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QUALIAホームシアター構築記 [前編]■

~11.2chに拡張可能なシアターを構築する~


 約1年前の2003年12月にAV Watchで、ヤマハのAVアンプ「DSP-Z9」を購入し、自宅のオーディオシステムを10年ぶりに刷新したことをレポートしたが、リスニングルームが6畳と狭いことから、満足のいくリスニング環境を構築できたわけではなかった。しかし、今年に入って新居を建設することが決まり、ついにリスニングルーム自体にもメスを入れるチャンスが生まれたのだ。

 せっかくのチャンス到来、本腰を入れて理想のホームシアターを作ってやろうではないか! ずばり目標は、11.2chに拡張可能なサラウンドシステムと120インチのフルHDフロントプロジェクションシステムだ。そこで、前編と後編の2回にわたり、筆者のホームシアター構築記(またの名を“一世一代の散財記”)をお届けする。


■ サラウンドスピーカーを2組配置し、11.2chへの拡張を可能に

スピーカー群の配置図。ヤマハ独自のプレゼンススピーカーを含め、11.2ch構成にまで拡張できるようにした

 今回移り住んだ新居は、ごく一般的な2階建て4LDKの軽量鉄筋住宅(トヨタホーム謹製)なのだが、念願のホームシアターを導入するために約18畳のリビングルームを確保した。

 リビングルームはほぼ長方形をしているが、その短辺の片側にオーディオラック、プラズマディスプレイ、スクリーン、フロントスピーカー群、もう片側にサラウンドバックスピーカーとプロジェクタ、長辺方向にサラウンドスピーカー群を配置するオーソドックスな構成をとっている。

 DSP-Z9は、フロントメイン、センター、サブウーファー×2台、プレゼンス(フロントエフェクト)、サラウンド、サラウンドバックの9.2chがマキシマム構成だが、ソニーのTA-DA9000ESやデノンのAVC-A1XVの仕様を見ると、側方のサラウンドスピーカーとして2組用意するのがこれからのトレンドのようだ。

部屋の長辺方向に配置されたサラウンドスピーカー2組。現在は、後方のサラウンドスピーカーのみ動作している。自宅に余っているプリメインアンプを使って、とりあえずもう1組もパラで鳴らしてみたらどうかと考えている

 ヤマハは、次期製品でサラウンドスピーカーを2組に分割することを明言していないが、ソニーとデノンが採用したことで、いずれはヤマハやパイオニアなどのコンペティタも追従してくるだろう。

 そこで、将来に備えてサラウンドスピーカーをもう1組配置し、11.2ch構成(プレゼンスのない他社で言うところの9.2チャネル構成)に対応できるように設計してみた。もちろん、ただ設計しただけではつまらないので、専用のスピーカーを取り付け、スピーカーケーブルも配線してある。現時点では完全な飾りとなっているが、ただ吊り下げておくだけでも気分はいい。

 すでに昨年12月のDSP-Z9 購入記でも触れたとおり、筆者は'80年代の「DSP-3000」からヤマハのDSP技術に魅せられている筋金入りのヤマハ派である。このため、世論がどうであれ、今後もヤマハのAVアンプを購入し続けると思う。

 また、待機中のサラウンドスピーカーが存在している以上、11.2ch仕様に対応したフラグシップモデルがヤマハから発売されれば、有無を言わずに購入しなければならない。2年ごとにフラグシップモデルが登場している現状を踏まえると、2005年の秋冬あたりが濃厚か。


■ サラウンド系スピーカーのアップグレードとダブルウーファの採用

 さて、今回のシステム環境で採用したスピーカーは、メインスピーカーが旧居でも使っていたJBLのS3800である。JBLは、カリフォルニアらしい爽快な鳴りっぷりが気に入っている。筆者はスムースジャズを中心に聴いているので、JBLとの相性はとてもいい。

