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VAIOフラッグシップモデルがデジタル放送録画対応
ソニー「VAIO type R(VGC-RA71P)」
発売日:10月2日発売
価格:40万円前後


■ デジタル放送対応PCの新展開

 2003年12月1日に地上デジタル放送がスタート。既にテレビや録画機などでもさまざまな対応機器が発売されている。録画機については、ソニーや松下電器のブルーレイレコーダをはじめ、シャープや日立のハイビジョン対応ハイブリッドレコーダ、D-VHSをエミュレートしたアイ・オー・データのデジタル放送用HDD「Rec-Potシリーズ」などが人気を集めている。

 しかし、そうしたデジタル放送対応の流れに取り残されているのが“パソコン”だ。著作権保護やPCIバスの帯域の制限など、さまざまな問題点があるのは以前NECのインタビューでお伝えしたとおり。現在唯一地上デジタルチューナ搭載PCをラインナップする「VALUESTARシリーズ」でもデジタル放送のMPEG-2 TSストリームをそのまま録画できるものの、表示時には480pに変換されてしまうなど、制約が大きい。

 また、単体テレビキャプチャカードとしてカノープスの「MTVX2004HF」も発売されているが、こちらは外部チューナからの入力をSD解像度に変換して録画するため、デジタル放送を「そのまま」記録したいというユーザーには物足りない仕様といえる。

写真は19型液晶ディスプレイ付属の「VGC-RA71PL9」

 そうした状況下で、ソニーが提案してきたのが「VAIO type R(VGC-RA71P/RA61P)」。type RはVAIOシリーズのフラッグシップシリーズとなる製品で、新たにデジタル放送録画機能を搭載している。といっても、デジタルチューナは内蔵しておらず、外部の地上/BS/110度CSデジタルチューナや、2002年以降発売のWEGAなどと連携してデジタルハイビジョン放送を録画できる製品だ。

 方法としてはD-VHSのコマンドをエミュレートして録画用のHDDとしてVAIO type Rをデジタルチューナから認識させ、録画するというもの。やっていることはRec-POTシリーズなどと同じなのだが、パソコンにその機能を内蔵したことで、専用ソフトから再生/停止操作などが行なえるようになるなど、目新しい点も多い。今回はVAIO type Rのデジタル録画機能を中心にレポートする。



■ 高級感ある本体

USBジョグホイールなどが付属する

 VAIOシリーズのフラッグシップモデルらしく、本体の高級感は高い。ブラックを基調としたボディカラーにミラー系のパネルを配しており、シックでパソコンながらAV機器的な印象も持たせている。

 また、側面から見ると一部がくり貫かれており、放熱口などを設けている。外形寸法は188×402×410mm(幅×奥行き×高さ)、重量16kgと、最近のパソコンとしては大きく、重い。

 側面のボタンを押しながら開くことで簡単に筐体内部にアクセスできる。フラッグシップモデルらしく、インターフェイスなども充実しているので、特に増設が必要となるものもあまり無いとは思うが、メンテナンス性は非常に高い。

 PCIスロットに地上アナログチューナ搭載のキャプチャカードを装備。デジタル放送録画用のi.LINK端子もキャプチャカード上に装備している。背面には光デジタル出力も装備する。

 本体前面にS映像入力、コンポジット入力や、PCカードスロット、USB 2.0、i.LINK端子などを装備する。ビデオ編集用のUSBコントローラやリモコンも付属する。


前面、側面ともにブラックを基調にしたデザイン。VAIOロゴが彫りこまれている 本体前面。ドライブ周りや拡張スロットもカバーで覆われている 前面下部にPCカードスロットやi.LINK端子を装備する

背面 キャプチャカード上にi.LINK入力を備えており、デジタル放送録画に利用できる

側面のカバーを外して、筐体内のメンテナンスが行なえる


■ パソコンならではの「録画ツール」が便利

Do VAIO Ver.1.2

 早速テレビ録画機能を使ってみた。アナログ放送の録画には、10feet GUI採用の「Do VAIO」を利用する。VAIOの録画ソフトといえば、長らくGigaPocketが利用されていたが、昨シーズンより「Do VAIO」に変更されており、リモコン操作で各種メディア操作が可能となっている。

 Do VAIOの最新バージョンVer.1.2では、「おまかせ・まる録」機能も搭載しているなど、機能の充実が図られているが、まずはtype Rの大きな特徴のひとつである、デジタル放送の録画をテストした。

