【バックナンバーインデックス】

DDスピーカーを使ったホームシアター提案
ビクター
「RX-DV3」
+ 「SX-XD303」 + 「SX-DW303」
発売日/8月1日(RX-DV3)、8月21日(SX-XD303、SX-DW303)
価格/75,000円(RX-DV3)、66,000円(SX-XD303)、34,000円(SX-DW303)
※写真のプラズマテレビは別売り


■ 主な特徴

 ビクターの「RX-DV3」は、プログレッシブ出力対応のDVDプレーヤーと、AM/FMチューナー、100W×5chのAVアンプを一体化した製品。最近では比較的小型のDVDプレーヤー/AVアンプ一体型の本体部に、5.1ch分のスピーカーを付属したパッケージが増えている。5.1chパッケージといえば、かつてはPC周辺機器メーカーが主流といえた市場だが、現在は音響機器メーカーのクォリティの高い製品が人気を博している。そのためか、プログレッシブ出力に対応した製品が出てくるなど、入門用の領域を超えた性能を有する製品も増えた。

 ただし、ほとんどの製品はいまだ低出力で、入出力端子も多くはない。また、スピーカー端子が特殊なため、別のスピーカーにアップグレードできないというケースも見受けられる。「設置性は重視したいが、ある程度の出力W数と入出力の数も欲しい」、「スピーカーも手持ちのものを使いたい」といったニーズを持つ中級者にとって、スピーカー付きの一体型パッケージは少々物足りない存在だ。

 その点RX-DV3は、100W×5chという大出力とプログレッシブDVDプレーヤーを、本体高100mmというサイズに収めている。さらに、計6個の映像出力と計6系統の音声入力を搭載。このうち、コンポーネント出力とデジタル音声入力は、各2系統を装備する。DVDプレーヤーを内蔵していることもあり、サイズの割には比較的余裕のある接続性といえる。

AVアンプ一体型DVDプレーヤーのRX-DV3。100W×5chのデジタルアンプを搭載している SX-XD303は、DDスピーカーの新製品。DDスピーカー初の5.1chサラウンド用となる アクティブサブウーファのSX-DW303。クロスオーバーを150Hz固定と可変から選択できる

 このRX-DV3とともに発表されたのが、DDスピーカーの新製品「SX-XD303」だ。DDスピーカー(Direct Drive Stick Speaker)とは、広い指向特性による自然な音場を目指して開発されたビクター独自のスピーカー。幅10mm×長さ95mmのスリムな振動板の採用と、その振動板全体を耐熱2分割ボイスコイルで駆動する「ダイレクトドライブ方式」を組み合わせることで、ほぼ円形の指向特性を可能にしたという。

 すでにビクターでは、ミニコンポ、液晶テレビ、プラズマテレビなどと組み合わせた製品を市場投入しているが、今回のSX-XD303は、初のホームシアター向け製品となる。トールボーイスタイルのサテライトスピーカー4本と、センタースピーカー1本を組み合わせたパッケージで、サテライト、センターともにキャビネットはアルミ製。

 このうち、DDスピーカーを採用するのはサテライトの4本。従来の振動板からネオジウムマグネット、ボイスコイル、サスペンション、振動板素材を変更し、最大入力を25Wから50Wへと向上している。なお、センタースピーカーは、コーン型の6cm径フルレンジ2発のバスレフ型を採用している。

 もう1つ同時に発表されたのが、アクティブサブウーファの「SX-DW303」だ。17cm径ユニットを使ったバスレフ型で、定在波を低減するためというラウンド形状を採用しているのが特徴。デザインそのものは、2月に発売されたDDスピーカー2.1chシステム「SX-DD3」のサブウーファ部に良く似ている。ただし、内蔵アンプの最大出力が、DD3の60Wに対して100Wと余裕がある。また、クロスオーバー設定を150Hz固定と連続可変の2通りから選択できる点も異なる。

 これら3機種は、基本的に単品で販売される。ただし、ビクターではシアターシステムとしての提案も行なうとしており、今回は3機種を組み合わせてレビューする。


■ 機能と操作性

 RX-DV3で再生できるディスクは、DVDビデオ、ビデオCD、DVD-R、音楽CD、CD-R/RW。さらに、CD-R/RWに記録したMP3ファイルと、JPEGファイルの再生にも対応している。DVDオーディオやSACDには非対応。デコード可能なサラウンドフォーマットは、ドルビーデジタル、DTS、ドルビープロロジック II、MPEG-2 AACとなっている。JPEGの表示を除くと、各フォーマットへの対応はエントリー向けAVアンプ、またはDVDプレーヤーと同程度といえる。

