小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第703回:遅れてきた4Kアクションカム、ソニー「FDR-X1000V」。HD機AS200Vの進化もチエック!
第703回:遅れてきた4Kアクションカム、ソニー「FDR-X1000V」。HD機AS200Vの進化もチエック!
(2015/3/18 10:00)
いよいよソニーも4Kアクションカムに参入
ここ数年ホームビデオカメラは厳しい状態が続いてきたが、一方でアクションカムはアイデア次第でいろんな事に使えるというので、大きな広がりを見せている。特にスポーツをやっている人なら、何かしらのアクションカムを自前で持っている人も珍しくない。またドローン空撮の世界でも、小型機ではGoProが事実上のデファクトとなっているところでもある。
そんな中、アクションカムの世界でも4K化の波が押し寄せている。国内で入手可能なものとしては、「GoPro Hero4 BlackEdition」、パナソニック「HX-A500」があった。そして今年1月のCESで発表されたソニー 「FDR-X1000V」が、ようやくこの3月に発売された。店頭予想価格は5万1千円前後だが、通販サイトでは既に5万円を切っているところもある。
また、HDタイプの新モデルとして「HDR-AS200V」も同時に発売された。デザインは前モデル「AS100V」とほとんど同じだが、X1000Vで開発された多くの機能を搭載している。現AS100Vユーザー(筆者もそうだが)は、どこが違うのか気になるところだろう。
今回はX1000Vの4K撮影を中心にしつつ、AS200Vと私物のAS100Vを組み合わせて3カメ同時収録してみることにした。4Kの画質、そしてアクションカムとしての使い勝手はどう変わったのだろうか。さっそくテストしてみよう。
一見同じように見えるが……
ではまずデザインから見ていこう。AS200Vのほうは従来モデルと全く同デザインなので、X1000Vがどう変わったのか比較しやすいだろう。
まずX1000Vのサイズだが、レンズ径は変わらないものの、ボディは一回り大きくなっている。従って防水ハウジングも専用となっている。従来販売されてきたアクセサリの中には、サイズやボタン位置、端子の位置の関係で使えないものも出てくるだろう。
レンズは単焦点のZEISSテッサーで、F2.8。画角は手ぶれ補正OFFで170度(35mm換算17.1mm)、ONで120度(21.8mm)と、従来機と同じスペックだ。イメージセンサーは1/2.3型 Exmor Rで、総画素数は約1,280万画素。動画での有効画素数は約880万画素となっている。なお、これらのスペックはAS200Vも同じだ。
モデル名 | X1000V | AS200V | AS100V |
画素加算なしの 全画素読出 | ○ | ○ | - |
4K撮影 | ○ | - | - |
ハイスピード記録 | 1080/120p 720/240p | 720/120p WVGA/240p | 720/120p WVGA/240p |
新手ブレ補正 SteadyShot | ○ | ○ | - |
三脚穴内蔵 | ○ | - | - |
付属防水 ハウジング | 10m防水 | 5m防水 | 5m防水 |
ループ録画 | ○ | ○ | - |
マニュアル 設定 | ○ | ○ | - |
風音低減 | ○ | ○ | - |
音声記録 ON/OFF | ○ | ○ | - |
ハイライト ムービー メーカー | ○ | ○ | - |
内蔵GPS | ○ | ○ | ○ |
記録画素数および画質モードは以下のようになっている。なお*印のモードが使えるのはX1000Vのみで、そのほかのモードはAS200と共通となっている。X1000Vは4Kだけでなく、ハイスピード撮影でも高解像度でハイビットレートが使えるようになっている。
- | 解像度 | fps | ビットレート |
XAVC S 4K | |||
*30p | 3,840×2,160 | 30p | 約60/100Mbps |
*24p | 3,840×2,160 | 24p | 約60/100Mbps |
XAVC S HD | |||
60p | 1,920×1,080 | 60p | 約50Mbps |
30p | 1,920×1,080 | 30p | 約50Mbps |
24p | 1,920×1,080 | 24p | 約50Mbps |
*120p | 1,920×1,080 | 120p | 約60/100Mbps |
*240p | 1,280×720 | 240p | 約60/100Mbps |
MP4 | |||
PS | 1,920×1,080 | 60p | 約28Mbps |
HQ | 1,920×1,080 | 30p | 約16Mbps |
STD | 1,280×720 | 30p | 約6Mbps |
HS120 | 1,280×720 | 120p | 約28Mbps |
