トピック

シアターバーでも2ch音質が大事? ピュアの思想でTVや音楽もキッチリ再生、ヤマハYSP-2500を聴く

 ホームシアターを楽しみたいけれど巨大なAVアンプや沢山のスピーカーを購入するのはちょっと……という人にマッチするのが、テレビの前などに手軽に設置できる“シアターバー型”スピーカーだ。薄型で横長、目立たないデザインであるため、沢山のスピーカーを部屋に並ぶようなオオゴトにならず、スマートに音のグレードアップが図れる。

シアターバー型スピーカー、YSP-2500の設置イメージ

 ただこのシアターバー、“映画をサラウンドで迫力満点に楽しむスピーカー”という印象があるが、なにも映画を見るためだけの製品ではない。むしろ、実際の生活を考えると、映画を再生している時間よりも、テレビ番組などの音を再生している時間の方が圧倒的に長いはずだ。つまり、映画に限らず、“テレビにまつわるサウンドを全体的にグレードアップさせる機器”と考えた方が良い。

 そう考えると、シアターバーでよく注目される「○○サラウンド」などの、シアター向け機能はさておき、“そもそも普通のスピーカーとしての音質が大事なのでは?”と思えてくる。例えば、音楽番組を2chステレオで再生した時に、オーディオ用スピーカーのようなしっかりとした音が出せるのかどうか、つまり“スピーカーとしての基本能力が高いか否か”という話だ。

 そういう視点で、シアターバーの新製品をチェックしてみたい。取り上げるのは、シアターバーの先駆者と言っても良い、ヤマハのYSPシリーズの新モデル「YSP-2500」(オープンプライス/93,000円)だ。

小さなユニットが少し前に出るだけで音は変わる

 ヤマハと言えば、長年シアターバーを手掛けているメーカーだ。デジタル・サウンド・プロジェクターのYSPシリーズと言えば、AV Watch読者ならば「ビームスピーカー」をすぐに連想するだろう。小さなスピーカーを横に沢山並べ、ビーム状の音を放出、それを壁などに反射させる事で、背後にスピーカーを置いていなくても、バーチャルではない“リアル”なサラウンドを再生できるというシステムだ。

小口径のビームスピーカー
デジタル・サウンド・プロジェクターのビームスピーカーイメージ

 だが、今回はウリのビームスピーカーによるサラウンドは後回しにして、基本的なスピーカーとしての音質に注目したい。というのも、YSP-2500は、その点にこだわった製品でもあるためだ。中身を詳しく知るために、前モデルとなる2010年発売の「YSP-2200」からの進化点を軸に見ていこう。お話を伺ったのは、ヤマハ株式会社 AV開発統括部 第2開発部 TVPグループの沼越健介マネジャーと、AV機器事業部 第2開発部 TVPグループ 開発担当技師の間渕剛弘氏だ。

 その前に、YSP-2500の概要をおさらいしよう。バー型のセンターユニットと別筐体のサブウーファで構成されている。センターユニットは51mmと薄型で、テレビの前に設置できる。スタンドの低いテレビにも対応するため、センターユニットの脚部の高さは22〜35mmで調整でき、脚部自体を取り外してしまう事も可能だ。

上がYSP-2500、下が2200のセンターユニット。サイズはほとんど同じだ
脚部を取り外して設置する事も可能だ

 センターユニットには、サラウンドビームを放出する2.8cm径ユニットが16個搭載されている。ビーム状の音を壁などに反射させ、そこにスピーカーが無くても、背後や横からの音を再現できる。HDMI×3入力も備え、ドルビーTrueHDやDTS-HD MasterAudioなどのHDオーディオにも対応。3D映像や4K60p映像のパススルーにも対応している(HDCP 2.2には非対応)。

上がYSP-2500、下が2200。ビームスピーカーの数や口径は同じであるのがわかる

 YSP-2200と2500のセンターユニットを重ねてみると、サイズ的にはほとんど違いがない。ズラッと並んだビームスピーカーの口径や個数、ユニット間のピッチも同じだ。テレビの前に設置するという制約上、画面を隠すような大きさにはできないので当然とも言えるだろう。しかし、パッと見ではわからない違いがある。

