小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第692回:またパナソニックがやらかした! 圧巻の4Kコンデジ「DMC-LX100」
第692回:またパナソニックがやらかした! 圧巻の4Kコンデジ「DMC-LX100」
そうだよなぁカメラって本来こうだよなぁ
(2014/12/17 10:00)
ついにコンデジで4Kが!
“4K動画を撮る”という切り口でカメラを眺めた場合、これまではビデオカメラ、ハイエンドミラーレス、ネオ一眼、アクションカムという選択肢があった。ここで欠けているピースは、コンパクトデジカメであったわけだ。昨年から今年にかけて、高級コンデジブームに乗って各社とも製品を揃えてきたが、その流れに乗りつつ4K動画撮影機能を搭載することで差別化を図ったのが、パナソニック「DMC-LX100」(以下LX100)である。現時点で上記カテゴリの4Kカメラをフルで揃えているのは、パナソニックだけだ。
さてそのLX100、すでに11月13日から発売が開始されており、店頭予想価格は10万3,000円前後。ネットの通販サイトでは今月に入って9万円を切り始めたところである。コンパクトデジカメながら4/3型センサーを搭載し、事実上“ミラーレス機のレンズ固定版”とも言えるスペックだ。ネオ一眼の「DMC-FZ1000」は1インチセンサーだったが、それに比べればまさに“フォーサーズ系列直系のコンパクトデジカメ”と言える。
小型の4Kカメラという点ではアクションカムに数モデルあるものの、ハンディで構えて撮るタイプの4Kカメラとしては現時点で最小である。もちろんメインは写真だろうが、今回も例によって動画撮影機能にフォーカスしたレビューをお送りする。
写真好きのハイアマから4K動画クラスタまで幅広く注目を集めるLX100の実力を、さっそくテストしてみたい。
洗練された操作性
最初に製品写真を見た時、コンデジながら組み込みのビューファインダということで、個人的に購入したソニーの「RX100M3の立場はどうなる?」と焦ったものだ。だが実際にモノを見てみると、RX100シリーズよりも幅、高さ、厚みの面で一回り大きい。まあそれでもコンデジサイズではあるわけで、これで4Kが撮影できる点では他社に追随を許さない。
全体的にボタンやダイヤル類が多く、頼もしい印象を受ける。まず鏡筒部には絞りリング。これが1/3ステップごとにクリックがあり、カメラとして実に“わかってる”。その奥がフリーアサイン可能なコントロールリング、一番奥にはフォーカスモード切り換えスイッチと、アスペクト切り換えスイッチがある。
アスペクト切り換えについて少し説明すると、パナソニックのカメラは、代々イメージサークルに対して一回り大きいセンサーを搭載している。そのため、どのアスペクト比に切り換えても画角が変わらない、「マルチアスペクト」スタイルを貫いている。そのメリットがすばり享受できるスイッチなのである。
軍艦部にはシャッタースピードダイヤル、露出補正ダイヤルがあり、まさにルックス的には昔のフィルムカメラのイメージに近い。
これらを駆使して撮影するわけだが、LX100には「撮影モード切り換えダイヤル」が存在しない。絞り、シャッタースピード、ISO感度それぞれにA(オート)ポジションがあり、全てがオートだとプログラムAEだ。どれかをマニュアルにすれば、それの優先モードになる。
例えば絞りをマニュアルで絞れば絞り優先だし、加えてシャッタースピードもマニュアル設定すれば、ISO感度だけで露出を追従するマニュアル撮影となる。ISO感度もマニュアルにすれば、完全にフルマニュアルになる。逆にフルオートにしたければ、軍艦部にあるiAボタンを押せば、いつでもフルオートになる。
多くのデジカメは、まずモードダイヤルを切り換えることでシャッターや絞りがマニュアル化できるわけだが、LX100はそれぞれにハードウェアのダイヤルがあるので、モードを切り換える必要がないわけだ。昔のカメラはみんなこうだったのだが、すっかりモード切り換えに慣れてしまった今となっては、実に高級コンパクトデジカメらしい操作性となっている。
さて、いつまでも操作性で喜んでないで、スペックのほうもおさえておこう。レンズは「LEICA DC VARIO-SUMMILUX」の光学3.1倍ズームレンズで、24~75mm(35mm換算)/F1.7~ 2.8となっている。ズーム倍率は控えめだが、かなり明るいレンズだ。レンズ前には自動で閉まるレンズカバーはなく、レンズキャップで保護するスタイルだ。そのかわり、43mm径の光学フィルタが使えるのは隠れたメリットだろう。
