■ NCヘッドフォンの意外な伏兵 いままで多くのノイズキャンセルヘッドフォン(NCヘッドフォン)を取り上げてきたが、個人的に最も期待しているのはCESでも出展されたSennheiserの「PXC 300」。もうじき発売されてもいいと思うが、日本を始め、CeBITでドイツに出張した際にも販売されておらず、購入できなかった。 もともと製品数の少ないノイズキャンセルヘッドフォン市場。昨年BOSEが、今年はソニーが新製品を発表しており、当面新製品投入は無いかと思われたが、思わぬ伏兵が現れた。それが、クリエイティブのノイズキャンセルヘッドフォン「HN-505」だ。 同社のヘッドフォン市場参入製品となり、価格は4,980円と、今まで紹介してきたNCヘッドフォンでは最安クラス。実売6,000円のソニー「MDR-NC6」や「MDR-NC94」など、比較的低価格なNCヘッドフォンは、音質がイマイチだったため若干不安もよぎるが、それでも5,000円を切る価格のインパクトは大きい。 ボディカラーはホワイトのみで、ブラックなどの無難なカラーは用意されていない。もっとも米国などではブラックモデルも発売されているようだ。
■ 本体の質感はイマイチ
パッケージはブリスターパック。通常この手の製品のブリスターパックは開けにくく、パックを破壊しないと取り出せないような例も多い。しかし、HN-505はツメで前後のパックを固定しているだけで、ツメをはずすだけで簡単に開けられた。 同梱品は、キャリングポーチ、航空機用プラグアダプタのみ。このキャリングポーチの素材感が“いかにもビニール”的なモノなのには面食らった。 本体は、ヘッドバンド部の中央と端で折りたたむことができ、キャリングポーチに収納できる。右ハウジングに電源スイッチを装備し、その上部に電池ボックスを装備。電池は単4乾電池1本。また、両ハウジングの外側にNC用のマイクを装備する。ケーブルは両ハウジングから出ているタイプだ。ケーブル長は1.6m。
残念ながら本体の質感はかなりチープ。まず、本体の外装の素材感がいかにもプラスチッキー。その上、ヘッドバンド部を伸ばすと、「キュッ、キュッ」と鳴いたり、ノイズキャンセルON/OFFを示すLEDが剥き出しになっていたり、細部を見ていくと作り込みの甘さが目立つ。さらに、ハウジングをアームに固定する箇所には緩衝材としてスポンジが……。 ドライバユニットは30mm径のレアアース・マグネット・トランスデューサーを採用。再生周波数帯域は20Hz~17kHz。インピーダンスは32Ω。電源は単4乾電池1本で、電池を含む重量は約150g。
■ ホールド性は良好。ボディカラー/デザインは微妙
とりあえず装着してみる。重量は150g、重量バランスが良いため、しっかりとフィットして適度なホールド感がある。ヘッドバンドはかなりチープで触感はイマイチだが、イヤーパッドはこのクラスにしてはソフトでしっかりホールドできる。側圧は弱めで、やや小さめなパッドのため、耳全体を覆うというわけではないが、しっかりホールドする感触が得られる。 ケーブルは各ハウジングからの両出しタイプのため、取り回しにはやや気を使う。また、大振りなハウジングで、さらにボディカラーがホワイトということで、外でヘッドフォンをかけているとかなり目立つ。おまけにお世辞にも見栄えのいい外装でないことから、正直電車内で使うのは恥ずかしい……。飛行機での長距離移動などであれば別にいいのだが、せめて電車の中などでもさほど目立たないブラックモデルも用意して欲しいとところ。 ノイズキャンセルのON/OFFは右ハウジングのスイッチで行なう。自動パワーオフ機能は備えていないので、使い終わったらOFFに戻しておく必要があるのは、ソニーのMDR-NC50などと同様。
■ 音質は低価格NCヘッドフォンでは最高クラス まずはiPodと接続して、NC OFFで音楽を聞いてみた。ソニー「MDR-NC11A」、「MDR-NC6」などの実売1万円以下のNCヘッドフォンは、音質的に不満の残る製品が多かったので、正直期待していなかったのだが、HN-505ではかなり満足いく音質だったので驚かされた。 能率が低いため、iPodやZen Microなどのオーディオプレーヤーでの利用時に、ややボリュームを大きめにする必要があるが、しっかりとした音場と、中低域のバランスの良さは低価格帯のNCヘッドフォンでは感じられなかったもの。同価格帯の普通のヘッドフォンと比較すると、特筆するほど音質がいいわけではないのだが、それでもNCヘッドフォンのNC OFF時の音質としてはかなり高いレベルといえる。 比較的静かな編集部でNCをONにするとぐっと低域が持ち上がり、音の印象はかなり変化する。ロックやポップスでは、ベースの量感が増し、バスドラやスネアのアタックもかなり強くなる。音像もぐっと前に出てきており、ポップス系のみならずクラシック系のソースでも迫力は大幅に増す。 NCヘッドフォンでは、NC ONにすると音場が狭くなる製品が多いが、HN-505では狭くなる印象は無く、高域にも独特の艶っぽさが出てくる。低域はやや誇張気味だが、全体的な印象としてはさほど違和感なく楽しめる。ヒップホップなどのビートの強い音楽だと、やや低域が出すぎにも感じるが、NC ON/OFFの音質変化が大きい割に、どちらのモードでも楽しめるという印象だ。静かな環境でNC ONにしてみると、NCの逆位相成分に起因すると思われる、「サー」というホワイトノイズが感じられるが、音楽を聴いている限りでは知覚できないので、大きな問題はないだろう。 実際に地下鉄で利用してみると、耳全体を覆うわけではないことから、それなりに外界の音が入ってくる。NC ONにしてみると、ノイズキャンセル効果自体はさほど強くなく、車内アナウンスや人の声についてはあまりキャンセル効果がない。音量が少し小さくなるという程度だ。 しかし、電車が走り出すと地下鉄のロードノイズと「ゴー」という共鳴音がしっかりカットされる。非連続的なノイズに対してはあまり効果がないが、車内空調のノイズなどもしっかりカットされるので、効果の大きさは十分体感できる。 また、音質の面でも、地下鉄のようなノイズの多い場所の場合はNC ONのほうが圧倒的に気持ちよく感じる。静かな場所ではやや目立った低域の誇張も、ほとんど感じされず、基本的に室外や移動中はNC ONで使う方が楽しめるだろう。 バッテリ駆動時間はカタログ値で約29時間(アルカリ電池)、連続起動で約64時間。20時間以上の使用でも効果の低下は感じられないが、NCをOFFにし忘れると次に使うときには電池が空っぽということもあるので、利用時には気をつけたいところだ。
■ 音質には価格を超えた魅力。本体の質感が残念 シンプルな機能だが、NCヘッドフォンとしての性能には満足。出張などで飛行機の長時間のフライトの前に、空港で5,000円以下で売っていたらフラッと買ってしまうかもしれない。 しかし、普段の電車通勤時などに利用するかというと、たぶん使わないというのが正直なところ。いつも手に持っているモノにはやはりある程度の質感を求めたい。また、ホワイトというボディカラーも必要以上に目立ってしまう。とても格好いいヘッドフォンで見せびらかしたいのであれば、目立つのも構わないが、この質感で目立つのはちょっと……。 とはいえ、この音質と価格は魅力的。飛行機や新幹線で長時間移動が多い人にはNCヘッドフォン入門機としてお勧めでき、その期待には十分応える製品に仕上がっている。 □クリエイティブメディアのホームページ (2005年4月1日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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