ヤマハ株式会社 AV機器事業部 第2開発部 TVPグループ 開発担当技師の間渕剛弘氏

 「サイズ的な制約がある中で、いかに音を良くするかを考え、YSP-2500では、ビームスピーカーの配置位置にこだわりました。ほんの少しですが、ユニットが2200よりも前に出ています。ユニットの口径が28mmですので、その1割強の長さ、前に出ています。数字的には小さな違いですが、音には大きな影響があります。内部機構の担当者と音質の担当者の間で“もっと前に出せないか?”と、1mm単位のせめぎ合いを行なった末に、現在のポジションになっています」(間渕氏)。

 ぶっちゃけ、小さなユニットが少し前に出ただけで、音がそんなに変化するとはにわかに信じられない。しかし、沼越氏は「音の広がり」が大きく変化するという。

 「ユニットから出た音がどのように広がっていくかを考えた場合、ユニットが引っ込んでいると、筐体がまるで家の“ひさし”のようになり、広がった音がそこにあたり、回折が起こってしまいます。これを改善する事で、上下方向の音の広がりがとても良くなるのです。これは2ch再生の時だけでなく、サラウンドのビームを放出している時にも効いてきます。バッフルでの反射が減り、余分な音がでなくなるため、音圧のピークがしっかり出るようになります」。

YSP-2500の内部構造。ビームスピーカーやアンプ基板などが入っている

 ビームスピーカーをドライブするのはデジタルアンプだ。このデジタルアンプへ供給する電源回路を見直し、電源用コンデンサが、特性の異なるものに変更された。デジタルアンプは、スイッチングした時の電流の流れ方が激しいが、それに追従できるコンデンサを選ぶ事で、電源を安定化。それが音質改善に繋がるという。

 さらに大きな違いが、“アンプの内蔵場所”だ。実は、YSP-2200のサブウーファはパッシブで、センターユニットの中に、サブウーファ用のアンプが入っていた。しかし、YSP-2500ではサブウーファの中にアンプや電源を入れてアクティブ化している。

 「センターユニットからサブウーファ用のアンプが外に出た事で、センターユニット自体の電源の余裕度がアップしました。アンプは温度が上昇すると歪が増えてしまいますが、発熱も大幅に抑えられています」(間渕氏)。

 さらに間渕氏と沼越氏は、センターユニットの天板にも注目して欲しいと言う。よく見ると、YSP-2200の天板は、中央で切れ目が入っているのに対し、YSP-2500では長い一枚の板で構成されている。YSP-2200の切れ目は、てっきり“そういうデザイン”なのだろうと思っていたが、間渕氏は「実はそうではない」と笑う。

YSP-2200の天板。中央に切れ目があり、天板が2つに分かれているのがわかる
YSP-2500の天板は綺麗な一枚板だ

 「ヤマハはAVアンプなどでもアルミパネルを使っていますが、YSP-3300の時からは、シアターバーで使えるような長くても一体板で作製できる新規サプライヤーを開拓し、YSP-2500では1枚板で作れるようになった……というわけです」。

 当然ながら、真ん中で別れた2枚の板よりも、1枚の板の方が剛性が高い。それがセンターユニットの筐体全体にも影響し、剛性が高まる。地味なポイントだが、音質への影響は大きいそうだ。

アンプをどこに入れるか、どこに配置するか?

 サブウーファも大きく変化した。最大のポイントは、前述のようにパッシブからアクティブサブになった事だが、サブウーファ内はスペースに余裕があるため、サブウーファ用アンプがデジタルアンプから、より高音質なアナログアンプに変更されている。だが、話はそれだけではないと間渕氏は言う。

左がYSP-2500のサブウーファ、右がYSP-2200のサブウーファ

 「単純にアンプをサブウーファの中に入れるのではなく、アンプ基板の配置場所にもこだわっています。通常はコストを抑えるために、1つのユニットとして、電源トランスの近くにアンプの基板を配置します。しかし、試作機を試聴したところ、低音が最後まで下に伸びきらない。そこで、電源とアンプを離して設置したところ、電源まわりの温度が下がり、音にも余裕が生まれました」。

 「低音が素直に下まで伸びるようになり、頭打ち感が無くなりました。リニアな電源トランスの近くに、リニアなアンプを配置すれば、温度はどうしても上昇してしまいます。コストは上がってしまいますが、音のためには離すしかないだろうと決断しました」(沼越氏)。

2500と2200のサブウーファを指で叩くと、響き方がまったく違う

 サブウーファのエンクロージャ自体も変更されている。板厚を増やし、内部に補強を施す事で、剛性を高めている。試しに指で叩いてみると、2200は「ゴンゴン」という感じに音が響くのだが、2500は「コツコツ」とまったく響かず、とにかく硬く、鳴きがない。