 なお、JPEGの表示は1枚ずつ行なわれ、サムネイル表示は不可能。また、表示が非常に遅く、200万画素のデジタルカメラで撮影した画像の場合、展開・表示に1~2分ほどかかった。また、MP3再生時にID3タグを表示できるが、英数字のみに対応する。

 省スペースとはいえ、RX-DV3の外形寸法は、435×404×100mm(幅×奥行き×高さ)あり、最近の薄くて奥行きの短いDVDプレーヤーを見慣れた目にはかなり大き目に映るかもしれない。特に奥行きが400mmもあるため、小さめのラックの中など設置の際に悩むケースが出てきそうだ。

入力切替は6つ。さらにTV DIRECTボタンも装備する トレイ部。フロントパネル下部はフロスト仕上げのアクリル製 前面右には大き目のボリュームノブを配置。ヘッドフォンジャックはステレオミニジャックだ

 本体前面には、ディスクトレイのほか、入力切替、カーソルボタン、ボリュームノブなどのスイッチ類が並ぶ。前面パネルの中央上部には、全部で7つの入力切替スイッチが配置されているほか、「TV DIRECT」ボタンも装備している。これは、AVアンプ部の電源をOFFにし、テレビ内蔵のスピーカーでDVDプレーヤーの音声を再生するモード。サラウンド用のスピーカーを持っていない場合でも、とりあえずこれでDVDを楽しめるという仕掛けだ。

 基本操作で気になったのは、本体のディスクトレイのイジェクトボタンが非常に小さく押しづらいこと。イジェクトボタンだけでなく、再生、停止、一時停止、チャプタスキップといったDVD用の操作ボタンは、押しなべて小さい。リモコンを使えば問題ないのだが、イジェクトボタンだけはリモコンにも装備されていない。慣れてしまえば問題ないとはいえ、よく使うボタンなので、もう少し配慮して欲しかったと思う。

各社のテレビの操作ができるリモコン。テレビ、DVD、AVアンプと、リビングのAV機能のすべてを操作する勢いでボタンが並んでいる
 リモコンには、DVDプレーヤーとAVアンプの操作ボタンが集約されている。このため、ボタン数がかなり多い。特徴的なのは、ビデオとテレビの電源ボタンも装備すること。もちろん、他社製機器の操作に対応し、基本操作をこのリモコンで行なえる。マクロ機能などはないものの、基本操作だけならリビングにおけるAV機器のほとんどをこれ1個でまかなえそうだ。

 なお、ボタンは全体的に小さめだが、ストロークが長く、押しにくいと感じたことはなかった。ただ欲をいえば、主要ボタンだけでも蓄光式を希望したいところだ。

 リモコン中段には、テンキーと併用して使う各種サウンド設定のボタンが並ぶ。この部分は、左端の「サウンド」というボタンを押すことで、各スピーカーごとの音量を調節できるようになる。OSDメニュー内でもスピーカーごとのレベル設定は可能だが、これらのボタンが独立して設けられているのは嬉しい。

 RX-DV3の特徴の1つは、DVDプレーヤー部とAVアンプ部の設定や操作を共通のGUIで行なえること。OSDメニューは「言語」、「映像」、「音声」、「スピーカー設定」、「その他」の各メニュー画面をタブで切り替え、その後下位のメニューから設定を行なう。「音声」では、ダイナミックレンジ圧縮(大/小/OFF)や、高音および低音のトーンコントロール(20段階、2段刻み)が行なえる。

 「スピーカー設定」では、接続したスピーカーのサイズ、レベル、距離を設定可能。スピーカーサイズは、小、大を選択でき、さらにフロント以外は「なし」を設定できる。距離設定は30cm刻みで0.3~9m。サブウーファへの周波数振り分けもここで行なう。設定値は、80/100/120/150/200Hzの4段階だ。なおレベル、距離ともに、フロントやリアは左右独立で設定できない。AVアンプとしては少し機能が不足気味だが、画面中に設定中のスピーカーが表示されるなど、初心者にもわかりやすいつくりになっている。

 DVDビデオ視聴時には、画面上部の「画面表示メニュー」からビットレート、タイトル、チャプタ、トータル時間問いった情報を得られる。また、この画面表示メニューを使って再生位置や音声、字幕、アングルの指定が行なえるが、これらはリモコンにも独立したボタンが設けられている。

 特殊な機能としては、DVDビデオの内容を一定時間ごとにサムネイル化して一覧表示する「ダイジェスト」や、再生画面を1~1,024倍まで拡大して表示できる「ズーム」を装備している。

