小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第673回:ついにレンズ一体型でも4K動画が! DMC-FZ1000

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

第673回:ついにレンズ一体型でも4K動画が! DMC-FZ1000

実売8万円台、リーズナブルかつ“寄れる”4Kカメラ

まさかのネオ一眼で!

 レンズ一体型のコンパクトじゃないカメラの事を、「ネオ一眼」と呼ぶ。元々は2002年頃から富士フイルムが、レンズ一体型のビューファインダ付きカメラのことを「コンパクト・ネオ一眼」と総称したのが始まりのようである。

 ネオ一眼は2003年から2005年頃にかけて、高機能なデジカメとして人気を集めたが、市場ニーズがコンパクトデジカメとデジタル一眼に二極化していく過程で、次第に注目度が下がっていった。ただ、レンズを固定することで大幅に設計の自由度が上がることから、低価格ながら非常にとんがった性能を持つものが多く、根強い人気のある商品群である。

DMC-FZ1000

 そんなネオ一眼の中で、4Kが撮影できるモデルが登場した。パナソニック「DMC-FZ1000」(以下FZ1000)がそれである。FZシリーズと言えば、かつては一世を風靡したネオ一眼シリーズで、筆者もかつては取材用に2台ほど使っていた事があり、愛着のある型番だ。店頭予想価格は10万円弱だが、ネットの通販サイトでは8万5千円程度で売るところもあるようだ。

 ここのところコンシューマでは、月に1本ペースで4Kカメラが登場しているわけだが、パナソニックとしてはミラーレス一眼の「DMC-GH4」、ウェアラブルの「HX-A500」に続き、3台目の4Kカメラとなる。

 久々のネオ一眼、そして4K撮影はどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。さっそくテストしてみよう。

フル一眼並みの大型ボディ

 ネオ一眼と言えば、コンパクトデジカメよりは大きいがフルサイズ一眼より小さいといったところが落としどころだったように思うが、さすがに4Kが撮れるだけあって、FZ1000はかなり大きい。試しに編集部にあったミラーレス機、ソニーNEX-6、パナソニックGH3と比較してみたが、ボディ部に注目すれば、GH3とほぼ変わらないサイズであることがわかる。ちなみに4Kが撮れるGH4のボディサイズは、GH3と同じだ。

DMC-FZ1000
LUMIXとしてはかなり大型
左からソニーNEX-6、パナソニックGH3、FZ1000
ボディサイズはGH3並み

 レンズ鏡筒部も、沈胴ズームレンズであるせいか、かなり太い。業務クラスのビデオレンズ相当の太さがある。

 まず光学性能から見てみよう。レンズはパナソニックがライセンス製造するLEICA DC VARIO-ELMARITで、静止画では25~400mm、動画では37~592mmの光学16倍ズーム。超解像を使ったズーム領域も含めるとさらに2倍まで寄れるので、テレ端で静止画800mm、動画1,184mmとなる。ズーム途中で少し止まるものの、4Kでワイド端から32倍ズームまで連続でいけるというのは、驚異的だ。

光学16倍の沈胴式ズームレンズ
ワイド端テレ端超解像
動画
37mm

592mm

1,184mm
静止画
25mm

400mm

800mm
鏡筒部側面に切り換えスイッチ

 ただ見た目の割には重さはそれほどでもなく、バッテリーも込みで約831g。光学16倍の4Kレンズが付いてのトータル重量だと考えると、むしろ拍子抜けするほど軽い。

 鏡筒部にリングが1つあり、横のボタンでズームかフォーカスに切り換える。光学手ぶれ補正のON/OFFスイッチもある。

 撮像素子は総画素数2,090万画素、有効画素数2,010万画素の1.0型MOS。奇しくもソニーDSC-RX100 IIIと同サイズ、同画素数のセンサーであるが、あちらは4K撮影ができない。

ホールド感はいいが、動画記録ボタンの位置が背面から見えづらい

 右手のグリップ部にはかなり大きな突起があり、カメラとしても握りやすい。録画開始ボタンは上面にあり、後ろから覗いて自然に指がかかるポジションとは言えない。むしろGH4のように背面にあったほうが、動画撮影スタイルではわかりやすかった。

 背面のボタン配置はGH4にも似て、AFモード切り替えレバーなどを備えているが、十字キーの周囲にダイヤルがないので、バリアブルコントローラはやや少なくなる。液晶モニターは3.0型、92万画素 TFTでバリアングルだが、タッチスクリーンではない。ビューファインダは 0.39型、約236万画素の有機ELで、液晶モニターよりも高コントラストだ。