絞りは9枚羽根の虹彩絞りだが、なぜかライブビュー画面には絞り設定が反映されない。Fn1キーを押してプレビューモードを切り換えると、そこでようやく実際に絞りが動いて被写界深度がわかるのだが、なぜその場ですぐに絞りが動くようにしなかったのかはよくわからない。
センサーは4/3インチ、総画素数1,684万画素のMOSで、有効画素数は4:3時が1,280万画素。手ぶれ補正は光学式で、静止画にしかON/OFF設定がない。動画はその設定がそのまま連動するようだ。
背面の液晶モニターは3.0型/92万画素のTFTで、チルト機能は無い。ビューファインダは0.38型/276万画素トのフィールドシーケンシャル方式。したがって素早い視点移動ではカラーブレーキングが起こる。
動画ボタンは背面にあり、特に静止画と動画のモード切り換えもない。いつでも押せば動画が撮れるというスタイルだ。なお動画フォーマットはMP4とAVCHDの2モードだが、4Kが撮影できるのはMP4のみである。サイズは3,840×2,160のみで、DCIサイズはサポートしない。フレームレートは30fpsか24fpsで、どちらもビットレートは100Mbps。FZ1000では24pは撮れなかったので、LX100のほうがやや高機能だと言える。
外部端子は、右側にHDMIとUSB/アナログAV兼用端子があるのみ。USBは付属ケーブルでPC接続するかプリンタ接続に使うのみで、USB充電には対応しない。またアナログAVケーブルは別売で、付属しない。
バッテリとSDカードスロットは底部にある。なお4K動画撮影には、UHS Speed Class 3が推奨されている。
さすが4K、すばらしい解像感
ではさっそく撮影してみよう。撮影日は多少風はあるものの久しぶりに晴天に恵まれ、コンディションも良好である。
撮影された4K映像は、このサイズのカメラで撮れるとは思えない精細感で、ディテールも申し分ない。若干絵づくりとしては固い印象も受けるが、すっきりして抜けのいいトーンは独特の清涼感がある。
ただ紫色のパンジーは、かなり青に転んでいる。2009年から11年ぐらいまでのカメラは、比較的低価格のビデオカメラが見栄えの良い記憶色にまとめるためにこの傾向が強かったが、最近はどのメーカーも割と正確な色味を表現するようになっていた。高級モデルのLX100がこの傾向にあるのは、ちょっと意外だ。
4Kで最も気になるのはAFの精度だが、LX100はAFスピードも速く、AFモードが標準の「49点」モードのままでも、構図の中でメインの部分にフォーカスが合いやすい。ただ本体の液晶モニタでは解像度が十分ではないため、撮影後にフォーカスを確認しても、どこもフォーカスが合っているように見えてしまって、よくわからない。HDMIは撮影モードでは出力されないので、外部モニターも使えない。フォーカスの確認は、ビューファインダを使うしかないだろう。
4K動画撮影中は多少AFの追従がゆっくりになり、大きくは外さない。録画開始直後が多少前後にふらつくこともあるので、早めに撮影を開始しておくと安定する。
動画の録画開始はすぐスタートするのだが、録画の停止は録画ボタンで止めてから2、3秒待たされる。止まってないのかと思って、もう一度ボタンを押してしまいがちだ。いわゆる逆スイッチにはならないように制御されてはいるのだが、すぐに止めて設定変更したいときなどは、若干イラッとさせられる。
4Kの動画は、連続撮影時間が15分に制限される。ファイルサイズは4GBに分割されるものの、止まるわけではない。ファイルサイズが問題ではなく、おそらく放熱の問題で制限されるのかもしれない。
手ぶれ補正の効きは、手持ち撮影では十分な範囲だが、歩きの撮影では補正範囲不足が目立つ。ブレが吸収できずにガクッと動くところが多く散見される。
ズームは光学では3.1倍しかないが、超解像を使ったiAズームを使うと6.2倍までズームできる。近い構図になるようにして両方を撮り比べてみたが、肌のディテール感は光学ズーム領域が勝るものの、iAズーム時の柔らかい表現も悪くはない。超解像をなかなか上品に仕上げてきたように思う。
動画撮影機能としては、フィルターがかなり強力だ。軍艦部に専用のボタンまで設けており、これを押すと22種類ものフィルター効果を使う事ができる。一部動画では効かないものもあるが、大半は4K動画でも効く。かなり画像処理エンジンの能力は高いことがわかる。サンプルは、動画対応のものは1本の動画にまとめてある。動画非対応のもののみ、静止画を掲載する。
