■ そろそろ「オーディオジュークボックス」などどうでしょう? ポータブルHDDオーディオプレーヤー市場は今年も大きな盛り上がりを見せた。本連載でも、アップルの「第3世代iPod」や、iRiver「iHP-100」、クリエイティブ「NOMAD Jukebox Zen 60GB」、「Nomad MuVo2」、東芝「gigabeat G20」、Rio Japan「Rio Nitrus」、「Rio Karma」、さらに異色なところではArchosの「Jukebox Multimedia 20」などを取り上げてきた。それぞれかなりの高アクセスを記録しており、読者のHDDオーディオプレーヤーへの注目度は年間を通して高かった。 そして、それらのオーディオプレーヤーに音楽を転送するためには、パソコンでMP3/WMAなどにエンコードするわけで、必然的にパソコンに音楽ファイルがたまることになる。できれば、パソコン上でも活用したいと思うのは当然だろう。
そんな中、ひょっこり登場したのが、ラトックシステムの「REX-Link(REX-Link1)」だ。機能的には単純で、唯一できることは、パソコン上のオーディオデータをUSB経由で無線デジタル伝送し、レシーバ側で光デジタル/アナログ出力できるというだけ。要するにPC上のオーディオをケーブル無しで、オーディオシステムなどに出力するという、非常にシンプルなものだ。 いままで、USBオーディオ機器は数あれど、無線伝送で音声信号を飛ばせるものはほとんど無かったかも。しかも、価格も16,500円と比較的安価だ。
■ 「ジュークボックス風」デザインのレシーバとUSBメモリ型トランスミッタ
パッケージは小型で、トランスミッタとレシーバ、光デジタルケーブル(光丸-光角型1m)、ACアダプタ、マニュアルなどが同梱される。 REX-Linkは、USBスロットに直挿しするトランスミッタ「CR-TXB01」と、レシーバ「CR-RXB01」から構成され、トランスミッタはUSBメモリのような形状。レシーバは、丸みを帯びたデザインで、「R2D2」や「オバQ」というか、なんとなく愛らしい感じの筐体。ラトックシステムによれば「ジュークボックス風」とのこと。 背面に電源ボタンと、光デジタル出力(丸型)、電源コネクタを装備する。光デジタルコネクタは、ステレオミニのアナログ出力としても利用できる。 外形寸法は、トランスミッタが20×70×8.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量11g。レシーバが57×45.8×86.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量53g。
■ 接続はシンプル。使い勝手は良好
CR-TXB01のインストールは、単純にパソコンのUSB端子に差し込むだけ。消費電力は100mAで、USBバスパワー動作する。対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XPと、Mac OS X 9.2.1/Mac OS X 10.1以降。基本的に普通のUSBオーディオデバイスとして動作するので、USBオーディオさえサポートしていれば、特にOSは選ばないようだ。 Windows XP Professional搭載のThinkPad X31で利用したが、接続すると直ぐにUSBオーディオデバイスとして認識し、特にドライバなどを要求されることも無かった。 CR-RXB01は、ACアダプタを繋ぎ、電源スイッチを入れ、光デジタル/アナログ音声出力をオーディオシステムにつなぐだけ。電源を入れてトランスミッタ/レシーバがお互いを認識すると、両機に搭載されたランプが緑色に点灯する。
オーディオ伝送方式は、2.4GHz帯を利用した無線デジタル伝送で、変調方式は適応型周波数ホッピング方式(AFH)。パソコンから出力されるオーディオデータをSBCコーデックで圧縮し、レシーバに転送するという。伝送時のビットレートは384~512kbpsで、伝送距離は最大10m。 「FMトランスミッタを利用して、FMラジオで受信する」といった製品はいくつかあると思うが、無線伝送でUSBオーディオ出力をワイヤレス化する製品はおそらく初めてだろう。 実際に光デジタルで自宅のAVアンプと接続して、Windows Media Player9からMP3やWMAを再生すると特に何の問題も無く、音楽を聴くことができた。 基本的にはRex-Linkの機能はこれだけなのだが、パソコンの置き位置に関わらず、ケーブルにも煩わされず、簡単にPCをジュークボックス化できるというのは大きなメリット。
伝送距離は10mとのことで、とりあえず筆者の自宅のような8畳/1Kであれば、部屋の何処からでも利用できた。また、木製の扉を2枚隔てたトイレの中にノートパソコンを持ち込んでも、途切れなく再生が行なえるなど、伝送性能はかなり高い。伝送距離も公称値の10mよりもう少し長いように感じる。無線LANを併用しながらノートパソコンを室内で持ち歩くような人でも、特に不満なく利用できるだろう。 ただし、壁面ぎりぎりに設置したデスクトップパソコンの背面のUSB端子に接続したところ、通常再生は行なえたが、トランスミッタ-レシーバ間を遮るように身を乗り出すと、時折転送が途切れることがあった。 オーディオソフトに関しては、WMP9のほかにも、iTunesなどでテストしてみたが、どのソフトウェアでも問題なく再生が可能だ。音質に関しては、ややダイナミックレンジが狭くなったような印象を受けた。きちんとしたオーディオシステムでしっかり聞くと、やや物足りない気もするが、それでも気軽にBGMとして利用するには十分だし、CDの山から目当てのディスクを探す手間を考えれば、満足いくものだ。 なお、WAVの再生も普通に行なえるが、数曲に1回ぐらいの頻度で、音が微妙に途切れることがあったのが、やや気になった。 また、対応するのはステレオのオーディオデータで、ドルビーデジタルやDTSなどの出力には対応しない。そのため、DVDビデオ用のマルチチャンネル用トランスミッタとして利用することは出来ない。 ちなみに、レシーバの出力端子に、Sennheiserのヘッドフォン「PX200」を接続したところ、普通に音楽再生が可能だった。公式には動作保証対象外となると思うが、ワイヤレスヘッドフォン的な利用も十分できそうだ。 ■ 最も簡単かつ安価にオーディオジュークボックスを実現 接続方法や機能はシンプルだが、Rex-Linkを利用することで、かなり安価かつ簡単にPCジュークボックスが実現できるのは間違いない。パソコンに多くのオーディオファイルを有しているユーザーにとってはかなり魅力的な選択肢といえるだろう。 かわいいデザインと相まって、所有欲をくすぐるアイテムとして、実売14,000円程度の価格もさほど高くないと言えるだろう。現段階でもかなり魅力的な製品だが、今後ドルビーデジタルやDTSなどのマルチチャンネル音声対応や、電池駆動への対応などを期待したい。 ヘッドフォン出力をサポートして電池駆動が可能になれば、USBオーディオワイヤレスヘッドフォンとしても利用できて面白いと思う。
□ラトックシステムのホームページ (2003年12月19日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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