PS3で25日配信の4K/3Dビジュアル誌「IQUEEN」を体験
-ゲーム感覚で軽快な動作、動画もシームレスに表示
「IQUEEN Vol.1 長澤まさみ」の画面 |
8月25日よりPlayStation 3向け配信が開始される、4K/3D静止画などのビジュアル誌「PLUP SERIES」(プルアップ シリーズ)第1弾の「IQUEEN(アイクイーン) Vol.1 長澤まさみ」。リリースを記念して、この超高解像度コンテンツの体験会がプレス向けに開催。評論家の麻倉怜士を招いたトークセッションも行なわれた。
「IQUEEN Vol.1 長澤まさみ」は、フルハイビジョンの4倍となる4,096×2,160ドット以上の超高解像度(4K~6K)の静止画を楽しめるコンテンツ。PlayStation 3の高速画像処理技術「PlayView」を活用、高解像度の画像もストレスなく楽しめることが特徴。PSNのGame Storeで配信される。配信価格は2,100円。ダウンロード容量は485MB。映像制作/プロデュース事業を手がけるルーセント・ピクチャーズエンタテインメントが制作している。
一部コンテンツは3Dテレビと組み合わせることで3D立体視も可能。なお、既に8月9日より雑誌版(A4判型全96ページ)が2,625円で発売されているが、PS3配信版には雑誌版の画像に加え、新たに3D対応の写真が31点(雑誌版に見開きで掲載すると62点ページ分)が収録されている。
PS3配信版の収録画像枚数は2Dが48点、3Dが31点。今後のラインナップとしては、「SP 警視庁警備部警護課第四係」や「龍馬伝」などで知られる真木よう子が出演する「IQUEEN Vol.2」が10月に配信される。
「IQUEEN」のほかにも、新鋭の女優らを起用したシリーズ「aBUTTON」(エーボタン)を9月に創刊する。映画「告白」に出演した橋本愛、「仮面ライダーオーズ/000」のヒロインを務める高田里穂、東京ガスのCMなどで活躍する岡野真也の「aBUTTON Vol.1」が4K/2Dの静止画(24点)で配信され、価格は2,100円。雑誌版は2,625円で8月31日発売。静止画のほかに1,280×720ドットのショート動画(MP4)も23本(総収録時間約13分)収録する。
また、10月には月9ドラマ「大切なことはすべて君が教えてくれた」に出演した広瀬アリス、映画の「アバター」(山田悠介原作)、「GANTZ」などの水沢奈子が出演する「aBUTTON Vol.2」の配信が決定している。価格は同じく2,100円で、雑誌版は2,625円。
「IQUEEN Vol.1 長澤まさみ」の目次ページ | シームレスな拡大/縮小が可能 |
高速画像処理技術「PlayView」を採用 | 「IQUEEN」第2弾は真木ようこを起用 | 「aBUTTON」の第2弾 |
■ ゲーム感覚で、シームレスに静止画や動画を視聴
40型BRAVIAとPS3で視聴した |
デモ機として使われていたBRAVIA KDL-40LX900とPS3で「IQUEEN Vol.1 長澤まさみ」と「aBUTTON Vol.1」を体験した。
どちらも、トップページが設けられている以外は、写真を順送りにページをめくるシンプルなレイアウトとなっており、R1/L1ボタンで左右に画像の送り/戻しが行なえる。さらに、アナログスティック(R3)を上下に動かすと、画像にズームインしながら次の画像に移るという前後(Z軸)方向の遷移も可能なところがユニークだ。高解像度コンテンツながらページの遷移はスムーズで、ズームイン/アウトも無段階で滑らかに行なえた。
「IQUEEN Vol.1 長澤まさみ」には3D静止画も含まれており、PSボタンによるメニュー呼び出しで、2D/3Dのコンテンツを切り替えられる。画質面では、4K以上の解像度により、肌の質感まで精細に表現。3Dの場合は特に、写真のボケと3Dがマッチすることで、静止画を見ている感覚を超えるような体験もできた。撮影時のカメラリグは、ルーセント・ピクチャーズが自社で作ったとのこと。一部でクロストークが気になる画像もあったが、静止画の3D撮影技術については同社も「発展途上」と認めており、今後の改善にも期待したい。
「aBUTTON」には4K静止画のほかに1,280×720ドットの動画も収録。静止画をR1ボタンで順に送っていくと、途中で少し画角の小さい画像があり、そこで○ボタンを押すと、動画が再生。4K静止画を見た後だと画質の低さがやや気になるが、現時点では静止画がメイン、動画はおまけ的な位置付けのようだ。アナログスティックの前後でも同様にページ送りが可能となっている。動画はランダムで挿入されているので、一覧で表示できれば探しやすいとも思えたが、制作の意図としては「動画がどこにあるのか探してほしい」とのこと。本のページをめくるような感覚で、時折現れる動画を挿絵のように楽しむのが、この作品の視聴スタイルといえそうだ。