多彩な静止画サポート
デジカメの4Kサポートは、いったん4K動画として撮影しておけば、そこから静止画を切り出せるという機能も実現する。秒間30コマで連写するより、4K動画で撮ってしまった方が合理的という考え方である。
使い方は簡単で、4Kで撮影した動画を本体で再生し、一時停止にする。その後左右キーでコマ送りして、静止画にしたい瞬間を探し、真ん中のMENUボタンを押せば静止画として保存される。
なお撮影時には、4K動画からの静止画切り出しに特化した「4Kフォト」機能を使う事ができる。これをONにすると、静止画用のシャッターボタンも録画ボタンに変わるほか、絞りやシャッタースピードの変更がライブビューにも反映される。
さらにアスペクト変更もできるようになる。4KフォトがOFFだと、どのアスペクト比に設定していても4K動画撮影は強制的に16:9になってしまうのだが、4KフォトがONだと1:1のようなアスペクト比の4K動画も撮影できる。
また撮影中にFn2ボタンを押すと、マーカーを打つ事もできる。再生時にはまたFn2キーを押すとマーカーモードになるので、左右キーでマーカー位置までジャンプできる。マーカーは1つの動画につき40個まで打てるので、結構使える機能になっている。
LX100を4K動画カメラとして使う場合、4Kフォトモードのほうが便利なのではないだろうか。輝度レベルが0-255に設定されるため、HDTV規格であるRec.709(16-235)から外れる点が懸念されるが、そもそも自分で撮った動画はテレビ上ではなく、最終的にWebで消費されるケースが増えているのが現状なので、コンシューマではこの辺はあまり問題にはならないように思う。そう言えばGH4にはすでに、0-255、16-235、16-255の切り換えがあった。
もう一つ静止画撮影機能としてご紹介しておきたいのは、Wi-Fiによる自分撮り機能だ。LX100は液晶がバリアングルではないため、単体では自分撮りできない。その代わり、Wi-Fiを使ってスマホと接続すると、いつもの専用アプリ「Image App」によって自分撮りが可能だ。
自分撮りモードでは画面が左右反転するため、いわゆる鏡を見ているのと同じ状態になる。それで構図を決め、画面タップでAFとシャッターが同時に動作する。今回はカメラを三脚で固定しただけで、モデルさん自身にスマホアプリを操作してもらい、好きなポーズで自分のタイミングで自撮りしてもらった。
最近は自撮り棒なるものも流行りつつあるが、旅先でパッと撮るならそれもいいだろう。だが決め顔を撮るなら、スマホの広角カメラで撮るより、50mm前後のポートレート画角で撮った方が、より魅力的に撮れることは間違いない。一手間かかることは否定しないが、SNSのプロフィールに載せる写真を撮るなら、スマホより断然デジカメである。
総論
待望の4Kコンデジという事で期待も膨らんだLX100だが、まさに期待値を超える仕上がりである。カメラとしての操作性に柔軟さがあり、同社デジカメの特徴をよく活かしたインターフェースで、かなり自由度が高い。
難癖を付けるとすれば、鏡筒部のコントロールリングはもうマニュアルフォーカス専用で良かったのではないかとも思う。またデフォルトでは絞りを変更してもプレビュー画面で絞り開放状態しか見られないというのは、なんのためにわざわざそうしているのか、仕様として解せないところである。
他方で4Kフォトモードの動作はなかなかユニークだ。被写界深度がすぐわかるメリットのほかにも、アスペクト比が自由に選べるなど、テレビ規格にこだわらない新しい4K動画カメラの可能性を秘めている。
バッテリの持ちもよく、およそ1時間半の撮影でバッテリーは1/3程度しか減らなかった。ほとんど4K動画しか撮っていない割には、よく健闘している。ただし連続で15分しか撮影できないところが、やや残念ではある。
コンパクトデジカメとしては価格が高いのが難点ではあるものの、写真が好きな人にとっても、4K動画に興味がある人にとっても、実際に撮ってみれば納得できるだろう。拡張性はそれほどないが、全体的にかっちりまとまった、良いカメラである。
パナソニック DMC-LX100 ブラック | パナソニック DMC-LX100 シルバー |
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