HS240 | 800×480 | 240p | 約28Mbps |
デザイン的なポイントは、RECボタンが上部に移ったことだ。HDの小型モデル「HDR-AZ1」も上に付いていたが、新デザインのものは上に付く流れなのかもしれない。AS100V/AS200VのRECボタンは堅くて押し辛かったが、X1000Vのほうは軽く押し込めるようになった。
ただそれも良し悪しで、この位置にあることも関係するのだが、カメラを握っただけでうっかりボタンを押してしまい、録画が開始されてしまったことが多々あった。“撮ろうと思ったらバッテリもカード容量も空”という事になりかねないので、これまで以上にHOLDスイッチをマメに入切することになりそうだ。
背面は全体がフタになっており、バッテリやmicroSDカードが交換できるのは以前と変わらない。ただ今回はUSB(Multi)端子やHDMI端子にアクセスするために、フタが半分だけ開くようになっている。
底部はこれまでコネクタ類が集中していたが、X1000Vでは外部マイク端子があるのみ。また、従来は普通の三脚ネジに取り付けるには同梱のアダプタを介する必要があったが、X1000Vでは本体に標準のねじ穴が付いた。バッテリは従来機同様Xタイプ(NP-BX1)で、互換性がある。
解像感が上がった新CMOSの威力
では実際に撮影してみよう。今回はX1000VとAS200V、それから比較用にAS100Vと3台のカメラを同アングルで撮影してみた。4K/100Mbpsでの撮影には、microSDXCメモリーカードでもUHS-I U3のカードが必要だが、あいにく手配が間に合わなかった。今回は4K/60Mbpsで撮影している。
ライブビューリモコン「RM-LVR2」では、最高5台までのマルチカメラコントロールが可能なので、3台同時RECや、切換で各カメラのアングルチェックもできる。なおスマートフォンアプリの「PlayMemories Mobile」でも、バージョン5.2ではマルチカメラ対応になる予定だが、執筆時点ではまだ公開されていない。
RM-LVR2とX1000V or AS200Vをシングル接続した場合、できる事が増えた。撮影後にWi-Fi経由で動画の再生が可能になり、ファイルの削除もできるようになった。スマートフォンのようにWi-Fiダイレクト接続時にパスワード入力も必要ないため、ゴチャゴチャした現場で画角や撮影結果を素早く確認したい時にはもはや必須アイテムである。
では撮影した映像を見てみよう。まず画質面だが、今回のX1000VもAS200VもCMOSの画素読み出しに画素加算を使用せず、全画素読み出しに変更された。画素加算は感度を稼いだり、データ転送量を節約するには有効な方法だが、解像感が落ちるという弱点がある。
4Kでの撮影では、さすがに高解像度で細い送電線まで綺麗に写っている。途中両側に枯れススキがある場所では多少ビットレート不足を感じるが、おそらく100Mbpsで撮影すれば問題ないクオリティになるだろう。あいにくの曇天で空抜けのクリップ感がよくわからなかったが、小型だから画質が悪いという感じもない。
ただ4Kモードでは、手ぶれ補正が効かないという難点がある。またフレームレートも30Pまでとなる。これはパナソニックHX-A500でも同じだったので、今のところここが限界点という事なのだろう。
今回の春モデル共通の特徴は、「SteadyShot」として訴求している手ぶれ補正の強化である。X1000Vでは4Kモードで手ぶれ補正は効かないが、HDモードではAS200V同様の手ぶれ補正が効く。
まずは車載で悪路を走行し、AS100Vの旧手ぶれ補正とAS200VのStreadyShotの利き具合をテストしてみた。サンプル動画は、左がAS200V、右がAS100Vである。手ぶれ補正の利き具合としては、正直それほど大きく違う感じはしない。むしろAS100Vのほうが、安定度は高いようにも見える。一方画質面では、AS200Vの方がススキの細かい解像感、偽色の少なさという点で優れている。2画面構成なので面積的には1/4に縮小されているわけだが、それでも違いがわかるレベルである。
【お詫びと訂正】
記事初出時に「手ぶれ補正にはBodyとOtherという2モードがある」と記載しておりましたが、誤りでした。Body/Otherは、ハイライトムービーメーカーのハイライトタグ抽出の精度を高めるために選択する機能です。お詫びして訂正いたします。(2015年3月19日)
次に、手持ちによる歩きを比較してみた。同じく左がAS200Vだ。こちらもそれほど大きな違いは見られなかった。
今回の新手ぶれ補正は、主にドローンのプロペラから伝わるような微細な振動に対応したというのがポイントだそうだ。しかし、現在ソニーのASシリーズ用の空撮用ジンバルというのは、昨年2月にDJIが開発中というニュースが流れたものの、まだ市販の製品は見当たらないようだ。自分で設計できる人でもない限り、汎用のキャリア的なものにがっちり固定して撮影するしかないのが現状だろう。この点では残念ながらGoProの牙城に全く太刀打ちできていない。
