■ アイワ=ソニーのMP3プレーヤー登場 1月14日にソニーは、アイワブランドのオーディオ関連新製品を発表した。その中でも最も力を入れて紹介されたのがUSBオーディオ製品。7種類のオーディオプレーヤーや、1種類のデジタルカメラが発表され、「pavit(パビ)」と呼ばれる、独自形状のUSBメモリをメディアとして採用する。発表会では、アイワブランドでPCオーディオに注力していく方針が明らかにされたが、USBオーディオ製品はその中核を担う製品と位置づけられた。
また、もうひとつのポイントとしては、オーディオ形式にMP3を採用したこと。アイワは2002年よりソニーに吸収されており、ソニーのアイワブランドとして製品展開しているが、圧縮オーディオでATRACをプッシュするソニーが、MP3だけをサポートした製品を大々的に展開するということもニュースだろう。 今回取り上げるのは、その第1弾となる首掛け型のpavit対応オーディオプレーヤー「AZ-ES256」。256MBのpavitメディア「AZ-RM256P」が付属し、店頭価格は22,800円。ボディカラーは、シルバー/グリーン/ブルー/レッドの4色が用意されており、今回はグリーンを購入した。
■ やや大きめなボディとシンプルなボディ構造
「AZ-ES256」は、本体のほか256MBのpavitメディア、ヘッドフォン/ヘッドフォン延長ケーブル、首掛け用のネックストラップ、単4乾電池、転送ソフト「Music Transfer」、MP3作成/管理ソフト「MusicMatch Jukebox 7.5」などが付属する。 本体は丸型のデザインを採用しており、側面にボリューム、再生/停止、曲送り/戻しのボタンを装備。液晶ディスプレイは備えていない。 上面にpavit用スロットを装備。背面には、「MP3 Digital Sound Enhancer(MDSE)」のON/OFF、HOLD/BEEPスイッチ、再生モードボタンを装備。イヤフォン接続端子はプラグカバーに覆われており、ケーブルで本体を吊り下げても外れないようになっている。ネックバンドにイヤフォンのケーブルを固定することで、イヤフォンケーブルを利用した首掛けが可能となる。
本体サイズは65×65×17.8mm、重量は51.2g。本体とpavitメディアをあわせた使用時重量だともう少し重くなるが、首かけてもさほど重さは感じない。小型化が進むシリコンオーディオプレーヤー市場では比較的大きめに感じるが、胸ポケットには収まるし、基本は首掛けなので、取り回しに苦労するというほどではない。
■ シンプルな操作性と高音質。オーディオファイルの取り回しも簡便
まずはパソコンにpavitを挿すると、ファイルシステムはFATでUSBストレージとして認識される。普通のデータストレージとして利用できるが、MP3ファイルをそのまま転送しても、本体での再生はできない。 MP3ファイルの本体への転送は付属のソフトウェア「Music Transfer pavit Edition」により行なう。Music Transferは転送のみに機能を絞ったシンプルなソフトで、pavitをパソコンに接続し、転送するファイルを選択すると転送リストの「ステータスバーウィンドウ」にファイルが登録される。このウィンドウで好みの曲順に並べ替えた後、転送ボタンを押すだけで転送が始まる。 234.7MBのMP3ファイルをThinkPad X31(Pentium M 1.4GHz)から転送した際の転送時間は約5分50秒(約5.4Mbps)。pavitはUSB 2.0に対応しているが、さほど早いという感じでもない。 試しに、通常のUSBストレージとして同じファイルを転送すると1分28秒(約21Mbps)で終了し、3倍以上高速だった。このことから、Music Transferでの暗号化処理でかなり時間がかかっていると思われる。といってもアルバム1、2枚程度を転送するのであればほとんどストレスは感じないだろう。
