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ここまで薄型化して音はどうなる!? ビーム+天面SWのヤマハ新サウンドバーを聴く

 音がいまひとつな薄型テレビのサウンドを、手軽にパワーアップしてくれるサウンドバー。巨大なAVアンプも沢山のスピーカーも不要で、横長のスピーカーをテレビの前に設置するだけでOK……なのだが、実はこのサウンドバーに関して、悩ましい問題が発生している。それは“テレビスタンドの低背化”、つまりスタンドが低くなっている事だ。

ヤマハの新サウンドバー、「YSP-1600」

 例えば下の写真は、ソニーの4Kテレビ「KJ-75X9400C」。両サイドのスタンドは非常に低く、テレビと下のテレビ台の隙間は僅かだ。この低背化は、ソニー以外のメーカーも含めたデザイントレンドになっているが、困るのが前述のサウンドバー。画面を隠すわけにはいかないので、テレビスタンドが短くなればなるほど、サウンドバーも薄くならなければならないのだ。

ソニーの4Kテレビ「KJ-75X9400C」

 そんな“低背”時代のテレビに対応するため、薄型化を追求。サブウーファを天面に取り付けるという、大胆なアイデアを採用したサウンドバーが登場した。ヤマハが9月上旬から発売している「YSP-1600」だ。

 単に薄型なだけでなく、新たなネットワーク再生機能「MusicCast」に対応するなど、見どころの多いモデルだ。価格はオープンプライス、実売は6万円前後。

従来モデルから大幅に薄型化した理由

 「YSP-1600」は、単純に薄型で横長なスピーカーではなく、「デジタル・サウンド・プロジェクター」と呼ばれるカテゴリの製品だ。AV Watch読者にはもうお馴染みだと思うが、小さなスピーカーを前面に沢山配置し、ビーム状の音を放出。それを壁などに反射させる事で、一体型のサウンドバーながら“リアルな”サラウンド再生ができるのが特徴だ。

YSP-1600
前面のアレーユニットからビーム状の音を放射しているイメージ
このように音を反射させて背後などから音が聴こえるようにしている

 今回紹介する「YSP-1600」は、このデジタル・サウンド・プロジェクター「YSPシリーズ」のエントリーモデル。2013年に発売された「YSP-1400」の後継モデルとなる。

 サイズを比較すると、YSP-1400は1,000×133×96mm(幅×奥行き×高さ)、新モデルYSP-1600は1,000×130×65mm(同)と、高さが96mmから65mmへと、大幅に薄型化した。

上に置いてあるのが新モデル「YSP-1600」、下が従来モデルの「YSP-1400」だ

 ヤマハミュージックジャパン AV・流通営業本部 企画室の佐藤圭プロダクトマネジャーは、「YSP-1400が登場した当時、サウンドバーは“テレビのスタンドをまたぐ”というスタイルでした。しかし、テレビのデザインが変化していく中で、サウンドバーもそのスタイルを変えていかねばなりません。いかにしてより薄型化するかという点を追求しました」と語る。

ヤマハミュージックジャパン AV・流通営業本部 企画室の佐藤圭プロダクトマネジャー

 YSP-1400では、限られたスペースを有効活用するため、サブウーファをスピーカーの脚部に内蔵していた。ユニークな構造だったが、テレビスタンドがさらに低くなった事で、そもそも“スタンドをまたぐ”というスタイルでは薄型化に限界があると判断。この脚部を無くす事になったという。

従来モデル「YSP-1400」は、脚部にサブウーファを内蔵していた
天面にサブウーファ

 ではどこにサブウーファを配置するのか。答えは天面だ。実際に上から見てみると、左右の端にメッシュがあり、内部にユニットが配置されている。ここから低音が上に向かって放出されるわけだ。

 しかし、テレビを見ている人は当然ながらテレビの上ではなく、前にいる。そこでYSP-1600は、若干前に傾斜しているという。正面から見るとわからないが、確かに横から見ると前に向かってわずかに傾斜している。これにより、低音をユーザーに向けて放出できるというわけだ。