ボタン類はGHシリーズに近い
液晶はバリアングルだがタッチスクリーンではない

 側面にはRemote、マイクロHDMI、アナログ/デジタルAV出力端子があるが、AV端子は付属ケーブルでUSB接続も可能だ。反対側にはマイク入力端子があるのみ。底部はバッテリとSDカードスロットがある。

端子類は比較的シンプル
外部マイク入力もある
底部はバッテリーとSDカードスロット

 では動画撮影についてスペックをまとめておこう。撮影フォーマットとしてはAVCHDとMP4が選択できる。4K撮影はダイヤルモードを「クリエイティブ動画モード」に設定した時だけ、可能になる。4K撮影が可能なのはMP4のみだ。

【AVCHD】

モードサイズフレームレートビットレート
FHD/28M/60p1,920×1,08060p28Mbps
FHD/17M/60i1,920×1,08060i17Mbps
FHD/24M/30p1,920×1,08030p(60i)24Mbps
FHD/24M/24p1,920×1,08024p24Mbps

【MP4】

モードサイズフレームレートビットレート
4K/100M/30p3,840×2,16030p100Mbps
FHD/28M/60p1,920×1,08060p28Mbps
FHD/20M/30p1,920×1,08030p20Mbps
HD/10M/30p1,280×72030p10Mbps
VGA/4M/30p640×48030p4Mbps

 4K撮影時のフレームレートは、30pのみとなる。またGH4のようにDCIの4Kサイズ(4,096×2,160)には設定できず、3,840×2,160のみである。

 4K撮影時にはUHSスピードクラス3(U3)対応SDカード(UHS-I)が推奨されているが、45MB/sの書き込み速度を持つUHSスピードクラス1(U1)でも、撮影できるようだ。

軽快な4K撮影

 ではさっそく4Kで撮影してみよう。4Kは1モードしかないので、画質モードなどの選択の余地はない。

 解像感としては相当よくチューニングされており、アザミの細かい種や蝶の触覚など、細い線も綺麗に出ている。発色はやや強く高コントラストだがそのぶん印象もよく、コンシューマ機としては喜ばれる絵づくりだ。

細かい線まで完全に描画
発色もよく、好印象
4K撮影サンプル。EDIUS Pro 7で編集している。ダウンロード用のファイルはDivX ConverterにてHEVC 25Mbpsでエンコードしたものだ
sample.mkv(190MB)
※編集部注:「sample.mkv」の再生にはDivX HEVCプラグインが必要です。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 量子化ビット数は8bitなので、将来本格的な4K映像ではもうちょっと階調が拡がると思うが、現時点でこの価格なら、十分満足できるな画質だろう。ただ水面の描画では、多少ざわついた印象が残る。

 AFの応答速度は、GH4と同じ空間認識AFを採用したことで、狙ったところにスピーディにフォーカスが来る。ただこれは静止画撮影時にしか効かないので、動画撮影前にシャッター半押しして、いいところにAFを持ってくるという使い方がいいだろう。顔認識もきちんと動き、向かってくる人物も終始顔認識を外さない。

顔認識によるAFと手ぶれ補正(HD解像度にダウンコンバート)
af.mp4(47MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 液晶がタッチパネルではないため、追尾AFの場合は、任意の場所を指で指定することはできない。いったん構図を崩して追尾ターゲットをセンター枠内に捉えたのち、センターボタンで追尾開始という操作になる。多少面倒だが、液晶を指で触らないので汚れないし、UIとしても無理がない。

 手ぶれ補正のテストでは、動画でも5軸補正を行なうため、かなり優れた性能を発揮する。ただ三脚を使う場合は意識してO.I.SをOFFにしないと、気がつかないレベルでゆっくり動いている。おそらく違和感がないようにセンター位置に戻っているのだろう。普通に再生していては気づかないかもしれないが、早送りなどすると動いているのがわかる。

 超解像によるテレ端の2倍ズーム領域は、かなり綺麗だ。いわゆるアップコン特有のザラツキや不自然な輪郭のズレもなく、ナチュラルに使える。サンプル動画内ではモデルさんの1カット目が光学ズーム領域、2カット目が超解像のテレ端だ。編集で繋がっても違和感はない。

 連続ズームは、光学から超解像領域になるときに一瞬止まる。一気に32倍までは無理だが、4Kの中ではかなり寄れるカメラに仕上がっている。ただ動画の連続撮影時間は、これまでのデジカメ同様30分未満に制限されている。

これだけの領域がズーム可能(HD解像度にダウンコンバート)
zoom.mp4(22MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 フォトスタイルはGH4と同様8タイプ搭載されており、それぞれにコントラスト、シャープネス、NR、彩度が変更できる。設定変更したスタイルは、カスタム設定として1つだけプリセットできる。

