Blu-ray Disc関連インタビューの3回目は、ソニーでビデオレコーダ関連事業を統括する、西谷清コーポレート・エグゼクティブSVP テレビ・ビデオ事業本部 副本部長だ。BDフォーマット策定に、ソニー側の窓口として関わった人物であり、BDドライブからCellまで、ソニーの家電技術開発を支えるキーマンでもある。 気になる「2層非対応」の理由から、今後の家電プラットフォームの行方まで、同社の戦略を伺った。 ■ 予想より1年遅れたBDレコーダ -Blu-rayの準備をはじめてからかなりの時間が経過しています。ソニーの初代BDレコーダ「BDZ-S77」が出て3年以上が経過していますが、「時間がかかりすぎた」と感じていますか? それとも「読み通り」でしたか?
西谷:私の期待より、1年くらい遅くなった、という印象ですね。
去年の5月、もう一度フォーマットを見直しましょう、HD DVDとの統合を考えましょう、という報道が出ましたよね? あの頃で、ほぼBDのフォーマット自身は決まっていたんですよ。当時、HD DVDとBD双方が歩み寄り、例えばVC-1を入れましょうとか、HDiをどうするかといったことを、東芝さんと話し合いました。結果物別れには終わりましたが、そこで追加の機能がいくつか出たので、フォーマットの見直しが行なわれました。それが遅れの原因の一つです。
ハリウッド側と我々とでは、時間軸とイメージが違っているんです。彼らは、フォーマットさえ決まればすぐに製品が出せる、と思っています。しかし実際には、フォーマットが決まってから、製品が出るまでには2年はかかりますので、修正を加えたぶんもあり、製品化も遅れました。
またその前に、ハリウッドの方々が「真剣になり始めた」時期、というのがあるんです。真剣になり始めたのは、2004年くらいのこと。DVDの販売が頭打ちになり始めていたんです。その頃ようやく、本当に緊迫感が出てきました。それまでは、時間限定せずに自分たちがやりたいことを全部言っている、という感じでしたね。どうせ真剣になるなら、もうちょっと早く言って欲しかった(笑)。 真剣になってくると、コピープロテクションとかインタラクティブ機能とか、いろいろなことに条件が出てきます。BD+の導入もこの時期ですね。本気で議論が始まり、短期に決着をつけるのは難しくなりました。 -実際、現在でもAACSは暫定ですよね。 西谷:ええ。ウォーターマークの扱いなど、議論がまだ続いています。 -去年、色々取材して出てきたのが、アナログ出力を含め、著作権保護の策定に時間がかかった、という話ですが。 西谷:そうですね。ハリウッド側が要求することは、非常に難易度が高いんです。
例えば、海賊版ができたら、生産している会社とか、暗号鍵を提供しているところとかを全部見つける方法は考えられないか、という要求が出ました。一応そのための仕組みは整えましたけれど、完璧に実現するのは容易ではありません。
技術的なものだけでなく、契約をきちんとしないと暗号鍵を発行しない、また、契約違反を起こすとどのような強制力が発行できるか、という議論も必要になります。こうなると、エンジニアのレベルじゃなくなり、法律家の話です。 -とすると、技術的なめどは立っていたけれど、彼らの求めるものを実現するために、どのようなカードを用意すればいいかを確定するのに時間がかかった、と。 西谷:我々の側から「そこまでしなくてもいい」とはいえないわけです。技術で割り切れるものではないですから。画質、音質ならある程度の具体性をもって話せますけどね。 -その中でも、日本サイドとして気になっていたのがアナログ規制の話です。 西谷:もうそこは、D端子の普及率を提示して、日本だけは特例にしてもらえないか、みたいな話をしていました。
一番議論になったのは、「期限をいつにするか」でしたね。結局2010年末まで、ということで落ち着きました。しかし、最初は2008年頃、と要求されました。いくらなんでもそれは近すぎる。2004年か5年に議論していたわけですが、彼らにすれば「今決めれば、4年も余裕があるじゃないか」というわけですよ。
先ほど言いましたように、規格策定から商品化までは1、2年かかります。「いやいや2年しかない」という話を納得してもらう必要があったわけです。 ■ 存在した「幻のドライブ」。2層非対応の理由は「検証不足」
