお見せして以降、いくつかの機能を追加しました。ズーム機能や、「見開き」をワンタッチで見せる機能などです。そういう、PSPならではの新しいコミックの楽しみ方を提供していければ、と思います。

 正田氏のいう「快適さ」には、筆者も同意する。東京ゲームショウと今回の取材にて、短時間だが試作コンテンツを体験してみたが、iPhoneや携帯電話などで体験した「デジタルコミック」とは、速度感・スムーズさの点で、隔絶したものを感じた。本を開いて読んでいく、という感覚とはまったく異なり、コマを追っていく、といった形式になっている点は、他のデジタルコミックと大差ない。だが、その動きがスムーズであること、表示が鮮明で「キレ」があることなどが、いわゆる「ケータイ」向けデジタルコミックよりも上である。「本の形をしていない」「物理的なモノを手にできない」ことに抵抗がないなら、「これはこれでアリ」と感じた。

東京ゲームショウでのコミック表示デモ。十字ボタンとLRキーなどを使い、さくさくと読み進められるのが特徴。解像度は低いので一覧性はさほどでもないが、発色は優れている

 では、なぜPSPのデジタルコミックは動作が速いのか? 正田氏は「ゲーム機としての能力があるがゆえ」と話す。実のところ、コンテンツの作り方として、PSP向けのデジタルコミックが、携帯電話向けのデジタルコミックと異なるわけではないようだ。

 SCE・PSNビジネス&サービス部 PSN企画課 課長の折本靖裕氏は次のように説明する。

折本氏:形式としては、携帯向けで使われている「XMDF形式」と「BookSurfing形式」の両方に対応しています。ですから、携帯向けに作ったコンテンツは、ほぼそのままPSP向けに転用できます。ただし、PSP向けに画角などの調整しますが。また、XMDF形式やBookSurfing形式をそのまま読み込むわけではなく、PSN向けに著作権保護などのパッケージ化を行ない、PSN経由で提供する、という形になります。携帯電話での製作環境を踏襲することが、今回のモデルのカギです。

正田氏:出版社さんの中には、携帯電話向けを少しだけ修正して、ほぼそのまま提供されるところもあると思いますが、ほとんどのタイトルがPSPの画面サイズに合わせた修正をして頂いております。また、「ドラゴンボール」のように、フルカラーの作品もあります。

 提供コンテンツが多い理由は、すでにビジネスとして勢いが出始めている「携帯電話向け」のノウハウをそのまま転用できるところにあったわけだ。そしてもう一つ、コンテンツが多い理由がある。

正田氏:今回は、株式会社リブリカと業務提携し、リブリカさんを窓口としてビジネスをさせていただきます。

 リブリカ、という企業の名前は、出版界の事情に通じた人でなければご存じないだろう。同社は昨年、ゲーム開発会社のトーセと、講談社・小学館・集英社・角川書店などの出版社が合弁で設立した、「デジタルコミック配信」のための窓口会社である。今回、PSN向けの配信にコンテンツを提供する企業の多くは、同社の設立に参画しており、それがコンテンツのラインナップにつながっている。同社は、PSN向けのデジタルコミック配信の他、2008年7月に、Wii・ニンテンドーDS向けの配信についても、企画検討を開始したと発表を行なっている。

 映像配信では、権利処理の複雑さが、スピード感のあるビジネス展開を阻害している。だがコミックについては、大手権利者が意思統一を行なうことで、今回のようなスムーズなビジネス展開につながっているわけだ。

 また、同社の存在には、もうひとつ大きな意味がある。

正田氏:コミック配信では、アダルトなものは扱う予定はありません。とはいうものの、我々がレーティング機構になることはありませんし、出版社さん毎に基準を設けると混乱します。今回は、リブリカさんに窓口を一本化し、PlayStation Storeとしての基準によって、配信するコンテンツを選定していく形になります。

 ゲームにCEROがあるように、現在、デジタルコミックについて、一般的な動きとして、レーティングを設定しようという動きがあるようです。そうなれば、我々もその内容に合わせて利用していくことになるでしょう。

 携帯電話の世界は、「売れるのはアダルトが中心で、健全な市場とはいえない」(大手出版社コミック担当談)という評価もあるようだ。SCEはそういった動きを見据え、「家庭用ゲーム機」というプラットフォームにふさわしいビジネスを構築したい、と考えているのだろう。

 さて、最後に残る大きな問題は「価格」だ。残念ながらこちらについても、「現状では明らかにできない」(正田氏)という。配信方式は、映像と違い「セルのみ」で、レンタルはない。彼らの口ぶりから察するに、筆者は現在の携帯電話向けの配信と、価格帯が極端に変わることはないのでは……と予想する。コミックのサイズについても、「現状では正確な情報を提供できない」(折本氏)という。ただしそれは、PSP向けに巨大な画像を使っているから、という話ではなく、まだ未確定である部分が多いためであるようだ。

折本氏:1話単位になるのか、コミック1巻単位になるのか、配信の単位もまだ決まっていません。当方としてはコミック1巻単位の方を希望しているのですが、携帯電話では通信容量の制限もあり、1話単位が主流なので……。