動画関連機能もハイレベル

 続いて4K撮影以外の撮影機能をテストしてみよう。最近ニュースなどで取り上げられているのが「タイムラプス」だ。facebookのグループを中心に全国的な盛り上がりを見せているが、FZ1000にもこの機能がある。

 ダイヤルをカスタム動画モード以外に設定すると静止画のメニューが出てくるが、その中に「インターバル/コマ撮り撮影」という項目がある。要するに静止画を自動で撮っていく機能だ。ボディ左肩にあるドライブモードダイヤルで、「インターバル/コマ撮り撮影」にセットしてシャッターボタンを押すと、セットした間隔で撮影が開始されるという操作体系である。

開始時刻が設定できるインターバル撮影機能

 インターバル撮影では、撮影間隔と撮影枚数が決められるほか、撮影の開始時刻を設定できる。また撮影終了の予定時刻も表示される。時間指定ができると、寝る前にカメラだけセットしておいて夜明けを撮るといったこともできるようになり、いわゆる「仕掛けといて自分は休む」ことがより簡単にできるようになる。

 撮影されるのは4Kオーバー(5,472×3,648)の連番の静止画なので、最終的には動画編集アプリなどを使って動画に仕上げる必要があるが、それでも4Kのタイムラプスが簡単にできるという点では、メリットがある。またカメラ内でも簡易的な動画プレビューは見られるので、現場で仕上がりのイメージを確認する事もできる。

 実際に撮影してみたが、途中で大きく露出が動いてしまう部分がある。タイムラプスの場合、現場の明るさに対してリニアに露出が動いてしまうと、1コマだけ明るいとか暗いといった絵が差し込まれてしまうため、見辛い動画になってしまう。どれぐらい露出に追従させるか、あるいはどれぐらい追従させないかは、タイムラプスで重要なテクニックになるわけだが、そこが選べないのは残念だ。

インターバル撮影機能で製作した4Kタイムラプス動画
laps.mkv(40MB)
※編集部注:「laps.mkv」の再生にはDivX HEVCプラグインが必要です。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 「コマ撮りアニメ」も似たような機能ではあるが、これは1コマずつの撮影のタイミングを自分で決められる。それなら単に写真を撮るのと変わらないじゃないかと思われるかもしれないが、仕上がりを動画で確認できる点で優れている。まさにクレイアニメのような手動撮影に便利な機能だ。

 カスタム動画モードでは、ハイスピード撮影も可能だ。フルHD解像度でビットレートは20Mbps程度、120fpsの映像が撮影できる。再生時には30fpsになるので、1/4倍速スローとなる。

コマ撮りアニメ設定画面
HD解像度のハイスピード撮影も可能
ハイスピード撮影による動画
slow.mp4(41MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 今回は撮影用LEDライトも2灯焚いているのでかなり明るいはずだが、それでもハイスピード特有のノイズは出る。またフォーカスや露出は撮影中に自動で追従しなくなるので、撮影前に動く範囲などをよくテストしておいた方がいいだろう。

 本体機能としては、4K撮影した動画から静止画を切り出す機能もある。一発のシャッターチャンスでは撮れないような写真も、動画で撮っておけば、というのは昔からある発想だが、かつては所詮HDビデオなので、切り出したところでHD解像度でしかなかった。だが4K動画となれば、切り出しても800万画素相当の静止画になるので、L版印刷ぐらいなら十分耐えられる。もちろんガンマは多少ビデオっぽいが、ベタな発想がようやく現実的になった瞬間とも言えるだろう。

4K動画から本体の切り出し機能を使って切り出した静止画
同じ位置で撮影した静止画

総論

 HX-A500やGoPro Hero3のようなアクションカムなら、比較的低価格で4K動画が撮影できる。だがそれはあくまでもアクションカムとしての画質であり使い勝手の話で、マトモな動画クオリティで、ということになれば、最安はソニー「FDR-AX100」だった。実売17万円程度である。

 そこに対して実売で半額程度の、“ちゃんと撮れる4Kカメラ”が出てきたインパクトは、小さくない。もちろんレンズが変えられないゆえの制約はそれなりに出てくるが、それは元々コンシューマのビデオカメラはそういうものであったし、実際に撮影してみてもクオリティとしては十分なレベルだ。特に単体レンズで超解像領域まで含めたズーム領域の広さは、4Kカメラの中でトップである。

 多少ボディが大きいのは我慢してもらうところだが、逆にこのサイズなら、見た目のインパクトはフルサイズ一眼に引けを取らない。業務で使う静止画のカメラとしてもアリだろう。見た目と違って軽いというのも、女性にはメリットになる。

 このところパナソニックは、4Kに関してかなりアグレッシブに攻めてきている。コンシューマで勝つことがゴールという同社の戦略の巧みさを感じさせる。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。