-規格化に時間がかかると、ドライブの開発、という技術面から言えば、余裕が産まれやすいはずです。ところが、BDレコーダ「BDZ-V7/V9」はR/REの2層書き込みと、読み込みに対応できなかった。ドライブの技術開発という面でいうと、S77を出したところからあまり進展が見られていないようにも感じます。 ドライブ開発はどう進んでいたんですか? 西谷:実は、(2層対応の)商品にならなかったドライブがあります。プレーヤーもレコーダもほぼ同じ構造で、展示会などでも展示はしました。一部、業務用機器などでは実際に採用されています。
今冬の製品では、そのドライブの次の世代をやりましょう、ということで開発を進めていたんですが、諸事情から棚上げになってしまったんですよ。
我々の商品は、元々2005年末をターゲットに用意していたんですが、発売が1年から1年半ずれてしまった。結果、ドライブ開発に谷間が産まれてしまったんです。 -とすると、本来は2005年に2層ドライブ付きの製品を投入予定でいたものが、規格策定に時間がかかったことで、発売できなくなってしまった、と。 西谷:ここまでに商品を出そう、と開発してきたものが規格の事情で出せなくなり、じゃあ仕切り直して再度開発を……と準備をしていたところではあったのですが。 -一部では、PLAYSTATION 3向けのドライブ開発にエンジニアリング・リソースを割いたため、人員が記録型ドライブに回らなかったのでは、とささやかれています。これは真実ですか? 西谷:ドライブの設計は並行して進めていたんです。問題は、開発後の「評価」なんです。レコーダ向けの評価の手が足りなくなった、というのが真実です。 -開発の現場では同じドライブで2層対応ができているが、商品としてのクオリティを満たさない可能性があるので「2層対応」とは謳わない、ということですか? 西谷:そうですね。2層記録に関し、「これはちょっとまずいかな」と夏以降にわかり始めて、いろいろな条件でテストをしはじめたら、まずい条件というのが見つかってきました。
問題が出たのはBDだけですが、そこを直すと、CDやDVDにも影響が出ないか、すべてを検証しなおさないといけない。そこに時間がかかっています。 -メディアの種類が多様ですよね。BDになることによって、DVDの時代に比べどのくらい難易度が上がっているのですか? 西谷:時間でいうと、倍とは言わないですけれど、1.5倍にはなっていますね。
1サイクルに1週間かかります。しかも、不具合が見つかると、修正を加えるとまた最初からやり直しです。検証が必要なディスクの種類だけで50くらいありますし。
やはりPC系との大きな違いは、データか映像か、ということなんです。データを書くなら、「失敗したらもう一枚持ってきてやり直せばいい」ということになりますが、映像はそうはいかない。リアルタイム直接書込やコピーワンスのムーブに失敗したら、それでおしまいですからね。
信頼性をどこまで保証すればいいか、というのは、ディスクメーカーもドライブとの組み合わせが色々あるので、どう保証し合えばいいか、確立された技術はDVDでもないんですよ。技術スペックの表を満たすだけでは、保証しきれない領域もあります。 -それが「技術的に大きなマイナスだ」と言われていることについてはどう考えていますか? 西谷:結果的にいえば、問題を見つけるのに時間がかかりましたし、対応にも時間が足りなかった。言われてしまえば、その通り。甘んじて受け入れるしかないです。
ただ、これは負け惜しみと言われるかもしれませんが、問題が発生する難しい条件を見つけ出すところまでの技術はあったかな、と。お客様の手に届いてから、問題が色々出てくるよりは良かっただろうと思います。 -検証が間に合わなかったものを、後日ファームアップでなんとかすることは出来ないんですか? 西谷:今回のドライブは難しいでしょうね。ハードと一体になったものですから。
PSXでも同じようなことがありましたが、あのときはアプリケーション側の条件だったので、アップグレードが可能でした。レーザーのパワーをディスクにあわせて調整する部分なんですが、これは外側のアプリケーションじゃあどうにもならない。出荷するドライブ毎に調整をかけているので、統一的にソフトでどうこうなる問題ではありません。 -間に合わない、となった時に、1層で、という判断をすることになったわけですが、市場でそれが許容されると考えましたか? 西谷:そうですね。1層で(地デジを)2時間半から3時間は録画できます。年末の長時間ドラマや紅白などは、2枚に入れ替えて、やっていただければ……。完全にやりたいことができない、というわけではないので、ご納得いただける場合も多いのではないかと思います。 -年末に出す、というのはマストだったわけですか? 延期は考えませんでしたか? 西谷:まったくディスクが書けない、ということであればそうしましたが、相応の性能は示せるわけですから、延期は考えませんでした。2層はあって欲しいものではあるけれど、1層でもある程度ニーズは満たせる、と考えました。
