小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第609回:大幅小型化のワンセグ全録「ガラポン参号機」登場
“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第609回:大幅小型化のワンセグ全録「ガラポン参号機」登場
3TBで3カ月録画。「家電クオリティに進化し、安定性も向上」
(2013/4/3 11:03)
伝説!? のワンセグ全録レコーダが帰ってきた
今年は全録が熱いとかねてから予言しているわけだが、もうそろそろ予言成就と判断してもいいぐらいに製品が出そろってきたのではないかと思う。そして今年、2011年6月に前モデルをリリース、“ワンセグを全録する”というユニークな製品として注目を集めた「ガラポン弐号機」が大幅リニューアルし、「ガラポン参号機」として帰ってきた。
3月27日に発表、即日販売開始となったガラポン参号機は、8chワンセグチューナを搭載し、従来外付けする必要があったHDDも内蔵してしまった。価格は公式サイト直販で41,790円。ガラポン弐号機ユーザーには、特別価格23,810円で販売する。
ガラポンの代表取締役 保田 歩氏は発表会の席で「ガラポン弐号機はある意味、自作PCの製作代行のような見られ方でも仕方なかった。しかし参号機は量産型となり、家電クオリティに仕上がっている。」と自信を見せる。
サイズも大幅に小型化を果たしたガラポン参号機を、さっそくテストしてみよう。
CDケース4枚分の筐体にHDDまで内蔵
ガラポン弐号機のルックスをご記憶の方がどれぐらいいらっしゃるかわからないが、まあ有り体に言えばアキバで売ってる小さなシャーシにマザーボード入れました的なスタイルで、レコーダとしてはルックス的にかなり特殊であった。
またHDDを内蔵しておらず、2TBまでのUSB HDDをサポートしていたが、相性問題や2TBでは足りないといった要望があったという。ガラポン弐号機は7chチューナで、2TBのHDDを使うと約2カ月分の全録ができる。だがアニメなどの1クールはだいたい3カ月なので、全部を録るには足りないというわけだ。
ガラポン参号機は、光沢のある樹脂製カバーで囲われたスタイルで、フットプリントはほぼ音楽CDケースと同じ。高さもCDケースおよそ4枚分とコンパクトだ。前面中央に緑のLEDがあり、三角形のスイッチになっている。これはネットワーク初期化ボタンとして機能する。
正面左には緑、青、赤のLEDがあり、異常があると点灯する。点灯するとかなりまぶしいが、正常動作時には全部消えるので、実用上は問題ないだろう。前回外付けのみであったHDDは、今回500GBが内蔵されており、本体のみで8ch/24時間録画した場合、およそ2週間の番組が保存できる。
正面にあるUSBポートは、外付けHDDが接続可能。背面にもUSBポートがあるが、HDDはどちらに繋いでも構わない。ただし同時に接続できるHDDは1台までなので、どちらかのポートは空いたままになる。
外付けHDDは、最大3TBまでサポートする。この場合、8ch/24時間録画でおよそ3カ月分の番組が保存できる。USB HDDを録画領域に使用する場合は、内蔵HDDは消去したくない番組の保存領域に使用される。
背面に回ってみよう。前回は箱が大きい割には電源スイッチがなかったが、今回は付いている。ただしソフトウェア側で正常にシャットダウンした後、電源を切る必要がある。そのほかアンテナ端子、有線LAN端子と、外付けHDD用のUSBポートがある。
ガラポン参号機は、ルックスだけではなくアーキテクチャも色々変わっている。まずメインプロセッサは弐号機がATOM系であったのに対し、参号機ではARM系に変えたため、メインボードが大幅に小型化されている。
チューナも弐号機は国外製のチューナを7つ組み込みしていたのに対し、参号機はシャープ製の8ch/1モジュールを採用した。国外製品に比べると、受信安定性が大幅に向上したという。
さらに弐号機では全番組をMP4に変換していたが、受信状況の悪化に弱いチューナの信号をエンコードする際のエラーが、動作が不安定になる要因であったという。参号機では全番組変換をやめて、後述する持ち出し機能を使う時だけエンコードする仕様となった。チューナーモジュールの変更もあり、弐号機で指摘されていた受信状態の悪いチャンネルの録画エラーや動作不調は、かなり改善されるはずだ。
柔軟性を高めたセットアップ
では早速中身を見てみよう。ガラポンTV端末にはマニュアルが同梱されておらず、セットアップマニュアルはサイトからダウンロードする必要がある。視聴するにもネット環境は必須なので、通常のAV機器系のレコーダとはまったく違う。
セットアップとしては、本機をアンテナ線とネットワークに接続したのち電源を投入、ガラポンの専用サイトでID登録を行ない、本体に書いてあるレジストリーキーを入力すると、IDと本体が紐付けされる。これが完了すれば、あとはガラポン本体にログインして各種設定を行なうという流れだ。
すでに弐号機の利用者で、同じIDで参号機に乗り換える場合は、弐号機のレジストリ登録を削除する必要がある。
今回は1TBの外付けHDDを接続してみたが、HDDの初期化にはかなりの時間がかかる。1TBでおよそ1時間だ。内蔵HDDを初期化する場合も30分ぐらいかかるはずなので、慌てず待つ必要がある。なお弐号機で使用していたHDDはそのままでは使用できず、いったん初期化する必要がある。
