■ いよいよBlu-rayが始動!
次世代DVD覇権争いに対して、「フォーマット戦争は終わった」と宣言した松下電器。その自信の背景には、11月15日に発売される同社のBlu-ray搭載DIGA「DMR-BW200」、「DMR-BW100」の完成度があることは間違いないだろう。 元々Blu-ray規格のレコーダは、2003年にソニーから「BDZ-S77」が、2004年に松下から「DMR-E700BD」が発売されている。だがご存じのようにその後、フォーマットの優位性を争ってHD DVDとの紆余曲折があり、当初のBlu-ray規格からはかなり違うものになっていった。 つまりBlu-rayとしては2世代目ではあるものの、事実上今回のDMR-BW200/100が「初物扱い」という微妙な事態になるのである。むろん初代機ではHDDを搭載していなかったし、年内発売が予定されているレコーダの中ではもっとも発売時期が早いこともあって、BD/HDDハイブリッドレコーダとしては初物ということで間違いない。
今回Zooma! では、新世代機の上位モデル「DMR-BW200」(以下BW200)をいち早くお借りすることができた。500GBのHDD搭載ダブルチューナー機で、店頭予想価格は30万円前後となっている。まだ試作機であるため、製品版とは仕様が異なる可能性もあるが、DVDレコーダのシェアNo.1を誇るDIGAシリーズのBlu-ray機を、早速試してみよう。
■ さりげなさが光るシンプルデザイン
とかく初号機というのは高級路線で、各社試作機段階ではパルテノン神殿かヨってぐらいに気合いが入り過ぎだったBlu-rayレコーダ。だが実際にPanasonicで製品化されたものは非常にシンプルなデザインで、ある意味普及モデルを作り慣れた同社らしい現実路線を感じさせる。 フロントパネルの基本的なテイストは、9月に発売されたW録機「DMR-XW50」に近く、表面には電源ボタンぐらいしか見あたらない。半透明のアクリルパネルは全体がまとまって開くようになっており、ドライブトレイなども普段は隠れている。特に電動で開くわけではないあたり、いい具合に肩の力が抜けて「普通のレコーダでBlu-ray」という思想を感じる部分だ。 パネル内部にはBDドライブ、SDカードスロット、B-CASカードスロット、i.LINK端子ほか、操作ボタン類がある。電源のステータスは中央部の青いLEDのみと、DMR-XW50と同じテイストだ。i.LINK端子はフロントパネルを開けないと使用できないため、アイ・オー・データの「Rec-POT」やD-VHSなどの外部機器を接続しておきたい場合はパネルが開きっぱなしになるのが、若干気になるところではある。
HDDは500GBで、地デジ番組なら約63時間の録画が可能。注目のBDドライブは、初代Ver1.0のカートリッジメディアの再生もサポートしていることもあって、角形の深みのあるトレイになっている。 Blu-rayの記録可能メディアとしては、リライタブルのBD-REとライトワンスのBD-Rの二層メディアに対応しており、50GBの記録が可能。地デジ番組を想定すれば、1枚に約6時間記録できるのは大きい。また今後リリースされるBDビデオの再生もサポートしており、レコーダとしては世界初のBDビデオ再生機となる。 12月に発売が予定されているソニーの「BDZ-V9」および「BDZ-V7」では、2層記録をサポートしないことが明らかになった。一方松下は「最初から2層当たり前」でリリースするあたり、同じBlu-ray陣営の中でも技術力に差があることを見せつけた格好だ。