「IQUEEN Vol.1 長澤まさみ」の一部。ページをサクサクと移動 |
「aBUTTON Vol.1」の一部。静止画、動画がスムーズに切り替わる |
■ ゲームとの連動などインタラクティブ性の向上も
“画質の鬼”麻倉氏を交えて、トークセッションが行なわれた |
体験会では、デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏がゲストで登場。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の縣秀征氏、ルーセント・ピクチャーズの森卓也氏と榎戸理人氏の4人でトークセッションが行なわれた。
PlayStation 3で「PlayView」を開発した理由についてはSCEの縣秀征氏が説明。「もともとは大きな写真をいかにPlayStationで簡単に読み込んでいくかということを目的に開発された。この技術を活かすために、ゲームの攻略本の形がいいのでは、など様々な意見もあった。そのなかで『写真を見るのが一番いいのでは』と思い、広い意味での“デジタル出版”に応用できないかと考えてきた。デジタル写真の世界はどんどん解像度が上がっているが、そのデータを無駄なく、テレビの解像度に依らず、大きなデータを十分に楽しめることを目指した」と述べた。
苦労した点については2つあったとし、「一つはインタラクティブ性を取るために、どこまでスムーズに動かせるかということ。PlayStationの世界では、ボタンを押したら動き、離すと止まらなければならない。もう一つはコンテンツを作るためのオーサリングツール。これらについて、いかにニーズに合ったものを作るかということ」だという。
4K & 3Dという高画質デジタルマガジン創刊に至ったきっかけについて、ルーセント・ピクチャーズ取締役の森卓也氏は「2009年に早川書房『SFマガジン』の50周年企画のイラスト集を担当し、そこで、イラストレーター25名が描き下ろしたSFイラストを3Dに変換して、上映するイベントを行なった。大画面で写真やイラストを楽しむというユーザー体験は、新たな市場を生み出す可能性があると思い、すぐに事業化を提案した」と述べた。
同社はアニメのプロデュース事業が中心とのことだが、女性の写真集というコンテンツを採用した理由については「PS3ユーザーとの親和性などを考慮し、まずは全国区の知名度を持つ方々が登場するコンテンツから始める」とした。
3Dカメラリグ/ソフトウェア開発に関わったステレオグラファーの榎戸氏は、3D静止画撮影について「難しいとこが多々あった」という。具体的には、「2Dだと寄ったり引いたりして撮れるが、3Dだと“距離”も重要となり、立体感とバランスを取る必要があることが、2Dと比べて違う」とのこと。4Kという高解像度で表現できる点については、「今まで見えなかったものが鮮明に見える、ということを考えると、物の持っている良さをちゃんと把握する意味でも重要」とした。
縣秀征氏 | 森卓也氏 | 榎戸理人氏 |
麻倉怜士氏 |
麻倉氏は、評論家の意見として「これまで3Dというと映画など動画だが、静止画で見るという意味は大きい。非常にインタラクティブで、自分との対話性がある。しかもそれが大画面、高解像度で、さらに3Dとなってくると、次元を超えたような臨場感がある」と評価。
加えて「元のデータはPS3では4K/6Kで、テレビでは2Kにダウンコンバートすることになるが、2Kで見るものを2Kで撮る場合に比べて、画質向上効果がものすごく高く、4Kだとズームしても解像度がいい。また、3Dを見てびっくりしたのは、長澤さんの肌の質感が素晴らしいこと。2つの目で違う角度から見ることにより、質感も立体的に感じられた」と語った。
PlayViewの今後について縣氏は「もっと多彩な表現ができるようにブラッシュアップする。PSならではとしてインタラクティブ性、表現を高め、ゲームのなかから、コンテンツを行ったり来たりできるような機能アップを考えている」と述べた。
また、「IQUEEN」などの今後の展開について森氏は「Vol.3についても、ご期待いただける大物女優、クリエイターが参加する予定。秋口に予定している(IQUEEN/aBUTTONに続く)第3、4シリーズは、新潮社『アクトレス』編集長を務めた宮本和英氏が担当し、セクシャルなタレントが登場する」と明かした。
ここで麻倉氏がSCEへの要望として「これからテレビは確実に2Kから4Kに変わって、10年後には8Kになる。4Kテレビが出てくると、4Kを4Kで観たい。PlayStationのインターフェイスも4Kに対応してほしい。もう一つ、いま3Dの奥行きは1方向だが、後ろから観たり、横から観たりというように、立体的に観られるようになってほしい」と話すと、縣氏は「技術的にはいろんなことを検討しているので、ぜひとも前向きに考えたい」と答えた。
(2011年 8月 24日)
[AV Watch編集部 中林暁]