 こうした進化ポイントを聞いていると感じるのは、シアターバー型であっても、剛性の向上やユニット配置など、音質アップのキモとなるポイントは、普通のピュアオーディオ用スピーカーと変わらないのだなという事だ。沼越氏によれば、音のチューニング工程も、ピュアオーディオスピーカーのそれと何も変わらないと言う。

ヤマハ株式会社 AV開発統括部 第2開発部 TVPグループの沼越健介マネジャー

 「シアターバーですと、映画を見ながら音をチェックしていくイメージを抱かれるかもしれませんが、基本的な音質チェックは映画ではなく、2chの音楽で行ないます。そこでスピーカーとして基本的な音作りを行なった上で、サラウンドへと進む……というイメージです。ピュアオーディオ機器や、AVアンプの開発と、姿勢は同じです。音質の担当者は本当にこだわりが強く、“そこまでやるのか”というくらい丁寧な仕事をします。シアターバーだからと言って、それが変わる事はありません」。

 「シアターバーの場合、売り場で目立つのは、迫力のある音です。しかし、ヤマハは楽器にも携わるメーカーですので、バランスの良い音、音楽性の豊かな音、聴き疲れしない音を基本的な思想としていますので、そういった事はしません。例えば、低域の60Hz付近を持ち上げてしまえば、簡単に迫力のある音にはなるのです(笑)。しかし、やはり全体のバランスを見た時に、それではおかしなことになってしまいます」(間渕氏)。

2ch/サラウンド共に、歴然とした違い

 では実際に聴き比べてみよう。まずは基本ということで、2chソース、女性ジャズボーカルのメロディ・ガルドーを再生する。

 豊富なアコースティックベースが入った楽曲だが、YSP-2200で再生すると、ベースの膨らみが大きく、モコモコした音で、迫力はあるものの明瞭さが今ひとつ。ヴォーカルと各楽器の音像はくっつき気味で、音色も、全体的に硬い響きに染まっており、声が楽器の質感の違いはわかりにくい。

 YSP-2500に切り替えると、思わず「えっ」と言いたくなるほど違う。後継モデルで“音質がちょっと良くなりました”というレベルではなく、何もかも次元が違う。まず気がつくのは音の上下方向の広がりだ。YSP-2200は、音場がテレビの下部、センターユニットが置いてある付近にもモワモワとわだかまっていたが、YSP-2500は上下にグワッと世界が広がり、ヴォーカルがテレビ画面の中央から聴こえ、ベースの低域がしっかりと足元まで下がる。

 簡単に言えば、YSP-2200はいかにもサウンドバーという音像だったが、YSP-2500は普通のブックシェルフスピーカーなどを聴いているような感覚の音場が展開する。ビームスピーカーをわずかに前方に出した事で音の高さが出るようになったという事だが、こんなにも違うものかと驚かされる。

 また、2200で感じた、恐らく筐体の振動によるものであろう付帯音が綺麗に消えている。2500では音像の分離が良く、ヴォーカルの人の声、ベースの木の音など、それぞれの音色もキチンと描きわけられている。音場が拡大し、分離が良くなった事で、見通しが改善し、開放的な気分で音楽が楽しめる。

 さらに面白いのが、“サブウーファの位置の感じ方”だ。一般的に、低域を再生するサブウーファは指向性が広いため、フロントスピーカーなどと比べて置き場所の自由度は高い。しかし、2200は、聴きながら目を閉じると「あー、サブウーファがテレビの右に置いてあるなぁ」とハッキリわかるほど低音が右に寄って聴こえる。恐らく純粋な低音だけでなく、筐体の響きなどの中低音もサブウーファから出ているためだろう。

 しかし、2500は目を閉じるとサブウーファが右にある事がわからなくなり、テレビ画面方向から、綺麗に上から下までレンジの広い音がキッチリ揃って押し寄せてくる。

 このような無数の違いが積み重なっているため、2200と2500を切り替えると、何がどう違うというレベルではなく「まったく違う音」と感じる。これはマニアでなくても、誰もが瞬時にわかるレベルの違いだ。

実際に音を聴き比べてみる

 続いでサラウンドのミュージックビデオを再生。サラウンドになると、ビームスピーカーで音が広がるため、2200と2500の音場的な違いは少なくなるのでは……と予想しながら聴いていたが、良い意味で予想を裏切られる。