プロジェクタの両端を挟む感じで設置したサラウンドバックスピーカー。プロジェクタと同様、天井に吊り下げているので、足下は非常にすっきりしている

 また、プレゼンス、サラウンド2組、サラウンドバックは、すべてきれいさっぱりとBOSE「301V」で固めてみた。BOSEも元気な鳴りっぷりが気に入っており、15年以上前から「111AD」、「125 West Borough」、「301AVM」など、いくつかの機種を愛用しているが、今回の301Vは4組ともに新規購入した。当初は、トールボーイ型スピーカーも検討していたのだが、あくまでも日常生活の場であるリスニングルームにホームシアターを構築するわけなので、床にはできる限りモノを置きたくなかった。そこで、301Vを専用の金具で天井に吊り下げることにした。

 サブウーファは、ヤマハ「YST-SW800」を2台配置している。以前はYST-SW800 1台をメインスピーカー右の前面に配置していた。重低音は指向性がほとんどないというのが一般論だが、サブウーファ1台で使っていた経験から言わせてもらうと、これは必ずしも正しくないと思う。右側にあるサブウーファからは、やっぱり右側から低音が沸き起こる感じがする。左側に振れば、今度は左側から沸き起こってくる。

 このような状態では、精神衛生上あまりよろしくない。そこで、左右のメインスピーカーのそばに1台ずつサブウーファを配置するデュアル構成を採用した。これにより、厚みのある重低音を体全体で気持ちよく感じられるようになった。なお、プロジェクションスクリーンをできる限り大きくしたかった都合上、少々セオリーから外れるが、サブウーファをフロントメインスピーカーの内側にそれぞれ配置している。

 センタースピーカーには、JBL「S2800 Center」を新たに導入した。旧居ではBOSE「33WER」を使用していたが、他のスピーカーが軒並みアップグレードしており、しかも120インチスクリーンで映像を鑑賞することになるので、センタースピーカーをおろそかにできなくなったのだ。そこで、メインスピーカーのS3800と調和のとれる製品としてS2800 Centerを選択した。

 ここまでセッティングしてきて、やはり気になるのが2台のサブウーファを除く、すべてのスピーカーをDSP-Z9 1台で駆動していること。少なくともDSP-3000時代はスピーカー2本につき1台のアンプを用意したものだ。せめても、主要なスピーカーだけはアキュフェーズのマルチチャネルパワーアンプ「PX-600」あたりで駆動するか、最も重要なメインスピーカーとセンタースピーカーだけでもパワーアンプで駆動すれば……なんて思っていたが、実際に視聴した感じでは予想を裏切るほど元気に鳴ってくれている。アラを探せばいろいろと噴出しそうだが、数十万円クラスのAVアンプにいろいろとケチと付けていては心が狭くなる。今回の音作りはこれにて完了としよう。

オーディオラックの前にS2800 Centerを配置している。想像していたよりもかなり大きく、プラズマディスプレイ表示部の横幅にも匹敵するほどのサイズ。33WERからアップグレードして、センタースピーカーの重要性をこれでもかと思い知らされた 新築なので、リビングルームの壁、天井にスピーカーやプロジェクタの配線を綺麗に取り回せるようにパイプ(22mm径のCD管)をこれでもかというほど埋め込みまくった。天井吊り下げ型のスピーカー用に合計8本、プロジェクタ用に5本の合計13本だ。写真は、建設している当時に撮影したもの


■ 120インチのフロントプロジェクションを導入する

旧居の6畳間では十分に大画面だった43インチのプラズマディスプレイだが、新しいAVルームに配置するとあまりに寂しい風景となってしまう。やはり、100インチ超のフロントプロジェクションが不可欠である

 さて次に、プロジェクタの導入である。旧居の6畳間で楽しんでいたときは43インチのプラズマディスプレイ「パイオニア PDP-434HD」で十分だったが、部屋が18畳になるとやっぱり欲も出てくるもの。そこで、思い切って120インチのフロントプロジェクションシステムを導入することに決めた。

 まずは、プロジェクタの選定である。一口にプロジェクタといっても、安いモノから高いモノまで実に様々だ。当初は、ハイビジョン映像ソースがBS/110度CSデジタル放送くらいしかない現状を踏まえ、720pまでリアルに映写できる低価格の液晶プロジェクタで十分だと考えていた。いずれブルーレイなりHD DVDなりで、ハイビジョン映像を収録したパッケージソフトが発売される時代になったら、1080pまでリアルに映写できるプロジェクタを改めて買い直せばよい……と。