設定メニューの1つ、「映像」。プログレッシブモードの設定はここで行なう 単体AVアンプと同じく、接続したスピーカーの大小、レベル、設置距離、サブウーファのクロスオーバーを設定できる

 一方、AVアンプとして重要になるのは、ほかの機器との接続性だろう。RX-DV3には、計6個の映像出力と計6系統の音声入力を搭載している。また、DVDプレーヤーを内蔵しているため、通常のAVアンプに比べると映像入力とデジタル音声入力が1つずつ浮く計算になる。一般的なリビングでの使用なら十分な数だろう。

 あと1~2系統デジタル音声入力があれば便利なのだが、高さ100mmの背面にぎっしり並んだ端子類を見ると、「これが限界なのかもしれない」とあきらめざるを得ない。また、スピーカー端子はクリップ式で、あまり太いケーブルが使えない。想定しているユーザーを考えると納得できる仕様だが、購入後にケーブル交換を考えている人は注意が必要だ。

RX-DV3の背面


■ 画質と音質

 RX-DV3には、同社のプログレッシブDVDプレーヤーでおなじみの「デジタルダイレクトプログレッシブ」回路が搭載されている。そのためか、プログレッシブらしい滑らかかつ緻密な表現が得られている。また、ビデオ素材も非常に美しい。

 初期設定では、同社の中級機「XV-P300」よりも発色が良く、全体的に色が濃厚。コントラストも強めだ。万人に好まれる絵だろう。その分、暗部および中間調で、しばしば階調性が失われているケースが見受けられた。また、XV-P300と比較すると、ノイズの抑え込みがいま一歩という印象を受けた。特に、ソースによっては暗部の偽色ノイズが気になって仕方がないときがある。

 もちろん設定次第で、階調性を重視した画質にも変貌する。画質設定は、リモコンの「VFP」ボタンを押すことで可能になる。プリセットモードは「シネマ」、「ノーマル」の2種類。加えて、2つのユーザー設定が可能だ。設定項目は、「ガンマ」、「明るさ」、「コントラスト」、「色の濃さ」、「色合い」、「シャープネス」、「Yディレイ」。

 このうち、ガンマ、シャープネス、Yディレイ以外は、-16~+16まで1段ごとに調節できる。かなり細かく追い込めそうだが、実際は-10以下、あるいは+10以上になると破綻をきたすケースが多い。それでも、好みの画調を設定し、複数保存できるのは便利だ。

 次に、SX-XD303の音質について。DDスピーカーの特徴は、振動板を中心にほぼ円形という指向性の広さにある。これをサラウンドスピーカーとして使った場合、リスニングポイントを限定しない視聴が可能になるという。極端な話、スピーカーを配置した同心円内の中央付近なら、どこで聴いても同じようなサラウンド感を得られる。

 もちろん、視聴位置ごとに細かい差異は発生しているのだろうが、私の受けた印象はまさに「ユニラウンド」。それでいて、センターだけはしっかり画面(中央)に定位している。たとえばソファーで2~3人が横に並んだ状態でも、全員が気持ちよく視聴できるだろう。

 サラウンドモードは、ドルビーデジタル、DTS、MPEG-2 AACのストレートデコードのほか、ドルビープロロジック IIの「PLII MOVIE」、「PLII MUSIC」が選択できる。そのほか、「LIVE CLUB」、「DANCE CLUB」、「HALL」、「PAVILION」、「ALL CH ST」を指定できる。

フロント/リアのDDスピーカーはスタンド一体型で、組立作業が必要。バスレフポートはユニット内蔵部位の上に付いている SX-XD303に付属するセンタースピーカー。DDスピーカーではなく、6cm径のフルレンジユニットを2つ搭載する SX-DW303の背面。クロスオーバーは固定と可変を選択可能。プリアウト端子からの音声はアナログL/R入力のLに入れる

 今回は「グラディエーター」を中心に視聴したが、このシステムでは、音の速さ、包囲感、高域(特に金属音の表現)に優れている。ただし、センタースピーカーなしの設定で視聴すると途端に音がくぐもり、セリフや高音の切れが大幅に失われる。そのため、このシステムの場合、センタースピーカーが必須だと感じた。これは音楽CDなど2chソースを聴くときも同じで、フロントスピーカーだけで聞くよりも、センターが加わるドルビープロロジック IIにした方が輪郭がしっかりして聴きやすくなる。

 とはいえ、システム全体で聴く音はなかなかのもの。広い指向性からくる包囲感はかなりの迫力で、劇場とのスケール感の違いからくる、ホームシアター独特の「こじんまりとまとまっている」という感覚はない。また音楽ソースでは、ビクター製スピーカーらしい甘くて繊細な雰囲気も感じられる。5本で6万円台という価格を考えると、なかなか面白いスピーカーセットではないだろうか。