背面に回ってみよう。DIGAの特徴でもある飛び出した電源ファンは、今回は本体埋め込みとなっている。RFは地上アナログ、地上デジタル、BS/110度CSデジタルの3系統。デジタル放送は全波ダブルチューナだ。 特徴的なのは音声出力で、昨今では珍しい5.1chのアナログ出力を備えている。同機がサポートするオーディオフォーマットは、ドルビーデジタルやDTS、AAC、ドルビーデジタル・プラス(DD+)。 新フォーマットであるドルビーデジタル・プラスでは、7.1chのオーディオトラックを持つが、伝送できるのはHDMIのみとなる。アナログ出力は、AVアンプやテレビ側がこれに対応できない場合に備えてのことだろう。アナログで出力する場合は、ドルビーデジタル・プラスも5.1chにダウンミックスされるはずである。 デジタル音声出力は光と同軸の2系統、HDMIは1系統。HDMI出力は1080pまで、D端子はD4まで対応している。アナログAV入出力は、入力2、出力1。そのほかD端子用の独立アナログLR音声出力が1系統ある。 リモコンも見てみよう。基本的には従来のDVDレコーダに付属のものと同型で、印字部の表記がDVDからBDに変わっている程度。すなわち操作性も、従来機とほぼ同じであることが予想される。
■ DVDと同じ操作性のBDダビング
いつもならば予約システムなどからゆっくり見ていくところだが、今回は待望のBlu-ray搭載ということで、まずダビング/ムーブ関係を中心に見ていくことにしたい。というのも、基本メニューや番組表などのシステムは、9月発売のW録機「DMR-XW50」とほとんど変わらない。このあたりの使い勝手は、以前のレビューを読んでいただければ、一通りのことはお分かり頂けるだろう。
まずBDへのダビング機能だが、HDDに録画した番組の編集に関しては、部分削除か分割しかなくなっているのは、昨今のDIGAと同じだ。BDの記録メディアをドライブにセットすると、「おまかせダビング」やフォーマットへの導入画面が表示される。また各ステップごとに操作の意味をナレーションで教えてくれるなど、初心者にもわかりやすいガイダンスが付いている。
フォーマット後に番組選択画面でダビングしたい番組を選択すると、あとはダビング(この場合はムーブ)が実行される。ダビング/ムーブ中は予約録画や番組再生は実行できないが、記録速度は実時間に対して4倍速程度なので、まずまず現実的な速度と言っていいだろう。ムーブ後の映像は当たり前だが、画質的にまったく変わりはない。 一方「詳細ダビング」では、ダビング方向や画質モードなどを選択しながらのダビング/ムーブが可能だ。ただコピーワンスの番組をBD-REにムーブしたものは、再びHDDにムーブすることはできない。
続いてデジタル放送の録画が可能なHDD、Rec-POTのダビングを試してみよう。Rec-POTは言わばテレビの外付けHDDのような形で動作するHDDレコーダで、これに録り貯めた物はリムーバブルメディアに対してそのままの画質で取り出すことはできなかった。いつか次世代DVDレコーダが現われたときには、取り出せるのではないかと期待していた方も多いことだろう。今回使用したのはRec-POT Rの「HVR-HD250R」である。 Rec-POTには、D-VHSのエミュレーションモードと、ディスクモードの2つがある。もちろんディスクモードであれば、双方向ダビングも含めいろいろな機能が使えるわけだが、実際には接続互換性の都合でD-VHSモードでしか使用できない場合もある。 ディスクモードの対応状況は、メーカーや機器ごとに違うわけだが、Panasonicでは以前からテレビでもD-VHSモードしかサポートしていない。BW200との接続でもD-VHSモードで接続すれば、BW200からRec-POTへムーブできる。さすがD-VHSのエミュレーション、等倍速のムーブである。
だが逆方向のムーブはできない。なぜなら、コピーワンスのコンテンツに対して、D-VHSにはダビングしたあと自分自身を消去するという機能がないからである。当然D-VHSのエミュレーションとして動いている場合には、同じようにできないわけである。
コピーワンスではないコンテンツが大量にあるなら別だが、そういうケースは希だろう。残念ながらコピーワンスコンテンツでは、BW200をRec-POTと組み合わせて使うメリットはないようだ。ただ、DMR-BW200の製品版のファームウェアでは、対応状況が変更される可能性がある。