なお、AZ-ES256は、液晶ディスプレイなどを備えていないため、曲順は「Music Transfer」上で設定しておく必要がある。 転送されたMP3ファイルは、暗号化され専用の[AOPMUSIC]フォルダに格納され、拡張子が[.aop3]とリネームされる。Music Transferがインストールされている転送元のパソコンに書き戻した場合は、拡張子を[.mp3]に直すと再生できたが、他のPCにコピーしたり書き戻しても再生できなかった。 転送ソフトが必要となることで、USBストレージクラス対応のプレーヤーなどに比べれば、確かに手間がかかる。しかし、Music Transferの操作性や動作は非常にシンプルで高速なので、取り扱いにくさは別段感じない。 早速データを転送したpavitをAZ-ES256に挿して、再生/停止ボタンを1秒強長押しすると、電源が投入されて、再生が始まる。操作体系は非常にシンプルで、本体脇のボタンで、再生/停止とボリュームコントロール、曲送り/戻し(早送り/戻し)などに割り当てられている。背面のREP1/SHUFスイッチで通常再生のほか、1曲リピート、シャッフル再生が選択できる。複雑なことはできないが、シンプルな操作体系のため、パソコンやMP3にあまり馴染みのないユーザーにも取っ付きやすいといえそうだ。 ただし、液晶ディスプレイがないために、現在のステータスや次の曲目などがわからないのはやや寂しい。そのため、背面のHOLD/BEEPボタンでビープ音をONにしておくのは必須と感じた。操作ごとにビープ音が鳴るようにしないと、「何曲飛ばしたのか」などの自分の操作に対するプレーヤーのレスポンスが推測しずらいのだ。4月に投入される「AZ-RS256」では液晶ディスプレイに加え、FMチューナも備えているので、こっちの方が…… という気にもなる。
付属のインナーイヤーフォンのクオリティはプレーヤー付属のモノとしては高品質。ただし、イヤーパッドが無いためか筆者にはやや滑りやすく感じた。特に首掛けだとなかなかうまく利用できず、やむなく他のイヤフォンのイヤーパッドを流用した。 本体の再生品質は、低域が若干弱いようにも感じるが、クリアでバランスよく聞きやすい。とり立てて高音質というわけでもないが、どんなソースでも任せられる満足いく再生品質だ。 また、背面のMDSEボタンは、「MP3 Digital Sound Enhancer」とのことで、取扱説明書には「クリアな音質と豊かな低音を楽しめる」と書いてある。低音量ではさほど効果は無いが、ベースやドラムなどの低域が若干強調される。ポータブルオーディオプレーヤーの低域強調機能は度が過ぎたものが少なくないが、「MDSE」はさほど派手な効果がない分、好感が持てる。電池はアルカリ単4乾電池×1本で、駆動時間は約11時間となっている。 ■ 今はやや地味なMP3プレーヤー。pavitの将来に期待 基本性能の高いMP3プレーヤーで256MB容量で実売価格が22,800円と、シリコンオーディオプレーヤーとしては標準的な価格だと思う。しかし、実売25,800円のMuVo2 4GBなどHDDオーディオプレーヤーの大容量化が進む現在、容量あたりの価格では買い得感は薄い。 また、首掛型というスタイルもアドテックのペンダント型のMP3プレーヤー「AD-EMPZ」などが先行しており、特に目新しいというわけでもない。やはり、最大のポイントはUSBメモリスタイルの「pavit」に何処まで魅力を感じるか? ということになるだろう。 「USBメモリとして使える」というだけではやや寂しい。例えば、スポーツモデルの「AZ-RS256」のユーザーであれば、スポーツ時に音楽を聴けるし、その後、シャワーを浴びる際にも同じpavitを利用して「AZ-BS32」で再生できる。そういったトータルソリューション的な展開がうまく回るようになればかなり面白い製品になっていくだろう。 環境を整えられれば、かなり面白い製品になると思うが、そのためには今後のアイワの販売/マーケティング戦略や、より魅力あるpavit対応製品のリリースなどが重要となるだろう。 ネックバンドヘッドフォン型の「AZ-HS256/FS256」にしても、MP3プレーヤーだけでなく通常のヘッドフォンとしても使えるというメリットもあり、そうした意味では、第1弾のAZ-ES256が一番個性の薄い製品というのがやや残念なところ。是非、ソニーブランドの製品とは違った製品展開を期待したい。
□ソニーのホームページ (2004年2月6日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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