正田氏:ひとつ言えるのは、PSP goの16GBのストレージや、PSPで使われているGBクラスのメモリースティックならば、携帯電話とは比較にならない量のコミックを持ち歩ける、ということです。

 どうやら、サイズ的にも携帯電話向けと大差ないようだ。とすれば、1話あたりで数十MB、1巻で数百MBといったレベルになると予想される。

会見で公開された、PSP上でのコミックストア画面。ゲーム・ビデオと並ぶ三本目の「柱」となる

 なお、現状では、コミック配信は「PSPのみ」を対象としたサービスとなる。ダウンロードそのものも、PSPから直接行なうか、PC用アプリケーション「Media Go」から行なうか、という形になっている。PSPとMedia GoでのPSストア内に、ビデオストアと同様に「コミックストア」というタブが増え、そちらから利用することになるという。他のコンテンツとは違い、PS3には対応していないし、PS3でのダウンロードも行なえない。

正田氏:まだ検討段階であり、PS3での対応は未定です。しかし、仮に対応するとしても、PS3での対応は、二段階になるでしょう。まずはPS3での購入・管理ができるようになり、PS3での閲覧はその後の対応になります。とはいえ、PS3のようにハイビジョンのテレビで見るもので、単にコミックを「見るだけ」でいいの? という点も問題になるでしょう。様々な可能性も含め、将来的な検討を行なった上で、結論を下すことになると思います。



■ PSP goでのUMDタイトル対応は「未定」。中核タイトル含めダウンロード販売を促進

 もうひとつ、PSNには大きなコンテンツがある。それはもちろんゲームだ。

 だがゲームについては、非常に大きな課題を抱えたプラットフォームがある。それは「PSP go」だ。欧米・アジアでは本日、日本では11月1日に発売を控えた「新型」だが、UMDを搭載しない「オンライン配信専用型ゲーム機」であるだけに、その命は「いかにPSNにゲームが用意されるのか」という点にある。現状、PSP向けのダウンロードタイトルは、UMDで供給されるタイトルほど多くない。

 この点については、ずっと気になっていたことが一つある。今年6月のE3において、PSP goが発表された直後のことだ。SCE・平井一夫社長は、筆者とのインタビューの中で、以下のようなコメントを残している。

「(PSP goでUMDタイトルをプレイすることについて)当然議論していますし、わかってますので、いろいろな方策で前向きに検討したいと思っています」

 では、その「検討の結果」はどうなったのだろうか? 同社広報からの、現状での正式な回答は以下になる。

「継続して検討は続けて参りますが、現時点でご案内できる情報はありません」

 そうなると、東京ゲームショウでPSP-3000の値下げが発表され、PSP-3000とPSP goの間に1万円もの差額が生まれたこともあり、日本市場において、PSP goがコストパフォーマンスの点で見劣りすることは否めない。

 この点に関し、正田氏は直接の担当者ではない。だが、PSP goに対してコンテンツを提供するPSNの責任者として、「あくまで一般論」と断った上で、次のようにコメントした。

正田氏:UMDで発売したタイトルというのは、あくまで店頭販売というビジネスモデルを前提としたものです。それがオンライン販売というビジネスモデルになってくると、とたんに別の法的な問題が出てきます。一つのタイトルを作る上には、様々なライセンスの問題が存在するのです。また、技術的な問題もあります。

 では、短期的にそういった策が採れないとすると、重要なことはもちろん、「PSN上で購入できるゲームタイトルを増やす」ということだ。「UMDでもダウンロードでも同じタイトルが遊べる」ならば、ある程度問題は解決できる。この点については、正田氏は「積極的に進めていく」と話す。

会見で公表された、9月24日現在の、PSNでのコンテンツ量。正田氏のコメントとの差分が、10月中に販売が開始される追加タイトルの数、ということになるのだろう

正田氏:11月1日のPSP go発売日までに、UMDと併売タイトルを100種類以上、プレイステーション・アーカイブスを300以上、さらに、PSN専用のタイトルも数種類用意します。

 サードパーティーさんのダウンロード販売への取り組みは、企業によってそれぞれ違います。それは尊重します。パートナーとしてはゲーム会社だけでなく、販売店・流通業者さんもあります。そういったパートナーの方々との調整も必要です。ご協力いただけるパートナーさんのタイトルについては、可能な限りUMDとの同時発売を目指します。

 今後については、多くのタイトルで、同時発売を検討していただいています。その中には、プラットフォーム隆盛のキーとなるタイトルも含まれます。それらを、順次発売させていただく予定です。

 正田氏が冒頭で述べたように、映像や音楽、コミックが魅力的であっても、PSP、PSNの中核は、ユーザーから見ればやはり「ゲーム」だろう。ディスクからネットワークへの移行がどのくらいのスピードで進むかは、やはり「コンテンツの質と量」にかかっている。10月1日現在は「まだまだ」と言わざるを得ないが、あと1カ月でどこまで広がるのか、気になるところである。

(2009年 10月 2日)


= 西田宗千佳 = 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]