横から見ると、前に向かってやや傾斜しているのがわかる

 「脚部がなくなり、どこにサブウーファを持っていくのかという解決策として天面に配置しましたが、結果的に一体型スピーカーであるサウンドバーながら、音が豊かに広がるという効果が得られました」(佐藤氏)。

 ユニットのサイズはサブウーファが8.5cm径×2。前面のアレイスピーカーは、2.8cm径のフルレンジを8個並べている。アンプの最大出力は2W×8、30W×2だ。佐藤氏によれば、ウーファユニットはこの製品のために新規設計したもの。音質コンデンサやコイルにも厳選したパーツを使い、「中低域の密度感もアップさせた」という。

YSP-1600の設置イメージ

 テレビやBlu-rayプレーヤーなどとの接続にHDMIが利用できるのも新モデルの特徴。ARC(オーディオリターンチャンネル)にも対応し、4K/60p/HDCP 2.2の映像もパススルーできる。デコーダはドルビーデジタル/DTS/AACなどで、HDオーディオには非対応。

 既にお馴染みの機能だが、使い勝手の面ではHDMI CECに対応しているので、テレビのリモコンからサウンドバーの基本的な操作ができるのが便利。電源ON/OFFもテレビやレコーダなどと連動できる。いちいち電源を入れ、スピーカーのリモコンを探して……とやらなくて済む、良い意味で“存在を意識せずに使える”ようになっているわけだ。

 HDMI以外に光デジタル、ステレオミニのアナログ音声入力も搭載。ポータブルオーディオプレーヤーなどとも連携できる。

HDMI入力を新たに装備。上部に見える白いラインは、テレビのリモコン受光部に信号を再送信するリピーターだ

試聴してみる

 ではサウンドはどう進化したのだろうか、既存のYSP-1400とYSP-1600を比較試聴してみた。ソフトはBlu-ray「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」、列車がヘリに銃撃されるシーンだ。

 どちらも音の広がりは十分感じられるのだが、特に低域に顕著な違いがある。YSP-1400は列車の「ゴーッ」という走行音や、「バンッ!バンッ!」という銃撃音の低音が弱く、迫力の面ではやや劣る。YSP-1600に切り替えると、中低域の音圧がアップし、銃撃音もしっかり“重く”なる。迫力が増すだけでなく、低域の分解能も上がり、キレも良くなっているので、列車の走行音の中にある金属音など、細かな音の描き分けも明瞭。音が全体的に引き締まった印象も受ける。

 中高域も良くなっている。特に違うのがセリフで、1400では低域に埋もれぎみな人の声が、1600では明瞭で聴き取りやすい。複数人が会話している場面でも、音像の分離感や輪郭のシャープさがアップしている。

 音場のサイズ感も比べてみると、1600の方が1.5倍ほど横に広く感じる。その広い空間に定位する音像の移動感も、1600の方が明瞭で動きが観やすい。これらは細かな違いではなく、音が出た瞬間に、誰でもすぐ実感できるレベルの進化具合だ。

 試しに1400と1600の筐体を指で叩いてみると、「コンコン」と、やや反響音が気になる1400に対して、1600は「コツコツ」とほとんど響かない。剛性や共振対策が強化されており、これが中低域の明瞭さや分解能の高さに影響しているのだろう。

1400を叩いてみると、やや筐体に反響する
1600を叩くと、コツコツと剛性が大幅に上がっているのがわかる

 サブーファが天面に搭載されているので、低音が浮き気味になるのでは? と心配していたが、実際に聴いてみると杞憂だった。むしろ、セリフなど重要な音の音像が、テレビの画面の中央に定位するので映画が観やすい。1400では、どうしても音像が画面中央よりもやや下の方、サウンドバーの近くに定位してしまう。1600の方が“サウンドバー自体の存在感”を良い意味で感じないのだ。

 こうした音の傾向は、Bluetooth経由で音楽を再生しても同じだ。1600は音圧が豊かで低域がしっかり出るので、アコースティックベースの“ゆったり感”が出せている。ベースは音楽を下支えする重要な要素であるため、リズムもはっきりと体感できるようになり、1600で聴く方が音楽に気持よく“ノリやすい”。BGM的にリビングに音楽を流すような使い方でも、心地よさに寄与してくる部分だろう。