 なお、サブウーファのSX-DW303は、比較的コンパクトな筐体ながら上級機並の機能を搭載している。前述したクロスオーバー設定のほか、オートパワーON/スタンバイ、位相切り替え、スピーカー入力端子を装備。ユニットは17cm径は下向きに配置されており、30Hzからの低音再生が行なえる。

 システムの中で鳴らしても、しっかりとした低音を再生していた。多小ブーミーでしまりのない音に感じられるケースもあったが、3万円台という価格を考えると妥当な性能だと思う。


■ まとめ

 一体型のRX-DV3は、本格的な出力と機能ながら、省スペースや操作の一元化といった点で、一体型のメリットを感じられる製品だ。各ch100WのAVアンプを購入することを考えれば、6万円台という実売価格も納得できる範囲だ。ただし、リレー式の入力切替や、柔らかい天板、安っぽいゴム足など、単体製品に比べると幾分安っぽさが感じられる。

 SX-XD303には、スリムな本体と指向性の広さからくる設置の自由度に、いままでの5.1chスピーカーセットでは味わえない魅力を感じた。特にDDスピーカーの持つ指向性の広さは、カジュアルなマルチチャンネル再生に良く合うと思う。部屋の中央以外でも、それなりにしっかりしたサラウンド感が得られるのだ。

 たとえば、5.1ch収録の音楽DVDビデオをBGMとして、これまで以上に積極的に利用できるのではないだろうか。いままでの「サラウンドだから真ん中に座らないと」という観念がなくなるので、よりカジュアルな楽しみ方が広がるだろう。

【RX-DV3の主な仕様】
再生可能ディスク DVDビデオ、ビデオCD、DVD-R、音楽CD、CD-R/RW
受信周波数帯域 FM:76.0MHz~108.0MHz
AM:531kHz~1,629kHz
実用最大出力 100W×5ch(6Ω)
入出力 映像入力 S映像×2、コンポジット×2
映像出力 コンポーネント(RCA)×1、D2×1、S映像×2、コンポジット×2
音声入力 同軸デジタル×1系統、光デジタル×1系統、アナログ×4系統
音声出力 光デジタル×1系統、アナログ×3系統、ヘッドフォン×1系統
外形寸法 435×404×100mm(幅×奥行き×高さ)
重量 8.4kg

【SX-XD303の主な仕様】
フロント/リア 種類 フルレンジ2スピーカーバスレフ型(防磁形)
使用ユニット 9.5×1cmダイレクトドライブスティックスピーカー×2
再生周波数帯域 120Hz~20kHz
インピーダンス
出力音圧レベル 82.5dB/W・m
外形寸法 282×282×1,108mm(幅×奥行き×高さ)
重量 約3kg(1本)
センター 種類 フルレンジ2スピーカーバスレフ型(防磁形)
使用ユニット 6cm径コーン型×2
再生周波数帯域 80Hz~20kHz
インピーダンス
出力音圧レベル 81dB/W・m
外形寸法 200×120×78mm(幅×奥行き×高さ)
重量 約0.85kg

【SX-DW303の主な仕様】
種類 バスレフ型(防磁形)
使用ユニット 17cm径コーン型×1
再生周波数帯域 30~200Hz
ハイカットフィルタ 50~200Hz(連続)、150Hz(固定)
アンプ最大出力 100W(4Ω)
入力端子 アナログL(MONO)/R×1、スピーカーターミナルL/R×1
外形寸法 217×376×393mm(幅×奥行き×高さ)
重量 約9.2kg

□ビクターのホームページ
http://www.jvc-victor.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.jvc-victor.co.jp/products/hifi/rxdv3.html
□製品情報(RX-DV3)
http://www.jvc-victor.co.jp/audio_w/product/hifi/rxdv3/rxdv3.html
□関連記事
【7月10日】ビクター、ホームシアター向けのDDスピーカーセット
―プレーヤー一体型DVDレシーバやサブウーファも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020710/victor.htm
【1月17日】ビクター、単品モデルのDDスピーカー2.1chシステム
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020117/victor.htm
【2001年9月6日】ビクター、DDスピーカー採用の「アオシス」に新シリーズ追加
―D4対応DVD内蔵15型液晶TV、USB搭載MDコンポ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010906/victor.htm
【2001年4月19日】ビクター、スリムな「DDスピーカー」採用のコンパクトコンポ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010419/victor.htm

(2002年8月23日)

[orimoto@impress.co.jp]


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