 そこで筆者が選んだ候補が、そこそこの性能と最新の機能を兼ね備えたエプソンの「EMP-TW500」と松下電器産業の「TH-AE700」だった。いずれも720p液晶パネルを搭載した人気のプロジェクタである。

 しかし、本当にこれでいいのか。そこで、本誌「大画面★マニア」でおなじみの西川善司氏に相談してみた。西川氏によると、多くの普及機が採用しているエプソン製のD4液晶パネル搭載製品は中明色表示時に、けっこう目立つ縦縞のシミが出る、単板式のDLPはカラーフリッカーが発生するとのこと。要するに、筆者が想定していたクラスの製品は何らかの“気になる人にはどうしても気になる”問題を抱えているわけだ。人間は、外部刺激の大半を視覚から受けている動物なので、映像回りはあまり妥協したくないところ。

 では、「善司さんが絶対的におすすめできる製品は何か?」と単刀直入に質問したところ、「ビクターのDLA-HD2KとソニーのQUALIA 004しかない」といわれてしまった。いずれも1,920×1,080ドットの解像度を持つフルHDプロジェクタである。本体価格は筆者のカローラ新車2台分、付随するものをすべて含めれば3台分にも達しそうな気配だ。


■ やっぱりフルHDプロジェクタに限る!!

 とはいえ、せっかくのチャンスである。新居を購入して金銭感覚が麻痺しているこのチャンスに、妥協なしでプロジェクタを選定することにしよう。男は、後先をかえりみずまっすぐ前に進む動物なのだ。ここで躊躇してはならない! と勝手に自己暗示!?

 そこで、西川氏から2機種についてさらに細かくお聞きしたのだが、西川氏自身は、ビクターの「DLA-G10」ユーザということもあり、DLA-HD2Kに強い興味を示しているようだった。DLA-HD2Kは、プロジェクションヘッド部とデジタルビデオプロセッサに分離しているのが特徴で、あらゆる映像ソースをこのデジタルビデオプロセッサで1080pにアップコンバージョンしてからプロジェクションヘッド部に送出する。デジタルビデオプロセッサからプロジェクションヘッド部への接続はDVIケーブル1本(5メートル超の場合は専用の光ケーブル)のみなので、配線の取り回しが非常に美しい。

デザインがカッコイイことも購入を決めた大きなポイントだ

 しかし、プロジェクションヘッド部の輝度が500ANSIルーメンとかなり低く、完全な暗室環境でなければまともに映らないこと、それからプロジェクタ本体の動作音がかなり大きいことが問題だった。少々薄暗い環境でカジュアルにプロジェクタを使うことも想定していたため、1,000ANSIルーメン以上の輝度は欲しかったのだ。また、プロジェクタで映画や音楽を楽しんでいるときに、背面のプロジェクタからゴーゴーと音が出てくれるのもあまり嬉しくない。

 こうした経緯から、最終的にはQUALIA 004へとたどり着いた。実をいうと、デザインがカッコイイことも購入の大きなポイントになった。というか、2製品のどちらかといわれたら、3秒でQUALIA 004に決められるほどカッコイイ。ソニーがQUALIAシリーズを発表した当時は「こんなアホみたいに高い商品、どこぞのバカが買うのかね?」と冷ややかな態度をとっていたが、まさか自身が手を出すとは思わなかった。つまり、筆者がそのバカの一人だったようだ(笑)。後編では、そんなドキドキのQUALIA 004の購入記をお届けする。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200306/03-0610B/
□QUALIAのホームページ
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/QUALIA/
□関連記事
【2003年6月10日】ソニー、世界初のフルHDパネルを採用したホームプロジェクタ
-民生機初のキセノンランプも搭載、HDMI入力も国内初装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030610/sony2.htm
【2003年12月9日】2年ぶりにリニューアルしたフラッグシップAVアンプ
伊勢雅英のヤマハ「DSP-Z9」購入記
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031209/dspz9.htm

(2004年11月11日)

[Reported by 伊勢雅英]


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