 デジタル放送録画といってもデジタルチューナを内蔵しているわけではなく、外部の地上/BS/110度CSデジタルチューナとi.LINKで連携して、録画を行なう。つまり、ソニーのデジタル放送用HDDユニット「VRP-T5/VRP-T3」や、アイ・オー・データの「Rec-POT M」のようなD-VHSをエミュレートしたHDDユニットとしてパソコンを利用可能にするものだ。


TZ-DCH500(下)。上はRec-POT S

 ソニーが公表している対応するデジタルチューナは同社の「VGP-DTU1」、「DST-TX1」と、同社製テレビシリーズ「WEGA」の2002/2003/2004年モデルのデジタルチューナ搭載機など。今回は松下電器製の地上デジタル/BSデジタル/110度CSデジタル対応のCATV用STB「TZ-DCH500」を利用したが、i.LINKで接続されると「TZ-DCH500」側でD-VHSとして認識され、録画時にtype Rを選択するだけで予約録画が行なえた。

 デジタルチューナ/テレビ側からVAIO type RはD-VHSとして認識されるので、チューナ/テレビ側のD-VHSコントロール操作で、録画予約や再生などが行なえる。チューナからのデータ削除はできない。

 今回は用意できなかったが、ソニー製のデジタルチューナ「VGP-DTU1」や「DST-TX1」のDISCモードを利用すれば専用のUIから、録画番組の一覧表示などが行なえると思われる。しかし、「TZ-DCH500」や他社製のデジタルチューナを接続した場合は、単なるD-VHSとしか認識されないので、録画番組の一覧表示などが行なえず、多くの番組を録画した場合は、そのつど番組をスキップしながら目当ての番組を探さなければいけない。

TZ-DCH500とi.LINK接続するとtype RをD-VHSとして認識 Rec-POTや通常のD-VHSと同様にTZ-DCH500からの基本再生/録画操作が行なえる 録画予約もデジタルチューナの機能を利用する

デジタル放送録画番組管理ツール

 そのため、type Rでは、録画番組のコントロールを行なうソフト「デジタル放送録画番組管理ツール」を同梱している。同ツールでは、録画したコンテンツの再生/管理/削除が行なえるほか、チューナからの入力の手動録画も行なえる。

 なお、録画したデジタル放送番組はチューナ側でデコードして再生するので、type Rと接続したディスプレイで視聴することはできない。“単体では録画したデータの再生ができない”というのは、Rec-POTなど他のデジタル録画用HDDと同様の動作ではあるのだが、PCに録画した映像がそのPCのディスプレイで見えない、となるとやや落ち着きが悪いような気もする。

 実際に、「デジタル放送録画ツール」は、チューナ側の電源を入れてtype RをD-VHSとして認識させると利用可能となり、可能な操作は、再生/停止と、早送り/戻し、削除というシンプルなもの。録画中に録画済の番組を視聴したり、録画中の番組を時間をさかのぼって見るタイムシフト再生は不可能。これは、type Rに録画した番組の再生もデジタルチューナに頼る仕様になっている以上、どうしようもないだろう。なお、録画中に録画済の番組の削除を行なうことはできる。

 再生機能も早送り/戻しのみと非常にシンプルだが、マウスでスライドバーの任意のポイントを選択して早送り/戻しできるのが特徴。CMスキップや3時間番組の2時間目まで一気に飛ばす時などには非常に便利。たとえば、TZ-DCH500とRec-POT Sを併用した場合、30分のスキップとリモコンの早送り操作を組み合わせて、見たい場面まで飛ばすしかないのだが、ツールでは任意のポイントまで瞬時にスキップできる。パソコンならではの操作性で、使い勝手を向上させているポイントといえるだろう。

デジタル放送の録画ファイルはPC上からは再生できない

 画質的にはデジタル放送のMPEG-2 TSそのものなので、非常に高精細。なお、録画した番組のムーブは行なえない。DVDや他のHDDへデータとしてのバックアップは可能だが、その場合も録画したtype Rの元の場所に書き戻す必要がある。録画した番組データはデフォルト状態では、D\VAIO Entertainment\SSTフォルダに格納される。

 ムーブができないのは、Rec-POT Mなどに比べると不利だが、HDDを増設したり、DVDにバックアップしたりすることで、保存できる量を増やせるというのは、パソコンならではのメリットといえるだろう。