 確かに2200は2ch再生時よりも、音場がフワッと広がり、音に包み込まれる感覚が得られるが、真横や背後から聴こえる音の明瞭度が2500の方が圧倒的にクリア。2500のサラウンドは、コーラスの声が「斜め右後ろのココに口がある」と指させるシャープさだが、2200は「ボワッと右後ろの方」としかわからない。そのため、サラウンドのリアルさというか、生々しさが2500の方が格段に上だ。

 さらに映画を鑑賞。「アナと雪の女王」から、ハンス王子と兵士が、氷の怪物マシュマロウと戦うシーン。マシュマロウの地鳴りのような足音の低音の沈み込みが、2200と2500ではまったく違う。2500は深く、しっかりと下まで伸びているが、2200の低音は腰が無く、伸びきらない。低域の再生周波数は同じという事だが、とてもそうとは思えない。これはアンプの性能が向上し、低域のキレが良くなったためなのだろう。

 放たれたボウガンが、エルザの氷に防御される「ピュン」とか「キュン」という鋭い音も、2500はトランジェント良く、明瞭でハッとする。2200を再生してから2500という順序で比較しているのだが、2500に切り替えて初めて、バトルシーンの背後に薄く「ゴーッ」という風の音が入っている事に気がついた。

Bluetooth対応で操作性もアップ

株式会社ヤマハミュージックジャパン AV/流通営業本部 企画室 プロダクトマネジャーの臼井 彩氏

 音ばかりに注目しているが、機能面も強化されている。大きいのはBluetooth対応だろう。スマートフォンやタブレットから、ワイヤレスで手軽に音楽が再生できるようになったのは、2chの音質がアップした事とセットで魅力アップに繋がっている。圧縮音楽を高音質再生する「ミュージック・エンハンサー」も搭載され、Bluetooth対応端末と電源の連動ができる「Bluetoothスタンバイモード」も利用できる。

 また、コントロール用アプリ「HOME THEATER CONTROLLER」もiOS/Android向けに無償提供されている。シアター系の製品は機能が豊富なので使いこなすのが難しく感じるものだが、アプリからシネマDSPの選択や入力切替、音質調整などが直感的にできるのは、AV機器マニアだけでなく、初めてこの手の製品を買う人にも心強い。株式会社ヤマハミュージックジャパン AV/流通営業本部 企画室 プロダクトマネジャーの臼井 彩氏によれば、アプリの利用者は多く、細かな設定をグラフィックで確認できる点が好評だという。

 機能の選択だけでなく、アプリからサブウーファのボリュームを細かく設定するといった事も可能だ。セリフやナレーションの音量を大きくして聴き取りやすくする「クリアボイス」などは、映画以外を楽しむ時にも活用出来る機能だ。

Bluetoothを使い、アプリからの制御にも対応する

基本的な音質の強化で活用に幅が出る

 発売から約4年が経過しているYSP-2200と比較し、音質が向上しているのは当たり前と言えば当たり前の話しだが、後継機種と言うよりも、ほとんど別物と言っていいほど高音質化している。聴き比べを体験すると、価格差以上の音質差はあると感じる。たまに使うものなら話しは別かもしれないが、毎日使うテレビ用スピーカーでもあると考えると、「2500の音を毎日聴ける方がいいなぁ」と思う。

 スピーカーとしての実力がアップすると、2chだろうが、音楽だろうが、アナウンサーの声だろうが、映画だろうが、全ての音のクオリティがアップする。これも当たり前の話しだが、実際にそれを体験してみると「こんなにも違うものか」と驚かされる。

 もちろんYSP-2200でも、チープな薄型テレビ内蔵スピーカーからのステップアップとしては、迫力向上などの面で大きな違いはある。しかし、YSP-2500はそこから2ステップくらい飛び越えた音に進化しており、テレビの音楽番組も、ピュアオーディオ用スピーカーで“音楽鑑賞”しているリッチな気分になる。テレビ番組が楽しくなるかもしれない。

 また、“テレビスピーカーはテレビを見ている時しか使わない”という固定概念から離れ、Bluetooth接続したスマホからの音楽を再生したり、radiko.jpでラジオを楽しむといった、新しいスピーカーの活用を実践したくなるだろう。そういった意味で、シアターバーの基本的な音質アップには、スピーカーそのものの利用シーンを拡大させるパワーも秘めていると言えるだろう。

 (協力:ヤマハ)

(山崎健太郎)