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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第567回:レトロなルックスに最先端技術、オリンパス「OM-D」

〜動画性能チェック。抜群の操作感だが画質に不満も〜


■OM-Dとな?

 '80年代に洋楽にどっぷりはまったオッサンからすれば、OMDと言えば「Orchestral Manoeuvres In The Darkだろ常考」となるところだが誰もわかりませんかそうですか。一方'70年代に一眼レフの洗礼を受けた世代であれば、「あのOMのデジタル版か!」とピンとくるようである。

 筆者は近年改めてクラシックカメラをいじくってきた関係で、OMシリーズは何台か持っている。昨年惜しくも急逝されたPCジャーナリストの元麻布春男さんのご遺族から譲っていただいたOM-1も、自分で修理して2台とも元気に稼働している。

 さてこのOM-D、先日のCP+で大々的にお披露目となったのも記憶に新しいところだが、マウントがフォーサーズではなく、“マイクロフォーサーズで設計されたハイエンドカメラ”と言うところがポイントだと思っている。これまでオリンパスでは、ハイエンド機ではE-5、E-30などをフォーサーズ規格で、マイクロフォーサーズはE-P3、E-PL3といったカジュアル機という棲み分けでラインナップを揃えてきた。

 そんな中、今回発売される「OM-D E-M5」は、今どきの流れを汲んだ新ラインナップと言える。“小さいハイエンド”ということから、過去のOMシリーズのイメージと重ねる戦略も、なかなか上手い。

 すでに3月下旬から発売されており、店頭予想価格はレンズキットで13万円前後。現在ネットでは11万円代前半ぐらいまで下がってきているようだ。

 オジサンだけでなく、このレトロなデザインが一周どころか3周ぐらいして新しいと感じる若年世代まで幅広くアピールするこのカメラで、恒例の動画のみしか評価してないレビューをお送りしよう。




■まさにOM-1的なボディ

 E-M5には、シルバーとブラックの2色がある。レンズも同じく2色だが、キットレンズとして付属するのはどちらもブラックだ。過去のOMシリーズはシルバーの印象が強いが、世代によってはブラックモデルもある。最初から両方が選べるようになっているのは、やはりデザイン的に両方から選びたいというニーズに応えたものだろう。

レトロなスタイルがかっこいい ホールドしたところ。薄型ボディが特徴だ
側面 背面 背面の操作部部分

 今回お借りしているのはシルバーモデルだが、実際にOM-1と並べてみると印象がかなり近い。ただE-M5の方が横が短いのと、マウントがカメラのセンターではなく、正面から見てやや右寄りに付いている。このあたりは、ややPEN-Fのイメージを引きずりつつもOM、という、微妙なハイブリッド感がある。

左が往年の名機OM-1。かなりテイストは近い 横幅はだいぶE-M5の方がコンパクト
約144万画素の液晶ビューファインダーを搭載している 外部フラッシュを取り付けたところ

 静止画としてのカメラは僚誌デジカメWatchに詳しい記事があるのでそちらを参考にしていただくとして、ここでは動画撮影に関連する部分だけを見ていくことにする。

 撮像素子は総画素数 約1,720万画素、有効画素数1,605万画素の4/3インチLive MOSセンサ。手ぶれ補正を本体側で行なうのがオリンパスの特徴で、角度ブレ、シフトブレ、回転ブレを抑える5軸補正機能を備えている。

 軍艦部には動画専用の録画ボタンがあり、静止画モードでもこのボタンを押せばいつでも動画撮影ができる作りとなっている。また動画専用モードもあり、これだとビューファインダーやモニターが常時16:9画角表示になるので、撮影しやすい。

撮像素子側で手ぶれ補正を行なう方式 録画ボタンと2つのダイヤルで操作性がアップ 背面の操作部部分

 動画モードであっても、プログラムや絞り、シャッタースピード優先などのモードを選択することができ、撮影の自由度は静止画と比べ、あまり制限されない。

 動画の記録モードは、MPEG-4 AVC/H.264のMOVか、MotionJPEGのAVIかを選択できる。なお、センサー出力が最大で30pしかないので、すべてのモードで30pである。

【各モードの動画サンプル】
記録方式 モード 解像度 ビットレート サンプル
H.264 FullHD Fine 1,920×1,080 20Mbps
P5120050.mov (28.4MB)
FullHD Normal 17Mbps
P5120051.mov (24.1MB)
HD Fine 1,280×720 13Mbps
P5120052.mov (18.8MB)
HD Normal 10Mbps
P5120053.mov (15.5MB)
MotionJPEG HD 33Mbps
(実測)

P5120054.avi (56.7MB)
SD 640×480 16Mbps
(実測)

P5120055.avi (27.1MB)
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の
保証はいたしかねます。 また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますの
でご了承下さい。

 マイクはビューファインダ部の前方両脇にあり、外部マイク端子、イヤホン端子などはない。スピーカーは正面に向かって右側のボディ横にあり、モノラルだ。

 HDMIはマイクロ端子を備えているが、コネクタを差し込むと自動的に再生モードになってしまうので、別途モニターを繋いで撮影するわけにもいかず、本体のモニターが頼りとなる。

