“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第562回:NAB 2012プレスカンファレンスレポート

~Panasonicの4Kカメラ。SONY/Canonも新製品多数~


■プロフェッショナル向けの映像機材展、NAB2012

 今年もまた例年どおり、米国ラスベガスにて世界最大の映像機器展「NAB Show 2012」が開催される。先週JVCの4Kカメラ「GY-HMQ10」をレビューしたばかりだが、今年の映像業界のトレンドは「4K」だと言われている。

 イベントの会期は4月16日~19日まで。現地時間で日曜日となる本日は、各メーカーのプレスカンファレンスが各所のホテルで行なわれており、あちこちに移動しまくりで大変である。今回はPanasonic、SONY、Canonのプレスカンファレンスの模様をお伝えする。




■遅まきながら4Kに参入のPanasonic

Planet Hollywoodホテルで開かれたPanasonicプレスカンファレンス

 Planet Hollywoodホテルで開かれたPanasonicのプレスカンファレンス。今年はオリンピックイヤーだが、パナソニックは毎回オフィシャルパートナーを務めており、公式映像はPanasonicの機材で撮影、収録されている。今年は二眼式3Dカメラレコーダー「AG-3DP1」などの3D映像機器が投入され、開閉会式、体操、陸上、水泳、ダイビングなどで3Dの公式放送が行なわれるという。

 新製品としてまず最初に紹介されたのが、P2 HDのショルダー型カムコーダ「AG-HPX600」。従来モデルのHPX2000とHPX500の間ぐらいに位置するマルチパーパスカメラで、アクセサリーなどの追加により、ENGからスタジオサブカメラまでのレンジをサポートする。


P2 HDのショルダー型カムコーダ「AG-HPX600」

 10bit、4:2:2 AVC-Intraコーデックで記録し、センサーは新開発となる2/3インチのCMOS。本体重量は7ポンド以下というから、3kg以下になると思われる。発売は年内で、米国での価格は16,000ドルを予定している。

 P2カードは、従来はいわゆるPCカードと同サイズだったが、今回はSDカードと同サイズの「Micro P2カード」が発表された。サイズはSDカードだが、中味のアーキテクチャはP2カードと同じで、RAID構造となっている。転送レートは現在のP2カードの2倍となっており、AVC Intra200の記録に対応する。容量は32GBと64GBの2種類。


P2 HDの中型機、AG-HPX600Micro P2カードとP2カードアダプタ

 P2カードアダプタに入れることで、従来のP2機器にも使用できる。当面はこれでの運用になるだろうが、将来的にはこのMicro P2が直接入るカメラも企画していくという。

 またP2カードアダプタに従来の「SDXC Class10」のカードを入れれば、AVC-Intra 50までの記録は可能。発売は来年の春を予定している。

 最後に発表されたのは、まだ名称がない4Kカメラのコンセプトモデル。センサー部、プロセッサ部、レコーダ部の3ブロックに分かれる、いわゆるドッカブルカメラになっている。別途収録機を使う場合はレコーダ部を外してコンパクトになるというスタイルだ。

 正面右サイドには、スマートフォンを格納することができる。これとカメラをWi-Fi接続することで、メタデータの入力やカメラステータスの確認ができる。現在はスマートフォンはAndroidを考えているそうだが、まだターゲットとなるモデルは未定だという。Android端末はサイズなどがまちまちなので、最終的にどのぐらいのサイズにするのかが難しそうだ。

コンセプトモデルとして発表された4Kカムコーダカメラとスマートフォンを持つのはプロフェッショナルAVビジネスユニット長 宮城邦彦氏

 センサーサイズは未定だが、マウントがPLなので、Super35以上になると思われる。発売時期、価格などは未定。

 



■3Dを押さえつつ4Kへ、SONY

 HardRockホテルで行なわれたSONYのプレスカンファレンスでは、最近おなじみとなっている3D映像のトレーラーが上映された。既に発売された製品群や3netなどへの3D機材導入事例が紹介されたあと、東日本大震災で被災した工場の復旧状況も紹介された。

複数のHD映像や音声、制御信号を1本のEthernetケーブルで電送する「NXL-IP55」

 今回のNABで発表された新製品としては、複数のHD映像や音声、制御信号を1本のEthernetケーブルで電送する「NXL-IP55」がある。2009年になるが、HD解像度の監視カメラ製品をスタジアム中継用途として活用していくコンセプトが、ソニーから発表されたことがある。おそらくその時に、映像信号をIP電送する技術を開発しているのではないかと筆者が予想したことがあるが、これがどうも当たったようだ。