充実の編集機能
ソニーアクションカムは、編集環境が充実しているのが特徴と言えるだろう。PC/Mac向けソフトウェアとしては、以前からPlayMemories Homeがある。またPlayMemories Homeからアクションカム用の編集機能を取り出した「Action Cam Movie Creator」もある。画像管理なんかしない、カメラ直結で必要部分だけバリバリ切り出して終わり、というタイプの人には、便利なソフトだ。今回のマルチ画面のサンプルも、Action Cam Movie Creatorで作成している。
GPSデータを読み込んで速度や地図表示もできるほか、スローやハイスピードなど、時間エフェクトも搭載している。変化がない部分は途中で早送りといった動画も編集できるわけだ。
ただ残念ながら4Kの読み込みには対応しているものの、書き出しに対応していないため、HD解像度での仕上がりとなる。4KをベースにHD解像度を子画面で、というリッチな動画ファイルが作れると思ったのだが、残念だ。
マルチカメラ素材も、同時に読み込ませて編集することができる。ただ複数画面をPinPしていると、プレビュー再生が激重になるため、編集点を探すのがやっかいである。今回は本末転倒ではあるが、いったん全部をマルチ画面で書き出し、それを別の編集ツールで切り出すという二段構えで作業している。
一方でそんな編集をするPCないよ、とか、現場でなんとかしたいという人のために、スマホアプリのPlayMemories Mobileでなんとかする方法も追加された。アプリ内アプリのような格好で提供される、「ハイライトムービーメーカー」がそれである。
以前からソニーは、自動でいいシーンを選んで動画にしてくれるという機能を熱心に研究している。これはカメラ内の映像をハイライトムービーメーカーで選択するだけで、音楽も加えて短いビデオにしてくれるというものだ。
スマホ側には動画は転送されず、ハイライトムービーの作成はカメラ内で行なわれる。音楽もあらかじめカメラ内に何曲か仕込まれており、それを選択する。完成ファイルもカメラ内にできあがるが、それをスマホにコピーすることも可能だ。
どんなシーンがイケてると判断されるのかユーザー側にはコントロール不能だが、まあなんとなくいい感じのものができればOKと言う人には使える機能だろう。ただ今回は1人でロードバイクに乗ってるだけでそれほど絵的に代わり映えしないので、アプリ側も多少困ったようだ。人が写り込んだところなど、映像に差が大きくなったところを捉えているようだが、あんまり面白い物にはならなかった。
恐らくグループで走行すれば、追い越し、追い越されで、それなりに面白い編集結果になるだろう。スノーボードなどで派手な転倒シーンがあるとか、そういう激しいアクションを想定しての機能なのかもしれない。
総論
今年1月の米国発表以来、3カ月も待たされたソニーの4Kアクションカム。サイズは多少大きくなったが、画質も納得できるクオリティに仕上がっている。価格的にも、円安で値上がりした「GoPro Hero4 BlackEdition」よりだいぶ値頃感がある。ただ最近の価格を調べてわかったのが、パナソニックの「HX-A500」は実売2万4千円程度まで下がっており、コストパフォーマンスではこれに敵う4Kカメラはないと思われる。
X1000Vの4K撮影では、手ぶれ補正が使えないのが残念だ。パナソニックも同様だが、ソニーならあるいは……とも思ったが、昔と違って何でもかんでもオリジナルで内製する時代でもないので、強烈な機能差は生まれないということなのだろう。今回はテストしていないが、水中撮影なら手ぶれ補正もそれほど必要ないかもしれない。
HD解像度に変更すれば手ぶれ補正も効くので、機能的にはAS200Vをカバーしている事になる。一方でAS100Vユーザーが200Vに買い換える必要があるかと言えば、確かに解像感は向上、風音ノイズ低減機能やマニュアルでのAEシフト&ホワイトバランス搭載といった差はあるものの、自転車や徒歩撮影で比べた限りでは、手ぶれ補正がそれほど明確に差がある感じもない。
またメニューも画質モードも増えたため、メニュー操作にキビキビした感じが無くなった。現状に不満がなければ、あとはもう4Kに行くべきかどうかで考えるということになるだろう。
今回マルチカメラもテストしてみたが、ライブビューリモコン「RM-LVR2」無しでは画角の確認もすぐにはできないしで、これまで大変だった。今回改めてライブビューリモコンの存在意義を見直した次第である。
構造的にはHDMIとUSB端子が後ろにまとまったため、給電しながらライブカメラとして使うといった用途では便利になった。HD切り出し機能も欲しいところだが、このボディサイズではなかなか難しいところだろう。
4Kのコンテンツを作ることがそう簡単ではない今、この解像度をどう使うか、ユーザーの知恵が問われるところだ。プロもアマも、そこが今一番面白いところでもある。
ソニー FDR-X1000V | ソニー HDR-AS200V |
---|---|