■ ドライブは「共同開発」だった
-レコーダ搭載のドライブはソニー製ではない、という話も聞きます。これは真実ですか? 西谷:公表していません。ただ、ドライブ開発は、研究開発費とか金型費とか入れると、すぐ二桁億円の投資になり、1社のレコーダ事業だけでは、なかなか回収できるものではありません。何社かと協力をさせていただいています。デバイスの共用化や、検証は情報交換をしましょう、という話し合いが進んでいます。市場では競争相手になりますが、立ち上げ時期は協力し合いましょう、ということで、かなり緊密にやらせていただいています。 -じゃあ、ソニーの技術がまったく入ってないわけではない、と。 西谷:そうです。作る技術がないから他社と組む、というわけではなく、最初から共同開発してリソースを分散しよう、という意図で事業が行なわれています。 -VAIOに積まれているドライブでは2層ができていますよね。こちらはまったく別のラインということですか? 西谷:そうです。大きく分けて、PC用、PS3用、レコーダ用がありますね。3チームが動いています。 -PS3用ドライブにかけたエンジニアリング・リソースが大きかった、というのは事実ですか? 西谷:そうですね。人がたくさんかかった、という意味では事実です。
それはやはり、企業としては当たり前だ、と理解していただきたいです。出荷する数でいうと、スタート時点で100対1くらいなんですよ。それは、人を割きますよね。
開発もそうですが、量産の人手も割かないと、100万台なんていきなりは作れませんよ。 -PS3向けの半導体レーザーの生産でトラブルが出て、初回出荷量が大幅に減った、という問題があります。量産の見通しがいつくらいにずれがわかったんですか? いま、そのリカバリーはどのくらい進んでいますか? 西谷:そこは私の領域ではないので、お答えするのが難しい。レーザーを作っている部隊から供給をうけて、ドライブを作るところからが私の領域なので。供給できない理由として説明はうけていますけれど、私の口からご説明するのはご容赦ください。
レコーダについては大丈夫です。幸いといいますか、出荷量は100分の1です。レコーダ向けに製造路を一つ確保してもらって、問題なく生産が進んでいます。
ただ、PS3向けと同じような問題は、やはり初期に、こちらでも起きました。新技術の立ち上げは私も色々体験していますが、いざ、となると、なぜかどこからか問題が出てくるものなんです。サンプルではいくらでも問題なく出来ているんですけれど、本番の製造、となると色々とね。 ■ BDレコーダのために用意されていた「ハイビジョンスゴ録」のプラットフォーム -レコーダとしての家電プラットフォームについてうかがいます。切り替えがスムーズにできたことで、SDとHDで機能や速度が違う、という問題を避けられたと思います。初期はPSX系とスゴ録系があって、さらに、前のコクーンまであった。現在はうまく一本化できた。その辺はどう展開してきたんですか? 西谷:PSXや、BDZ-S77以降、2004年頃にBDの次のレコーダを作ろう、という話が出てきて、SDからHDまでの、プラットフォームのロードマップを描きました。
発想は単純でして、ドライブだけ入れ替えればいい、ということです。地デジでHD対応しますから、ドライブだけ入れ替えれば、BD対応ができるようにしよう、と考えたわけです。全然違うものを作れと言われても、出来ませんしね。 そうこうするうち、BDの製品化が半年、1年遅れてきます。しかし、流れを切らないように、当時のDVDレコーダに、新しいXMB搭載のプラットフォームを使おう、ということになりました。 -XMB採用のスゴ録というと、昨年夏に発売された「RDZ-D5」ですか。出た時、「これは本当はS77後継のBDレコーダで使う予定のプラットフォームだったのでは」と思ったんですが…… 西谷:そうですね。本当は、その時同時か、暮れにはBDレコーダが出せると思っていましたから。そこに棚上げしたドライブが入る予定だったんです。ただ、BDレコーダが出るまでにスゴ録はずいぶん進歩しました。マジックチャプターなどのソフトの部分が。 -XMBが、今秋のテレビには搭載されなくなりましたが、それはなぜですか? 西谷:レコーダは録画番組だけでなく、いろんなメディアを使いますから、使いやすいようXMBを踏襲している、ということです。