チャンネルスキャンを行なうと、8つのチューナに放送局が割り当てられる。Twitterのハッシュタグも同時にアサインされるが、これは番組を視聴しながらTwitterに投稿する際に使用される。
設定完了後は、すぐに録画がスタートする。録画中にも時系列で受信レベルがモニターできるなど、テレビ放送マニアにもたまらない機能を搭載している。各放送局のRSSI(受信信号強度)で2箇所ピークが立っているのは、この日のこの時間に、東京スカイツリーへ送信を切り換えて、試験放送が行なわれたことを表わしている。
現在筆者宅ではブースターを使用しているが、この結果を見る限り、東京スカイツリーへの切り換え後は取り外したほうがいいかもしれない、といったことがわかる。切り換えは今年5月の予定で、それまで様々な試験が行なわれるはずなので、信号を見ていて今が一番面白い時期である。こういう機会はもう数十年は来ないかもしれない。
ガラポンのトップページも、最初に弐号機をレビューした時点からだいぶリニューアルされている。日付一覧やジャンル一覧から番組が選べるのは以前と同じだが、現在放送中の番組も、頭から追っかけ再生できるようになった。
また同社が運営するポータルサイトの「ガラポンTVサイトα」で話題の番組が下に表示されるようになり、番組をクリックすると、ポータルサイトのレビューを見たりできる。ガラポンTVにログインしていれば、すぐに番組が再生されるはずだが、現在はなぜかログインしていることが認識できないようだ。これはまだ参号機に正式に対応していないのかもしれない。
また有志がガラポンのAPIを使って、番組表形式で録画一覧を用意したり、2ちゃんねるの実況板の盛り上がりをグラフ化し、クリックすると番組のその部分に飛べるといったインターフェースを提供している。ただ参号機からAPIの仕様が若干変わったことから、現時点では参号機には対応していない。
なお参号機のAPIは、弐号機と比べてもハードウェアの制御レベルまで公開するとしており、正常動作時には消灯しているLEDでユーザーになにかを知らせるといったことも実現するかもしれない。
もう一段進化したモバイル視聴
ガラポンで録画した番組は、ホームネットワーク内ではどんな端末でもWebブラウザさえあれば、ガラポンに直接ログインして見る事ができる。
一方ホームネットワークの外、外出先や移動中などの時に視聴するには、いったん「ガラポンWEB」というサイトにログインし、そこからもう一度自分のガラポンにログインし直して、ストリーミングで視聴する事ができる。以前は出先から視聴するためには月額380円のエントリープランへの加入が必要だったが、現在は無料サービスとなっている。
さらにモバイル視聴を極めると、3GやLTEが圏外の地下鉄、あるいは病院や飛行機の中などで録画したテレビ番組を視聴するにはどうするか、という問題に突き当たる。これを解決するのが、ダウンロード再生機能だ。
モバイルで見たい番組を選んで「ダウンロード再生用に変換する」ボタンをクリックすると、モバイル持ち出し用に暗号化しつつMP4への変換が開始する。だいたい30分番組で2分程度のようだ。変換は終わるのを待っている必要はなく、複数の番組を連続で変換指定することができる。並列処理では変換しないが、タスクに積まれて一つずつ順に変換作業を行なう。
ダウンロードによるモバイル視聴を行なうには、「ガラポンTVアプリ」をiPhoneにインストールしておく。現在iOSのみ対応で、Android版は現在開発中だという。
このアプリを起動すると、変換済みの番組がリスト表示される。「取得」ボタンをタップすると、iPhoneに転送される。転送は、ダビング10ルールで運用され、10回までの持ち出しが可能だ。ダビング回数の書き戻しはできず、見終わったら端末側で削除するというスタイルだ。
これまでストリーミングによるモバイル視聴では、見たいところまで飛ばすのに時間がかかったり、電波状況が不安定になると再生が途切れたりといった面倒があったが、ローカルにダビングしての視聴は、早送りのレスポンスも良く、快適に視聴できる。
いかんせんワンセグ画質ではあるのだが、スマートフォンぐらいの画面サイズならそれほど見苦しくもないし、なにしろデータ量が軽いので転送もすぐに終わる。変換する作業から転送、視聴まで、すべてスマホだけで完結するシンプルさもなかなかいい感じだ。
総論
ガラポンの世界を久しぶりに覗いたが、コミュニティがしっかり成長して機能しており、API利用によるユーザー独自サービスが登場したりと、オープンな時代にふさわしい成長を遂げている。
ハードウェアの面でもかなり取っつきやすい形状になっており、従来のマニアック製品扱いからうまく脱却できそうな感じだ。ワンセグを録画するという点から、画質面での向上はあまりないが、メタデータは放送波に含まれるものだけでなく、Twitterからの情報も利用するという。放送番組をキーワード検索して探す、あるいはピンポイントでその部分だけ確認するといった、番組を解体して利用することに長けたシステムである。
販路もこれまでの直販だけでなく、一部量販店でも扱いがあるという。さらにはOEM元として、別メーカーや別ブランドで展開することも可能だとしており、例えば最近は携帯キャリアがテレビサービスに熱心だが、そのあたりから登場するのかもしれない。
昨今テレビ離れが叫ばれて久しいが、テレビの見方、番組との出会い方をもう一度考えるきっかけとなる製品と言えるだろう。