アレイスピーカー部
背面のインシュレータ。形状も音を聴きながら決めていったものだという

新機能「MusicCast」でマルチな使い方も

 YSP-1600にはもう1つ、目玉的な機能がある。ネットワーク関連の機能として追加された「MusicCast」だ。この機能はサウンドバーだけでなく、ヤマハが今後発売するネットワーク対応機器に標準的に搭載する機能として位置づけられている。

 簡単にいえば、ネットワーク経由で音楽ファイルやネットラジオを再生できる機能で、スマートフォンやタブレット向けに専用アプリ「MusicCast CONTROLLER」も用意。アプリから1600をワイヤレスで制御し、NAS内の楽曲選択やインターネットラジオの選局、radikoの選局が可能だ。端末内の楽曲を1600から再生させる事もできる。

スマートフォンやタブレット向けアプリ「MusicCast CONTROLLER」

 機能的にはDLNAのプレーヤー/レンダラーと似たようなものに見える。実際、NASに保存した音楽ファイルがDLNAと同じように再生できる。ユニークなのは音楽データをスマホ/タブレットのアプリを経由させる事で、MusicCast対応機器内のネットワークはDLNAではなく、独自の方式で配信を行なっている事だ。

 これにより、DLNAでは難しい複雑な配信制御も可能になる。スマホのアプリから複数の部屋に置かれたMusicCast対応機に、それぞれ別の音楽を再生させたり、個別に音量調整ができる。例えば、書斎にあるNAS内の音楽を、リビングのシアターバーから再生し、別の曲を寝室のコンポから再生する……といった具合だ。

DLNA対応NAS内の楽曲を選択しているところ
音楽再生中の画面
2つの部屋で別々の製品を使い、同じ曲を再生させているところ
音量調節も、製品ごとに独立して行なえる

 また、MusicCastならではの機能として、対応機器が音楽を受信するだけでなく、送信機になる事もできる。例えば、アナログ音声入力端子を備えたYSP-1600に、ポータブルプレーヤーを接続。その音をデジタルに変換しつつ、MusicCastのネットワークに配信、スマホを介して、別の部屋の対応コンポからその音を再生するといった事も可能になる。

 登場したばかりの機能なので、まだ対応機器が少ないが、増加すれば単にDLNAに対応しているだけの製品と比べ、MusicCastならではのユニークな使い方ができるようになっていきそうだ。

 「サウンドバーであるYSP-1600は、基本的にはリビングで映画やテレビなどをお楽しみいただく製品ですが、可能性としてはそれに留まりません。活用の幅を広げるためのMusicCastと考えていただければ」(佐藤氏)。

デジタルサウンドプロジェクターのエントリーとして幅広い層に

 テレビに手軽に追加するスピーカーとしては、サウンドバーのYSP-1600だけでなく、テレビスタンドの下に配置するボード型の「SRT-1500」も、同価格帯にラインナップされる。

 機能面は2機種でほぼ同じ。音質面では、ボード型の1500が、専用のステレオユニットを搭載したり、筐体の容積が大きいといった利点がある。一方で佐藤氏は、「容積が小さいからこそ、それを補うユニットの設計を行なうなど、投入している技術は1600の方が多い」という。

ボード型「SRT-1500」の使用イメージ
「SRT-1500」の使用イメージ
「SRT-1500」の内部

 「YSP-1600とSRT-1500は、デジタルサウンドプロジェクター技術を採用した製品としては最も低価格なエントリーと位置づけています。YSP-1600の薄型化は、昨今のテレビと組み合わせていただきやすくするためですが、サウンドバーとボード型の2スタイルをラインナップしているのも、お客様に選んでいただきやすくするため。初めてデジタルサウンドプロジェクターを使う方に、その良さをしっかりと体験していただける音にこだわりました」。

 (協力:ヤマハ)

(山崎健太郎)