テレビはじゃあどうかというと、正確なところはわかりませんが、見るだけなら不必要だ、ということになったのかも知れません。 -XMBがソニー製品でビデオを扱う上での基本UIである、という方針が変わったわけではないんですよね? 西谷:そうです。テレビのお客様には、XMBが「これはいい」という方と、「わかりにくい」という方の両方がいらっしゃって。
ビデオだと、最初はとっつきにくい、という方も、慣れると確実に使いやすくて、評判も良好です。
ビデオのように機能が多いものだと、XMBは有効だと考えています。インターネット接続機能があったり、メモリースティックを扱ったり。でも、単純なチャンネル切り替えだと……。どちらかというと非という人もいるかもしれない。もう少しテレビ向けに、リモコンも含め操作性を整理し直さないといけませんね。 ■ エンコーダに「Cell」はもったいない? -プラットフォームという意味でいうと、MPEG-4 AVC(H.264)のエンコードやネットワーク機能など、よりパワーを必要とする傾向にあります。その時に、今の延長線上で、組み込み用CPUとLSIを使って作るのか、Cellベースで独自に開発するのか、どちらですか? 西谷:基本は、今のハードロジック路線ですね。
AVCのエンコーダはすでに開発していますけれど、エンコーダだけあってもダメなんですよ。追っかけ再生などを実現しないとレコーダにはなりません。AVCHDのカメラに搭載したものではダメなんです。レコーダ用のチップを、ハードロジックで開発中です。
その方が使い勝手がいいですし、コスト的にも、まだまだCell上で、ソフトでやるよりいい。処理スピード/開発規模まで含めると、まだハードロジックの方が優位性があります。 -とすると、Cellは使わない? Cellそのものが、家電で使いやすいようソニーのエンジニアが入って開発した、と西谷さんからうかがった記憶があります。それでも使いづらい、ということですか? 西谷:いえ、使いづらいということではないんです。むしろ「用途」、使い方ですね。
(プレイステーション 2の)EE(Emotion Engine)、GS(Graphics Synthesizer)の時は、ソニーのエンジニアは中身がわからないまま開発をするしかなかった。どこまで、なにに使えるかもわからない部分があった。
しかしCellは、全てがわかっています。というわけで、これをなにに使えば一番向いているか、というのも彼らにはわかっているんです。じゃあなにに使うのか? というのはまだ秘密です(笑)。 -とすると、単純にエンコーダに使ってもしょうがない、と? 西谷:そうですね。正直もったいない。普通に我々が使っている家電向けプロセッサーと比較すると、100倍くらいの性能があります。やらせようと思えばなんでもできる。
でも、ハードロジックで出来てしまうことをやらせるよりは、もっとインテリジェントな性能を持ったものに使いたい。ソフトで実装できるCellの強みは、思ったものが自由に開発できるということですから。 -BDの中で、BD-Javaは搭載していますが、ネットワークはまだですね。家電プラットフォームの中に、どのくらい組み込んでいきますか? 西谷:フォーマットとして使えるものはすべてですね。パッケージで使えるものはもちろんですが、それ以上のサービスの部分までです。
幸いグループ内にソニー・ピクチャーズがいますから、どんなサービスが必要なのか、というところまで含めて検討中です。それこそ、XMBの力の見せ所だと思うんですよ。
日本とアメリカでは、ブロードバンドの回線速度が違いますからね。いっきに落とすといっても、アメリカでは「いつまでダウンロードに時間がかかるんだ」ということになりかねない。トレイラーひとつとっても、3分のものを見るのに3分以上ダウンロードにかかるようでは、受け入れてもらえないでしょう。
BDの中でも、一番発展できる機能として、積極的にしかけていきたいです。エンジニアも、非常に興味をもって取り組んでいますね。 -フォーマット上、ソニーはMPEG-2を重視している印象があります。MPEG-2と他のフォーマットの位置づけをどう見ていますか? 西谷:方針として決まっているものは特にないのですが……。ソニーがMPEG-2で松下がAVC、といわれるとちょっと不満な面もあります。AVCのエンコードには、ソニーのチップも使われますから、決して技術で遅れているとは思わない。