「オプチカルディスク・アーカイブ」システム

 新しいアーカイブシステムとしては、「オプチカルディスク・アーカイブ」という名称で製品化する。これは昨年のInterBEEで技術発表されていたものだ。

 1つのストレージユニットの中に12枚の光ディスクを内蔵し、300GB~1.5TBを記録する。光学ディスクはBlu-rayの技術をベースにした新開発のもので、XDCAMで使っているプロフェッショナルディスクとは別のもの。1層から4層までのディスクがあり、どのグレードのディスクを使うかで1カートリッジの容量が変わる。メディアの製造に関しては、TDKと協業するという。2012年秋にUSB 3.0対応のドライブユニット「ODS-D55U」もリリースする。


 

新オプチカルディスクもいよいよ製品化される実機が展示されたNEX-FS700JK

NXCAMのカムコーダ「NEX-FS700JK」

 新製品はまだいろいろあるようだが、実機が展示されたのはNXCAMのカムコーダ「NEX-FS700JK」だ。総画素数1,160万画素、有効画素数約830万画素の新開発“Exmor”Super35 CMOSセンサーを搭載し、フルHDで120fps・240fpsの読み出しを実現。最大10倍のスーパースローモーションが撮影可能だという。マウントはNEXシリーズなので、Eマウントだ。

 そのほかの新製品は、また後日ブースレポートでお伝えできるだろう。


 



■いよいよ4Kへ繰り出すCanon

 メインストリートから少し離れたPalmsホテルで、Canonの新カメラによる試写会が行なわれた。これはプレスカンファレンスというより、カスタマーへのプレビューイベントであるため、実機の展示はなく、新カメラで撮影したショートムービーの上映がメインである。

 以前から発表されていたDSLR型の4Kカメラ「EOS-1D C」が正式に発表された。CMOSのサイズは約36×24mmの、いわゆる35mmフルサイズで、画素数は約1,810万画素。カメラとしての機能は「EOS-1D X」と同じだが、4Kの動画を24p/8bitのMotion JPEGでCFカードに記録する。

正式に発表された「EOS-1D C」「EOS-1D X」をベースにした4Kカメラ「EOS-1D C」

 詳細は後日ブースのレポートで解説するが、このカメラで撮影されたショートムービーが上映された。8bitのMotion JPEGということで、画質的に大丈夫なのか懸念されたが、実際の作品を見る限り、コーデックによる破綻は見られない。高いセンサー感度により、夜のロケシーンでも、現場の明かりだけでかなりのディテール表現ができるなど、魅力的な映像に仕上がっていた。

OS-1D Cの撮影モードと撮像面の関係

 4Kで撮影する場合、センサーは面積はAPS-Hサイズ相当にクロップされるが、深度表現もなかなか見応えがある。このあたりはレンズの良さもあるだろう。発売時期は年内が予定されており、価格は未定だが、日本円で120万円前後となるそうだ。

 もう一つ、CINEMA EOS SYSTEMの最上位モデルとして、「EOS C500」が発表された。こちらも4Kのカメラで、シネマ用4,096×2,160の4K-DCIと、放送用の3,840×2,160の4K-QFHDの2モードで撮影可能。さらに2KやHDでも撮影できる。


 こちらはカメラ部の記録はHD解像度のみで、4Kの記録には別途外部レコーダが必要になる。出力は4K RAW/RGB 4:4:4/10bitまたは12bitのCanon Logを3G-SDI 2本で伝送する。モニターアウトはHD-SDIが2本。120pでのハイスピード撮影も可能。

EOS C500も発表されたEOS C500 CN-E85mm 装着イメージ

 こちらも細かいスペックなどは後日詳しくお伝えするとして、本日のハイライトはこれで撮影したショートムービーだった。Canon Logを活用したカラーグレーディングが上手くはまっており、まさに映画の仕上がりである。隅々まで映像の切れがよく、次世代の映画システムの幕開けを感じさせる。発売は年内を予定しており、価格は3万ドル前後となっている。

 またシネマ用のズームレンズ2本も展示された。「CN-E15.5-47mm T2.8 L S/SP」と「CN-E30-105mm T2.8 L S/SP」である。すでに発売されているズームレンズ2本に対してズーム倍率は低いが、そのぶん小型で軽量化されているのがポイント。価格も半分程度になるという。

 マウントはEFとPLの2バージョンを用意する。基本的にはSuper35対応レンズのため、フルサイズやAPS-Hサイズではケラレが出るようだ。

 明日以降はいよいよ開場となるNAB Showのブースレポートをお送りする予定だ。どんな新商品が飛び出すかお楽しみに!

(2012年 4月 16日)

= 小寺信良 = テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。

[Reported by 小寺信良]