 なお、Do VAIOを利用したアナログ放送録画とデジタル放送録画の同時利用も行なえる。また、デジタル放送録画の場合でも、休止状態から復帰して録画、録画終了後に休止状態に移行するなどアナログ放送と同様の使い勝手で利用できる。

 Pentium 4 搭載のパソコンということで、騒音も気になるところだが、PSXより若干うるさい程度。録画中にPremiere Proを立ち上げるなど、負荷をかけると若干音は大きくなるが、低回転のファンノイズのためさほど耳障りではない。搭載HDDの古いRec-POT Sと比べると録画中の騒音はRec-POT Sのほうが耳障りに感じた。かなりしっかりと静音対策が行なわれており、パソコンだからといって騒音を心配する必要はなさそうだ。


■ AV系のソフトウェアや機能も充実

付属のリモコン

 Do VAIOによるアナログ地上波録画も可能で、Do VAIO Ver.1.2では「おまかせ・まる録」機能も搭載した。これは、So-netの提供するiEPGサイト「テレビ王国」の「自動録画サービス」を利用することで実現している。あとはテレビ王国上でキーワードを設定すれば、学習したキーワードに応じた自動録画が可能となる。

 Do VAIOではほぼ全ての機能が付属のリモコンから操作できるのも特徴。リモコンにはビデオやミュージック、テレビ、フォトなど、各機能ごとに専用ボタンを装備する。番組表ボタンも装備しており、Do VAIO上から「テレビ王国」にアクセスして録画予約が行なえる。凝ったDVDビデオ作成などを行なわない限り、AV機能を利用するために、マウスやキーボードの操作を行なう必要は無い。

 録画中や音楽再生中でもレスポンスは良好で、DVDレコーダなどと比較しても操作速度などで不満を感じることも無い。個人的に唯一残念だったのは、Do VAIOに静止画キャプチャ機能が無いことぐらいだ。

Premiere Pro 1.5

 また、USBジョグコントローラが付属することからもわかるようにビデオ編集機能も強化しており、「Premiere Pro 1.5」が付属。後日のアップデートによりHDVにも対応予定だ。

 さらに、DVDオーサリングソフト「TMPGEnc DVD Author 1.6 for VAIO」、「DVDit 5」、MPEGエンコーダ「TMPGEnc 3.0 Xpress for VAIO」、音楽録音編集ソフト「SonicStage Mastering Studio Ver.1.3」、ジュークボックスソフト「SonicStage Ver.2.1」、サウンド編集ソフト「DigiOnSound4 Professional for VAIO」、DVD作成ソフト「Click To DVD Ver.2.1」、DVDオーサリングソフトAVサーバー「VAIO Media Ver.3.1」などが搭載される。


TMPGEnc 3.0 Xpress for VAIO。Do VAIOとの連携機能も装備する SonicStage Mastering Studio Ver.1.3 DigiOnSound4 Professional for VAIO


■ AVパソコンの、良くできた“おまけ機能”だが魅力

 今回はデジタル放送録画に絞ってテストしたが、付属のソフトウェアやインターフェイスの充実からもわかるように、地上アナログ放送を録画して編集、ライブラリ化したり、DVカメラなどで撮影した映像を編集してDVD化するなどの、積極的にビデオ/オーディオを扱うユーザー向けのパソコンだ。

 実売40万円で、しかもデジタルチューナを搭載していないので、単なる“ハイビジョンレコーダ”と考えると高価ではある。しかし、“ハイエンドなAVパソコンが欲しい”というユーザーにとって、「PCを買ったらハイビジョンレコーダも付いてきた」と考えると面白い選択肢になると思う。録画用途を重視するのであれば、付属ソフトなどを省いて実売30万円程度とした「VGC-RA61」を選んだほうがいいかもしれない。

 もっとも、パソコン、ひいてはVAIOの特徴を生かすためには今後デジタル放送録画番組の編集やオリジナルライブラリ製作のような方向が望まれるところ。しかし、本格的なデジタル放送の録画/ライブラリ化にあたっては、現在パソコン上では編集がまったく行なえないという致命的な制限がある。これらを業界でいかにコンセンサスをとって解決していくのか、ということを考えれば、まだまだ時間がかかりそうだ。今後の積極的な取り組みにも期待したい。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.vaio.sony.co.jp/Info/2004/products_0913.html
□製品情報
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/VGC-RA71P/
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040913/sony1.htm
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040220/dev057.htm
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-地上デジタル対応PCで先行したNECに聞く
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040130/nec.htm

(2004年10月15日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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