映画会社、ソニー・ピクチャーズの技術陣がなぜか最初の頃、MPEG-2が好きだった、というのが実情ですね。最近はAVCも好きになってくれたようですが。
我々みたいなハードを作っている人間から見ると、AVCの方が効率はいいですから、魅力的に映ります。どちらかに肩入れしている、というわけではないんです。 -レコーダでのAVCの利用、すなわちAVCによるリアルタイムエンコードですが、ニーズはすぐにあると思いますか? 西谷:技術的には負荷が大きいです。しかし、お客様から見れば、倍の時間記録できるようになるわけで、ありがたみはあると思います。また、PSPへのチェックアウトのようなモバイル系はAVCでしょう。
過去のオーディオのコーデックの進展から考えると、質が高くて圧縮率がいい方に行きますから、流れはAVCの方にあるのでしょう。
ただそのためには、MPEG-2からのトランスコーダの、安くていいものを開発しなければな、と思います。 ■ 「200GB」まで多層化で25/50GBとは違うニーズを創造 -BDのフォーマットとしての今後について。さらなるディスクの多層化についてはどう見ていますか? 西谷:たとえば200GBのディスクができたとします。本当は、HDDを使わず、ここに全部記録してしまうほうが楽なはずです。いっぱいになったらディスクを交換してもらう、という形もいいと思うんですよ。テープと違ってランダムアクセスですから、見たいものを呼び出すのも楽ですし。
テープの時代には、3倍モードで6時間くらい記録して、中身がわからなくなってたまっていくという感じでした。映画などの気合いを入れて保存したいものだけ、別のテープに変えたりして。私もそうだったんです。
ところが、ディスクになって2時間くらいしか記録できなくなったために、使い方が変わった。実際にどうお客様がつかっているかというと、HDDに記録していて、ディスクに書くのは、全体の1割くらいのようですね。 -とすると、ダビング用の50GBくらいのディスクとは、また違ったニーズがあると。 西谷:問題は価格です。これが200GBで1,000円くらいだったら、みんなそういう使い方をしてくれるんじゃないかと思うんです。毎週1,000円のディスクを交換する、みたいな感じで。
最近、HDDから映像をダビングしきれなくて「なんとかして欲しい」という声を聞くんです。なら、大容量のディスクを用意することで、そういったニーズに応えられるんじゃないかと思います。 -問題はコストです。ROMについてはずいぶん安くなっているようですが……。2層以降のR、REの低価格化をどう考えますか? 西谷:多層化時のお客様のメディアコストに対する要望は、俗に「ルート2倍」と言われます。2層なら1層の1.4倍、4層なら2倍まで、という感じでしょう。そこに答えられるかというと、実際にはルート2倍どころか2倍以上になってしまっている。そのブレイクスルーが鍵ですね。 -とすると、当面はDVDと同じく、コスト優先で1層重視、という形でしょうか。 西谷: もちろん2層のニーズも認識していますが、実用上は、1層でもある意味「十分」ではあるんです。25GBと50GBでは使い方もそう変わらないですけれど、これが200GBならまた使い方は変わってくるでしょう。
そこまでいけば、多少メディアが高くても許していただけるのではないかな、と思います。まあそれでも、せいぜい1層の4倍くらいまででしょうね。
-最後に。「フォーマット戦争は終わった」という意見もありますが、「HD DVDとの競争」という点についてはどうお考えですか? 西谷: まずは、お客さまにそう思っていただけないと。製品を買うときに、比較する必要が無い状況、つまり安心して買っていただける環境を作っていかなければいけない。PLAYSTATION 3も発売されますし、2007年の春には5社ぐらいのプレーヤーやレコーダが並びます。ソフトも見たいタイトルが揃ってくる。お店に並んだ製品を見れば、『この中から選ぼう』という状況になると思います。
□ソニーのホームページ (2006年11月9日)
[Reported by 西田宗千佳]
AV Watch編集部av-watch@impress.co.jp
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