■ NAB2006開幕 先日お伝えしたとおり、NABレポートを2回に渡りお送りする。主催者側の予測どおり、やはり今年は例年以上の人出で、初日の会場はどこも大変な賑わいを見せた。特に新製品、あるいはNABで初お目見えの製品の周りは大変な人だかりで、満足に写真も撮れない状態である。コンベンション初日を終えた今回は、速報性の高いニュースを中心にお送りする。
■ 細かな大変化? 転換期を迎えたソニーのHD戦略
まずカメラでは、デジタルシネマ用カムコーダ「HDW-F900」の後継機となる「HDW-F900R」を発表した。基本的にはリファインモデルという感じだが、前後に長かったF900のボディを、すでに発売されているHDW-750相当のボディへと小型化し、従来までオプションであったHD-SDI出力を2系統内蔵した。
報道用カメラシステムとして開発されたXDCAMは、HDになってから若干方向性が変わり、報道だけでなく幅広いコンテンツ制作にも活用できるよう変化してきている。 「PDW-F350L」は、60iだけでなく24P、25P、30Pなどのプログレッシブモードでの撮影を可能にした、XDCAM HDカムコーダの最上位モデル。F900まではちょっと、というときに、リーズナブルにシネマスタイルで使えるカムコーダとなっている。
廉価ながらも特殊撮影までカバーできるHDカメラとして、注目されることだろう。今年の4月から発売で、価格は258万円(レンズ別) 一方カムコーダの不在が長らく続いたHDCAM SRだが、今回ポータブルVTRをカムコーダ化したモデルが参考出品された。詳細なスペックは未定だが、見た限りレンズ込みの重量で12kgぐらいにはなりそうだ。ただこれまでは完全にカメラ部とプロセッサ・VTR部を別に用意しなければならなかったため、かなりきちんとスタジオで撮る現場でなければ使われなかったHDCAM SRが、多少はフィールドに進出してくるかもしれない。価格・発売時期などは未定。 編集ソリューションでは、同社のXPRIを完全ソフトウェア化した「XPRI NS」を発表した。これまでハードウェア込みの製品であったノンリニア製品のXPRIだが、レスポンスが遅い、安定性が悪いなど、あまり評価されてこなかった。だが完全にソフトウェア化することで、これまでのハードウェア上の問題として抱え込んでいた部分をクリアし、快適な操作性と安定性の実現を目指すという。
価格は未定だが、発売時期は2007年1月を目指す。当初はWindows XP SP2のみの対応で、Windows Vista対応は安定性などを見ながら投入時期を検討するという。なおXPRI NSの投入を機に、従来のハードウェア型XPRIは生産完了となる。
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■ グラスバレー、マルチストレージ対応カメラ「infinity」を出展 すでにInterBEEではモックアップによる展示を行なっていた「infinity」だが、ソニーブースの隣、Thomson GrassValleyブースでは、実働モデルが展示されている。infinityの特徴としては、リムーバブルHDDやCFカード、USBメモリなど、いろんなメディアに対して録画が可能なところ。また録画コーデックとしてJPEG2000を採用するなど、新しい取り組みが目立つビデオカメラである。 リムーバブルHDDは、アイオメガの「REV」という製品をプロ用に改良した「REV Pro」というもの。通常のREVメディアも使用できるが、当面日本では、グラスバレージャパンがREV Proメディアを販売する。
実際の製品でも、すでにEDIUSシリーズはGrassValleyのビデオサーバと連携するなど、本格的プロ用編集ツールとしての道を歩み始めた。
HDの本格的編集ツールとしては破格の安さを誇るEdiusシリーズだったが、今後はGrassValleyのビデオサーバやカメラとのコンビネーションで、いよいよプロ業界でもApple、Avidといった強豪達と対等に戦っていく土壌ができたことになる。
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■ 熱狂で迎えられたキヤノン「XL H1」
だが元々日本よりも先に、海外のプロユーザーが飛びついたXLシリーズ、さらにそれのHD版ということで、CES2006と展示内容はほとんど変わりないのだが、NAB来場者の間では大変な熱狂で迎えられている。昨年のNAB2005では、Victorがプロ用HDVブランド「ProHD」を立ち上げて大盛況だったが、今年はその熱狂がキヤノンブースに伝染したような恰好だ。 また今年の秋頃投入すると言われていたXL H1用ワイドズームレンズだが、35mm換算で焦点距離24.5mm~147mmという仕様が明らかになった。これまでは標準レンズの38.9mmがワイドの限界であったわけだが、リーズナブルに広角のハイビジョン映像が撮れるカメラとして人気を呼びそうだ。レンズの展示はまだモックアップだが、発売時期は今年11月となっている。
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■ 上手い具合に隙間を埋めるローランドの製品群 放送局をHD対応させるための設備投資は、民放地方局1局で20~30億円前後と言われている。現在撮影から編集、送出までトータルソリューションを提案できる大手メーカーは、まずこの案件を取ろうということで大変な営業攻勢をかけているが、番組/VP/PV制作といったプロダクションユースという面で見れば、いろんなフォーマットの素材が混在してしまう状況となっている。
「PR-1000HD」は1080i、720p、DV、静止画、パソコン画面といったバラバラのフォーマットの映像ファイルを記録し、すべて1080iにリアルタイムで変換しながら出力できるという、マルチフォーマット・プレゼンターと称する製品。言わばビデオサーバーに出力が付いて、瞬時に映像が出せるような製品である。 インターフェースは専用GUIをマウスで操作する恰好だが、出力段にカラーコレクタを装備するなど、ライブでプロジェクタ上映するなどの用途を見込んでいる。出力はDVI端子となっている。
以上はEDIROLブランドに属する製品群だが、業務用オーディオブランドとして、これも昨年から「RSS」というブランドを立ち上げている。
マルチチャンネルの分岐も普通のEthernet用スイッチングHUBでできるなど、最高品質のデジタルオーディオとIT技術を上手く組み合わせた製品だ。 デジタル音声をEthernetに変換する製品は他にもあるが、S-4000は圧倒的にレイテンシーが少ないのがメリット。また長距離伝送でも周波数特性が落ちず、ノイズにも強いため、ライブイベントと収録を同時に行なうような時に重宝するだろう。
□NAB 2006のホームページ (2006年4月26日)
[Reported by 小寺信良] |
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