■ 期待したい再生機能 続いて再生機能も見てみよう。本機は市販のBDビデオが再生できる、BDプレーヤーでもある。もちろん国内発売のタイトルは、一番早いものでも11月3日なので、米国で発売されているものを再生してみた。 すでに米国では5月からBDビデオが発売されているが、DVD時代と違って日米では同じリージョンコードなので、そのまま再生できる。英語のヒアリングに不自由がない人、または音楽物が見たい人に取っては、うれしい仕様だ。 BDディスクを入れると、自動的にメディアがBDに切り替わって再生が始まるわけだが、ディスクをセットして映像が出てくるまで約35秒。DVDよりは10秒ほど長くかかるが、まあ待てない時間ではない。気になるのはドライブのヘッドが動くシーク音が、「コー、コー」と言った具合にかなり大きく箱鳴りするところだ。このあたりはやはり再生専用機のような静寂性を求めるのは酷なのだろう。 本機ではネットワーク経由のインタラクティブ機能は搭載されていないが、まず映画タイトルの鑑賞であれば、このあたりは問題にならないであろうと思われる。 またBD Ver1.0フォーマットで記録されたカートリッジ型のBD-REメディアも、そのままドライブにセットすれば問題なく再生できる。現行フォーマットと同じように「再生ナビ」画面が現われて、コンテンツの選択が可能だ。ただ再生が可能なだけで、ディスクへの記録や編集はできない。
一方今年5月に規格が立ち上がったAVCHD、DVDメディアにハイビジョンをH.264で記録するフォーマットだが、ソニーは今後発売するBlu-ray全機器で再生をサポートすると明言している。一方Panasonicの場合はその対応状況が未発表のままであったので、気になっている人も多いことだろう。 まだDVD録画モデルはソニーの「HDR-UX1」しかない状況だが、手元にディスクがあったのでセットしてみた。ご覧のようにメニューまでは表示されるのだが、それ以降は動作しなかった。 まだ松下自身がAVCHD機を出ていないので、なかなか検証が難しいところではあるだろう。今後本機で再生がサポートされるかも含めて未定だが、松下もAVCHD規格の盟主であるわけで、なんとか頑張って貰いたいものである。
■ 総論 事実上国内初のBD/HDDレコーダとなるDMR-BW200だが、Blu-rayだからといって気張ったところもなく、これまでのDIGAがスルッとBlu-rayになったという感じのマシンである。メディア切り替えや編集などの動作レスポンスも大味なところはなく、これまでのDIGAと遜色ない操作性を実現した。Ver1.0ディスクの再生、BD-R/RE 2層記録対応など、これまで「やる」と明言してきたことを実際にやって見せた技術的意義は大きい。 ただHDVカメラからの映像キャプチャや、AVCHDメディアの再生ができないなど、ハイビジョンカメラ系への対応が弱点になるだろう。松下自身が未だHDVもAVCHDも製品をリリースしていない現在では、現段階ではサポートのプライオリティは低いということなのかもしれない。 デジタルレコーダもDVD時代に紆余曲折を経て、日常の中でどう使っていくか、ユーザー像は割と見えてきたところはある。シンプルにテレビ番組が保存できればいいという人にとっては、チャプタ機能やプレイリストはそれほど重要ではないだろう。 だがハイビジョンビデオカメラの映像を編集するような、クリエイティブ端末としてBDレコーダに期待していた人には、BW200はあまり魅力的な選択ではないかもしれない。本年中に発売されるBDレコーダとして、ソニーとの棲み分けは、そのあたりがポイントになるだろう。 BDレコーダはこれまでのように、ダビングあるいはムーブで画質劣化がない分、メーカーや製品の差別化がシビアになってくる。今後発売を予定しているメーカーも、BDに期待されているフィーチャーのどれを見繕って製品化するか、そしてそうなったときに使い方がややこしくならないかなど、どうもまた一波乱ありそうな気配だ。
□松下電器産業のホームページ (2006年10月10日)
[Reported by 小寺信良]
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