 背面の液晶モニターは3.0型・61万ドットの上下バリアングルだ。ビューファインダーはミラーレスなので光学式ではなく、電子ビューファインダーである。こちらは約144万ドットとなっており、ドット感が少ない。ファインダー脇にアイセンサーがあり、接眼すると自動的にビューファインダー表示に切り替わる。

 どちらのモニターも水平とあおり方向の水準器メーターが表示されるので、手持ち撮影などでは便利だ。

下がマイクロHDMI端子 液晶は縦方向のみのバリアングル 縦横の水準器表示が便利

 ボディにはFnキーが2つあり、機能を割り付けることができる。特にFn2では、ボタンを押しながらダイヤルを回すことで4つの機能を切換できるなど、なかなかよく考えられている。



■動画撮影に強いレンズ

今回使用したレンズ3本

 今回一緒にお借りしているレンズは、キットレンズ「12-50mm/F3.5-6.3」、望遠ズーム「40-150mm/F4-5.6」、ポートレート単焦点「45mm/F1.8」の3本だ。

 キットレンズの12-50mmは、静止画と動画両方に対応したレンズとして、非常に良くできている。ズームリングがスライド式になっており、一番手前がマニュアルズーム、真ん中が電動ズーム、脇のボタンを押しながらさらに前にスライドさせるとマクロになる。


左からポートレート単焦点「45mm/F1.8」、キットレンズ「12-50mm/F3.5-6.3」、望遠ズーム「40-150mm/F4-5.6」 今回使用したレンズ3本 ポートレート単焦点「45mm/F1.8」を装着したところ
【動画サンプル】
zoom.mp4 (20.2MB)

電動ズームが効くキットレンズ
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 電動ズームは非常に静かで、AF動作音も含めて動画に音が入り込むことがない。またズーム時にレンズが飛び出してくることもないので、そのあたりも含めてビデオ的、というかシネマ的な作りと言えるかもしれない。

 40-150mmも動画対応レンズで、静音AFであるMSC機構モデルだ。見た目よりも軽量で、ボケ味もいい。単焦点45mmは、小さいサイズの割りにはずっしりしたレンズで、ファミリーポートレートと銘打っているが、なかなか本格的なレンズだ。


望遠ズーム「40-150mm/F4-5.6」 ポートレート単焦点「45mm/F1.8」

40-150mmのテレ端。ボケもなかなかいい 解像感が高い単焦点45mmレンズ

 さて実際に撮影である。あいにく撮影日は非常に風が強い日で、マイクが盛大にフカレているが、この風では大抵のマイクはフカレるので、本機固有の問題ではないことをあらかじめお断わりしておく。

OKボタン押しでよく使う機能にすぐにアクセス

 まず操作性に関してだが、2つの操作ダイヤルにより絞りやゲインなどが簡単に変えられるので、スピーディな撮影が可能だ。ソニーのNEX-7も同様の操作性だったが、コンパクトモデルでもハイエンドは2ダイヤルというのはトレンドになりそうだ。

 メニューボタンで通常のメニューへアクセスできるが、頻繁に使う機能、例えば手ぶれ補正や撮影モード、ホワイトバランスなどはOKボタンを押すことでアクセスできる。この時表示されるメニューは、撮影モードによって変わるので、静止画用のモードでは別のパラメータが出てくる。


【動画サンプル】
af.mp4 (33.1MB)

AF追従は問題ないレベル
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 AF性能だが、本機には追尾AF機能が搭載されている。これはシャッターボタン半押し時に判別した被写体をフォローし続けるという機能で、特に動画用ということではないようだが、このモードで問題なくフォローしてくれるようだ。いつものように歩いてくる被写体でも、一瞬甘い瞬間があるが、おおむねうまく追従する。

 ただ、本機のウリである、液晶のタッチでAFする機能は、動画撮影時には使えない。またMF時に静止画モードでは拡大表示になるが、動画モードでは拡大表示にならないため、動画のマニュアルフォーカスは結構大変だ。


液晶は正面から見ないと、かなり緑がかぶってくる

 液晶モニターは視野角は結構広いのだが、ちょっと正面からずれるとかなり緑っぽく見える。上下には動くが左右には動かないので、横から覗き込むようなモニタリングでは正確な色味が確認出来ない。

 手ぶれ補正は、静止画の場合は5軸補正が効くが、動画では3軸補正になるという。それでもかなりなめらかな撮影ができ、ソニーの空間手ぶれ補正並みとはいかないが、それ以前のビデオカメラとほぼ同等の性能のように感じられた。

 【お詫びと訂正】
 記事初出時、手ブレ補正の部分で「動画撮影でも5軸を補正する」と記載しておりましたが、動画撮影時は3軸補正の誤りでした。お詫びして訂正いたします(2012年5月17日)。


【動画サンプル】
stab.mp4 (27MB)

手ぶれ補正機能をテスト。動画撮影では3軸補正になるとのことだが、かなり強力な補正ができている
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 残念なのは、動画の画質である。最高画質の「FullHD Fine」で撮影しても、背景が風で激しく動いたり、水面を撮ったりすると、エンコーダで破綻しているのがわかる。モワレはないのだが、ビットレートが20Mbpsあって、しかも30pでエンコーダが破綻するというのは、近年ではあまり見なくなった現象だ。このあたりはやはり、ビデオカメラ部門を持っているメーカーに一日の長があるということだろう。


【動画サンプル】
sample.mp4 (178MB)
【動画サンプル】
room.mp4 (48.4MB)

水面など細かい模様が破綻する 動画サンプル。LoiLoScope2.5で編集、MP4/20Mbpsで出力している 室内サンプル。暗部のS/Nはなかなかのもの
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
静止画の表現力には目を見張る

 動きの少ない動画では、綺麗に撮影はできる。レンズのシャープさと撮像素子のダイナミックレンジは素晴らしいものがあり、静止画ではすごい絵が撮れる。撮像素子からはこれだけの絵が出ているのに、このクオリティのまま動画で記録できないのが本当に残念だ。




■動画でも使える多彩なエフェクトを搭載

 オリンパスは、写真エフェクトに力を入れているメーカーでもある。本機でも本体内に5種類のピクチャーモード、モノトーン、カスタム、そして11種類のアートフィルタが内蔵されている。単にモードを選ぶだけでなく、パラメータをいじったりタイプを選んだりできるので、かなりの表現力を持っている。

 プロフェッショナルであれば、これらの効果は後処理で付けるのが普通だが、一般の人がプロ用のカラーグレーディング装置で色処理などできるハズはないので、カメラ側でかなりのところまで踏み込んで処理をするというのも、一つの考え方だろう。

 もちろんこれらのエフェクトは、動画でも機能する。モードによってはコマ落としになったり、タイムスライス処理が行なわれるなど、動画用に処理されているのがわかる。細かくカスタマイズしていくとキリがないので、デフォルト設定となっている各エフェクトを静止画と動画で掲載しておく。

モード名 静止画サンプル
ピクチャーモード動画サンプル

pict.mp4 (73.6MB)
Flat
i-Finish
Vivid
Natural
Portrait
モノトーン
アートモード動画サンプル

art.mp4 (132MB)
ポップアート
ファンタジックフォーカス
デイドリーム
ライトトーン
ラフモノクローム
トイフォト
ジオラマ
クロスプロセス
ジェントルセピア
ドラマチックトーン
リーニュクレール
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の
保証はいたしかねます。 また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますの
でご了承下さい。
【動画サンプル】
trail.mp4 (19.8MB)

残像系のエフェクトも動画用に搭載
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 またこれとは別に、残像系のエフェクトが、動画撮影時にすぐにアクセスできるようなところにわざわざ付けてあるのも面白い。残像が出っぱなしのモードと、最初だけ残像がかかってあとはノーマル、という2モードがある。

 さらにこのエフェクトは、上記アートモードなどと同時に使えるのもポイントだ。使うにはその必然性というか、ある程度シナリオが必要になるだろうが、カメラを固定しておけば動いている人だけ消えるような効果も簡単に得られるので、単純に風景撮りやナイトシーンで使っても楽しめるだろう。




■総論

 「OM-D E-M5」は、コンパクトなボディながらも強力な操作性を装備した、まさにマイクロフォーサーズユーザーにとってはソニーのNEX-7に対抗できる、唯一のモデルと言うことになりそうだ。

 キットレンズも良くできており、電動ズームも使える静音仕様だが、実売で4万円を切るなど、それほど高くない。ボディ本体は、静止画撮影時には内部でファンが回るのか、サーッというノイズがかすかに聞こえるが、動画モードにすると止まるなど、音にも気を配っている。

 【2012年5月22日追記】
 オリンパスによると、静止画・動画撮影時に聞こえるかすかな音は、IS機能の動作に起因するもので、動画モードにすると音量に変化が生じるのは、ISの働く部分が切り替わるためとのことでした(編集部)。

 マイクロHDMIは備えているが、イヤホン端子などは無い。昨今のトレンドである「一眼デジカメ動画でデジタルシネマ」的な訴求はあまり強くはないように感じる。

 30pしか撮れないというデメリットはあるが、やはり一番の難点は、エンコード時の画質だろう。せっかくのレンズと、センサーの手ぶれ補正の実力が、動画ではスポイルされてしまうのは残念だ。写真ではあまり欠点が見当たらないモデルなだけに、動画の画質ぐらいで評価が下がるとは思えないが、ファームウェアのアップデートで改善できるのであれば、ぜひやっていただきたいと思う。

 エフェクト群が充実していることもあり、画質問題が解決すれば、動画の作品作りでは特殊シーンでのワンポイントリリーフとしても使えるカメラになるはずだ。

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OM-D E-M5 レンズキット
(2012年 5月 16日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。

[Reported by 小寺信良]